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どうにも心配性な彼ら。_4

何事かと見れば、ぐい、っと身体を乗り出してきたアンディは私の手を両手で包んで訴えかけてくる。

「ナオさんのいうことが本当なら、なおさらこのままではいけません。そのカレ……タツヤさんは間違っています。私は、愛している女性にそんなことは絶対にしません」

「愛……は、まあどうでもいいけど」

 口をへの字にした七央は、ストローの袋でアンディの手をペチペチ叩いて離させようとしながら続ける。

「オレもしないよ、多分。ううん、カノジョじゃなくたって、誰かの考え全否定してそいつの持ち物壊すなんてこと、普通しない。それ、完璧いじめじゃん。恐怖支配ってヤツ。精神的DVって言うの? 怪我させてる段階で肉体的DVだと思うけど」

「私もナオさんと同じ意見です」

「……同意してくれんのは嬉しいんスけど、その手離してくれますか」

 離して、と七央はなおもアンディの手を叩く。七央の攻撃から逃げながらアンディは片目を細めた。

「どうしてですか」

「どうして、って、馴れ馴れしいだろ」

「あなたになんの権利があって言っているんですか?」

「何の、って」

「ナオさんは、カナさんの幼馴染であって恋人ではないですよね。ならば」

「もう! 喧嘩しないでっ」

 言い争いに発展しそうな予感を察知して口を挟めば、アンディはより強く手を握ってくる。なんだか、この状況既視感がある。

「ケンカではなくて、私もナオさんも、カナさんが心配でならないんです。警察に一人で行くのが不安ならば、私が一緒にいきます。せめて相談だけでもしておきましょう?」

「だからアンディは大げさなのよ。そっちの国じゃあるまいし」

「ネットでもそういう話よく見るじゃん。一応相談したって事実残しておくのが良いって見たことある。その人の言ってること、そんな間違ってないと思う。それはそうと、手離せってば」

 感覚が違うのだろうアンディはともかくとして、七央までそんなことを言う。ネットの話って、そんな多くもないだろう事例を参考にしろって言われてもなあ。第一警察に相談したなんて達也にばれたら絶対怒られるじゃない。嫌だそんなの。藪をつついて蛇を出すって言うんだよ、そういうの。

 どうしても首を縦に振らない私に、二人はやがて諦めたように目を見合わせた。やっと手を離してくれたアンディは冷めてしまったランチに手を付ける。私も残りを食べてしまおうとフォークを取った。

 黙々と食事をし出して数分後。

「ペンダントは、私が探しておきます。今日はちょうどお休みですし、持ち主の方が意外とすぐに見つけられるかもしれませんよ」

 そう言ってアンディは笑った。

「カナさんがお家を私に教えてもいいなら、という話になりますけれども」

「うーん、そうだね。そっか。住所はねぇ」

 彼、いい人だけど積極的に家を教えたいかっていうと……うーん、どうしよう。

「良いんじゃない?」

 アンディにはそこまでしてもらう関係じゃないか。私は彼の申し出を断ろうとする。しかしそこに七央からの意外な一言。さっきからアンディを警戒しているようだったし、絶対にダメって言うと思ってたのにそういう風の吹き回し?

「だってさ、達也さんと別れたら引っ越すでしょ。だったらすぐ住所変わるんだし。だったら良いじゃない」

「待って七央、私引っ越すなんて言ってないよ」

 あの家、気に入ってるんだし。引っ越したら、なんか負けた気がするし。……今現在、別れてるけど引っ越す予定なんて一切ないし。

「駄目。ずっと黙って見てたけどさ、もう一回言う。達也さんとカナ姉は合わない。キツいこと言うけど、どう考えたってあの人と一緒にいても幸せに見えない。それに怪我させられたのなんて知ったら、うちの母さんも黙ってないと思う。いざとなったらオレん家に避難してきなよ」

 七央が私の交友関係に口を出してきた。そんなの初めてのことだ。今まではなにか言いたそうにしていても、決して自分の意見を押し付けるようなことなかったのに。

 意外過ぎてすぐに返事ができない。

 そんなに私、不幸に見えるんだろうか。でも、そう言われても、今この状況で完全に達也を失ったら、友達関係も含めてほぼ何もない状態になってしまう。空っぽになってしまう。そんなことに気付いてしまった今の私には、寄るところがもう達也しかない。こんな状態の私では、彼と完全に切れることができそうにもない。

 こんなのダメだってわかってるんだけど、でも独りきりは嫌だ。


 兄夫婦が同居している実家になんて、戻れない。したくない。お義姉さんに嫌がられたくない。仮に戻ったとしても、ほら見たことが、なんて言われて強引に話を進められて適当な人と結婚することになりそうだ。そんなのは絶対にお断りだ。

 かといって転がり込むことを許されるような友人関係もない。状況を話して理解してくれる子はいるだろうか。してくれたとしても、しばらく住まわせてくれたりはしないだろう。

 七央はああ言うけど、いきなり私が行ったら七央の家族に迷惑が掛かる。

「気に掛けてくれてありがとうね」

「ねえ。わかってないでしょ。駄目だからね。本当に別れなよ」

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