表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/69

のどかな田園のど真ん中にて。

 つい、さっきまでのオラオラな展開と違い、見渡す限りメルヘンチックな光景が広がっている。私ったら、ポカンと見とれている場合ではなかった。


 でも、さっきのあれって十中八九、『転移魔法』の類いよね。


「これから。貴女。大丈夫なの」

「あの」


 人様の往来の邪魔になったら一大事。今にも地面にへばりつきそうなスーザンを支えて、私達は牧柵に寄りかかった。


「申し訳ございません」


 何度も謝る彼女を横目に、

「いいのよ。貴女の機転がなかったなら、私はあいつらに何をされたか分かりませんからね」

 私は手提げバックの中身を改める。

 あからさまな貧血状態の彼女に目を配りつつ、

「トレーシーから渡されたポーションよ。これを飲みなさい」

 取り出した小瓶を目の前に掲げた。


 遠慮がちなスーザンに対して、私は有無を言わさず瓶を渡す。

「すみません」

 その言葉と同時に、彼女は中身を飲み干した。


 回復まで時間はかかりそうだけど、今のうちに休んだ方がいいわよね。真上から降りそそぐ陽射しに反して、私達を取り囲む風は少し冷たい。


「ここは、フロワサールの領府の手前にある農村です。あの楡の木を越えた辺りに、知人の家がございます」

「そうなの」


 日暮れ前までにスーザンが回復してくれたら、女二人の足でも歩けそうな距離だわ。

 ふらつきながらも、歩き出そうとする彼女を見て、

「大丈夫なの?」

 私は不安を口にする。

「お気遣いありがとうございます」

 ゆるやかな登り坂を前に、気が遠くなりそうになる。それでも前を見据えながら、私達は登り口に足をかけた。



 何度か後ろを振り返ってみたけれど、怪しい連中が迫り来る気配はないみたい。小石混じりの地面に伸びる二つの影が、ノスタルジックな雰囲気をかもし出している。

 そんなおセンチ気分をふり切って、私は隣にいるスーザンに目を向けた。


 あれれ……この子ったら、歩きづらそうにしているじゃないの。


 再度、足元の覚束ないスーザンを目の当たりにして、

「休まなくても大丈夫なの?」

 体の具合をたずねる。

 彼女の額に手を当てれば、予想以上の熱だった。


「申し訳ありません」

「そんなこと、言わなくてもいいのよ。ポーションの副作用だなんて」


 発熱に加えて貧血状態にも関わらず、スーザンは一向に歩みを止めようとしない。


「ダメよ。それでは」 

「でも。早くしないと……」


 スーザンの言葉が、それ以上続かない。彼女を休ませたくて、私は周囲をぐるりと見渡す。

 困ったわ。小さな木陰すら見当たらないなんて。


「妃殿下」

「いいのよ。貴女は命の恩人ですもの」


 脇の下から自分の腕を差し込んで、彼女の体を支えてあげる。見上げた先に映る家に向けて、私達はゆっくりと登り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ