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たまの休暇

「Sランク級の魔族を単独討伐した英雄カイト、そしてAランク上位級の魔物を単独討伐した女傑サクヤ」


そう呟いたのは、城塞都市アベイドのギルドマスターである、セシル・セルシエットだ。


ダンジョン都市ガルドフィルから送られた二、三枚の羊皮紙にまとめられたレポートを、紅茶の入ったティーカップ片手に目を通す。


要点をしっかりまとめられているおかげで読みやすい。ガルドフィルのギルドマスター秘書は優秀なようだと、感心しながらカップを傾ける。


レポートを読み終えると書斎机の上に投げ捨てる。それから書斎机から椅子を離してから立ち上がり、くるりと回って後ろにある窓の外に目を向ける。


時刻は午前八時を回ったぐらいで、窓の外からは馬車のタイヤが地面を滑る音や、馬の蹄が石畳を踏む音、住人達の他愛ない会話が飛び交っていて、どこかでは子供の笑い声がする。


それらが合わさって心地よい音色を奏でている。気持ちの良い光景だ。


窓から空を見上げて、遠くにいるであろう英雄二人を考えていると、ドアが叩かれた。一定のリズムで四回叩かれた後に「セシル様、お客様をお連れいたしました」と女性特有のソプラノ声が扉の奥からした。


誰かが訪ねてくる予定などあったか?


椅子に腰かけると、机の隅に置かれていた手帳を手に取り、今日の予定を見遣るが、いつもと変わらず、仕事のみのつまらないスケジュールだ。


予定にない訪問者だが、受付嬢が通したのなら信用に足る人物なのだろうと、承諾の返事を伝えた。


「失礼します」


入り口を塞がないように部屋に一歩踏み込んでから、ぺこりと頭を下げたのは職員の一人、アルハだった。


その後ろには今しがた読んでいた資料に書かれていた英雄二人が、一人は眠たそうに欠伸を噛み締めて、一人は渋面を浮かべて立っていた。存外近くにいたらしい。


セシルがソファを勧め、二人もそれに応じて腰を下ろす。セシルが扉付近に立つアルハに何かを目で伝えると、軽く頭を下げてから部屋から去って行った。


二人分の紅茶を新たに淹れると、それをカイトとサクヤの前に置き、自身も対面に座る。


「とりあえず用件を聞こうか、英雄殿?」


「いやな、ダンジョン攻略でようやく実用的な物がドロップしたから鑑定して貰おうかなぁと」


運が悪いのか、ダンジョンでドロップしたのは、ほとんどカイトもサクヤも使いそうにないものだった。


トロールの棍棒に大ムカデの牙と鱗、キラーファルコンの羽根。どれもころもパッとしないものだが、今回デュラハンがドロップした鎧とマントは、ようやく出た使えそうなものだった。


実は、いつもより少しばかりテンションが上がっているカイトだ。カイトの内心を知らないセシルは少しばかり、緊張………とでも言うのか身体が強張っている。


カイトの口から出た“鑑定”と聞いて、思わずセシルがピクリとしたのは仕方ないことだろう。少しだが、震えていて、手に持っているティーカップの中の紅茶も小さく波立っている。


思い出されるのは、苦い記憶。カイトに鑑定をかけて失敗し、サクヤの殺気に当てられ、最後に死ぬ未来が見えた。最後の死の予知はあまりにもリアルで少しの間、夢に見るほどだった。


死んだと思ったら生きていた、あの最悪な違和感は今でもはっきり覚えている。


その時は、いつの間にか何度も首を擦ったせいで陶器のような肌が赤く染まっていて、周りから結構な心配されていたりしたのも、なかなかに苦い記憶だ。


思い出したら、また記憶が蘇り、半ば無意識に首を撫でていた。それでもアベイドを救ったことは変わらない。感謝していることにも変わりない。


「分かった。どれを視ればいい?」


「これだ」


机の上に物々しい鎧とマントを置く。装飾はあまり施されて無く、所々に朱色の紋様が入っている武骨な鎧と、見た目に反して、ずしりとした重さを持つ闇から切り抜いたような真っ黒なマント。


傍から見れば、装備したら呪われそうな防具にしか見えないそれらをじっと見つめて嘆息する。


「これは相当レベルが高いものだ。すまないが、少し時間がかかりそうだ」


「分かった。なら依頼でもやって時間潰すか」


「初めて二人で依頼受けますね」


「そうだな。それじゃ、頼んだ」


「分かった」


カイトとサクヤが部屋を出て行った。ご丁寧にカップを空にしていくあたり、二人らしいとはにかみながら、カップを下げると、机の引き出しから眼鏡を取り出してかける。


これは鑑定を持つ者には咽から手が出るほどほしい逸品だ。審美の眼鏡という魔道具で、効果は鑑定の効果に補正をかけるというものだ。


理知的でクールなエルフの淑女が紅茶を口に含んで潤してから。


「頑張るか」


気合を入れるように一言呟いてからマントを手に取った。





「さて、何の依頼にしようかな」


一つ一つ指でなぞるようにしながら、依頼を漁る。今は冒険者もいないおかげで選び放題だ。最も冒険者がいないのはカイトとサクヤが出遅れただけであり、加えて言うならば、選ぶほど依頼はない。


離れた場所でも、サクヤがむぅ~と唸りながら依頼板とにらめっこしている。


サクヤが見ているのは採取系の依頼だ。依頼は同時に三つ受けられるため、カイトが討伐依頼、サクヤが採取依頼を受けることにしたのだ。


サクヤから視線を引き戻し、少し雑に書かれた文字の羅列に目を移す。


ゴブリン、ウルフ、ジャイアントバッド、オーガ、デュアルドラゴン。


依頼書には、場所や報酬、魔物の特徴などが詳(つまび)らかに書かれている。


たとえば。


デュアルドラゴン

情報:頭が二つある単体でBランクの強さを持つ魔物。左の首が炎、右の首が風の魔法を使う。三名以上で行うことを推奨する。


場所:北東に位置する森の最奥。


報酬:大銀貨六枚


といった具合に書かれている。情報だけ見れば、強そうだが、カイトにとっては劣化版アハトとしか思えなかった。


出遅れた割にはバリエーションが豊富だ。もっと早い時間帯に来れたら討伐依頼だけでも、この四、五倍はある。


依頼が多い故に悩んでしまう。依頼はランクの一つ上まで受けることができるため、幅が広がる。


「これなんてどうでしょう」


サクヤが持ってきたのは快復草の採集。上級回復ポーションに用いられる薬草で、ランクはB。


ランクが高く設定されているのは場所が、あの多元の森林だからだ。


あくまで戦闘ではなく採取のためランクこそBだが、一度でも魔物に見つかれば、その時点で死が確定する。


受ける人も少ないせいで、ゴブリン、ウルフと同じく常駐依頼だ。


危険だが、その分報酬は申し分ない。十枚一束で大銀貨ー枚。一つ見つければ、その近くに群生しているなんてこともザラにある。


上手くいけば、一度に大量の金を得られるため、新米冒険者が度々受け、それっきり戻らなかったりしたからというのもランクが高い理由の一つだ。


「まあいいか。でも多元の森林だと討伐依頼Aランクしかないから受けれないな」


「じゃあ今日はこれだけでいいんじゃないですか?お金に困っているわけじゃないですし」


「それもそうだな」


この会話の後、カウンターに依頼書を出したカイトとサクヤにモンスタークラウドの件でギルド職員から畏怖や尊敬やらが混ざった視線をもらい、鬱陶しくなって少しだけ威圧を発動させ、サクヤに後頭部をチョップされたのはまた別の話だ。





多元の森林で狩ったユニコーンをアハトに捕食させて新たに増えたユニコーン形態のアハトに跨がり、多元の森林に向かう。


真っ白な毛並みに、馬よりも大きく逞しい巨躯、長く伸びる角。捕食させたユニコーンより何倍も強そうだ。


すれ違う冒険者や商人視線をユニコーンに釘付けにされていた。商人の馬車を引いていた馬が血走った目で見てくるぐらい、美しい姿だ。


ユニコーンは貴族や高ランク冒険者がごく稀にテイムしているが、乗っているのが無名な冒険者二人ならば驚きも倍増だ。まあ、今のカイトとサクヤは姿を偽装しているので、後から目立つようなことは無い。


「サクヤは快復草がどんなのか知ってるのか?」


「はい。島で薬草は良く採取してたので。快復草の他にも、快癒草や月光草も生えてましたし、薬草に関してはなかなか詳しいですよ」


快癒草は最上級回復ポーションの材料。高魔草は最上級魔力回復ポーションの材料で錬金術にも使われる。


快復草が一束大銀貨一枚なのに対して、その二つは一束金貨一枚だ。


採取するには、魔力が満ちている魔境かダンジョン深層ぐらいしかない。


「もしかしなくても、災厄の孤島って宝の山だった?なんなら今すぐ移動するか」


少しだけ後悔して。


「カイトが持ってる魔物の毛皮を少しでも売れば、一生遊んでくらせますよ?」


続くサクヤの言葉に、それもそうかと思い直した。


「まあ、言ってみればこのコートだけでも家は建つな。アハトなんか売ってみたら城でも建つんじゃないか?」


ここで笑い飛ばしてくれたら、幾分マシだっただろうが、帰ってきたのは結構本気のトーンでの問いだった。


「…………しないですよね?」


「さすがに冗談だからな。それとアハト、そんな目で見るな」


それから所々休憩を挟みつつ、着いた多元の森林。何度来ても外観は気味が悪い。一度でも中に入ればそのイメージが払拭されるが、入ろうとは思わない。


快復草がありそうな場所、魔力が多く集まる所へと進む。


息を潜め、カイトとサクヤを襲うタイミングを狙っている魔物もいるが、そんな考えを抱いた次の瞬間には意識を闇へ落とした。


やったのはアハトだ。今はシャドウキャットという真っ黒な猫の形態だ。鳴き声は猫と変わらないが、尾が三つあり、爪が長い。火と、シャドウと名の付く魔物が使う専用魔法、影魔法を使う。


防御が低いが、攻撃と敏捷が高い。影に潜み敵を暗殺するか、高い敏捷を生かして相手を翻弄して、その首を刈り取るか。この技が首狩り猫と呼ばれる所以だ。可愛い顔からは想像もできない。


アハトのスキル:肉体変質は、変化した魔物に合わせてステータスも変動する。シャドウキャットを例とするなら、防御力が下がり、その分が攻撃力と敏捷力に配分される。ステータスの合計は変わらない。


姿無く首を狩る黒猫。辺りから敵がいないのを確認すると、くぁ~と小さな口を目一杯開いて欠伸をしてから主人の元へ戻る。


「ミャア~」


欠伸をしながら、カイトの頭の上でぐでっとする。尻尾がふりふり振られ、ぽすぽすと背中に当たり、くすぐったい。


アハトの頭をグリグリと撫でれば、気持ちよさそうに鳴く。


「サクヤ、頬が緩んでるぞ」


「カイトも人のこと言えませんよ?」


和やかな雰囲気のままに、快復草を見つけ出す。数はそこそこ多いが、必要最低限の量だけを採取する。


快復草は魔物も服用することもあり、生態系を崩さないためだ。


そもそもここに来るまでに狩った魔物を売れば、報酬の十倍以上の金を得ることができる。


天から地を貫いている光の柱。そこに腰掛け息を吐く。周りから殺気のこもった視線さえ無ければ休憩には最高の

ロケーションだ。影から動く死神がいるおかげでその視線を送っていた魔物も数を減らしていく。


サクヤは木に背を預け、カイトは途中でアハトが狩った魔物の解体に精を出す。並列思考と移動と固定、三つのスキルを使用して解体をハイペースでこなす。宙を自由に舞うナイフが的確に部位を分ける。


全ての解体を終えた頃、森は陰鬱な空気で満たされていた。


「そろそろ帰るか」


「そうですね。鑑定も終わった頃ですかね」


「それでアハトは………完全に寝てるな。移動するか」


魔物の処理を終え、疲れたアハトは猫形態のまま、カイトの頭の上で眠りこけている。


アベイドの地形を頭に浮かべ、人気のない場所をピックアップする。幾つかの候補を挙げてギルドに一番近い所を目的地とする。


サクヤもカイトの袖に掴まる。


カイトとサクヤの視界が森から路地裏へとテレビの場面転換のように切り替わる。


転移した先は表通りから外れた路地裏だ。人の気配はない。


それから何くわぬ顔で表通りに入り、人ごみに溶け込む。香ばしい屋台の匂いがひどく懐かしい気がする。


屋台の匂いに気を取られて気が付かなかったが、何やら視線がカイトの頭の上に集中している。子どもなんかはキラキラした目で見ている。


「忘れてた。アハト、今は猫だった。この視線はそのせいか」


確かに猫を頭に乗せていたら注目の的になるのは必然だ。さっきの子供が隣の母親に「あれほしいっ!」とねだっていたり、シャドウキャットの価値を知っている冒険者達が狙っていたりと、なかなか面倒くさいことになっている。


「気にしないでも良いと思いますよ」


「そうだな」


だが、避難するように逃げ込んだギルドでも、やはりというか何というか、主に女性職員から注目を集めた。一見仕事しているように見えるが、時折チラチラッと視線をよこしてくる。




唯一普通対応であったアルハにギルドマスター室に案内してもらう。案内は不要だが、ギルドマスター室には職員同伴で無くてはならない。ガルドフィルという例外もあるが。


カイトとサクヤが入ると、セシルが'手元の資料を置き、紅茶を用意する。毎度ながら、来客者の紅茶は必須なようで前に置かれたティーカップに、律儀だなと思いながら手を伸ばす。それを毎回飲み干すカイトとサクヤも律儀なんだが。


「鑑定は終わったのか?」


「ああ。これだ」


ぴらりと一枚の紙を渡す。紙には鑑定の結果が事細かに書かれていた。



怨嗟の漆黒鎧(しっこくがい)

怨みの強さによってステータスに補正をかける

防御力に強補正をかける

本能強化

理性低下

重量軽減

スキル:狂化付与


狂化

理性と引き換えに、ステータスに1.5倍の補正をかける。スキル使用時、痛覚無効。


常闇のマント

日光遮断

火・闇属性耐性

防汚

敏捷力に小補正をかける

形状変化



「へぇ~鎧の方はまんま呪いの装備だが、マントは使い道がありそうだな」


「この鎧を着たら殺戮兵器になりますね」


横から覗くように見ていたサクヤも同意見なようだ。本能に忠実になり、怨みで強化され、狂化も使える。


「ありがとな。鑑定の代金として」


ゴトリとデュラハンの魔石を机に置いた。鎧とマントの上、さらに置かれた魔石により、机が悲鳴を上げるように軋む。


「いいのか?これを売れば一生遊んで暮らせるぞ」


「こんなにでかいのはあんまり使わないしな」


カイトが魔石を使う主な用途は魔法陣だ。魔法陣に使えるのはせいぜいが直径三十センチまでだ。それより大きいのは国が使う魔道具に用いられる。こんな大きいのを売れば、王族貴族に目をつけられるに決まっている。


「なら、ありがたく受け取ろう。ありがとう」


そう言って、笑うセシルは普段の凛とした顔からは考えられない程可愛らしく、自然見惚れてしまった。


それをサクヤの脇腹に放たれた手刀で引き戻された。


「それよりももう一ついいか?」


「ああ」


「多元の森林で狩った魔物の素材を買い取ってくれないか?下だと冒険者達に見られるからな」


「ああ、いいぞ。むしろこちらからお願いするよ。ちょっとついてきてくれ」


セシルが立ち上がり、カイトとサクヤもそれに続く。


案内されたのは、保管庫、とでも言えば良いのか。どこからか冷気がでていて肌寒いが、カイトもサクヤも寒冷耐性を持っているのでどうということもない。


保管庫には革や肉など多岐に渡って素材の保管が行われている。解体の終わっていないものに関しては天井から吊し上げられている。


外観から大きいと分かっていたが、中に入ってみるとそうでもなかった理由は、これらしい。ここだけでギルドの半分を占めているようだ。


「ここに出してくれ」


解体用のスペースだと知らなかったら、凄惨な殺人現場にしか見えないほどにそこは赤黒く染まっていた。


「ほい」


ドサドサと空中に現れた肉やら革やら牙やらが重力にしたがって床に落ちる。


その完璧な解体技術に目を見張るセシル。災厄の孤島で鍛えられた技術は伊達ではない。


「これだけ狩ったなら、私が間引く必要はないな。いつも誰もついてきてくれないから疲れるんだ」


間引く。つまり多元の森林の魔物を一人で勝てるということだ。


「セシルって冒険者ランクだとどれくらいなんだ?」


「自分でもよく分からないが、Aランク以上としか言えないな。私はエルフだと落ちこぼれでしたから」


セシルが自嘲気味に笑った。さっきの華のような笑みではなく、今の笑みは痛々しい。


「なんで落ちこぼれなんですか?」


意外にも、聞いたのはサクヤだった。カイトはこれ以上聞く気も無く、口をつぐんでいた。


「………エルフは自分の適性属性の精霊と契約を結んで使役するのだが、私は精霊と契約出来なかったんだ。今となってはどうでもいいんだが、あの頃は里の皆から向けられる侮蔑を含んだ視線に耐えきれず逃げたんだ」


遠い過去を見る目は、寂しげだった。黙って聞くサクヤ。その手は強く握り締められていた。


「すいませんでした。変なことを聞いて」


「いやいい。さっきも言ったとおり、今は気にしてない。それに話してスッキリしたぐらいだ」


そうしてセシルが素材の鑑定を始めた。




「サクヤ。なんであんなことを聞いたんだ」


対面でベッドに座るカイトとサクヤ。アハトは枕の上に寝かせておく。


ガルドフィルの宿屋に転移して、真っ先に口を開いたのはカイトだ。金貨と大銀貨で重たい布袋をベッドに捨てるように投げた。


あそこは明らかに聞いてはいけない空気だった。それをカイトよりも大人のサクヤが分からないわけがない。


「私も……龍人族の中だと落ちこぼれでした。いえ、正確には私と私の父でしょうか」


サクヤの口から出たのは、カイトも驚愕な言葉だった。一度サクヤの父と剣を交えたカイトは信じられなかった。


「父は部分的にですが龍化を使えました。父は羽根を生やしたり、鱗で一部を覆ったりできましたが、私は全く使えません」


龍化は龍人族の固有スキルだ。効果は名前の通り、龍となる。そして、ステータスが格段に跳ね上がる。


「父は龍化があまり使えませんでしたが、刀と魔法で龍王と認められました。村の全員が父を認めてました」


次の一言を言うのに時間がかかる。サクヤの表情にも陰りが生じた。


「私は、そんな父と比べられてきました。父のことは尊敬もしていましたが、同時に嫉妬もしていました。セシルさんのことは、なんとなく共感したからです」


「………そうか。まあ、セシルも気にしないって言ってたから気にしなくていいだろ」


重たい空気を払拭するようにアハトが欠伸をした。

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