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【本編完結済み】鉄パイプ令嬢は逃走王子を尻バットする〜処刑直前に王冠を押し付けられたからハッタリだけで国を乗っ取りました〜  作者: 朱音ことは
前編 バカ王子に王冠を押し付けられたわよ!

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14話 悔いが残らない方を自分で選べ

「お嬢様!どうぞ!!」


 シーツに厳重に封印された肖像画(ゴミ)の山が6つほど運び出されて、わたくしはやっと部屋に入らせてもらえた。



 白い漆喰の壁。ああ、なんて清々しいの!



 ミュウを椅子に座らせ、テーブルに宝物庫目録を置く。

 わたくしはグリースに振り返った。


「お疲れ様、グリース。帰っていいわよ」


「なんでだよ!ほとんど俺が片付けたんだぞ!?」

「あら。本来、平民を入れて良い場所ではないのよ。仕方がないでしょう?」



 グリースがミュウの頭に手を乗せた。


「……どうせこいつのとんでもねぇ記憶力を隠したいだけだろうが。違うか?」

「私ですかぁ!?」


 まぁ、バレるわよね。緊急事態とは言え、彼には手の内を見せすぎたわ。


「『信頼』だのなんだの、耳障りの良い言葉で持ち上げやがって。結局、肝心な所は隠すんだな」


 まっすぐに、睨みつけられる。

 

「……あなたを守るためよ」

「そうやって適当に慈愛振りまいときゃ諦めると思ってる。違うか?」


 グリースは唸り、わたくしは半歩後退る。


 ……なんでこの男、急に聞き分けが悪くなっちゃったのかしら。

 

「事実だわ。――あなたの目に、アシュレイ・ヴィルシュはどう映った?余人がミュウの事を知ったとお父様が気付けば、万が一もあり得る。……だから、グリース」


 深入りしないで。

 言外で訴えると、舌打ちで返される。

 一歩。足を踏み出された。


「……なら、俺も正式に部下にしろ」


「は?」


 大男を見上げた。……何を言っているの?


「それなら消されんだろう。……第一!ここまで振り回されて、全部解決したら『はいサヨウナラ』なんて、納得できるわけねぇだろうが!」


「……!!」



 息が止まった。彼が激高するところなんて、想像もしていなかったから。


 また一歩。距離が縮まる。


 体格は大きいけれど、朴訥として警戒を生まない容姿。相手の懐に入る能力。ヒトに愛され、ヒトを愛することが出来る人。


 

 さらに、近づく。もう目の前に。足が、動かせない。



 熊のような……年の離れた兄のような、人。


 そんな男に牙をむかれ――先に折れたのは、わたくしの方だった。



「……今までどんな生活をしていたか知らないけれど、戻れないわよ」

ミュウ(こいつ)に務まるなら問題ないだろ。俺に不足があるか?」

「はぁ……外では『お前さん』でも『お嬢さん』でもなく、『お嬢様』と呼びなさい。わたくしの部下になりたいのならね!」


 熊が、ニヤリと口の端を歪めた。



「かしこまりました、()()()。……今後ともよろしく」



 差し出された大きな手を、力一杯握り返してやった。



 ――



「納得いきません!」



 椅子にちょこんと体育座りをしたミュウが頬を膨らませている。


「私の方がず~っとお役に立ってたのに、ポットでのグリースさん()メイドになるなんて、嫌です!」


 あぁ、厄介な子ばかりだわ。

『ポットで』ってなによ。『メイド』ってなによ。メイド服のグリースが紅茶を淹れている姿が脳裏に浮かんでげんなりする。


 わたくしが口を開く前に、グリースはミュウの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。


「よろしくな!ミュウ()()!」

「……せんぱい?」

「おう。だってそうだろう?」



 途端、大きな瞳がキラキラと輝き始める。



「ふふん、先輩ですから許してあげます!さ、サクサク仕事を終わらせますよ!ほら、グリースさん!先輩にお宝を視せてください!ほらほら!」


 腕まくりをしたミュウはやる気にあふれている。――わたくしもデスクにつき、目録帳を開いた。



 ――



 執務室に戻ると、メンバーは相変わらず書類と格闘していた。


「戻ったわよ。……なんだか、とても疲れたわ」



 ソファに座り込んだわたくしに、マイクがお茶を差し出した。


「お疲れ様っス!国宝なんて気ぃ使うッスよね。割ったらこえーし」

「……そうね。目録帳内全164点中、『紛失品』は13点。ほとんどが換金性が高い宝飾品よ」


 マイクが真顔になる。


「それ、もう売られてないっスか?商会(うち)のツテで調べます?」

「馬鹿を言うな。クーズイル陛下が消えて13日、ゴーミル殿下は昨日だ。さすがにそこまで愚かでは――訂正する。奴らならやりかねん。調べろ」


 口を挟んでおいて勝手に自己完結するミシェルに、全員が苦笑いを浮かべた。



「はい、2人もこれ。もうすぐ休憩時間なんで先に休んでてくださいっス」


 マイクはミュウにホットミルク、グリースには珈琲を渡す。



「あ、そういやグリース、機嫌直ったんだな。なんかいいコトあった?」


 熊がブフッと口をつけたばかりの珈琲を吹き出す。


「……わりぃ。あー、なんつぅか……勤め先が決まった……ってとこかな」



 鼻先を掻きながらボソボソ小声で答える男を見て、わたくしはくすりと笑った。

お読みいただきありがとうございました!


グリース、ブラック企業に就職。


次回、真相解明。


前編はあと3話で終了です。

引き続き、お付き合いいただけると嬉しいです!

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