5話 民に代わっておしおきよ!
「ありましたぁ!」
「ったく、よくもまぁこんなにも持ち込んだもんだ」
ミュウとグリースがセンターテーブルに並べたのは宝飾品30点。持ち出しやすい小物が多いところがまた憎らしい。
「言いがかりだ!これは個人資産であるぞ!」
「ミュウ」
ミュウが付箋のついた本を読むフリをする。
「えっと、国宝は4個あります。右から『闇の衝動を抱きし黄金の宝玉』、『青と赤交わる紫電の腕輪』……」
ネームセンス、どうなってるの!?
「余のお気に入りなのに!」
気に入るか否かで国宝を持ち出すな!!
「……ディア殿よ。ロンディネは大丈夫なのか?」
それな!!!
「……それだけでは無いわよね?ミュウ!」
「はいっ!国宝目録89ページ『天翔けるドラゴンの煌めき』が中古「はいストップ!クーズイル卿?覚えはなくて?」ありますかぁ?」
豚は雷に打たれたように身体を硬直させ。
「買食いしてたら、路銀が尽きたから……つい」
『つい』じゃないでしょうが!!!!
「美味い物が多すぎるレオパトが悪い!」
「クーズイルさんは何がお気に入りですか?」
「ミュウ!ここで食べ歩きリサーチをしないで!!」
冷や汗を垂らしたグリースがミュウの口を塞ぐ。
心の底からありがとう!
……隣のサリスト王は完全にフリーズしている。
忘れていいわよ。むしろ忘れなさい。
「グリース、国璽と鍵は?」
「すまん。見つからなかった」
「もごもごもが……」
サリスト王は若干顔色を取り直した。……けれど、甘い。
この男は、バカの深淵をまだ知らない。
「グリース」
「おう、次はなんだ?床下でも探すか?」
「その必要はないわ。……はぁ。豚の服を全部ひん剥いて」
「ヒェッ!」
「了解……って嫌だよ!なんでオッサンの服を脱がさにゃならねぇんだ!」
「わたくしだって嫌よ!早く!」
心底嫌そうな顔で、豚の服を引き裂く熊。
白目を剥いて立ち尽くすサリスト王。
「わぁ!グリースさん凄い!」と感心するミュウ。
「らめぇ~!!」
悲鳴をあげたいのはこっちだわ!!
上半身は何も無し。
けれど、ジャケットに隠れる腰の部分に不自然な膨らみが。……ああ、やっぱり。
でぃや!っと覚悟を決めたグリースがズボンを下ろすと、お尻と赤い巾着が現れた。
「おのれッ……なぜバレた……!?」
「知るか!……ほらよ」
熊が呆れた様子で紐を歯で噛みちぎり、わたくしに投げた。
――生温かい。
手にストンと着地した温もる巾着を、極力鼻で呼吸をしないように努めて開ける。
中に入っていたのは……燕の刻印が入った国璽と、鍵5本と宝石が1つ。
ミュウがさけぶ。
「あ、これ、国宝です!『愛と月光の裁き』!」
「………………尻から、国璽……尻から……国、ほ……」
サリスト王が静かに崩れ落ちた。
――
「――我が国の入国審査はどうなっておる!!処刑だ!直々に叩き斬ってくれる!」
復活した彼は髪を逆立てて吠えた。
知らずに国璽・国宝を盗んだ逆賊を離宮に匿っていたのだから噴飯ものでしょう。
「それはどうぞご随意に。それよりサリスト国王陛下、『落し物』が無事見つかって感謝いたしますわ」
「……!ロンディネよ、『落し物』
だな?二度とは覆させぬぞ」
「もちろん。ただ、1つだけお願いがありますの――ミュウ」
「はぁい!」
ミュウからデコ鉄パイプを受け取り、ベルベットとレースを投げ捨てる。
「お、おい!?なんだその物騒なものは!」
慌てるサリスト王に、わたくしは艶やかに微笑んだ。
「今からの折檻はお目こぼしくださいませ。――グリース」
「はいはい。マジでやんのかよ」
「そのためにここにいるのよ」
グリースは呆れ顔で丸々と肥えたバカを小脇に抱えた。
真っ青になったクーズイルは叫ぶ。
「せ、折檻なんて大袈裟な!うっかりいつもの巾着に入れたまま逃げただけだ!!訴えてやる!!」
「寝言を抜かすな!『うっかり』で国璽を持ち出す馬鹿者がおるわけなかろうが!!」
いるのよ、陛下。あなたの目の前に。
ギャーギャー言い合ってる2人を無視して、わたくしは相棒を構えた。
そして、力いっぱいスイングする……!
「民の怒り!思い知るがよい!!」
バッコォーーーーン!!!!
クーズイルの半分はみ出したお尻に、思い切り鉄パイプをぶち当てた!!
――
「あぁ~~!スッキリしたぁ~~!!」
ぼふん!と、ネグリジェでベッドに飛び込む。
その後の行事が上の空になるほど、全身が清々しさに満ちているわ!
「おじょ、陛下!さすがでした!あんっなに酷い目にあったんです!あと10発や20発くらいやっちゃってもいいのにお嬢様は優しすぎです!」
エイヤア!とわたくしの鉄パイプを振るミュウ。
「ふふ、ありがとう。使い物にならなくなったら困るもの、これでいいのよ」
「ツカイモノ?」
「アレは持ち帰って鉱山にぶち込――お仕事をしてもらうの。いままで皆を困らせた分、一生懸命働いてもらいましょう」
「なるほど~!バリバリ頑張ってもらわないとですね!」
さすがお嬢様!と今度は掘削の動作をするミュウ。
わたくしは晴れ晴れした気分で目を閉じた。
やっと一人目をシバキました!
王子尻バットまで、あと3話です。ぜひお付き合いください!
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