第3章:港町を発つ列車
二週間は、シラスが思っていたよりもずっと早く過ぎ去った。
出発を控えた最後の日々も、彼はほとんど毎日のようにオズウィンの店へ通う習慣を続けていた。温かい夕食を食べるためだけの日もあれば、遠い土地についての話をもう少し聞くための日もあった。あるいは、特に理由もなく、ただ慣れ親しんだ空間でもう少しだけ過ごしていたいと思うこともあった。
オズウィンは、シラスが緊張しているかどうかを尋ねることはなかった。ただ、ときおり物思わしげな眼差しを向け、まるでこれからの旅など何も心配することではないかのように、テーブルに料理をもう一皿置いてくれるだけだった。
しかし、シラスには分かっていた。
彼が理解していることを。
いつか、人は自分が育った場所を離れなければならない。金のために旅立つ者もいれば、名声を求めて去る者もいる。そして、ほかに選択肢がないために出ていく者もいる。
シラスの場合、アウレリアン・ポートを離れる理由は、一枚の列車の切符と、ずっしりと重いスーツケース、そして自分でもまだはっきりと思い描くことのできない未来だった。
ただ一つ、最後の日々の間、カラムがまったく姿を見せなかったことだけは気がかりだった。
最初、シラスは友人が荷造りで忙しいのだろうと思っていた。カラムは新しい魔術の実験に夢中になるあまり、時間を忘れてしまうような人間だ。数日間姿を消したところで、特に珍しいことではなかった。
しかし、三日が過ぎた。
続いて五日が過ぎた。
そして出発当日の朝になっても、シラスは親友から何の連絡も受け取っていなかった。
カラムの家まで訪ねていこうとも考えたが、次々と準備に追われ、その考えは先延ばしになってしまった。それに、カラムは駅で会うと約束していた。あの馬鹿の性格を考えれば、出発時刻ぎりぎりまで寝坊したとしても、何とかして姿を現すだろう。
少なくとも、シラスはそう願っていた。
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その日の午後、夕暮れの光がアウレリアン・ポートを柔らかな橙色に染め上げていた。
最後の陽光を受けて海面がきらめく。港に停泊していた商船は次々と帆を張り、船乗りたちの呼び声が、船体に打ち寄せる波音の中に響いていた。通り沿いの店からは焼きたてのパンや調理された海産物の香りが漂い、いつもの潮の匂いと混ざり合っていた。
アウレリアン・ポートは、今日も変わらず活気に満ちていた。
地元の学生たちが故郷を離れ、帝都へ向かう日だというのに、誰も特に気に留めている様子はなかった。
シラスは鏡の前に立ち、最後にもう一度、襟元を整えた。
明るい色のシャツの上に長袖のスウェットを重ね、暗色のズボンと、朝からきれいに磨いておいた靴を履いている。髪も普段よりきちんと整えていたが、それでも何本かの毛束が頑固に額へと垂れ下がっていた。
足元には大きなスーツケースが置かれていた。
それを見た者がいれば、シラスが何か月にも及ぶ航海に出る準備をしているのだと思ったかもしれない。中には衣服、書籍、書類、身の回りの品、そして大学生活の四年間で必要になるだろうと彼が考えたものが詰め込まれていた。
言い換えれば、彼の財産のほとんどすべてが、そのスーツケースの中に収まっていた。
シラスはしゃがみ込み、最後にもう一度、留め具を確認した。それから上着のポケットから列車の切符を取り出した。
切符には、整然と次の文字が印刷されていた。
ロイヤル・アウレリアン駅 ― ヴァルドレン
列車の出発は夜の予定で、乗車時刻まではまだ数時間あった。
彼は切符をしまい、スーツケースを引いて家を出ると、扉に鍵をかけた。
立ち去る前に、シラスは振り返り、アンカー通り七番地の家をもう一度見つめた。
二階建ての木造住宅は、夕暮れの光の下で静かに佇んでいた。古びた番地札。玄関の扉には、何年も前に父がシュアンタールから持ち帰った「禄」の文字が貼られている。玄関先に置かれたいくつかの植木鉢は、以前ほど丁寧に世話をされていないにもかかわらず、今も青々とした葉を茂らせていた。
彼は人生のほとんどを、この家で過ごしてきた。
二階の小さな部屋では、夜遅くまで本を読んだこともあった。窓辺に座り、屋根に落ちる雨音を聞いたこともあった。長い旅に出た両親が帰ってくるのを待ち続けたこともあった。
それらの思い出は、今も家の隅々にそのまま残されていた。たとえ、それを作り上げた人々が、もうそこにはいなくとも。
シラスは数秒間、その場に立ち尽くした。
そして、深く息を吸い込み、スーツケースを引いて玄関の階段を下りた。
もう、行くべきときだった。
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ロイヤル・アウレリアン駅は、カスタムズ通り沿いのグランド・キーズ地区に位置していた。街へと続く商業道路と、活気に満ちた港湾区域との境目にあたる場所である。
ここはアウレリアン・コースト州最大の鉄道拠点であり、沿岸各地から集まった貨物、商人、旅客を乗せた列車が、ノーマン帝国各地へ向かう前に集結する場所だった。
地元の人々にとって、駅は決して珍しい場所ではない。
貨物を積んだ鉄道列車は頻繁にここを通過し、港から内陸の都市へと商品を運んでいく。シラスも、オズウィンの店で食事をしているときに、遠くから列車の汽笛を耳にすることがあった。
しかし、今日の汽笛は彼にとってまったく違う意味を持っていた。
今回、彼は線路脇に立って列車を見送る側ではない。
そのうちの一両に、自分が乗り込むのだ。
駅へ向かう途中、シラスはカラムの家の前を通りかかった。
彼は足を止めた。
その家は低い柵の向こうにあり、玄関先にはいくつかの花鉢がきちんと並べられていた。普段なら、この時間にはカラムが自室の窓を大きく開け放ち、古い音楽再生機から流れる音楽を近所中に響かせているはずだった。
そうでなければ、少なくとも玄関先に立ち、何かを食べながら魔術実験の失敗について文句を言っているだろう。
しかし、今日は家の中が静まり返っていた。
シラスは門に手をかけ、庭へ入ると扉を叩いた。
コン! コン! コン!
返事はなかった。
「カラム?」
しばらく待ってから、もう一度叩いてみる。
それでも誰も出てこない。
シラスはわずかに眉をひそめ、横へ移動して窓から中を覗こうとした。室内は真っ暗で、明かり一つ見当たらない。カーテンも閉め切られており、中の様子はよく分からなかった。
彼はさらに数秒間そこに立っていたが、結局ため息をつくしかなかった。
「本当に遅刻したら、覚悟しておけよ」
そう言い残し、シラスは再び歩き始めた。
そのとき彼は知らなかった。
ほんの数時間後、自分を心配させていた張本人が、まるで長い休暇を終えたばかりのような態度で現れることになるとは。
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駅へと続く道は、シラスがよく知っている街並みを通り抜けていた。
どの石畳がひび割れているのか、どの街角に新鮮な魚を売る店があるのか、どのパン屋が一番早く開店するのか、そして大雨が降るたびにどの細い路地が水浸しになるのか。
彼はそのすべてを知っていた。
それらは観光案内書に記すほどのものではない。しかし、シラスの日常を形作る一部だった。
アウレリアン・ポートは帝国最大の都市ではないし、ヴァルドレンのような壮麗な宮殿や広大な大通りを持っているわけでもない。
ここの家々は、古びた木材と灰色の石の色をまとい、通りにはいつもほのかな潮の香りが漂っていた。
それでも、この街こそがシラスを育ててくれた場所だった。
生まれたときからこの空気を吸い、長い夜には海岸に打ち寄せる波の音を聞き、夜明けとともに船が沖へ出ていく光景を見慣れていた。
ここで父は、東方から訪れる商人たちと仕事をしていた。母はホワイトクリフ港での仕事を終えて帰宅し、潮の香りと航海の話を持ち帰ってきた。そしてここでシラスはカラムと出会い、オズウィンの話を聞き、今になって初めて、その価値に気づくことになる穏やかな日々を過ごしてきた。
いつか戻ってきたとき、この街がどのように変わっているのか、彼には分からなかった。
古い店がなくなっているかもしれない。新しい家々が建ち並んでいるかもしれない。商業の発展に合わせて、見慣れた道が拡張されている可能性もある。
あるいは、すべてが何も変わらず、変わっているのは自分自身だけなのかもしれない。
シラスはスーツケースの持ち手を軽く握り直した。
肩には荷物。
ポケットには列車の切符。
そして心の中には、後ろから引いているスーツケースよりも重い何かがあった。
彼は自分の未来を、この旅に賭けようとしていた。
選考試験を突破できれば、ノーマンで最も名高い学院の一つで学ぶ機会を得られる。もし失敗すれば、アウレリアン・ポートへ戻り、別の道を探さなければならないかもしれない。
しかし、どんな結果になろうとも、今日、列車に乗らなかったらどうなっていたのかと、後になって自分に問い続けることだけは避けたかった。
家を出る前、シラスはオズウィンの店に立ち寄り、ある頼み事をしていた。
両親の遺影の前に、ときどき線香をあげてほしいというものだった。
オズウィンはしばらく黙っていたが、やがてうなずいた。
「心配するな。あの場所は私が見ておく」
たった一言の簡単な約束だったが、それだけでシラスは安心することができた。
故郷にあるすべてを持っていくことはできない。
たとえ手放したくないと思っていても、そこに残していかなければならないものがある。
そしておそらく、成長するということは、失ったものを忘れずに、それでも前へ進むことを学ぶことなのだろう。
シラスは前方を見つめた。
ロイヤル・アウレリアン駅の屋根が、建物の向こうに見え始めていた。
「ようやく着いたな」
彼は正門を通り抜け、スーツケースを引いていった。
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一編成の鉄道列車が、ちょうど駅のホームへと滑り込んできた。
車輪が線路の上を軋みながら進み、重々しい音を響かせる。地面がわずかに震えているかのようだった。機関車からは白い蒸気が勢いよく噴き出し、ガラス張りの大屋根の下で雲のように広がってから、ゆっくりと空気に溶けていった。
汽笛が鳴り響いた。
駅員たちは乗客を呼び始め、荷物運びの人々は重い貨物を積んだ台車を通路に押していく。足音、石床を転がる車輪の音、そして大勢の人々の話し声が混ざり合い、何百人もの人間が集まる場所特有の喧騒を生み出していた。
シラスはしばらく立ち止まった。
列車を見たことなら何度もあったが、これまで本気で気に留めたことはなかった。
彼にとって列車とは、海岸沿いを走り、荷物と見知らぬ人々を、まだ足を踏み入れたことのない場所へ運んでいく巨大な機械に過ぎなかった。
だが今、その列車の一つが彼をヴァルドレンへ連れていく。
シラスはスーツケースを引き、大広間へ入った。
駅舎の内部は、彼が想像していたよりもはるかに広かった。高い石柱が巨大なガラス屋根を支え、その上では鉄骨の梁が複雑な幾何学模様を描きながら交差している。夕暮れの光が色付きのガラスを通り抜け、石の床に赤や橙色の光の斑紋を落としていた。その光景は、駅全体が炎の中に沈んでいるかのようだった。
大広間の両側には、切符売り場や待合室、そして壁に掲げられた案内板が並んでいる。濃紺の制服を着た駅員たちは、人混みの間を絶えず行き来しながら、書類を確認し、乗客を正しいホームへと案内していた。
ある商人の一団は、持ち込める荷物の数について言い争っていた。窓際では、貴族の一家が従者に荷物を台車へ積ませるのを待っている。さらに遠くでは、軍服を着た兵士たちが、王室の封印が押された木箱を検査していた。
頭上には金属製の時刻表が掲げられ、小さな文字板がカタカタと音を立てながら自動的に位置を変えていた。駅名が次々と現れては消え、その横には発車時刻と列車番号が表示されている。
シラスは顔を上げ、自分の列車の情報を探した。
アウレリアン ― ヴァルドレン。
その文字を見つけた、まさにそのとき――
バン!
誰かの手が背中を強く叩き、シラスは飛び上がるほど驚いた。
「やっぱり早く来てると思ったよ!」
シラスは勢いよく振り返った。
そこにはカラム・マーロウが立っていた。まるでここ数日間姿を消していたことなど一度もなかったかのように、満面の笑みを浮かべている。
金色の髪は少し乱れ、上着も丁寧に整えられた様子はない。両手をズボンのポケットに突っ込み、あまりにも気楽な態度をしているため、シラスは今すぐ襟首をつかんで、これまでのことを問い詰めてやりたい気分になった。
特に目を引いたのは、カラムの周囲に三つのスーツケースが宙に浮いていたことだった。
それらはまるで従順な従者のように彼の後をついていき、通り過ぎる乗客にぶつからないよう、十分な距離を保っていた。カラムが横へ動くたびに、三つのスーツケースもすぐさま位置を変える。
シラスはそれらを見てから、親友へと視線を戻した。
「おやおや」
カラムは眉を上げた。
「何だよ?」
「念動術を使って、ただスーツケースを浮かせているだけなのか?」
シラスは腕を組み、わざとらしく三つのスーツケースを上から下まで眺めた。
「大した法力の量だな。もっと役に立つことに魔術を使っていると思っていたよ」
カラムは肩をすくめた。
「荷物を運ぶのは疲れるんだ」
「それだけ?」
「それだけ」
シラスは数秒間黙り込んだ。
そして、吹き出すように笑った。
「本当にどうしようもないな」
カラムはにやにやと笑い、恥じる様子もなかった。
「少なくとも、家ごと詰め込んだみたいな重いスーツケースを引きずっているわけじゃないぞ」
シラスは自分のスーツケースを見た。
「僕が何を持ってきたか知っているのか?」
「知らないけど、オズウィンの店の本を全部持ってきたんじゃないかと思ってる」
「少なくとも、本は役に立つ」
「念動術は役に立たないのか?」
「役には立つ。でも、荷物を持たなくて済むように使うのは、少しもったいない気がする」
カラムはわざと考え込むような顔をしてから、うなずいた。
「なるほど。確かにそうだな。次は自分自身も荷物と一緒に浮かせることにするよ。そうすればもっと楽になる」
シラスは額を押さえた。
「頼むから、そんなものを発明しないでくれ」
「約束はできないな」
二人は顔を見合わせ、そして一緒に笑った。
シラスは、胸の中にあった不安が少し軽くなるのを感じた。
カラムが最後の日々に姿を消していた理由など、まだ聞きたいことはたくさんあった。だが、友人の何事もなかったかのような表情を見て、シラスはその話を後回しにすることにした。
何はともあれ、この馬鹿はちゃんと来た。
それで十分だった。
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「おお……」
カラムは突然振り返り、港へと続く大きな扉の向こうを見つめた。
外では夕暮れが海面を黄金色に染めていた。高いマストが建物の屋根の間から突き出し、岸壁に並ぶ船たちは次の航海に向けて準備を進めている。
カラムはため息をつき、ひどく悲しげな表情で胸に手を当てた。
「あと数時間でここを離れるのか。港の女の子たちが恋しくなるな……」
シラスは彼を見た。
「娼婦たちのことか?」
「おい!」
カラムは勢いよく振り返った。まるで重大な侮辱を受けたかのような顔だった。
「そんな言い方をするなよ! 彼女たちだって港町の美人たちなんだからな!」
シラスは腕を組んだ。
「何を懐かしむことがあるんだ? それより入学選考試験のことでも考えたらどうだ?」
「人間にはそれぞれ趣味というものがあるんだ!」
「もっと健全な趣味を見つけたらどうだ?」
カラムは不満そうな顔をした。
「なあ、シラス。お前が本好きの女の子が好きだからって、他人の趣味を馬鹿にしていいわけじゃないぞ」
「少なくとも、僕の趣味は財布を空っぽにしないけどな」
カラムはすぐに黙り込んだ。
シラスは得意げに微笑んだ。
「ほら、間違ってないだろ?」
「それは、まだ運命の相手に出会っていないからだ!」
「そうか、そうか」
「俺を信じていないのか?」
「信じていない」
「シラス!」
シラスは声を上げて笑った。近くにいた何人かの乗客が、こちらを振り返るほどだった。
カラムは腕を組み、むくれた様子を見せた。しかし、数秒もしないうちに、再び港の方へと目を向けた。
「それでも……この場所が恋しくなるだろうな」
彼の声は、先ほどよりも小さくなっていた。
シラスも友人の視線を追った。
そのとき初めて、カラムも目の前の景色を心に刻もうとしているのだと気づいた。
船、屋根、海へと続く道、そして港沿いに灯り始めた街灯。
よそ者にとって、アウレリアン・ポートは賑やかな商業都市に過ぎないかもしれない。
しかし、二人にとってこの場所は故郷であり、幼い頃の思い出そのものだった。
港沿いを走り回った午後。授業をさぼって船乗りたちの荷下ろしを見に行った日々。オズウィンの店で過ごした食事の時間。そして、水平線の向こうにある広い世界を夢見た日々。
カラムがふと口を開いた。
「ああ、そうだ。知ってるか? ここの女の子たちの髪を一本適当に抜くだけで、この地域で最も恐ろしい毒薬が作れるんじゃないかって、俺は本気で思っているんだ」
シラスは彼の方を向いた。
「何を言っているんだ?」
「だって、さっきお前が彼女たちには懐かしむ価値もないって言っただろ!」
「僕はお前に未来のことを考えろと言ったんだ」
「俺は美しい思い出について話しているんだよ!」
シラスはため息をついた。
「本当に救いようがないな」
「ありがとう。褒め言葉として受け取っておくよ」
二人が言い争いを続けていると、ホームの方から発車を知らせる鐘の音が響いた。
乗客たちがさらに集まり始める。荷物を載せた台車が列を作り、駅員たちは乗車前に書類を準備するよう、絶えず呼びかけていた。
シラスは壁に掛けられた時計を見た。
もう時間だった。
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アウレリアン・コースト各地の学校から推薦を受けた五十人の学生たちが、ホーム近くの一角に次々と集まってきた。
彼らはそれぞれ異なる町からやって来ており、持っている荷物も、ヴァルドレンを目指す理由も違っていた。自信に満ちた様子で会話を交わす者もいれば、黙々と書類を確認する者もいる。目の前で待機する列車を見つめながら、緊張を隠しきれない学生もいた。
彼ら全員にとって、この旅は貴重な機会だった。
同時に、一つの試練でもあった。
セント・オーレリアス校の校長は、両手を背中に回し、学生たちの前に立っていた。いつものローブを身にまとっていたが、普段の厳格な表情は、今日は少しだけ和らいでいるように見えた。
彼は一人一人の顔を見渡した。
目の前に並ぶ学生たちの中には、何年にもわたって教えてきた者もいる。誰が最も勤勉なのか、誰がよく問題を起こすのか、誰が黙々と努力を続けているのか、そして才能がありながら自分自身を信じられずにいるのは誰なのか。
彼はそのすべてを知っていた。
そして今、彼らは旅立とうとしている。
「諸君」
彼の声はそれほど大きくはなかったが、周囲にいた者たちを静かにさせるには十分だった。
「今日は、校長としてではなく、諸君の成長を見守ってきた一人の人間として、少し話をさせてもらいたい」
学生たちは、次第に真剣な表情になっていった。
「諸君は、アウレリアン・コーストから推薦された五十人の学生だ。誰もがそれぞれの長所を持ち、それぞれの夢を抱き、世界に証明したいことがあるのだと、私は信じている」
彼は一度言葉を切り、一人一人の顔に視線を向けた。
「ヴァルドレンは素晴らしい場所だ。しかし、同時に激しい競争が繰り広げられる場所でもある。そこへ足を踏み入れる機会を得ただけでも、十分に価値のあることだ。だが、手元にある列車の切符が、そのまま成功を意味すると思ってはいけない。諸君は、入学選考委員会の前で、自らの能力を証明しなければならないのだ」
何人かの学生が小さくうなずいた。
「全員が合格できると約束することはできない。成功する者もいれば、帰ってこなければならない者もいるだろう。もしそうなったとしても、それを終わりだとは思わないでほしい」
彼の声が少し低くなった。
「一度の選考試験での失敗が、人間の価値すべてを決めることはない。大切なのは、慣れ親しんだ場所から一歩踏み出す勇気を持ち、誰もが得られるわけではない機会に挑戦したということだ」
シラスは人々の間に立ち、静かに耳を傾けていた。
校長の最後の言葉が、これほどまでに心に響くとは思っていなかった。
校長は続けた。
「諸君は、この学校を代表することになる。諸君を教えてきた人々、そして諸君を育ててきたこの土地を代表することにもなる。そのことを忘れてはならない。しかし、それを重荷にしてはいけない。自分自身の力で歩み、誇りを持ち、そしてなぜこの旅を始めたのかを忘れないでほしい」
彼は微笑んだ。
「私は諸君を誇りに思っている。どうか良い旅を。そして入学選考委員会に認められたなら、帝国で最も名高い学府の一つで、忘れられない四年間を過ごしてほしい」
短い沈黙が流れた。
やがて、拍手が起こった。
最初はまばらだった音が、すぐに学生たち全体へと広がっていく。微笑む者もいれば、深く頭を下げる者もいた。目尻をそっと拭う者もいた。
校長は手を上げて皆を落ち着かせようとしたが、彼自身も感動を隠しきれていなかった。
「さて、もう行きなさい。私が気を変えて、全員を学校に残し、期末試験を受けさせる前にな」
学生たちの間から笑い声が上がった。
張り詰めていた空気は、たちまち和らいだ。
一人、また一人と学生たちが進み出て、別れの挨拶を交わした。握手をする者もいれば、深々と頭を下げる者もいた。有名な魔術師になったら必ず学校へ戻ってくると約束する者もいた。
校長はただ微笑み、彼らの肩を叩きながら、最後の助言を送っていた。
シラスとカラムの番が来ると、二人は一緒に前へ進んだ。
「先生」とシラスが言い、頭を下げた。
「これまで教えてくださったすべてのことに感謝します」
カラムも一緒に頭を下げたが、数秒もしないうちに、付け加えずにはいられなかった。
「先生、もし僕たちが有名な魔術師になったら、どうか僕たちのことを忘れないでくださいね!」
校長は彼を見て、笑い声を漏らした。
「カラム。お前が授業中に話すのと同じくらい集中して勉強していれば、私ももっと長くお前のことを覚えていられるだろうな」
シラスは笑いをこらえるために顔をそむけた。
カラムは胸に手を当て、わざと傷ついたふりをした。
「先生、そのお言葉は私の心を打ち砕きました」
「ならば、次の授業を忘れないための薬にするといい」
「はい、先生!」
二人は最後にもう一度挨拶をし、列車の方へと向かった。
その後ろで、校長はホーム近くの椅子に静かに腰を下ろし、自分の教え子たちが一人ずつ列車に乗り込んでいく姿を見つめていた。
教師としての長い年月の中で、彼はこの光景を何度も目にしてきたのかもしれない。
それでも、こうした瞬間を迎えるたびに、時の流れが不思議なほど早く感じられるのだった。
かつて教室に座っていた子供たちは、今や荷物を携え、自分たちよりも広い世界へと歩み出している。
彼にできることは、彼らが戻ってきたとき、かつて自分が想像していた以上に成長していることを願うだけだった。
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列車の内部では、客室が狭い通路に沿って並んでいた。
シラスとカラムは、最後尾に近い車両にある自分たちの客室を見つけた。
そこは小さな個室で、向かい合わせに二つのベッドが置かれ、その間には木製のテーブルがあった。大きな窓からはホームの様子が見える。各ベッドの上には荷物置き場が設けられており、中型のスーツケースなら十分に収められる広さがあった。
カラムは中に入るなり、口笛を吹いた。
「悪くないな」
シラスは室内を見回した。
「何を期待していたんだ? 馬車か?」
「せめて、大きなソファくらいはあると思っていたよ」
「居間ごと持ってくるつもりか?」
「悪くない考えだな」
シラスは首を横に振り、荷物の整理を始めた。
しばらく格闘した末、ようやく重いスーツケースをベッドの上の荷物置き場に収めることができた。
一方、カラムは指一本動かす必要もなかった。三つのスーツケースを浮かせたまま、空いている場所へきれいに並べていった。
シラスはその光景を、不満げな表情で見つめた。
「本当に不公平だな」
カラムが振り返った。
「嫉妬しているのか?」
「いや。ただ、その法力を勉強に使えば、お前も大学で一番優秀な学生になれるかもしれないと思っただけだ」
「でも、その場合、誰が俺の荷物を運んでくれるんだ?」
「自分で運べばいいだろ」
「なんて冷たい奴だ!」
二人はしばらく言い争いを続けた後、ようやくベッドに腰を下ろした。
シラスは、自分が思っていた以上に疲れていることに気づいた。
一日中、荷物の確認をし、家の鍵を閉め、駅まで歩き、そして自分でも名前をつけられないような感情の数々と向き合ってきた。
すべての準備がようやく整った今、彼はただ横になって目を閉じたかった。
それとは対照的に、カラムはまったく疲れていないようだった。
ベッドに座り、両足をぶらぶらさせながら、興奮に満ちた顔をしている。
「へへ……」
シラスは横目で彼を見た。
「何を笑っているんだ?」
「もうすぐヴァルドレンに着くんだぞ」
「ああ」
「帝都だぞ!」
「分かってる」
「広大な街並み、ゴシック建築の建物、名門の学院、巨大な図書館……」
カラムはそこで言葉を切り、意味ありげな笑みを浮かべた。
「それに、帝都の美人たち!」
シラスは目を閉じた。
「またその話か」
「お前には分からないだろうな。ヴァルドレンの女の子たちは美しいだけじゃなく、とても気品があるらしい。貴族の家に生まれた者もいて、幼い頃から舞踏や乗馬、魔術の使い方まで教えられているんだ。俺のように才能があって、格好よくて、しかも謙虚な男を好きになってくれる子がいるかどうか、気になるところだな」
シラスは目を開け、友人の方を向いた。
「今、自分のことを謙虚だと言ったのか?」
「そうだ」
「信じられないな」
「おい!」
シラスは小さく笑った。
「そのいやらしい顔で、誰かが相手をしてくれると思うのか?」
カラムは目を見開いた。
「今、何て言った?」
「誰かに声をかける前に、鏡を見た方がいいと言ったんだ」
カラムはすぐさま手を上げた。
ベッドの上にあった枕が浮かび上がり、空中で静止したかと思うと、シラスに向かって一直線に飛んできた。
バフッ!
枕が顔に直撃した。
シラスは勢いよく起き上がった。
「おい! それは卑怯だろ!」
カラムは腹を抱えて笑った。
「俺をからかうからだ!」
シラスは枕をつかみ、投げ返した。
カラムは身を傾けて避けようとしたが、枕は肩に当たり、そのまま彼はベッドに仰向けに倒れ込んだ。
「うわっ! 裏切り者!」
「先に仕掛けたのはお前だろ!」
「これは正当防衛だ!」
「どこが正当防衛なんだ!」
二人はしばらく枕を投げ合っていたが、やがて外から発車を知らせる汽笛が鳴り響いた。
その音を聞き、二人は同時に動きを止めた。
シラスは窓の外を振り返った。
ホームでは駅員たちが最後の確認を行っていた。まだ外にいた乗客たちは慌てて列車に乗り込み、窓の向こうでは家族や友人たちが、残された場所から手を振っていた。
廊下を駅員が歩き、乗客たちに自分の席に着くよう呼びかけている。
列車が小さく揺れた。
そして、ゆっくりと動き始めた。
シラスは窓の外を見つめた。
ホームの石柱が、少しずつ後ろへ流れていく。校長はまだあの椅子に座っていた。何人かの学生は窓辺に立ち、知り合いの姿を見つけて手を振っていた。
アウレリアン・ポートが、少しずつ遠ざかっていく。
シラスは何も言わなかった。
カラムも数秒間は黙っていたが、長くは続かなかった。
「よし、行こうぜ!」
シラスは彼を見た。
「一分くらい真面目にしていられないのか?」
「できるさ。でも、ずっと外を眺めていたら、これから待っている面白いことを見逃してしまうだろ?」
シラスは微笑んだ。
「そうかもしれないな」
列車は速度を上げ、ホームを離れ、グランド・キーズの建物群を通り抜けて、内陸へと続く土地へ走り出した。
見慣れた屋根が、窓の向こうから少しずつ消えていく。
次に、マストが遠ざかる。
そして最後には、夕暮れの光の下に広がる海だけが残った。
シラスはベッドの背もたれに頭を預けた。
その景色をいつまでも覚えていたいと思ったが、まぶたは次第に重くなっていった。長い一日の疲れが、とうとう彼を眠りへと誘っていた。
「もういいや……寝るよ」
カラムはまだ窓の外を眺めていた。
「本当に寝るのか?」
「ああ」
「でも、今まさにヴァルドレンへ向かっているんだぞ!」
「目が覚めてからでもヴァルドレンは見られるだろ」
「だけど……」
シラスは毛布を引き上げ、カラムに背を向けた。
「寝かせてくれえ!」
カラムは黙り込んだ。
しばらくして、彼もベッドに横になったが、それでも小声でつぶやくのを忘れなかった。
「まったく、人生の楽しみ方を知らない奴だな」
客室は次第に静寂に包まれていった。
窓の外では、鉄の列車が夜の闇を切り裂くように走り続けていた。誰にも予測できない未来へと向かう乗客たちを乗せて。
---
「おい! おい! おい! 起きろ、シラス!」
興奮しきった声が耳元に響いた。
シラスは毛布を引き上げ、頭まですっぽりと覆った。
「あと五分だけ寝かせてくれ……」
「駄目だ! これを見なきゃ!」
誰かの手が彼の肩をつかみ、強く揺さぶった。
「起きろ! 見逃したら後悔するぞ!」
シラスは渋々と目を開けた。
ベッドの横にはカラムが立っていた。金色の髪はくしゃくしゃに乱れ、目はまるで何千年も前に埋められた宝物を発見したかのように輝いている。
「何があったんだ?」シラスは大きくあくびをした。「列車が盗賊に襲われたのか?」
「もっとひどいことだ!」
シラスは一気に目を覚ました。
「何だって!?」
カラムは窓の外を指差した。
「見ろよ!」
シラスは慌てて起き上がり、友人の指差す方へ目を向けた。
そして、言葉を失った。
窓の外には、朝の光の中で目を覚ましたかのような、壮麗な都市が広がっていた。
灰色の石造りの建物が並ぶ間を、広大な大通りがどこまでも続いている。ゴシック様式の尖塔が屋根の海からそびえ立ち、その頂は陽光を受けて輝いていた。大きな橋が広い川を横切り、両岸に広がる賑やかな街区を結んでいる。
遠くでは馬車が街路を行き交い、さらに小型の列車が市内各所に点在する駅へ向かって走っていた。
頭上では、王家の紋章を掲げた旗が風にはためいている。
巨大なドーム屋根やステンドグラスの窓を備えた大建築が住宅街の間にそびえ立ち、古い城壁が都市の中心部の一部を囲んでいた。
さらに遠くには、霧に覆われた山々の間、高台に広がる壮大な建築群が見えた。
この距離からでも、その威厳を感じ取ることができる。
ここは、普通の都市ではない。
そこは――ヴァルドレン。
ノーマン帝国の帝都だった。
シラスは窓に身を寄せ、息をすることさえ忘れたかのように見入っていた。
彼はこれまで、この街を描いた数え切れないほどの絵を見てきた。雲に届くほど高い塔、石畳の大通り、そして何世紀にもわたって築かれてきた建造物について、書物の中で何度も読んできた。
しかし、どのページも、この都市を実際に目にしたときの感覚を伝えることはできなかった。
ヴァルドレンは、ただ広大なだけではない。
あらゆる道、あらゆる建物、あらゆる橋が、何か重要な場所へとつながっているような感覚を抱かせる街だった。
古い文明の歴史を感じさせる荘厳さを持ちながら、同時に生命力にも満ちている。鉄道列車が線路を走り、馬車が街路を行き交い、そびえ立つ尖塔は、シラスがまだ理解し始めたばかりの世界を見守っているかのようだった。
彼はカラムの方を向いた。
「ここが、僕たちの暮らす街なのか?」
カラムは満面の笑みを浮かべた。
「そうだよ、シラス!」
シラスは再び窓の外へ目を向けた。
胸の中では、旅の疲れがすっかり消え去っていた。
二週間前、ヴァルドレンはただ本のページに記された名前に過ぎなかった。
昨日までは、山脈の向こうにある遠い場所だった。
そして今、その都市が目の前に広がっている。
新しい世界が、彼らを待っている。
アウレリアン・ポートを離れてから初めて、シラスは本当に別の人生が始まろうとしているのだと感じた。
第3章・完




