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263 無謀の代償

 ――入校生たちによる夜襲から、1時間後。


 事態は落ち着きを取り戻しつつあった。

 補助教官たちによって、入校生の多くが打倒されたためである。


 防御陣地の中心部には、捕まった入校生たちが、体育座りをさせられていた。

 もちろん、手と足は縛られている。

 ただ、麻袋は被っていない。


「バスク少佐。逃げていった入校生たちも捕まえてきますか?」


 入校生たちを見下ろすアリア。


「いや、もう良いだろう。ここに集めてくれ。大した数ではないし、攻撃を続けるのは無理だ」


「了解しました」


 アリアは、すぐに行動をする。

 補助教官たちも、森に散っていった。


 数十分後には、生き残りの入校生を含め、全員の整列が完了する。

 その頃には、拘束する紐はなくなっていた。


「お前らな……たしかに、夜襲は効果あるけどよ。もうちょっと考えて動け。突撃していって、部隊の大半が死にましたでは、意味がないだろう。勇気と無謀は違うからな」


 バスクは、疲れた顔をしている。

 まさか、初日で、こうなるとは思っていなかったようだ。

 ちなみに、アリアたち補助教官も、想定外ではあった。


「ハイ!!」


 入校生は、これまた元気な声で返事をする。

 防御陣地のどこにいても聞こえそうな声量だ。


「まぁ、返事に元気があるのは良いけどな。ただ、お前たちは士官だ。元気もそうだが、ある程度、頭も使えないと困るぞ。そうでないと、お前たちについていく部下を死なせてしまうからな。自分の指揮のマズさで死んだとか、嫌だろう?」


 入校生たちは、黙って聞いている。

 各人、思うところはあるようだ。


「とりあえず、説教はこんなところにしておくか。全員、広場に移動しろ」


 バスクの指示を聞くと、入校生たちは、ゾロゾロと防御陣地から出ていった。

 その背中を、アリアたち補助教官は眺めている。


「これから、朝まで素振りですか。大変ですね」


「逆に、それだけで済んで良かったと思います。大変は大変でしょうけど、頑張ってもらうしかありません」


 アリアの言葉に、ステラは応える。

 そんな中、エドワードがふと口を開く。


「今更だが、誰か反対意見を言わなかったのかとは思う。さすがに、力押しで、なんとかなる防御陣地ではないからな」


「何人かは言ったと思いますわよ。ただ、入校生の中にも発言力に違いがありますの。声の大きい人に、引っぱられてしまったのかもしれませんわ」


「たしかに、サラの言葉は一理ある。周りが諫めても、ダメな時はあるからな。士官として、これは他人事ではないだろう。上位者の不興を買えば、自分の身が危うくなってしまう。かといって、進言しなければいけない場面はある。板挟みはにあうのは必定か」


 エドワードは、何やら難しい顔をしている。

 学級委員長三人組も、思うところはあるようだ。


(できないと言えない文化だと、結構、厳しいよな。明らかに無理があるのに、強行されてしまう。結果、予想された通り、失敗する。指示された方は、堪ったものではないよ。う~ん、中々、難しい問題だ)


 アリアは、ムムム顔になってしまっていた。






 結局、入校生たちは、防御陣地の奪取に成功をする。

 ただ、何回もやり直した末ではあったが。

 しかも、最後の攻撃で、何とかという有様であった。


 もう、防御陣地のどこに何があるのか、全て分かっている。

 何回もやっているうちに、嫌でも理解はしていたようだ。


 それでも、防御陣地の陥落は難しかった。

 防御陣地が防御陣地たる所以である。


 今、現在、何度も跳ね返された入校生たちは、嬉しそうな顔で、防御陣地の中心に整列をしていた。

 日差しは相変わらず強いが、あまり気にしてはいないようだ。

 嬉しさのほうが勝っていると言っても良い。


「よし、お前ら! 良くやったな! 最後の攻撃は、俺から見ても、良い動きをしていると思ったぞ! まぁ、それはさておき。防御陣地を占領しても油断はできない! それを、今から体験してもらう!」


 バスクはそう言った後、他の主任教官に交代をする。

 前に出て来たのは、ステラの組の主任教官だった者だ。


 イメリア森林強襲隊。

 教官になる前に所属をしていた部隊の名前だ。


 ローマルク王国防衛戦において、南部の森林地帯で暴れ回ったことで知られている。

 アリアたちが遭遇した悪辣な罠の数々を作成したのも、この部隊であった。


 今回は、色々と実演をしてくれているようだ。


 入校生たちは、指示に従って、自由に見える位置に移動していた。


 そんな入校生の眼前には、地面に落ちた剣が見える。


「はぁ……なぜ、僕が実験台にならなければいけないのだ……」


 憐れエドワード。

 ジャンケンに負けたため、実演をする役になってしまっていた。


 落ちている剣を拾おうと、歩いて近づく。

 そんな折、突如、叫び声とともに姿が消える。


「アッハッハッハ! 最高の声ですわね! さすが、エドワード! 皆を笑わせる天才ですわ!」


 エレノアは、腹を抱えて笑っていた。

 入校生の何人かも、我慢ができなかったのか、クスクス笑っている。


(落ちている物を拾うのは、本当に危ないよな。何が仕掛けられているか分からないし。敵がいないとはいえ、油断は禁物だ)


 アリアの眼には、穴から這い出て来るエドワードが見えていた。

 今回は、穴の底に仕掛けがあったワケではない。


 ただ、尖った槍が設置されていたり、不衛生な状況になっている場合がある。

 殺したり、病気にさせるためであった。


 勝っても油断は禁物である。


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