表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/69

あらら……もう、降参されてしまうの?

 ひいおばあちゃんの側には、ソフィアとスーザンもついているのよ。つのる不安を打ち消すように、私は前だけを見つめた。


 前後を自警団の面々に挟まれて、私は修道院の中に踏み込む。王宮とは趣の違う白壁が、何となく不気味な雰囲気だけど。長い回廊を進んだ果てに、装飾の朽ちかけた扉が目に飛び込んだ。


 石造りの重い扉が、軋みながら左右に別れる。その奥にあるパイプオルガンの下で、白く長い髪の神官さまが背を向けていた。


「連れて来たのか」


 振り向きざまに見えた顔は、研ぎすまされた美しさをたたえている。余りにも人間ばなれした姿に、私の爪先がふるえ始めた。


「アナベルっ」


 横にある小さな扉から、初老の女性に支えられた老人が現れる。足を引きずる彼の人は、ゆっくりとこちらにやって来た。


「大伯父さま?」


 神官さまをにらみつけて、大伯父さまは黙ったまま。彼の代わりに女性の方が、私の問いに無言でうなずいた。


「どうやら、審判を受けるべき罪人がそろったようだ」


 その言葉と同時に、神官杖の先を私の喉元に突きつける。

「よせ」

 大伯父さまの説得も虚しく、

「山繭のサナギの不育の原因を答えるのだ。トーマス」

 相手は私達に怒声を浴びせた。


「もう、この地で山繭は育たない」

「何」


 大伯父さまは、参列席に腰を落とす。

 絶え絶えの息をふり絞り、

「あれは、マテリア王国自生の桑の木でしか育たない」

 真実を吐露した。


 確か、先王陛下の側妃シャルロットさまの生国よね。彼の地の動植物の大半は、門外不出だったような。これって、外交問題もいいところだわ。


「ザビーネの後ろ盾だった商会も、あちらで起きた革命で瓦解した。あれがなければ、山繭の人工飼育は叶わない」

「教会の権力で、貴様を生かした意味がないではないか」

「そうだな。もう、終わりにしようユリウス」


 くくく……、不気味な笑い声が木霊したかと思えば、

「みんな。道ずれにしてやる」

 神官さまの詠唱が始まる。

「やめろっ!!」

 大伯父さまの懇願を打ち消すように、白い光の弾丸が私の方へ。私、魔力をはじき返すなんて出来ない。

 そう、思った時だった。


『もう、しっかりしてよ。アナベル』


 いたずらっ子の声に呼ばれて、私はゆっくりと瞳をあけた。

 うそ。真ん前にブラックホールがあるるるる。


 病院の待合室で読んだ少年漫画に、こんなチートがあったような?

 白い光の弾丸を、黒い渦がガッツリと飲み込む。渾身の魔法を放った神官さまですら、意味フなチートの発動に目がテン状態。


「そ……そんな。お前は魔女かーーっ」


 定期オツな叫び声に、

「いいえ。私はレオナルド殿下の妃にございますわ」

 ドヤ顔満点の私は、淑女の礼でもって応える。ハッタリを決めた途端、神官さまは杖を投げ出した。


 あら嫌だわ。神官さまって、意外にも豆腐メンタルなのね。

 膝を屈した神官さまを、私は得意満面の笑みで見下ろした。


「アナベル。無事なのか」


 聞きしに覚えの声色に、私は反射的にふり返る。

「殿下」

「よかった」

 愛しいお方が駆け寄る姿が、ストップモーションと化していた。


「君が無事で、本当によかった」

「レオナルドさま?」


 不意に、私の肩に殿下の腕が回される。互いのぬくもりを分け合うように。

 私達は抱き合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ