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【本編完結済み】鉄パイプ令嬢は逃走王子を尻バットする〜処刑直前に王冠を押し付けられたからハッタリだけで国を乗っ取りました〜  作者: 朱音ことは
後編 バカ王子に全力尻バットするわよ!

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3話 わたくしが“正しい”と言った事が“正しい”のよ

 サリスト王の追及に、短く息を飲む。


 前方ではクク、とかすかな笑い声。後方では様子を窺う気配。



「サ、サリスト陛下……そのお言葉は、どのような意味でございますか……?」

「意味もなにも。そのままだ。答えられぬか?」


 男は目を細める。


「わたくしは……ただ、必死で……苦しむ民を見捨てられず……」

「ほう。それで?どうしたというのだ?」

「……お父様、に……」


 獲物を嬲るような声に、扇が手から滑り落ちる。膝が折れ、頬に涙が一筋流れた。



「泣くのか。それでやり過ごすつもりか?アシュレイ・ヴィルシュの娘とは思えぬな」

「ご、ごめんなさい。わたくし……」



 その時、パズウェルが庇うようにサリスト王との間に立ちふさがった。



「――()()!これ以上このお方をいじめなさるな!」

「アラスン、様……?」

「パズウェル、下がれ」

「彼女が何をしたというか!?民や被災者を救うべく献身を尽くした!それだけではございませぬか!」

「パズウェル」


「彼女を利用したのはヴィルシュ侯爵家!ディア陛下を簒奪の罪で責めるのは間違っております!」



 ――()()()()



 彼の後ろからそっとサリストを覗くと、苦虫を嚙み潰したような顔をしている。……身内の『爆弾』って、タチが悪いわよね?



「……あぁ、ありがとうございます、アラスン、いえ()()()()()殿()()……ですが、陛下がわたくしを疑うのは当然のことなのです」


 震える手でパズウェルの式服の裾を握る。

 彼は腰を下ろし、手を力強く握った。


「私は貴女の潔白を信じております。慈悲深い陛下が簒奪など卑劣な行いをするはずがない!」

「パズウェル殿下……」



 サリスト王の眉間の皺が深まる。あら、年相応の渋みが出てきたじゃない。



 わたくしはパズウェルに向かって涙を浮かべたまま儚く微笑み、ゆっくりとサリスト王へ向き直した。そっと、胸元――コルセットの隙間から一枚の紙を取り出す。



「……サリスト国王陛下。取り乱してしまい大変失礼いたしました。わたくしは確かに『譲位宣言書』により王位を賜りました。……どうか、お検めを」



 膝をつき、震える手で差し出したそれを、王は自ら手に取り――二度見した。



「……燕の印、だと?……しかも……このミミズがのたくった様な絶妙に読みづらい字は、間違いなく()()()()()()()()だ。なにが……一体どうなっておる」



 困惑する王に、わたくしは『例の真相』をうちあける。彼らの顔には「んなわきゃねーだろ、あのゴーミルだぞ?」と書いてあるけれど……口には出せない。



 裏に書かれた寝言――シャワーを浴びたこの俺は水も滴る以下略――がチラチラ目に飛び込む不快さを隠し、サリストから宣言書を受け取る。


 彼らに絶対に見えないように畳んで懐に隠した後、ぽつりと呟く。



「……わたくしが最初にレオパト王国に訪問した理由は、実はもう一つございます。国璽が、この譲位宣言書を作成以降消えてしまったのです」



 謁見の間の空気が、凍った。



 ――



「――戯言はよさぬか!国璽だぞ!?命よりも重い、国を国たらしめる証が……消えただと!?……あーー!……記録官!()ね。記録は燃やせ。すぐにだ!」


 記録官は目の前の燭台で紙を燃やし、転がるように退室した。王はさらさらの髪をぐしゃりと握り、パズウェルは真っ青な顔でわたくしを見つめている。



 ああ、わかる!わかるわ、その絶望感!ひと月前のわたくしもそうだったもの!

 何故かとっても胸が弾むわ!



「ロンディネは一体どうなっておる!?意味がわからぬ!そのようなバカげた……バカ……まさか」


 ギョッとし、気づいてはならないことに気づいてしまったような面持ちでこちらを凝視する。――大当たり(ビンゴ)よ。


 わたくしは膝をついたまま、静かに俯いた。



「――併せて紛失した国宝も探しております」

「ディア女王陛下!それは、クーズイル様が略だ「パァズウェーール!頼む!黙ってくれ!!」……はい」



 パズウェルは口をつぐみ、立ち上がって王の後ろに下がった。

 父親は、長い黒髪を掻き上げて「まったく……この子は誰に似たんだか」とぼやく。



 あなたじゃなくて?よく見たらお顔がそっくりよ。



「『紛失』したのだな?」

「『はい』。とても困っております。個人印ではどうしても限界がありますもの。……すぐに見つかれば良いのですけれど」


 じわりと涙を浮かべる。


「もし見つからなければ、諸外国にも『協力』を仰がねば。……ああ、自国の恥を公表するなんて、国民の皆様になんとお詫びをすればよいのでしょう……」



 褐色の王は、はぁーーーーと天を仰いだ。

 長い長い溜め息が終え、頭を振った彼は臣下門へずんずんと進んで行った。


「サリスト陛下?」

「父上?」


 サリストは振り返らず、苛立った口調で返す。


「行くぞ。『落し物』の在処に、心当たりがある」

お読みいただきありがとうございました!


クーズイル元国王尻バットまで後2話です!

引き続き、お付き合いください!

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