表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
米と塩で天下を獲る ~滅亡寸前の戦国領地を立て直したら、なぜか天下人と呼ばれていました~  作者: 釣鐘銅鑼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/24

第十三話 決戦前夜

朝倉軍が動いた。


その報せが届いたのは昼過ぎだった。


「敵軍、南下中!」


伝令が軍議の幕舎へ飛び込む。


「総数三千!」


「進軍速度速し!」


宗景は地図へ視線を落とした。


予想通りだった。


兵糧を失った以上、朝倉軍に残された道は少ない。


短期決戦。


それしかない。


「場所は」


「龍哭平原です!」


軍議の空気が変わる。


龍哭平原。


黒峰領東部に広がる巨大な平原だった。


この辺りでは珍しい開けた土地。


大軍同士がぶつかるには最適である。


「なるほど」


宗景が笑った。


「義康らしい」


朝倉義康。


勇猛で知られる戦国武将だ。


敵より強い軍勢をぶつける。


極めて分かりやすい。


「父上」


義隆が口を開く。


「迎え撃ちますか」


「当然だ」


宗景は即答した。


逃げる理由がない。


兵力差は五百。


それなら十分戦える。


むしろ補給を失った朝倉軍の方が不利だった。


「全軍出陣」


重臣たちが立ち上がる。


決戦が始まる。


誰もがそう理解していた。


◇◇◇


翌日。


黒峰軍は龍哭平原へ到着した。


見渡す限りの草原。


風が吹き抜ける。


その先。


地平線の向こうに無数の旗が見えた。


朝倉軍。


三千。


槍が並び。


旗が揺れ。


兵たちの怒号が響く。


圧巻だった。


「凄いな……」


悠真は思わず呟く。


映画でもゲームでもない。


本物の戦国の軍団だった。


隣の岩倉も息を飲む。


「これが大名同士の戦ですか」


相良家では見られない光景だ。


兵三百では規模が違う。


黒峰軍も布陣を始める。


二千五百の兵が整列する。


中央。


右翼。


左翼。


騎馬隊。


弓隊。


全てが整然と動いていた。


「美しい」


思わずそんな言葉が漏れる。


宗景が笑った。


「美しくなどない」


「そうですか?」


「人が死ぬだけだ」


悠真は言葉を失った。


確かにそうだった。


壮大な光景に圧倒されていた。


だがその先にあるのは生死を賭けた戦だ。


英雄譚ではない。


現実の戦争だった。


◇◇◇


その夜。


黒峰軍本陣。


決戦前夜の軍議が行われていた。


宗景。


義隆。


重臣たち。


そしてなぜか悠真。


もう慣れてきた。


「敵は明朝動く」


宗景が言う。


「正面突破だろう」


家臣たちが頷く。


朝倉義康ならそうする。


誰もが思っていた。


だが。


悠真だけは違和感を覚えた。


「どうした」


宗景が気付く。


「少し」


「言ってみろ」


全員の視線が集まる。


悠真は地図を見た。


朝倉軍。


兵糧不足。


決戦。


そこまではいい。


だが。


「本当に正面だけですか」


沈黙。


宗景の目が細くなる。


「ほう」


「兵糧を失ったのは事実です」


悠真は続ける。


「だからこそ向こう方は焦っているはずです」


「うむ」


「なら何か仕掛けてくる気がします」


義隆が腕を組む。


「夜襲か?」


「それもあるかもしれません」


悠真は地図の端を指差した。


平原北部。


小さな森がある。


「ここです」


宗景が地図を見る。


「伏兵か」


「可能性はあります」


絶対ではない。


ただの勘だった。


しかし。


前世で歴史書を読んできた経験が告げていた。


追い詰められた軍は奇策を使う。


正面だけとは限らない。


宗景はしばらく考える。


やがて笑った。


「面白い」


嫌な予感しかしない。


「義隆」


「はっ」


「兵五百を率いて森を見張れ」


義隆が頷く。


「承知」


命令が飛ぶ。


軍議は終わった。


だが悠真は少しだけ安心した。


外れてもいい。


何もないならそれでいい。


備えることが大事なのだ。


◇◇◇


深夜。


風が吹いていた。


森は静かだった。


本来なら。


「止まれ」


義隆が手を上げる。


兵たちが動きを止めた。


音がする。


木々の向こう。


何かがいる。


次の瞬間だった。


「敵襲!」


叫び声。


矢が飛ぶ。


森の奥から大量の兵が現れた。


朝倉軍だった。


「いたぞ!」


「伏兵だ!」


黒峰兵たちが騒然となる。


義隆は笑った。


「本当にいたか」


その目は獰猛だった。


戦国武将の顔。


「かかれ!」


黒峰軍が突撃する。


伏兵部隊も迎撃する。


森の中で激戦が始まった。


◇◇◇


夜明け前。


本陣へ伝令が駆け込む。


「報告!」


宗景が顔を上げる。


「申せ」


「朝倉軍伏兵部隊を発見!」


「千の兵です!」


幕舎が静まり返った。


家臣たちが顔を見合わせる。


もし気付かなければ。


明日の戦で側面を突かれていた。


最悪の場合。


敗北もあり得た。


宗景はゆっくりと笑った。


そして悠真を見る。


「相良殿」


「何でしょう」


「お前、本当に武士か?」


失礼である。


「元々違います」


宗景は豪快に笑った。


家臣たちも苦笑する。


だがその目は変わっていた。


相良家の若き領主。


戦下手の内政家。


そう思っていた。


だが違う。


この男は戦場を知らない。


なのに戦を読む。


理解できない存在だった。


そして。


夜が明ける。


東の空が赤く染まる。


龍哭平原。


朝倉軍三千。


黒峰軍二千五百。


伏兵は暴かれた。


いよいよ決戦である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ