表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

第14話「第三次防衛戦――火竜、天川を翔る」

寺の裏手、岩場に仕掛けた罠がうなりを上げて弾け、

背後から迫る敵を、辛うじて押し返した。

だが、谷の上空には火の手が上がっていた。

敵本体が峰伝いに迫り、

ついに寺に火が放たれたのだ。

轟音とともに屋根が崩れ落ち、

壮元和尚の祈りの場が、灰の中に消えた。


その火は間もなく、

山を越えて“太陽の道”の村にも及んだ。

「もはや……」

日影は短く言っただけで、真名井を先に立たせた。

二人は天川の川上をめざした。


険しい岩場を抜けた先、渓流の水音が静かに響く。

その奥、大岩の壁面に立てかけられた、

長大な竹の筏があった。

その陰には、丸太をくり抜いて作られた、

一艘の艇が潜んでいる。

木影と金影が幾日もかけて造った、“火竜”である。

長さ六間半、直径二尺。

舳先は鉈で削られ、鉛筆のように尖っている。

人ひとりが身を屈めてようやく収まる内径。

まさに忍びのための逃れ舟であった。

「日影……これに、我ひとりで乗るのか?」

真名井が問うた。

声は月光に溶けるように、淡かった。

時は丑三つ時。

空には雲ひとつなく、欠けやらぬ満月が、

川面を煌々と照らしている。

夜露を帯びた苔の岩々が、銀に光っていた。

「まずは川を下り、伊勢の海へ。

 ……和子は、大湊を覚えておられよう」

「だが、我ひとりで――」

「川下にて、我らが待つ。

 必ず、道を切り拓いて参る」

言うが早いか、日影は火竜の口に外板をはめた。

竹筏の陰に、黒き影が沈む。

隠されていた綱を岩陰から一段引くと、

竹筏がぐらりと揺れる。

さらにもう一段、綱を引いた瞬間、

筏は崖下へと傾き、

火竜を抱いたまま川面へと滑り落ちた。

「行け……」

その声に呼応するように、火竜が筏から離れた。

水面にひときわ高く跳ね、やがて深く潜っていく。

渓谷に水音が響いた。

火の手を背に、天川の水脈へと沈んでゆく

――それが、真名井を載せた、

潜水艇”火竜”だった。


(つづく)

いよいよ明日、最終話です。

たくさんの方の応援があり、ここまで辿り着きました。

本作完了次第、第2部「真名井、海へ」を構想します。

今後とも、よろしくお願いいたします。

船木

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ