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万里幻譚  作者: ケルビン
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第5章:夜闇に響く泣き声

「なあ、カラム。あと二人、仲間を探してみないか?」


シラスは生い茂る茂みをかき分けながら、後ろを歩く友人に尋ねた。


カラムは少し考え込んだ。いつものふざけた表情とは違い、今回は本当に真剣にその問いを検討しているようだった。頭上で幾重にも重なる木々の枝を見上げ、それからシラスへと視線を戻す。


「いや。人数が増えれば、その分だけ戦術も複雑になる。俺たち二人なら、もう十分に息が合っているだろ!」


「それもそうだな」


シラスはうなずき、彼の説明に完全に納得したようだった。


実際のところ、二人とも理解していた。このような危険な試験でチームを組むということは、単に一緒に戦う仲間を増やすことではない。メンバー一人ひとりに異なる性格、得意分野、そして考え方がある。大人数のチームなら多様な能力を活用できる一方、緊急事態で判断を下す際に意見が食い違う可能性も高くなる。


シラスとカラムに関して言えば、少なくとも互いのことはかなり理解していた。


シラスは慎重で観察力に優れ、常に複数の予備策を用意する傾向がある。対するカラムは柔軟で、特に念動術を使う際の即応力に優れていた。時折、少し気まぐれな行動を取ることもあるが、シラスは危険な状況でカラムが仲間を見捨てることはないと信じていた。


その一点だけでも、彼を仲間に選ぶ理由としては十分だった。


「じゃあ、俺たち二人だけでいこう」カラムは大きく伸びをした。「戦闘になったら、攻撃は俺に任せろ。お前は後ろで応援していればいい」


シラスは横目で彼を見た。


「いい考えだな。じゃあ、お前の法力が尽きたら、今度は俺が前に立って応援してやるよ」


「……」


カラムは数秒間黙り込んだ。


「分かった。仕事は公平に分担しよう」


「賢明な判断だ」


二人はそのまま森の奥へと進んでいった。


試験が始まる前、彼らはクラウンフェルの入口付近に設置されていた大きな地図を確認する時間を取っていた。地図には森の隅々まで正確に描かれているわけではなかったが、いくつかの目立った場所が記されていた。その中には、銀の滝と呼ばれる滝もあった。


彼らが選んだルートでは、そこへたどり着くまでに現在の森を横断する必要がある。


シラス自身、なぜその場所に立ち寄る価値があると感じたのかは分からなかった。おそらく、滝の周辺には水源があることが多く、水は見知らぬ森で生き延びるうえで欠かせないものだからだろう。


あるいは単純に、その美しい名前の場所を自分の目で見てみたかっただけなのかもしれない。


いずれにせよ、まだ時間には余裕があった。


「あ、忘れてた。ちょっと待ってくれ」


シラスは足を止め、すぐにスーツケースを開けた。そこから朱墨の瓶、符筆、そして数枚の黄色い紙を取り出す。


彼は朱墨を使い、黄色い紙に何かを書き始めた。カラムには、シラスが筆に法力を込めているのが感じ取れた。


カラムはシラスが何枚もの紙に文字を書き込んでいく様子を興味深そうに見つめていた。しばらくすると、シラスは五枚ほどの黄色い紙を彼に手渡した。


「これは符と呼ばれるものだ」


シラスは一枚ずつ指し示しながら説明した。


「これは護身符。そこまで強力じゃないが、魔法攻撃や物理攻撃を一度防ぐのに役立つ。それから、こっちは雷法符だ。戦闘中に法力が尽きてしまったら、相手に向かって投げればいい」


「おお、面白そうだな! 本当に面白い!」


「父さんが教えてくれたんだ。でも、父さんはしばらく教えただけで、その後は……」


シラスの目に一瞬、悲しげな色が浮かんだ。気まずい空気を感じ取ったカラムは、すぐに話題を変えた。


「おいおい、俺の法力を甘く見るなよ! 海の水みたいに有り余っているんだからな!」


試験開始から最初の三十分も、すでに過ぎていた。しかし、今のところ二人はほかの学生と一人も遭遇していなかった。


森は奇妙なほど静かだった。


時折、高い木々の梢から鳥の鳴き声が聞こえてくる。厚い葉の隙間から差し込む陽光が、地面にまだら模様の光を落としていた。足元には湿った腐葉土が広がり、空気には土と苔のほのかな香りが漂っている。


いつでも失格になる可能性がある試験に参加しているのでなければ、ここは散歩にうってつけの場所だっただろう。


「なあ、変だと思わないか?」シラスが突然尋ねた。


道端の小石を蹴っていたカラムは、声を聞いて顔を上げた。


「何が変なんだ?」


「かなり長い時間歩いているのに、まだ誰とも会っていない」


「別におかしくないだろ。三千人がこんなに広い山脈に入ったんだ。全員が同じ道を選ぶわけじゃない」


カラムは肩をすくめた。


「ほかの連中は最初から別の方向へ進んだのかもしれない。あるいは、どこかで戦闘に夢中になっているとか」


「そうだといいな」


「そうだといい?」


「ああ。森に入って早々、数点を稼ぐためだけに大勢と戦うのはごめんだからな」


カラムは吹き出した。


「まるで、平穏な余生を送りたい老人みたいなことを言うな」


シラスは反論しなかった。


ただ、道の脇にある柔らかな土の上へと視線を落とし、かすかに残る足跡を観察した。その跡は不鮮明だったが、何かの生き物が先にここを通ったように見える。


シラスはその場所を記憶に留め、再び歩き始めた。


彼にとって、今の平穏に不満はなかった。


しかし、何千人もの人間が自分の実力を証明しようとしている試験において、平穏というものは時として、最も警戒心を失わせるものでもある。


---


太陽が次第に木々の向こうへと沈んでいった。


森の中の光は淡い黄色から濃い橙色へと変わり、やがて木々の間に広がる暗闇へとゆっくり沈んでいく。鳥の声も少なくなり、代わりに草むらから虫たちの鳴き声が聞こえ始めた。


銀の滝はまだ見つからなかった。


カラムは葉の隙間から空を見上げ、それから苦悶の表情で自分の足元を見つめた。


「ここで一つ、宣言させてもらう」


前を歩いていたシラスは、振り返らずに答えた。


「腹が減って死にそうだと宣言するつもりなら、信じないぞ」


「違う。今回の試験を考えた奴は、間違いなく人類の足に恨みでもあるに違いない」


「念動術で自分の体を浮かせればいいだろ」


カラムの目がぱっと輝いた。


「それは名案だ!」


彼が術を使おうとした瞬間、シラスが続けた。


「ただし、最初の敵に遭遇する前に法力が尽きたら、お前の墓碑にそのことを書いてやる」


カラムはゆっくりと手を下ろした。


「時々、本気でどうしてお前と友達になったのか分からなくなるよ」


「たぶん、お前の話を聞いてくれる人間が俺しかいないからだろう」


「……ひどい答えだな」


文句を言いながらも、カラムはようやく休憩に適した場所を見つけた。


それは斜面の途中にある洞窟だった。入口の一部は低い茂みと蔓に覆われている。二人がそれほど身をかがめなくても入れるほどの広さがあった。外から覗くと、暗闇が奥深くまで続いており、実際にどれほど広い洞窟なのかは分からない。


カラムはすぐに近づき、入口の枝を払いながら中を覗き込んだ。


「おっ、洞窟があるぞ! 今夜はここで休もう!」


シラスは周囲を一通り観察した。


「奥まで入るなよ」


「まだ入ってもいないだろ」


「でも、今にも入っていきそうな顔をしている」


カラムは振り返り、まるで不当な疑いをかけられたかのように両手を上げた。


「中にお宝があるか確認したいだけだ!」


「この試験で洞窟の中に待ち構えている可能性が高いのは、お宝よりも邪魔されたくない生き物だろうな」


「お前って本当に、どんな楽しいことでも生存講義に変えてしまうな」


「どういたしまして」


「褒めてないぞ!」


それでも二人は、洞窟の入口に近い場所だけを休憩場所として使うことにした。中に何がいるか分からない以上、日が暮れた今、危険を冒す理由はなかった。


カラムはスーツケースを地面に置き、蓋を開けてパンと干し肉、それに水筒を取り出した。


シラスは彼のスーツケースを見て、思わず尋ねた。


「一体どれだけ荷物を持ってきたんだ?」


「生き延びるのに十分な量さ」


「そうじゃなくて、どれくらいだ?」


「そんなことは重要じゃない」


「中に家まで入れてきたんじゃないだろうな?」


カラムは真剣に考え込んだ。


「もし家をスーツケースに詰め込めるなら、午後中ずっと歩く必要なんてなかっただろうな」


シラスは吹き出し、続いて自分の荷物から必要なものをいくつか取り出した。


しかし、すぐに食事を始める代わりに、彼は立ち上がり、服についた埃を払いながら外へ出ていった。


パンをかじっていたカラムは、不思議そうにその後ろ姿を見た。


「どこへ行くんだ?」


「周囲を確認してくる」


「遠くへ行くなよ。この森の中でお前を探し回るのはごめんだからな」


シラスは手を軽く上げて返事をし、そのまま歩いていった。


---


洞窟の入口付近は比較的広く、苔に覆われた岩や古い大木に囲まれていた。


シラスはゆっくりと歩き、ときおり立ち止まって地面や近くの茂みを観察した。森の奥深くまで探索するつもりはなかった。今回の目的は、彼らが選んだ場所が本当に一晩を過ごすのに安全かどうかを確かめることだけだった。


しばらくすると、彼はポケットから小さな鈴を取り出した。


鈴の本体は暗い色の金属で作られ、その表面には古風な紋様が刻まれている。持ち手には、ところどころ擦り切れた赤い紐が巻かれていた。


これは「法鈴」だった。


シラスは持ち手を握り、手首を軽く振った。


チリン……


澄んだ鈴の音が、静まり返った森の中に響いた。


音自体は大きくない。しかし、その響きは普通の人間の耳に届く範囲を超えて遠くまで伝わっていくようだった。最初の音が鳴り終わると、シラスは目を閉じ、周囲に広がっていく振動に意識を集中させた。


もう一度、鈴が鳴る。


チリン……


今度は、木々の間で目に見えない気の流れが動いているように感じられた。完全に静まり返った場所もあれば、感覚が乱される地点もある。まるで穏やかな水面に突然、不自然な波紋が広がったかのようだった。


シラスはゆっくりと目を開いた。


もう一度だけ鈴を鳴らし、それから法鈴をポケットにしまった。


この近くに何かがいる。


だが、それが何なのかまでは正確に判断できなかった。


人間か?


魔法生物か?


それとも、まったく別の何かか?


結論を出すには情報が足りなかった。しかし、少なくともこの異常な感覚を軽視すべきではないことは分かっていた。


シラスはすぐに洞窟へ戻った。


カラムはちょうど食事を終え、手についたパン屑を布で拭っていた。シラスの表情を見ると、すぐに背筋を伸ばした。


「どうした? ずいぶん緊張した顔をしているな」


シラスは洞窟に入り、声を低くした。


「法鈴がこの周辺でいくつかの異常な気の揺らぎを感知した。人間なのか、それとも別の生き物なのかは分からないが、用心したほうがいい」


カラムの笑みが消えた。


「危険なのか?」


「まだ分からない。法鈴は周囲の変化を感じ取ることはできるが、その原因が何なのかまでは教えてくれない」


シラスは一度言葉を切り、黄色い符を一枚取り出した。


「それと、洞窟の入口にはすでに迷踪符を仕掛けておいた」


カラムはその符を見てから、外へと視線を向けた。


「いつの間にそんなことを?」


「周囲を確認している間にだ」


「それにはどんな効果があるんだ?」


「通りかかった者の認識を乱し、この洞窟の入口に注意を向けにくくする。これで、ほかの学生が簡単に俺たちを見つけることはないはずだ」


シラスは符をしまった。


「ただし、絶対的な結界ではない。俺たちより強い法力を持つ魔術師や、特殊な感知能力を持つ者が相手なら、見破られる可能性はある」


カラムはしばらく彼を見つめ、それから突然笑い出した。


「いやあ、徹底しているな! まさに守りの王様だ!」


シラスは眉を上げた。


「守りの王様?」


「そうさ! 誓って言うが、いつか皇帝に国境地帯へ送り込まれたら、お前は史上最も有名な国境守備の大魔術師になるぞ!」


シラスも思わず笑ってしまった。


「ははは、もっと褒めてくれ。悪い気はしないからな!」


「その頃には、敵は城壁を見ることすらできないうちに、お前の張り巡らせた結界に阻まれるんだ。三歩進めば符を踏み、五歩進めば陣法にぶつかる!」


「それはそれで、なかなか面白そうだな」


「否定しないのかよ?」


「そんな将来性のある未来を、どうして否定する必要がある?」


カラムは額を押さえた。


「もうお前には敵わないよ」


洞窟の中の空気は、次第に和やかになっていった。二人は会話を続け、外で起きている異常な揺らぎについて、できるだけ考えないようにしていた。


しかし、その静寂は長くは続かなかった。


突然、外から声が聞こえてきた。


「たすけ……助けて……」


少女の声だった。


か細く途切れ途切れで、苦痛と絶望がにじんでいる。その声を聞けば、誰であっても簡単に聞き流すことはできないだろう。


シラスはすぐに笑うのをやめた。


その目つきが、ほとんど瞬時に変わる。


声はすぐ近くから聞こえていた。


洞窟の外にある茂みの向こうから、すすり泣く音まではっきりと聞こえるほど近い。


「お願い……誰かいないの……?」


カラムは勢いよく立ち上がった。


「誰かが助けを求めている!」


外へ飛び出そうとした彼を、シラスがすぐに腕で制した。


「待て」


カラムは振り返り、理解できないといった表情で友人を見た。


「何だよ?」


「この状況がおかしいと思わないのか?」


「外で誰かが助けを求めているんだぞ、シラス!」


「分かっている」


シラスは洞窟の入口を見つめ、険しい表情を浮かべた。


「だが、法鈴はついさっき、この周辺で異常な揺らぎを感知した。そこへ、日が暮れた途端に誰かが現れたんだ。しかも、ちょうど俺たちのすぐ近くにな」


「本当に怪我をしているのかもしれないだろ?」


「だからこそ、慎重になる必要がある」


カラムは眉をひそめた。彼は決して思いやりのない人間ではない。しかし、このような試験では、目の前に現れたものすべてを信用していいわけではないことも理解していた。


それでも、外から再び泣き声が聞こえてきた。


「お願い……もう歩けないの……」


カラムは歯を食いしばり、シラスを振り返った。


「分かった。俺が外を確認してくる」


シラスはまだ彼の腕を離さなかった。


「お前、正気か?」


「心配するな! 護身符だってあるだろ? 俺はそんな簡単にやられたりしないさ」


「死角から攻撃される可能性もある。護身符だって、あらゆる危険からお前を守ってくれるわけじゃない」


「だったら、せめて二人で行こう!」


カラムはシラスを見つめ、それから再び外へと目を向けた。


しばらく黙り込んだ後、彼は自信ありげな笑みを浮かべた。


「いや、今回は俺に任せてくれ。いろいろと道具も持っているからな。安心しろよ。俺はそう簡単に死んだりしない!」


シラスは目の前の友人を見つめた。今にも彼を気絶させて、洞窟の中へ引きずり戻すべきかどうか、本気で考えているようだった。


しかし、カラムは素早く彼の腕をすり抜けた。


「心配するな! すぐ戻ってくる!」


「カラム!」


彼は片手を振るだけで返事をし、そのまま茂みの向こうへと姿を消した。


シラスは洞窟の中に立ち尽くし、顔を険しくした。


「まったく、あいつは……」


彼はすぐにポケットから符を一枚取り出し、二本の指で強く挟んだ。そして周囲の揺らぎを感じ取ろうと意識を集中させた。


もしカラムが本当に危険に陥ったなら、今度こそためらうつもりはなかった。


---


カラムは洞窟の入口付近から離れた。


声のする方向へ進みながら、周囲の茂みや岩陰を慎重に観察する。すでに夜が森を覆い尽くし、あらゆるものがぼんやりとしか見えなくなっていた。夕暮れの最後の光は、遠くの木々の頂にわずかに残るだけだった。


「誰かいるのか?」カラムは声を上げた。「助けを求める声が聞こえたぞ!」


すすり泣く声が返ってきた。


「ここ……ここにいるよ……」


彼は大きな茂みを回り込んだ。


そして、その先に一人の少女が木の根元でうずくまっているのが見えた。


彼女は両足を抱えるようにして座り込み、長い髪が顔の一部を覆っていた。小さな肩は何度も震え、か細く途切れる声からは、何か恐ろしい出来事に遭遇したことがうかがえた。


足音に気づいた少女は、ゆっくりと顔を上げた。


涙に濡れた瞳が、絶望に満ちた様子でカラムを見つめる。


「そこの人……お願い、助けて……」


その声は、先ほどよりもさらに弱々しかった。


カラムは彼女から数歩離れた場所で立ち止まった。


一瞬、何を言えばいいのか分からなくなった。


夜の森で怪我を負い、一人きりで助けを求める少女。しかも、ここは入学試験の最中だ。ぱっと見ただけなら、実に痛ましい状況だった。


少女は彼に向かって手を伸ばした。


「お願い……足が痛くて……もう歩けないの……」


カラムは小さく息を吐いた。


「分かった。助けてやるよ……」


その言葉が最後まで続く前に、彼は突然手を掲げた。


ヒュッ!


周囲に散らばっていたいくつもの大きな岩が揺れ始め、次の瞬間、念動術によって宙へと舞い上がった。


岩は少女に向かって飛んでいったわけではない。


代わりに、鋭い風切り音を立てながら、彼女の周囲にある草むらや暗がりへと叩きつけられた。


ドン! ドン! ドン!


土と石が辺り一面に飛び散る。


直後、夜の静寂を切り裂くような悲鳴が響いた。


「きゃあああああっ!」


その声は、先ほどのか細い泣き声とはまるで違っていた。激しく歪み、怒りと動揺をあらわにした、正体を見破られた何かの叫びだった。


悲鳴が響いた瞬間、カラムはすでに動いていた。


少女はまだ何が起きたのか理解できず、呆然としている。


カラムは彼女に反応する隙を与えなかった。


少女の首にかかっていた護身用のペンダントをつかみ、勢いよく引きちぎる。


パキッ!


銀色の光が少女の身体を包み込んだ。ほんの一瞬で、その姿は光の中に覆われ、完全に消え去った。


踏み荒らされた草むらの中には、カラムだけが残された。


森は再び静寂に包まれた。


カラムは手の中に残ったペンダントを見下ろし、ゆっくりと口元をつり上げた。


「一点。簡単なもんだな!」


彼は袖についた埃を払い、洞窟の方向へと悠々と振り返った。


「はっ、女の子が好きだからって、簡単に騙されるわけじゃないんだよ!」


カラムは心底満足そうに笑った。


「へへっ!」


しかし、彼はすぐに洞窟へ戻るつもりはなかった。身体の向きを変え、近くの茂みを通り抜けようとしたそのとき、不意に足を止めた。


茂みの奥から、かすかな物音が聞こえたのだ。


ガサッ……


カラムはゆっくりと手を下ろした。口元に浮かんでいた笑みが、次第に消えていく。


彼は目の前で揺れる葉の一つひとつをじっと見つめた。


「……誰だ?」


茂みが再び揺れた。


今度は、先ほどよりもはっきりと音が聞こえる。


ガサッ……


カラムはわずかに身体を傾け、一歩踏み出そうとした。


そのとき、暗闇の奥から奇妙な音が突然響いた。


パキッ。


第5章・完

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