第24章:それぞれの道
「カラム・マーロウ!」
講師の声が、六印紋章広場に響き渡った。
カラムはすぐに背筋を伸ばした。
「俺の番だ!」
彼は襟元を整え、ローブの皺を軽く払ってから立ち上がった。席を離れる前に、二人の友人へと振り返る。
「幸運を祈ってくれよ!」
シラスは微笑んだ。
「頑張れよ」
フィニアンは親指を立てた。
「台座を爆発させるなよ」
「ははっ! 見てろよ!」
カラムは自信満々に神星台へと歩き出した。
いつものように冗談を口にしてはいたが、内心では緊張せずにはいられなかった。これほど重要な儀式に参加するのは、カラムにとって初めてのことだった。
目の前には、石台の上に浮かぶ六つの印章があった。それぞれが異なるエネルギーを放っている。
彼は最後の階段を上り、台座へと近づいた。
神星台のそばに立つ講師が、軽く頷いた。
「六印神星に手を置きなさい。法力を無理に制御しようとする必要はない。自然に反応させればいい」
「はい、先生」
カラムは深く息を吸い込んだ。
神星台の表面に手を置き、目を閉じる。
直後、法力の波動が腕を伝って広がった。
その感覚は、普段の術式を使うときとはまるで違っていた。杖に法力を流し込むのとも、特定の魔術を発動させるのとも違う。
むしろ、自分という存在を何かに観察され、評価されているような感覚だった。
穏やかなエネルギーの流れが、身体の中を通り抜けていく。
そして突然、六つの印章のうち一つが光を放ち始めた。
光は中心から外側の文様へと広がっていく。神星台の上空に、幻想的な姿が浮かび上がった。
奇妙な姿をした生物だった。
獅子の胴体に、山羊の頭、竜の頭、そして蛇の尾。異なる生物の特徴が一つに融合した存在。
キメラ。
ヴェイルムーア学院の象徴だった。
講師はその姿を見上げ、それからカラムへと目を向けた。
「おめでとう、カラム・マーロウ! 君はヴェイルムーア学院に選ばれた!」
広場全体から、すぐさま拍手が沸き起こった。
カラムは目を開き、徐々に消えていくキメラの幻影を見上げた。満足げな笑みを浮かべ、講師に一礼してから、足早に自分の席へと戻っていく。
「へへっ!」
席に着くなり、カラムはシラスのほうを向いた。
「ヴェイルムーアだぞ、シラス!」
シラスは笑った。
「おめでとう、おめでとう。あそこはお前にかなり合ってると思うよ」
「当然だろ! キメラは異なる生物が一つに融合した存在だ。決まった型に縛られない、個性的なものの集合体ってわけだ」
カラムは腕を組みながら言った。
「まさに俺そのものだ!」
フィニアンが彼を見る。
「つまり、自分の中に怪物みたいな変な性格がいくつもあるってこと?」
「おい! せっかくの感動的な瞬間を台無しにするな!」
シラスはただ笑うしかなかった。
彼は本当にカラムのことを嬉しく思っていた。二人でどの学院に入りたいかを話したことは何度もあったが、友人が自分にふさわしい場所を見つけた瞬間を目の当たりにすると、また違った感慨が湧いてくる。
カラムには、もう一つの道が見つかった。
次は、後に続く新入生たちの番だ。
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「セラフィナ・ヴェイクロフト!」
一つの名前が広場に響いた。
茶色い髪の少女が立ち上がり、三人の横をゆっくりと通り過ぎていく。
フィニアンはその後ろ姿を見つめ、少し目を細めた。
「ん? あの子、エデヴェイン出身の女の子じゃないか?」
シラスは頷いた。
「ああ、そうだよ」
カラムも彼女に目を向けた。
「セラフィナ・ヴェイクロフト……」
彼は名前を呟き、小さく口笛を吹いた。
「いい名前だな。まあ、俺は彼女の黒い靴下のほうが好きだけど」
シラスはすぐに振り向いた。
「少しは真面目にできないのか?」
「俺は至って真面目だぞ」
フィニアンは首を横に振り、カラムとの議論を諦めた。
一方、シラスは依然としてセラフィナの姿を目で追っていた。
「ヴェイクロフトか……」
彼は少し眉をひそめた。
「確か、エデヴェインでかなり有名な一族じゃなかったか? 以前、いくつか資料を読んだことがある。あの一族は、異常なほど膨大な法力を持つことで知られているんだ」
カラムが眉を上げた。
「なるほどな」
「何か知ってるのか?」
「彼女が大量の分身を作り出しても、法力の消費をまるで気にしていないように見えた理由が分かった気がする」
フィニアンは二人を見た。
「ちょっと待って。つまり、彼女は膨大な法力だけで、同時に何体もの分身を作り出せるってこと?」
「それだけじゃない」とシラスは答えた。「あの分身は、一定時間ならそれぞれ独立して行動することもできる。単純な技術じゃないよ」
フィニアンは黙り込んだ。
彼はクラウンフェルの山で起きた出来事を思い出していた。
もしセラフィナが噂どおりの法力量を持っているのなら、複数の分身を同時に維持できることも、それほど不思議ではない。
三人は揃って神星台を見上げた。
セラフィナはすでに中央の位置に立っていた。
彼女はいつもの笑みを浮かべたままで、緊張や不安など微塵も感じさせない。六印神星に手を置く。
最初は何事もなく進んでいた。
しかし、数秒後、突然光が現れた。
一つの印章ではない。
六つ全てだった。
六つの紋章が次々と輝き、やがて同時に異なる色のエネルギーを放ち始めた。広場の上空には、六体の伝説の生物が姿を現す。それぞれが独自の威厳を放っていた。
三本足の鴉が翼を広げる。
古代竜が頭をもたげる。
銀色の光の中から麒麟が歩み出る。
炎の帯の中で不死鳥が翼を広げる。
キメラが低く唸る。
そして、グリフィンが巨大な翼を広げて堂々と立ち尽くす。
広場は一瞬にして騒然となった。
神星台のそばに立っていた講師は目を見開き、目の前の光景を信じられないといった様子で見つめた。
「六印同盟……」
彼は小さく呟いた。
他の講師たちも、すぐに六つの印章へと視線を向けた。
壇上に座る六人の院長でさえ、驚きを隠せずにいた。
これは極めて稀な現象だった。
王族の来賓席では、エヴリン・アシュフォードがヴィヴィアン・ヴァルクレストと共に儀式を見守っていた。
エヴリンはわずかに眉をひそめた。
「ちっ。どこへ行っても注目を集める女ね」
ヴィヴィアンは頬杖をつき、依然として神星台を見つめていた。
「六印同盟、ね?」
彼女は小さく笑った。
「あの子、なかなか万能じゃない。確かに強いわ」
エヴリンは何も答えなかった。
セラフィナが普通の魔術師ではないことは、彼女も理解していた。しかし、六つ全ての印章に認められるというのは、予想外の出来事だった。
神星台の上では、儀式を担当する講師がようやく落ち着きを取り戻していた。
彼はセラフィナを見つめ、先ほどよりも改まった口調で話し始めた。
「セラフィナ・ヴェイクロフト君」
「はい?」
「君は、百年に一度現れるかどうかというほどの特別な存在だ。六印同盟とは、六つ全ての印章が君の適性を認めたことを意味する。つまり、君は自分の望む学院を自由に選ぶことができる」
彼は一度言葉を切り、さらに説明を続けた。
「それに加えて、いくつかの特権も与えられる。他の学院の専門科目にも参加できるようになり、選択した学院の通常の教育課程に縛られることもない」
周囲のざわめきが一気に広がった。
「六つの学院全ての専門科目を受けられるのか?」
「そんなことが本当に可能なのか?」
「まさに天才だな!」
カラムは口を大きく開けた。
「すごいな……」
フィニアンも驚きを隠せなかった。
「それって、ほとんど何でも学べるってことじゃないか?」
シラスは黙って様子を見守っていた。
これは驚くべき特権だった。六つの学院は、それぞれ異なる教育課程と専門分野を持っている。通常の学生が他学院の専門科目を受講するには、いくつもの条件を満たさなければならない。
しかし、セラフィナはその全てに手が届く。
講師は続けた。
「では、君はどの学院を選ぶ?」
セラフィナは相変わらず微笑んでいた。
彼女は考えるふりをしながら、指先を顎に当てる。
「うーん……」
広場中の視線が、彼女の答えを待っていた。
好きな学院を自由に選べるうえ、滅多に得られない特権まで与えられる。誰もが、セラフィナは自分に最も適した場所を選ぶだろうと考えていた。
しかし、彼女の答えは全く違うものだった。
「選びません」
講師は瞬きをした。
「今、何と言った?」
セラフィナは首を傾げた。
「次の学生を呼んでください。その人が入る学院に、私も入ります!」
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その場に沈黙が訪れた。
目の前に立つ講師は、今の言葉を理解するまでに数秒を要したようだった。
「な……何だって?」
セラフィナは変わらぬ笑みを浮かべていた。
「次の学生がどの学院に選ばれるのか、見てみたいんです」
広場にざわめきが広がった。
冗談だと思って笑い出す者もいれば、彼女の考えが理解できず、互いに顔を見合わせる者もいた。
講師はしばらくセラフィナを見つめ、最後にはため息をつくしかなかった。
「分かった。君がそう決めたのなら、大学としてもその意思を尊重しよう」
セラフィナは礼を述べ、台座から降りていった。
カラムは彼女の後ろ姿を見送った。
「本当に変わった子だな」
フィニアンは腕を組み、不満げな顔をしていた。
「明らかにおかしいよ。頭は空っぽ、手足だけが発達してるんじゃないか!」
シラスは小声で注意した。
「フィニアン……」
「何?」
「そんなに大きな声で言うなよ」
フィニアンは周囲を見回し、それから声を落とした。
「分かったよ」
カラムは吹き出した。
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「シラス・バイ!」
自分の名前が呼ばれると、シラスはすぐに立ち上がった。
襟元を整え、深く息を吸ってから神星台へと歩き出す。
心の中には、わずかな緊張があった。
アウレリアン・コーストにいた頃から、この瞬間のことを何度も考えてきた。しかし、実際に六つの印章の前に立ってみると、想像していたものとは全く違う感覚があった。
彼は石台へと上がった。
講師が彼を見つめる。
「六印神星に手を置きなさい」
シラスは頷いた。
そして手を伸ばす。
掌が表面に触れた瞬間、法力の波動が全身へと広がった。その感覚は、アリステアが天眼との相性を確認したときのことを思い出させた。
しかし、今回はその規模がはるかに大きい。
シラスの体内にある法力は、目に見えない何かに導かれるように流れ、少しずつ台座の上にある印章と反応していった。
一つの光が現れる。
そして、もう一つ。
二つの印章が同時に輝いた。
神星台の上空に、二つの幻想的な姿が次々と浮かび上がる。
漆黒の翼を広げた三本足の鴉。
そして、光の帯の中で身をくねらせる古代竜。
シラスは顔を上げた。
鴉。
竜。
ブラックソーンとドレイケンホールを象徴する、二つの紋章だった。
神星台のそばに立つ講師は、少し驚いた様子を見せた。
「ほう……二印共鳴か」
彼は記録用の板に目を向け、それから微笑んだ。
「非常に良い結果だ。君には二つの学院との適性がある」
講師は説明を続けた。
「この二つの学院のうち、どちらか一つを選ぶことができる。また、特別な課程を通じて、もう一方の学院の専門科目を受講することも認められる」
シラスは輝く二つの紋章を見つめた。
彼はそれほど長く考える必要はなかった。
ヴァルドレンに足を踏み入れる前から、六つの学院について時間をかけて調べていた。ブラックソーンは分析、研究、戦略的思考に長けた者たちが集まる場所だ。
そこは、彼が望んでいた学院だった。
「ブラックソーン学院を選びます!」
講師は頷いた。
「分かった」
そして広場に向き直った。
「おめでとう、シラス・バイ! ブラックソーン学院へようこそ!」
拍手が広がった。
しかし、その直後、講師はセラフィナのほうにも目を向けた。
「そして、セラフィナ・ヴェイクロフト君もおめでとう! 君も先ほどの希望どおり、ブラックソーン学院に所属することになる!」
シラスは少し驚いた。
彼は広場の端に立つセラフィナへと目を向けた。
彼女は相変わらず微笑んでいた。まるで、最初からこの結果を待っていたかのように。
シラスは講師に一礼し、席へと戻った。
腰を下ろした途端、カラムがひどく悲しそうな顔でこちらを見ていることに気づいた。
「シラスと俺、別々の学院になっちゃったな……」
カラムは胸に手を当てた。
「これから離れ離れだ!」
シラスは彼を見た。
「同じ大学には通うだろ」
「でも、同じ学院じゃない!」
「図書館でも食堂でも、共用施設なら会えるよ」
「でも、同じ教室には座れないんだぞ!」
シラスはため息をついた。
「まったく、カラム。まだ会う機会はいくらでもあるだろ」
カラムはしばらく彼を見つめ、それから小さく頷いた。
「うん……」
少し間を置いて、彼は尋ねた。
「でも、俺がシラスに会いたくなったらどうする?」
「会いに来ればいい」
「本当か?」
「本当だよ」
カラムはすぐに笑顔になった。
「よし! これから頻繁にブラックソーンへ遊びに行くぞ!」
隣で会話を聞いていたフィニアンは、思わず吹き出した。
「一生会えなくなるみたいな言い方をするなよ」
カラムは振り向いた。
「お前には分からないんだよ」
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「フィニアン・クロウ!」
今度はフィニアンの番だった。
彼は立ち上がり、神星台へと歩いていく。
カラムは手を振って応援した。
「行け、フィニアン!」
フィニアンは振り返った。
「集中を乱すなよ!」
彼は台座の中央まで進み、六印神星に手を置いた。
法力の波動が素早く広がっていく。
わずか数秒後、一つの印章が光を放ち始めた。
神星台の上空に、キメラの姿が浮かび上がる。
講師はすぐに結果を告げた。
「おめでとう、フィニアン・クロウ! 君はヴェイルムーア学院に選ばれた!」
拍手が響いた。
フィニアンは目を開き、キメラの紋章を見上げてから、講師に一礼した。
そしてすぐに席へ戻ってきた。
カラムは大きな声で笑った。
「ははは! ほらな、俺の予想どおりだろ? お前はヴェイルムーアだ!」
フィニアンは肩をすくめた。
「そうみたいだね」
「俺たち、同じ学院だぞ!」
カラムはフィニアンの肩に腕を回した。
「これから毎日、俺に付き合ってもらうからな!」
フィニアンは自分の肩に置かれた腕を見た。
「それが一番心配だよ」
シラスは笑った。
これで、三人の所属先が正式に決まった。
シラスはブラックソーン。
カラムとフィニアンはヴェイルムーア。
それぞれ異なる学びの道が、彼らの目の前に開かれ始めていた。
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選抜式が終わると、新入生たちはそれぞれの学院の受付場所へと案内された。
そこで一人につき、普段着用の制服が三着、冬用の制服が三着ずつ配布された。さらに、生活規則や授業日程、寮の案内が記された資料も渡された。
シラスはブラックソーンの制服を受け取った。
制服は大学の伝統的な様式に沿ってデザインされていた。内側には白いシャツ、その上には学院を象徴する色のブレザー、専用のネクタイと紋章入りのバッジ。さらに外側には、フード付きの黒いマントを羽織る構造になっている。
縫製はかなり精巧で、生地にも厚みがある。それでいて、着心地は窮屈ではなさそうだった。
シラスは制服を手に取り、じっくりと眺めた。
隣に立つカラムはそれを見て、すぐに顔をしかめた。
「ブラックソーンの制服って、ずいぶん暗いな、シラス」
シラスは振り向いた。
「うるさいな!」
「感想を言っただけだろ!」
「だったら自分の制服を見て感想を言えばいい」
カラムは自分の手にあるヴェイルムーアの制服を見下ろした。
「おお、俺のほうが格好いいな」
フィニアンも頷いた。
「確かに、ヴェイルムーアのほうが見た目はいいかもね」
シラスは二人を見た。
「お前たち……」
彼はそれ以上言い返すのをやめた。
そのとき、背後から聞き覚えのある声が響いた。
「おーい!」
三人が振り返る。
二人の青年がこちらへ歩いてきていた。
一人は淡い金髪で、背が高く、落ち着いた雰囲気の目をしている。もう一人は、より機敏そうな印象で、黒髪をきちんと短く整えていた。
ローナンとレオフリック。
試練の最中、見張り塔でシラス、カラム、フィニアンが出会った、ストームヘイヴン出身の二人だった。
カラムはすぐに彼らに気づいた。
「おお! 二人とも!」
レオフリックは微笑んだ。
「久しぶりだな」
ローナンも頷いて挨拶する。
カラムは彼らに応じた。
「二人もちゃんと合格したんだな!」
「ああ」レオフリックは手に持った制服を掲げた。「幸い、俺たちは二人とも合格できたよ」
シラスは周囲を見回した。
「ロウリーはどうした?」
その質問を聞いた途端、ローナンはわずかに動きを止めた。
彼の笑顔が薄れていく。
一瞬、ローナンの目には明らかな悔しさが浮かんだ。彼は手に持った制服へ視線を落とし、数秒間黙り込んだ。
「それは……」
ローナンは言葉を切った。
「話すと長くなる。また別の機会に話すよ」
シラスはローナンの声色が変わったことに気づいた。
それ以上、尋ねることはしなかった。
レオフリックはすぐに前へ出て、さりげなく話題を変えた。
「実は、二人に聞きたいことがあるんだ」
「何だ?」シラスが尋ねる。
レオフリックは三人を見渡した。
「俺たち二人は、みんなを同じ寮に誘おうと思っていたんだ」
カラムの目がすぐに輝いた。
「いいじゃないか!」
彼はシラスとフィニアンのほうを振り向いた。
「みんなで一緒に申し込もうぜ!」
フィニアンも頷いた。
「僕も賛成だよ。知り合いが同じ部屋にいれば、何かと便利だしね」
シラスはローナンとレオフリックを見た。
「二人が構わないなら、俺も賛成だよ」
ローナンは小さく微笑んだ。
「それはよかった」
カラムはすぐに手を挙げた。
「さあ、寮の登録に行こう!」
レオフリックは笑った。
「少し落ち着けよ。大学の規則も確認しないといけないだろ」
「規則なんて何だっていいさ! ベッドと勉強机、それに十分な広さの部屋があればそれでいい!」
フィニアンはカラムを見た。
「夜中に騒がないことも条件に入れておいて」
「おい! 俺は騒がしくなんかないぞ!」
シラスは彼を横目で見た。
「その台詞を言って、恥ずかしくないのか?」
カラムは聞こえなかったふりをした。
五人は制服の配布場所を後にし、寮管理事務所へ向かった。
夕暮れの光は次第に薄れ、回廊に設置された魔法灯が明かりを灯し始めていた。六印紋章広場からは、今も新入生たちの話し声が大学の敷地全体へと響いている。
重要な一日が終わった。
シラスは正式にブラックソーン学院の学生となった。
カラムとフィニアンはヴェイルムーア学院に所属することになった。
新しい友人たちとの出会いも始まり、これから何年にもわたって続いていくであろう人間関係が、少しずつ形作られていく。
ヴァルドレン王立大学の門は開かれた。
そして、彼らの新たな生活が、ついに始まったのだった。
第24章・完




