7話 そのとき熊に電流走る――!
レオパト出国から2日。
船室でミュウと寛いでいると、ドアを叩かれる。
「おう、陛下。入るぜ」
「どうぞ。ミュウ、お茶を用意して」
「はぁい!お土産のジャムサンド出しますね!」
「お土産をここで食べたらミシェル達に恨まれるわよ」
「……じゃあお土産じゃないジャムサンドにします」
どう違うのよ。
ガチャリと扉が開き、グリースが顔を出す。
「ミュウやめとけ。あいつら土産だけが楽しみで頑張ってんだから」
椅子に座った熊はのんびりと外を眺めた。
「もう1時間でロンディネだってさ。優雅な船旅ってのも悪くねぇがそろそろ揺れない床とエールが恋しいぜ」
「そうね。わたくしもショートブレッドと紅茶が恋しくなってきたわ」
お菓子も紅茶も持参はしたけれど、水が違うのか周りの香りの影響なのかどうしてもいつもとは違うのよね。
「だな。それにしても貴族の船ってのは本当に早いな。漁船と比べりゃどこへだってあっという間だ」
「……あなた、一体何の仕事をしていたのよ」
やたらと顔が広かったり、鍵を壊せたり、今度は漁船?頭の回転だって悪くはないし、掛け値なしに善い人間ではあるけれど、謎も多い。
「便利屋さんですよ~!お引っ越しから赤ちゃんのお世話までなんでもできるって言ってました!すごいですよねぇ!」
ミュウがお茶とお菓子を運びながら戻ってきた。
「おっ、ありがとな。俺は図体がでかいだろう?力仕事を色々頼まれてたら、いつの間にか仕事になっちまってな。――それが今じゃ女王様の側近ときたもんだ。縁ってやつは面白いもんだ」
「……ふぅん、そう」
「私とお嬢様は縁じゃなくて運命ですよ!」
「おっ、先輩。ずいぶんドラマチックだな」
「ふふん!お嬢様が私を拾ってくださったのは――」
2人のやりとりがなんとなく面白くなくて、窓の外に目を向ける。
優美な客船は想像よりずっと揺れが少ない。凪が続いたのも運が良かった……けれど、気分が晴れない。
わたくしは立ち上がり、ミュウに命じた。
「さぁ、さっさと着替えるわよ」
「おい!まだ一口も飲んでないぞ!?」
「ではお茶を持って戻りなさいな。いつまでわたくしにドレスを着させているつもり?」
胸中の靄を晴らすように、ピッと陸地を指差す。
「船から降りたらゴーミルをシバくのよ。ドレスじゃスイングに腰が入らないわ」
――
見慣れた、色彩に欠ける石造りの港に降り立つ。
いつものお仕着せに鉄パイプを持ったわたくしは、梟の騎士団に手紙とお土産。そしてお父様宛の報告書を渡して帰領させた。
ミュウにはミシェル宛の帰国連絡を燕に伝えさせている。
「おいおい、いいのか?これからゴーミルんところに行くんだろ?」
平服に着替えた熊が焦って声をかけてきた。
「私事にヴィルシュ騎士団を連れて行ったら、お父様に別途賃料を請求されるもの」
「そりゃそうか……ん?そうなのか?いや、侯爵様の事を考えるのはやめとこう、頭がおかしくなりそうだ。……で、海の次は山か?高い所は勘弁してくれよ」
「あら、高い所が苦手なのね?」
くすりと笑う。普通の人よりずっと高い世界を見ているのに。
「鳥の巣箱を取り付けている時に落ちたんだ……頭のてっぺんにデカいタンコブ作って以来、どうもな。んで、次はどこだ?」
「王都よ」
「うん?一度帰るのか」
「いいえ。ゴーミルがいるからシバいてから城に帰るわ」
――沈黙。
「すまん、よく聞こえなかった。ゴーミルが、どこにいるって?」
「だから、ゴーミルは王都にいるのよ」
ぽかんと口を開けるグリース。
「んな……バカなぁ!?」
港町に、熊の叫び声が響いた。
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次回、本命に尻バット。ぜひお付き合いください。
次回、尻バット。
実質最終話になります!ぜひお付き合いください!




