4話 冗談でこんなところまで来ませんわ
――バタン!!!!
サリスト王が臣下用の大扉を蹴り開けると、宰相や衛士がぎょっとして振り向いた。
「陛下。わたくしの側近のみ、同行をご許可いただけますか?」
「……許可する。他は認めぬ。――パズウェル、呼んでこい!」
慌てて奥に向かうパズウェル。
控室から、ミュウとグリース、そして近衛の騎士たちが不思議そうに現れた。
ミュウ!頬がパンパンよ!!
「ほじょーさ、ごっくん、じゃなくて陛下!レオパトのケーキは甘くてグワーっとした匂いのジャムが「いくわよ」はい?」
皆は慌ててわたくしの後ろに並んだ。
サリストは大声で馬車を命じ、パズウェルと宰相シシンを筆頭に周囲はバタバタと駆け回る。
「クーズイル殿が滞在する離宮へ向かう。先触れぇ?いらぬ!新王によるサプライズだ!」
見事にブチギレているわねぇ。
突然のサリスト王登場と、クーズイルが離宮に居ることを知らされて隊列が乱れる燕の近衛達。対して、梟は淡々とした様子だ。
……お父様から一体何を吹き込まれたのやら。
「ディア陛下」
グリースがハンカチでわたくしの涙を拭った。そのまま、周りに届かぬよう小声で問う。
「……お前さん、今度は王様を脅したのか?」
「あら、『真相』をお伝えしたまでよ。アラスン様のお陰で話が早かったわ」
「あー……なるほど。そういうことか」
熊は指示出しをしている彼を一瞥して、小さく舌打ちをした。
すっかりいつもの調子を取り戻したようでなにより。
(それにしてもサリスト王が物分かりのよい方で助かったわ)
公式の場で『紛失した国宝が、おたくの国の中古屋に売られていましたわ』なんて、恥ずかしくて言いたくなかったもの。
――
超特急で爆走した馬車は瞬く間に目的地へ着いた。
その絢爛たるや。
「……こりゃまた、ずいぶん派手な建物だな」
「そうね。他人に多大な苦労を押し付けておいて良いご身分だわ」
扉を開いたのは見知らぬ騎士。……パズウェルはどこにいったのかしら?
グリースの手を借りて、金色の離宮の前に下り立つ。
周囲を回しても、彼の姿はない。
失言のせいかしら。――なんにせよよかったわ。
あれだけキラキラとした瞳で見つめる人が居たら、鉄パイプを振るいづらいから。
――
サリスト王と向かった応接室前。
わたくし達は扉の陰に隠れ、彼が先んじて入室する。
「やぁやぁ、サリスト国王陛下!ご足労ありがとうございます!息子が会いに来てくれたのですな」
「ああ、ひと月ぶりか。クーズイル殿もご健勝でなにより。ロンディネ国新王がはるばるそなたに会いに来てくれてな。先触れもなく失礼した」
「なんの。ゴーミル、ゴーミルや!父に立派になった姿を見せておくれ」
ゴーミルが王になったと全く疑っていない。
立派なご息子は現在逃走中よ?
わたくしがゆっくりと扉をくぐると、顔立ちだけは美しい豚――クーズイルは悲鳴をあげて尻もちをついた。
「……ヒェ!?ななななぜここに処刑したはずのディア・ヴィルシュが!?ゆ、幽霊!?」
不穏な言葉にサリスト王からの視線を感じるけれど、黙殺する。
「わたくし、ロンディネ王国王、ディア・ヴィルシュでございます……前王にあらせられますクーズイル・ガ・センパーンダ上王にご挨拶に伺いました」
「はぁ!?お前が王だと!?なんのジョークであるか!……ゴーミルは!?ゴーミルはどうなったのだ!」
「ゴーミル卿は国の今後を憂い、わたくしに王冠と譲位宣言書を託し隠遁されました」
ひらりと薄汚れた紙を見せつける。
……裏の寝言を、つい目で追ってしまう不快感が凄い。
「なーーー?!」
「サリスト陛下、よろしいかしら?」
「好きにせい」
シッシッと手を振るのを確認し、グリースがバカの両手足を拘束する。
「ミュウ、グリースとアレを持って屋敷を探しなさい」
「はい!」
「それは、まさか財宝目録か?!扉の鍵はうっかり余が……あっ」
『……あっ!(お口あんぐり)』じゃないわよ!
もう!目録庫の扉を壊すの、とっても大変だったのだから!!
お読みくださってありがとうございました!
次回、クーズイル尻バット。
引き続きぜひお付き合いください。




