第19章:最後の手紙
第19章:最後の手紙
朝の日差しがカーテンの隙間を抜け、木の床に淡い光の筋を落としていた。
シラス・バイはゆっくりと目を開けた。
目覚めたばかりの彼は、しばらく動かず、見慣れない天井をぼんやりと眺めていた。
岩壁を吹き抜ける風の音もない。襟元から入り込む冷たい雪もない。何枚もの厚着をしなければ耐えられないような、身体の芯まで凍える感覚もなかった。
代わりにあるのは、柔らかな毛布と心地よい寝台、そして隙間風のない部屋を満たす穏やかな暖かさだった。
こんなにも快適な眠りを味わうのは、いったいいつ以来だろうか。
たった八日間。
クラウンフェルの試験が始まってから、まだ八日しか経っていない。それなのに、シラスの記憶の中では、その時間はまるで一世紀にも及ぶように感じられた。
最初の衝突から始まり、ルシアンやエヴリンとの戦い、エデヴェインから来た奇妙な少女との出会い、そして雪に覆われた山中の洞窟で過ごした夜まで、危険を警戒せずに済んだ日はほとんどなかった。
それが今、ようやくまともなベッドに横たわり、夜中に何かの生物が洞窟へ入り込んでくる心配もせずに眠れるようになったのだ。
シラスは毛布をもう少し引き上げ、この珍しい快適さをあと数分だけ味わおうとした。
そのとき、隣のベッドに眠っている人物のことを思い出した。
カラム・マーロウは毛布にくるまり、金色の髪をぼさぼさにしたまま、片脚を完全に外へ投げ出していた。窓の外で鳥がさえずっているというのに、目を覚ます気配すらない。
シラスは壁掛け時計を見た。
朝食の時間は、とっくに過ぎていた。
彼はため息をつき、起き上がってベッド脇に置かれたスリッパを履き、隣へ歩み寄った。
「カラム」
反応はない。
「起きろ」
それでも沈黙が続く。
シラスはしばらく友人を見下ろしていたが、結局、最も簡単な方法を選ぶことにした。
彼はカラムの尻を軽く蹴った。
「朝だぞ」
「ん……あと五分……」
カラムは枕に顔を埋め、毛布を頭まで引き上げた。
シラスは眉を上げた。
「そうか。じゃあ、先に下へ行って、ボウの焼き肉を全部食べてしまおう」
毛布がぴくりと動いた。
「待った!」
カラムは勢いよく起き上がった。まだ眠そうな目をしていたが、声だけはすっかり目覚めている。
「そんなことしていいわけないだろ!」
シラスは平然と洗面所へ向かった。
「なら起きろ」
「これは権力の乱用だぞ、シラス!」
「歯を磨いてから抗議文を書けばいい」
洗面所の扉が閉まり、不満げな顔をしたカラムだけがベッドに取り残された。
彼は閉じた扉を見つめながら、自分は独裁者と同じ部屋で暮らしているのだと何やらぶつぶつ呟いた。それから、ようやく毛布を払いのけてベッドを降りた。
---
昨夜、ヴァルドレン王立大学を後にしたシラスとカラムは、中心街にある居心地のよさそうな酒場を見つけていた。
そこは「折れた月亭」と呼ばれる、グランド・マーケットからそれほど遠くない石畳の通りに建つ、昔ながらの酒場だった。
一階はメインダイニングになっており、濃い色の木製テーブルが並び、梁には真鍮製のランプが吊るされていた。東側の壁際には酒場のカウンターが設けられている。
壁には帝都の風景画が何枚か飾られており、その中でもひときわ目を引くのは、古い屋根の連なる街並みの上に、欠けた月が浮かぶ絵だった。
夕食を済ませ、宿泊料金を尋ねた後、二人は三日間、二階の部屋を借りることにした。
店主はその部屋を「三日月の間」と呼んでいた。
廊下の突き当たりにあるその部屋には、シングルベッドが二つ、小さな窓際のテーブル、そしてオーク材の衣装棚が置かれていた。
窓からは旧市街の空が見え、夜の灯りの下、ゴシック様式の屋根が幾重にも重なっていた。
豪華と呼べるほど広くはないが、清潔で静かで、必要な設備は一通り揃っている。
何より重要なのは、ここには温水があったことだ。
雪山で何日も過ごしてきた二人にとって、それだけでもこの部屋には十分な価値があった。
シラスが洗面所から出てくると、カラムはすでに外で待っていた。髪はまだ濡れていたが、その表情には期待が満ちている。
「やっと俺の番だ!」
彼はほとんど飛び込むように洗面所へ入り、すぐ後ろで扉を閉めた。
シラスは首を横に振り、ベッドへ戻って着替え始めた。
今日は試験用の服を着る必要もなければ、雪風に耐えるために五枚も服を重ねる必要もない。
シラスはクリーム色のシャツに濃い茶色の上着、そして飾り気のないズボンを選んだ。白い眼鏡のフレームを整え、襟元を直してから、小さな鏡に映る自分の姿を確認する。
特別目立つわけではないが、野暮ったくもない。
シラスにとっては、それで十分だった。
しばらくして、カラムが洗面所から出てきた。
彼は濃紺のシャツに黒い上着、そして驚くほどきちんとアイロンのかかったズボンを身につけていた。金色の髪も普段より整えられていたが、それでも何本かの毛先は頑固に言うことを聞いていない。
シラスは彼を頭から足まで眺めた。
「誰かに会いに行くのか? ずいぶん真面目な格好だな」
カラムはすぐに袖口を整えた。
「帝都に敬意を払わないとな」
「それとも、帝都にいる誰かさんに敬意を払っているのか?」
カラムは一瞬、動きを止めた。
「どうして分かった?」
「やっぱりな」
シラスは頷いただけで、それ以上何も言わなかった。
そのあまりにも平然とした態度が、からかわれるよりもカラムを苛立たせた。
「朝食を食べに行こう」
シラスは扉を開け、廊下へ出た。
カラムもすぐに後を追い、友人同士なら怪しい秘密を隠すべきではないとぶつぶつ言いながら階段を下りていった。
二人は階段を下り、折れた月亭のメインダイニングへ向かった。
この時間帯には、すでにかなりの客がいた。窓際では数人の商人が朝食を取りながら帳簿を確認している。酒場のカウンター近くでは、厚手のコートを着た二人の男が、アウレリアン・コーストから届く商品の価格について話し合っていた。
皿に当たるナイフやフォークの音、床を擦る椅子の音、そして人々のざわめきが混ざり合い、帝都の酒場らしい独特の雰囲気を作り出していた。
シラスは窓際のテーブルを選んだ。
カラムは腰を下ろすなり、周囲を見回した。まるで知り合いが現れるのを待っているかのように、一人ひとりの客へ視線を走らせている。
「誰か探しているのか?」とシラスが尋ねた。
「別に誰も」
「じゃあ、どうして誰かが来るのを待っているみたいに見回しているんだ?」
「周囲の状況を観察する習慣だよ」
シラスは水を一口飲んだ。
「驚いたな。ボウにもそんな習慣があったとは」
カラムが言い返す前に、淡い赤毛の少女が近づいてきた。
彼女はマーラ。この酒場の接客を取り仕切る給仕係だった。銅色の髪は後ろでまとめられ、朝の光を受けて鮮やかに輝いている。明るい瞳に素早い笑顔、そして気難しい客の扱いにも慣れた自信のある立ち居振る舞いをしていた。
昨夜、店主の話によれば、マーラは店主が間違っているときには遠慮なくそれを指摘し、それでも彼に話を聞かせられる唯一の人物なのだという。
「おはようございます、素敵なお二人さん!」
彼女は注文帳をテーブルに置いた。
「今日は何になさいますか?」
カラムはすぐに笑顔を浮かべた。
「パンを二つ。それから、羊肉の串焼きを二本頼む」
「かしこまりました!」
マーラは注文を書き留めると、くるりと向きを変えて立ち去った。
カラムは彼女の後ろ姿をしばらく眺め、それから小さく口笛を吹いた。
「最高だな。俺は帝都が大好きだ!」
シラスはコップをテーブルに置いた。
「おい」
「何だ?」
「そんな目で彼女を見るのはやめたらどうだ?」
カラムはすぐに振り返り、無実を主張するような顔をした。
「俺が何をしたっていうんだ?」
「さっきの目は、初めて女性を見た人間のそれと大差なかったぞ」
「それは侮辱だな。ただ人生の美しさを堪能していただけだ」
「なら、朝食が運ばれてきたら、そっちを堪能するといい」
カラムは笑い、肘をテーブルについて身を乗り出した。
「分かった、分かった。もうからかわないよ」
彼は少し間を置くと、突然真面目な顔になった。
「朝食を食べたら、ある場所へ行こう」
シラスは眉を上げた。
「どこだ?」
カラムは彼を見つめた。いつものふざけた笑みとは少し違う、穏やかな表情だった。
「エララ・ウィットモアのことを覚えているか?」
シラスはわずかに動きを止め、その名前を思い出そうとした。
そして、すぐに気づいた。
「ああ。中等学校の頃から、ボウが片思いしていた女の子か?」
カラムは慌てて人差し指を唇に当てた。
「声が大きい!」
シラスは周囲を見回した。誰も二人に注意を払ってはいない。
「まるで王室の秘密を暴露されたみたいな反応だな」
「俺にとっては、それに近いくらい大事なことなんだ」
シラスはその答えに少し驚いた。
カラムが長い間、密かに想いを寄せていた少女がいることは知っていた。以前、アウレリアン・コーストへ送った手紙の中で、カラムは何度かエララについて触れていた。
しかし、きれいな女性を見ればすぐに冗談を言うあの友人が、一人の相手に対してここまで真剣になれるとは思っていなかった。
「彼女は帝都にいるのか?」とシラスが尋ねた。
カラムは頷き、さらに嬉しそうな表情になった。
「数年前に家族でこっちへ引っ越してきたんだ。商売をしているらしい。最後にエララから手紙が届いたとき、住所も一緒に書いてくれていた」
彼は素早く肩掛け鞄を開け、中をしばらく探った。それから、丁寧に折り畳まれた一通の手紙を取り出した。
紙は折り目の部分が少し黄ばんでいたが、大切に保管されていたようだった。
カラムはテーブルに手紙を置き、広げると、末尾に書かれた住所を指差した。
ヴァルドレン帝都、グランド・マーケット地区、シルバーリーフ通り十七番地。
シラスは住所を読み返した。
「シルバーリーフ通りか」
「ああ。名前からして上品な感じがするだろ?」
「普通の通りかもしれないぞ」
「少しくらい夢を見させてくれよ」
シラスはもう一度住所に目を落とした。
「グランド・マーケットは広い。正確な場所が分からなければ、午前中いっぱい探し回ることになるかもしれない」
「問題ないさ。道を聞けばいい」
「誰も知らなかったら?」
「別の人に聞けばいい」
シラスは黙り込んだ。
時折、カラムの自信には感心すべきなのか、心配すべきなのか分からなくなる。
ちょうどそのとき、酒場の店主である中年の男が二人のテーブルのそばを通りかかった。白いシャツの上に濃い色のベストを着て、手には記録帳を持っている。
彼の視線が、テーブルに広げられた手紙へ偶然向いた。
「おや、家を探しているのかい?」
カラムはすぐに顔を上げた。
「はい。シルバーリーフ通りへ行きたいのですが、道がよく分からなくて」
店主は記録帳を置き、空いていた椅子を引いて二人の向かいに座った。
「グランド・マーケットは、帝都に来たばかりの人間には迷いやすい場所だ。大通りは環状に繋がっているし、細い路地は迷路みたいに入り組んでいるからな」
彼は手紙を手に取り、住所を確認して頷いた。
「シルバーリーフか……記憶が正しければ、商人取引所の近くだな」
シラスは注意深く耳を傾けた。
店主は指先でテーブルの上に、見えない道筋を描いた。
「まずはクラウンマーケット広場へ向かい、そこから商業地区へ続く大通りを進むといい。最初から人通りの多い商店街へ入り込まないことだ。商人取引所の近くまで行けば、シルバーリーフ通りについて誰かに尋ねればいい。比較的静かな住宅街にあるから、場所さえ分かれば見つけるのは難しくない」
「ありがとうございます」とシラスが言った。
「どういたしまして」
店主は微笑み、もう一度住所に目を落とした。
「ところで、シルバーリーフに知り合いがいるのかい? あそこは普通の人間が簡単に家を買えるような場所じゃないぞ」
カラムはすぐに胸を張った。
「はい! エララはとても素敵な女の子なんです」
シラスはわずかに眉を寄せた。
「質問と違うことを答えているぞ」
「大して変わらないだろ?」
店主は声を上げて笑った。
「なるほど。裕福な家庭のお嬢さんと知り合いというわけか」
彼は指先でテーブルを軽く叩いた。
「クラウンマーケット広場と商人取引所の間は、大商人たちが暮らす地域だ。昼間になれば、商業事務所へ帳簿を持っていく人々や、布地や商品を運ぶ馬車、店と店の間を行き来する配達人で賑わう。だが、シルバーリーフには主要な商店街のように店がぎっしり並んでいるわけじゃない」
彼は続けた。
「通りの両側には大きな商店の経営者の邸宅や商家の事務所、それに身分の高い客を相手にする専門店がいくつかある。あそこに家を構えているということは、家主に十分な財力があるか、少なくともかつてはそうだったということだ」
シラスはカラムを見た。
「エララの家は、かなり商売がうまくいっているようだな」
カラムは頷き、笑みを浮かべた。
「彼女の父親は評判の商人なんだ。布地から輸入品まで、いろいろな商品を扱っていると聞いたことがある」
「なら、彼らがまだボウのことを覚えているといいな」
「人の気分を台無しにするのはやめてくれないか?」
「現実的な可能性を指摘しただけだ」
「励ましてくれてありがとうよ」
店主は立ち上がり、記録帳を手に取った。
「さっき教えた道を進めばいい。もし迷ったら、本屋か配達人を探すといい。あの人たちは、この辺りの道を行商人よりよく知っていることが多い」
「ありがとうございました」
「どういたしまして。帝都に来たばかりの人を助けるのは当然のことさ」
店主が立ち去ったちょうどそのとき、マーラが朝食を運んできた。
焼きたてのパンが二つ、湯気の立つ羊肉の串焼きが二本、二人の前に置かれた。肉の香ばしい匂いが漂い、カラムはすぐにほかのことを忘れた。
「どうぞ、ごゆっくり!」
マーラはウインクしてから、カウンターの方へ戻っていった。
カラムは料理を眺め、満足そうな顔をした。
「最高の朝食、素晴らしい天気、そして好きな人との再会が待っている。シラス、今日は俺の人生で一番幸運な日になる気がするよ」
シラスはパンを一切れ切り分けた。
「なら、その幸運が目的の家を見つけられるほど大きいことを願っておくよ」
カラムは肉を一口かじり、口をもぐもぐさせながら答えた。
「ボウは本当に気の利いたことを言えないな」
「でも、いつも本当のことを言っている」
「そこが問題なんだよ」
二人は朝食を食べながら、その日の予定について話した。
カラムは何度もエララの話題に戻り、彼女が冒険小説を読むのが好きだったこと、夏にはレモネードを好んで飲んでいたこと、そしてクラスメートによくクッキーを配っていたことなどを語った。
シラスは話を聞き、ときどき質問を挟んだ。
話を聞けば聞くほど、エララがカラムにとって思っていた以上に大切な存在だったことが分かってきた。
朝食を終えると、カラムは手紙を丁寧に折り畳み、内ポケットへしまった。
「行こう」
シラスは立ち上がり、上着を整えた。
「ああ、行こう」
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折れた月亭を出ると、シラスは空を見上げた。
灰色の雲が日差しの大半を覆い、屋根の間にわずかな白い光だけが残っていた。通りを吹き抜ける風には湿った冷気が混じっており、彼は無意識に襟を引き上げた。
「日差しがないな。午後には雨が降るかもしれない」
シラスは空を見ながら言った。
カラムはあまり気にしていなかった。
「俺たちが家を探している最中に降らなければ、それでいいさ」
「天気がボウの言うことを聞いてくれるよう祈るんだな」
「それより、無駄なことを言うのをやめるよう祈っておけ」
二人は石畳の道を進み、クラウンマーケット広場へ向かった。
朝の帝都は、試験中に見ていた景色とはまったく違っていた。
地平線まで続く雪原もなければ、険しい岩壁も、足元をすくうほどの強風もない。
代わりにあるのは、軒を連ねる建物や、通りを行き交う馬車、そして客を迎えるために開店し始めた店々だった。
広場では、花売りが噴水のそばに色鮮やかな花束を並べていた。短いローブを着た配達人たちが、革の鞄に手紙を詰め込み、通路を走り抜けていく。荷車のそばでは、商人たちが布地の値段について言い争っていた。
カラムは歩きながら、両側の店を眺めた。
「やっぱり帝都は故郷とは違うな」
「ここは首都だからな」
「いや、そういう意味じゃない。見てみろよ。一つの通りに菓子屋が三軒もある。ここに住んだら、食べ物に困ることはなさそうだ」
シラスは彼を横目で見た。
「菓子のためだけに帝都へ移住するつもりか?」
「いや。酒場もあるし、レストランもあるし、服屋もある……」
「それに女性も、だろ?」
カラムはすぐに笑みを浮かべた。
「ようやく俺のことが分かってきたな」
シラスは首を横に振り、返事をしなかった。
広場を抜けた後、二人は店主に教えられた道を進んだ。
通りは次第に広くなり、両側の建物も立派になっていく。一般向けの商店は徐々に姿を消し、代わりに商業事務所や小さな倉庫、商人向けの専門店が増えていった。
やがて、商人取引所の大きな建物が見えてきた。
灰色の石造りの建物は広い正面玄関を持ち、その上には高い列柱が並び、屋根のドームには商船や歯車、交易を象徴する紋章の浮き彫りが施されていた。
人々が絶えず出入りしており、その多くは上等なローブを着て、帳簿や書類箱を手にしていた。
カラムは建物を見上げ、小さく口笛を吹いた。
「ここは本当に金持ちのための場所だな」
シラスは周囲に伸びる細い道を観察した。
「シルバーリーフはこの近くだろう」
二人は配達人に道を尋ね、さらに二つの角を曲がった。
しばらくすると、賑やかな通りは後方へ遠ざかり、代わりに清潔で静かな道が現れた。
通りの両側には、明るい色の石材で建てられた大きな邸宅が並んでいる。曲線を描く鉄柵や、磨き上げられた木製の門、丁寧に手入れされた小さな庭が目に入った。いくつかの建物には商家の事務所を示す看板が掲げられていたが、大半は個人の住居だった。
やがて、二人はシルバーリーフ通りと記された標識を見つけた。
カラムはその標識の前で立ち止まり、顔を輝かせた。
「ほらな? 見つけられるって言っただろ」
シラスは彼を見た。
「まだ通りを見つけただけだ」
「少しくらい喜ばせてくれたっていいだろ」
二人はさらに番号を探しながら進んだ。
三番地。
五番地。
九番地。
鉄門の向こうに、次々と邸宅が現れる。どの家にもそれぞれの建築様式があったが、どれも家主が金に困っていないことを物語っていた。
十五番地を通り過ぎると、カラムの歩みが少しずつ遅くなった。
そして、二人の目に十七番地が入った。
それを単なる一軒の家と呼ぶのは、おそらく正確ではない。
灰色の石造りの正面玄関に、高い窓、精巧な装飾が施されたバルコニー。前方には小さな庭があり、黒く塗られた鉄柵の向こうには、現在の家主のものと思われる家紋が刻まれた大きな門があった。
カラムはその場に立ち尽くした。
「ここがエララの家なのか?」
シラスは手紙に記された住所と、門に掲げられた番地を見比べた。
「間違いない」
二人は数秒間、黙り込んだ。
カラムは襟を整え、金色の髪を撫でつけ、大きく息を吸った。
「よし。ちょっと尋ねてくる」
「落ち着け。家族が在宅しているかどうかも分からないんだぞ」
「分かってる」
カラムは門へ近づいた。
中庭では、一人のメイドが掃き掃除をしていた。灰色の制服を着て、髪を後ろでまとめている。足音に気づいた彼女は顔を上げた。
カラムはすぐに礼儀正しい笑みを浮かべた。
「こんにちは。エララ・ウィットモアさんをご存じでしょうか?」
箒を握っていたメイドの手が、ぴたりと止まった。
カラムの笑顔はそのままだったが、彼はすぐに彼女の表情が変わったことに気づいた。
彼女はしばらくカラムを見つめ、目元にかすかな悲しみを浮かべた。
「エララ……」
彼女はその名前を小さく繰り返し、うつむいた。
「エララ様は、以前のこの家のご令嬢です」
カラムは瞬きをした。
「以前の……?」
メイドは箒を壁に立てかけた。
「とても優しいお嬢様でした。いつも他人を助けていて、たとえ何も返せない相手であっても、決して見捨てませんでした。私にとって、お嬢様は本当に思いやりのある方でした」
彼女は背後の邸宅を見つめ、ゆっくりと続けた。
「ですが、ご主人様ご夫妻の商売がうまくいかなくなりました。損失が続き、最終的にはこの家を売却して、郊外の住宅地へ移ることになったのです。私はご夫妻についていきませんでした。ここに残り、新しいご主人様に仕えることにしたのです」
カラムは立ち尽くしていた。
その話を聞いて、どう反応すればいいのか分からないようだった。
エララの家族が商売に失敗した?
この家を売らなければならなくなった?
「ご家族がどこへ移ったのか、ご存じですか?」とシラスが穏やかに尋ねた。
メイドは首を横に振った。
「ニュータウンだとだけ聞いています。帝都の郊外にある住宅地です。ご主人様たちがこの家を離れてから、私は一度も連絡を受けていません」
彼女は箒を拾い上げ、会話を終わらせるように言った。
「申し訳ありません。これ以上はお力になれそうにありません」
カラムは彼女を見つめた。顔からは、先ほどまでの喜びがすっかり消えていた。
「いえ、教えてくださってありがとうございます」
メイドは頷き、再び掃き掃除を始めた。
カラムは数秒間その場に立っていたが、やがて静かに向きを変えた。
シラスは隣を歩きながら、すぐには何も尋ねなかった。友人には、今聞いた話を受け止める時間が必要だと分かっていたからだ。
シルバーリーフ通りを離れてから、カラムがようやく口を開いた。
「裕福な商人から、郊外へ移らなきゃならないほどの生活に……」
彼は足元の道を見下ろした。
「考えただけでも、胸が痛くなるな」
シラスは小さく頷いた。
「エララは僕たちの同級生だった。彼女の家族がそんな目に遭ったと聞くのは、僕だってつらい」
少し間を置いて、彼は続けた。
「でも、商売に失敗したからといって、すべてが終わったわけじゃない。再出発するために、時間が必要なだけかもしれない」
カラムはすぐには答えなかった。
まだ、彼の中には希望が残っていた。
エララの家族はかつての家を失ったかもしれない。しかし、彼らはまだ生きている。彼女を見つけられさえすれば、彼女が無事だと分かりさえすれば、すべてがそこまで悪いわけではないのかもしれない。
「ニュータウンか……」カラムは呟いた。「メイドの話が本当なら、そこへ行こう」
シラスは空を見上げた。
「郊外までは遠い。移動手段を探した方がいい」
「必要ない。歩いて行こう」
「カラム、ここからニュータウンまでは、数本の通りを歩くだけじゃないぞ」
「なら、少し長く歩けばいい」
シラスは彼を見つめ、最後には頷いた。
「分かった。歩こう」
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ニュータウンは帝都の外縁部にあり、広い大通りや商人たちの豪邸からは遠く離れていた。
郊外へ向かうにつれて、石造りの建物は次第にまばらになっていく。代わりに、レンガや木材、より安価な建材で建てられた小さな家々が並び始めた。道も狭くなり、場所によっては石畳がまだ完全に敷かれていないところもあった。
小さな商店が交差点沿いに並んでいる。靴の修理屋、パン屋、野菜売りの露店、そして金属を叩く音が絶えず響く工房。
ここは普通の労働者たちが暮らす場所だった。市内で家を借りる余裕のない家族や、さまざまな事情で以前の住居を離れなければならなかった人々が集まっていた。
シラスとカラムは通りを一つずつ回り、店主や住民にウィットモア家について尋ねた。
ほとんどの人は首を横に振った。
エララという名前を覚えている人もいたが、家族がどこへ移ったのかは知らなかった。中には、かつてこの辺りに栗色の髪の少女が住んでいたことを覚えている人もいた。その少女は近所の人々をよく手伝っていたが、もう長い間姿を見ていないという。
カラムは次第に焦り始めた。
彼は雑貨店の前で立ち止まり、店主にもう一度尋ねた。
「すみません。ここにウィットモアという家族が住んでいたのを覚えていますか? 娘さんの名前はエララです」
店主はしばらく考え、それから通りの奥を指差した。
「住宅地の端にある茶屋で聞いてみるといい。あそこの店主は長年ここに住んでいるから、近所の人間のことなら大抵知っているはずだ」
カラムはすぐに礼を言い、シラスを連れて指差された方向へ向かった。
茶屋は小さな通りの角、郊外へ続く土道のすぐそばにあった。低い木造の建物で、正面には古びたテーブルと椅子がいくつか置かれている。色あせた布が庇代わりに張られ、その下には夜に客を迎えるためのオイルランプが吊るされていた。
入口近くのテーブルには、葉巻を手にした年配の男が座っていた。
二人が近づくと、彼は顔を上げた。
「何を飲む?」
カラムは回りくどいことを言わなかった。
「エララ・ウィットモアという人を探しているんです。ご存じですか?」
男はわずかに動きを止めた。
彼はしばらくカラムを見つめ、それからゆっくりと葉巻を置いた。
「エララ・ウィットモアか……」
男はため息をついた。
「ずいぶん長い話になるな。どこから話せばいいものか」
カラムは椅子を引いて座った。シラスも隣に腰を下ろし、男の顔をじっと見つめた。
「彼女に何があったのか、知りたいんです」
男はしばらく黙り込み、適切な言葉を探すようにしていた。
「エララを知ったのは、あの子の家族がニュータウンへ越してきた頃だ。まだ若かったよ。短い栗色の髪に、明るい瞳。いつも楽しそうな顔をしていた。ここへ来て間もなく、あの子は近所でも評判になった」
男は思い出すように、かすかに微笑んだ。
「金持ちだったからでも、上品な服を着ていたからでもない。むしろ、周りの人間と自分が違うなどとは、少しも思っていなかった。老人の荷物を家まで運ぶのを手伝ったり、子供たちにお菓子を分けたり、時には私の店に来て、ただ体調を尋ねたりしてくれた」
カラムは耳を傾け、その表情を少し和らげた。
「家族も、最初は平穏に暮らしていた。父親は工業地区で仕事を見つけ、母親は家で家事をしていた」
男は言葉を切った。
「今でも覚えている、ある日の午後のことだ……」
彼の視線は遠くへ向けられ、ずっと昔に起きた光景を追っているようだった。
「その日、エララは学校から帰ってきたばかりだった。レモネードが飲みたくなったらしく、レモンを何個か買いに私の店へ来たんだ」
男は小さく首を振った。
「あの子はとても明るく笑っていた。その笑顔を見ているだけで、こちらまで楽しい気持ちになったものだ」
男は葉巻を手に取ったが、まだ火はつけなかった。
「ところが、それからほんの数分後、借金の取り立てに来た連中が家へ押しかけてきた」
テーブルの空気が一変した。
シラスは男を見つめ、続きを待った。
「ウィットモア家がどこから金を借りたのか、借金がどれほどの額だったのか、私は知らない。だが、あいつらは話し合いに来たわけじゃなかった。先頭に立っていた男は怒鳴り続け、家具を壊し、あの子の母親に暴力を振るった」
カラムの手が、ゆっくりと握り締められた。
男はテーブルに目を落とした。
「エララの母親は事情を説明しようとし、もう少し時間をくれと懇願した。だが、先頭の男は聞く耳を持たなかった。それどころか、ひどい言葉で彼女を罵ったんだ」
男は重苦しく息を吸った。
「エララは恐怖で立っているのもやっとだった。それでも、彼らにやめてくれと頼み続けた。だが、連中はまるで聞こうとしなかった。母親が倒れると、エララは彼女をかばおうと駆け寄り、そのまま自分も暴行を受けた」
カラムは、もう男の顔を見ていなかった。
彼はうつむき、両手を強く握り締めていた。指の関節が白くなるほどだった。
シラスはそれに気づいたが、何も言わなかった。
「近所の人たちも止めに入ったよ。だが、あの連中はかなり強い法力を持っていた。それに、商業界で力を持つ貴族、ベラフォンテ家と繋がりがあるという噂まであった」
男は乾いた笑みを浮かべた。そこには少しの喜びもなかった。
「ニュータウンの住民の大半は普通の労働者だ。金も権力もないし、後ろ盾になってくれる人間もいない。隣人を守ろうと立ち上がったせいで、自分の家族まで標的にされたらどうする? それが正しい選択だと、誰が保証できる?」
「それでも、警備隊に通報することはできなかったんですか?」とシラスが尋ねた。
「知らせようとした者はいた。だが、警備隊が到着したときには、すべて終わっていた」
男はカラムを見た。
「エララの父親が帰ってきたのは、あまりにも遅かった。母親は重傷を負い、亡くなっていた。家は荒らされ、エララは部屋の隅でうずくまり、言葉も出せずにいた」
男は長い間、言葉を止めた。
「その日の父親の叫び声を、私は今でも覚えている。あの声は近所中に響き渡った。妻の遺体のそばに跪き、長い間、立ち上がろうとしなかったそうだ」
カラムは目を閉じた。
頭の中には、栗色の髪の少女が笑いながら、雑貨店で買ったレモンをいくつか手にしている姿が浮かんでいた。
彼女はかつて、教室で隣に座っていた。好きな本について語り合い、新しい生活について書いた手紙を送ってくれた少女だった。
目の前の男が語る出来事と、その少女の姿を結びつけることができなかった。
「それで、エララは?」カラムは声をかすれさせながら尋ねた。「その後、彼女はどうなったんですか?」
「あの夜、父親はニュータウンの南西に妻を埋葬した。そして、あの場所にはもういたくなかったんだろう。聞いた話では、父親はその夜のうちにエララを連れて町を出たそうだ」
男は小さくため息をついた。
「それ以来、二人を見かけたことはない」
カラムは突然、勢いよく立ち上がった。
「今、彼女はどこにいるんですか?」
その声は、隣のテーブルの客たちが振り返るほど大きかった。
男は不快そうな顔をしなかった。ただカラムを見上げ、若者の胸の内に膨らむ不安を理解しているような目を向けた。
「座りなさい、坊や。続きを話すから」
シラスはそっとカラムの袖を引いた。
「落ち着け、ボウ」
カラムは友人をしばらく見つめ、それからゆっくりと腰を下ろした。
男は葉巻を唇に運び、指先に小さな火を灯して火をつけた。一度吸い込み、庇の外へ向けて煙を吐き出す。
「最後にエララを見たのは、去年のことだ」
カラムはすぐに顔を上げた。
「彼女が戻ってきたんですか?」
「ああ」
男は頷いた。
「だが、あの頃とはずいぶん変わっていた。昔の短い栗色の髪は伸び、服装も変わっていたし、化粧も濃くなっていた。最初は、あの子だと気づかなかったほどだ」
男は空気に溶けていく薄い煙を見つめた。
「私が一番悲しかったのは、外見が変わったことじゃない。あの子が、もう笑わなくなっていたことだ」
カラムの喉が詰まった。
「何をしに来たんですか?」
「レモンを買いに来たんだよ」
男は小さく笑ったが、その笑みはすぐに消えた。
「レモネードが飲みたくなったと言っていた。私は、まだ私のことを覚えているかと尋ねた。あの子は頷いて礼を言い、そのまま立ち去った。最初から最後まで、一度も笑わなかったよ」
男はカラムを見つめ、後悔のにじむ目を向けた。
「昔の短い栗色の髪が懐かしい。本当に明るい子だったのに、どうしてあんな目に遭わなければならなかったんだろうな」
誰も答えなかった。
風が庇を吹き抜け、色あせた布をかすかに揺らした。
カラムは声が震えないように気をつけながら尋ねた。
「彼女がどこへ行ったのか、ご存じですか?」
男は少し考えた。
「確かなことは分からない。だが、時々帝都へ出入りする若者たちが、旧市街の南端に近いランタン・ロウでエララを見かけたと言っていた」
シラスが顔を上げた。
「ランタン・ロウ?」
「ああ。大人向けの歓楽街だ。酒場や宿屋、音楽ホール、それに夜間営業の店が集まっている。なぜあの子がそこへ行ったのかは知らないが、探すつもりなら、あそこで尋ねてみるといい」
カラムはすぐに立ち上がった。
「そこへ行きます」
シラスも立ち上がったが、男が二人を呼び止めた。
「待ちなさい」
男は手を伸ばし、新鮮な黄色いレモンを一つ取り出した。
それをカラムの手のひらに置いた。
「エララに会えたら、これを渡してやってくれ」
カラムは手の中のレモンを見つめた。
「これは……」
「今でもレモネードが好きかどうかは分からない。だが、これを見れば、昔のことを思い出すかもしれないと思ってな」
男は顔を上げ、無力感のにじむ目を向けた。
「あの子に何かあったとき、私は何もしてやれなかった。今だって、何ができるのか分からない。もしあの子を見つけられたなら、少なくとも、あの子のことを今でも優しい人間として覚えている者がいると伝えてやってくれ。あの後に起きた出来事だけで、あの子を覚えているわけじゃないとな」
カラムはレモンを強く握り締めた。
「必ずエララに渡します」
男は頷いた。
「ありがとう」
カラムは向きを変えて歩き出した。シラスもすぐに後を追った。
茶屋を出ると、二人は帝都へ続く道を急いだ。
カラムは一言も話さなかった。ただ、手の中のレモンを大切そうに握り締めていた。それが、今の彼を前へ進ませる唯一のものでもあるかのように。
シラスは友人を見つめ、胸の中に重いものを感じていた。
何を言えばいいのか分からなかった。
ありきたりな慰めの言葉は、エララが経験した出来事の前ではあまりにも小さすぎるように思えた。今、彼女がどんな生活を送っているのか、噂が本当なのか、そして二人がまだ彼女に会えるのかさえ分からない。
それでも、少なくとも探すための手がかりは得られた。
だからシラスは、カラムの後を歩き続けた。
---
ヴァルドレン旧市街の南端は、ヴェイル川沿いに古い石畳の道が続くリバーウォード地区に近い。
この一帯はかつて街の繁華街の一部だったが、時代とともに商業活動の多くはグランド・マーケットや新しい地区へ移っていった。
しかし、夜になると、この場所はまったく異なる姿を見せる。
ランタン・ロウ。
灯籠通り。
そこは大人向けの歓楽街であり、酒場や宿屋、音楽ホール、夜間営業の店が狭い通り沿いに軒を連ねていた。色とりどりのランタンが店先に吊るされ、窓の向こうから聞こえる音楽が、人々の話し声と混ざり合っている。
シラスとカラムが到着した頃には、すでに夕方が近づいていた。
店々は夜の営業に備えて開店し始めていた。店先にランタンを吊るす者もいれば、従業員が荷物を中へ運び込んでいるところもある。通りの一部では、華やかな服装の女性たちが店の前に立ち、通行人と話していた。
カラムは周囲を見回した。その顔には緊張が浮かんでいた。
彼はランタン・ロウへ来たことがなかった。無数に枝分かれする細い通りのどこにエララがいるのか、まったく見当がつかなかった。
二人は聞き込みを始めた。
酒場に立ち寄って給仕に尋ね、宿屋を訪れて支配人に尋ねた。花屋の前でも足を止め、店主がウィットモアという名前を覚えていないかと尋ねた。
しかし、返ってくる答えはどれも同じだった。
知らない。
聞いたことがない。
あるいは、申し訳なさそうに首を横に振るだけだった。
時間が過ぎるにつれて、ランタンには次々と火が灯っていった。空は濃い紫色に変わり、湿った空気のせいで石畳の道は冷たさを増していた。
カラムは次第に焦りを募らせた。
「そんなはずない……」
彼は小さな通りの真ん中で立ち止まり、目の前に並ぶ閉じた扉を見つめた。
「彼女はここにいないのか?」
シラスは行き交う人々を観察した。
「尋ねる場所を間違えているのかもしれない。ランタン・ロウは広いし、この辺りで働く人間を全員知っている者なんていないだろう」
「じゃあ、いつまで聞き回ればいいんだ?」
「見つけるまでだ」
カラムは答えなかった。
さらに少し歩いた後、古い家のレンガ壁の前で足を止めた。壁にもたれかかり、うつむいて手の中のレモンを見つめる。
「エララ……」
その名前は、ほとんど風に溶けてしまうほど小さな声で漏れた。
この再会について、カラムは何度も想像してきた。
シルバーリーフ通りの大きな屋敷で、エララを見つけるのだと思っていた。彼女が扉を開け、自分を見た途端、驚きのあまり言葉を失うかもしれない。その後は二人で帝都を散策し、おいしいものを食べ、エララが手紙で語っていた場所を訪れるのだろう。
もしかすると、そこで自分の気持ちを告白するかもしれない。
彼女は微笑んでくれるかもしれない。
二人でヴァルドレン王立大学へ入学することになるかもしれない。かつて彼女が手紙に書いていたように。
しかし、それらはすべて、カラムが何年も心の中に抱いてきた想像にすぎなかった。
まさか、彼女がどんな経験をしてきたのかも分からないまま、見知らぬ歓楽街で探し回ることになるとは思ってもいなかった。
「今、エララって言った?」
突然、隣から声が聞こえた。
カラムは顔を上げた。
近くの路地から、一人の女性が出てきたところだった。暗い色の上着を着て、長い髪を肩に垂らしている。顔には疲れが浮かび、手には小さな鞄を持っていた。
彼女はカラムから数歩離れたところで立ち止まり、彼を探るように見つめた。
「エララ・ウィットモアを探しているの?」
カラムはすぐに背筋を伸ばした。
「そうです! 彼女をご存じなんですか?」
女性はすぐには答えなかった。
彼女はカラムを頭から足まで眺め、それから尋ねた。
「彼女の友達の私に、どうして会いたいの?」
「彼女は僕の友達です」
「友達?」
女性は眉を上げ、あまり信じていないようだった。
カラムは古い手紙を内ポケットから取り出そうとしたが、途中で手を止めた。エララを知っているかもしれないとはいえ、見知らぬ相手に渡す気にはなれなかった。
「僕はカラム・マーロウです。中等学校の頃、エララと同じ学校に通っていました。彼女に会うために帝都へ来たんです」
女性はさらに数秒、彼を見つめた。
やがて、目に浮かんでいた警戒心が少し和らいだ。
「ついてきて」
彼女は振り返り、路地の中へ歩き出した。
カラムはすぐに後を追った。シラスも彼のすぐ隣を歩き、両側にある暗い路地を注意深く観察していた。
路地は曲がりくねっており、二人が並んで歩くには狭すぎるほどだった。古いレンガ壁には染みが広がり、壁際には水道管が何本も走っている。
路地の奥には、小さな家が一軒建っていた。木製の扉は色あせ、その外には古いランタンが吊るされている。
女性は扉を開け、二人に入るよう促した。
室内は簡素だった。
部屋の中央には木製のテーブルがあり、統一感のない椅子がいくつか並んでいる。壁には小さな本棚があり、古い本が数冊、枯れた花を挿した花瓶の隣にきちんと並べられていた。
女性は腰を下ろし、上着のポケットから煙草を取り出した。
「座って」
カラムとシラスは彼女の向かいに座った。
女性は指先に小さな火を灯して煙草に火をつけ、一度吸ってからゆっくりと煙を吐き出した。
「エララは私の友達よ」と彼女は言った。「ここ、ランタン・ロウで一緒に働いていたの」
カラムの胸が重く沈んだ。
「彼女は……ここで働いていたんですか?」
女性は頷いた。
「ええ。以前はね」
最後の二文字に、カラムはすぐ顔を上げた。
「以前は?」
女性は彼を見つめた。その目には、重苦しいものが浮かんでいた。
「エララは優しくて、勤勉な子だった。退屈だった私の人生を救ってくれた人、と言ってもいい。初めて会ったときは、彼女のような子がこんな場所にいるべきじゃないと思ったくらいよ」
彼女は煙草を持つ指先を見下ろした。
「でも、彼女には選択肢があまりなかった。家族の借金を返すためにお金が必要だと言っていたの。お金さえ手に入るなら、どんな客でも受け入れるつもりだった」
カラムはテーブルの下で両手を強く握り締めた。
シラスは友人の顔が青ざめていくのに気づいたが、黙って女性の話を聞き続けた。
「彼女はほとんど休まずに働いていた。眠る時間を作りなさい、ちゃんと食事をしなさいと何度も言ったけれど、彼女は首を横に振るだけだった。いつも、立ち止まるわけにはいかないと言っていたわ」
女性は悲しげに笑った。
「不思議なことに、あれほど働いていたのに、エララは決して笑わなかった。周りの人には優しく接していたし、新しく来た子たちの面倒も見ていた。でも、彼女の中の何かは、ずっと前に死んでしまったようだった」
カラムはうつむいた。
女性は言葉を止め、目元を少し赤くした。
「ある晩、エララは父親が亡くなったと知ったの。その日、彼女は初めて部屋に閉じこもり、一日中泣いていた。食事も取らず、誰とも話そうとしなかった」
彼女は手で目元を拭い、続けた。
「その日を境に、エララは以前にも増して無理をするようになった。客を増やし、倒れる寸前まで働いていた。何度も休むように説得したけれど、聞いてくれなかった」
重苦しい沈黙が部屋を包んだ。
そして、女性はカラムが最も聞きたくなかった言葉を口にした。
「ある日、エララは自分が病気だと知ったの」
カラムは勢いよく顔を上げた。
「どんな病気ですか?」
女性は彼を見つめ、声を小さくした。
「性感染症よ。病気のことを知ったとき、彼女はひどく落ち込んでいた。詳しい経緯は知らない。ただ、病気が分かった頃には、エララにはもうほとんど体力が残っていなかった」
彼女は深く息を吸い、気持ちを落ち着かせようとした。
「治療費が高すぎるからと、彼女は治療を拒んだ。最期の日々、エララはほとんどベッドの上で過ごし、病と闘っていた。できる限りそばにいたけれど、彼女をよくするために私ができることは何もなかった」
カラムは言葉を失った。
彼は目の前の女性を見つめ、それから手の中のレモンへ視線を落とした。何かが胸を締めつけているようで、息をすることさえ重く感じられた。
シラスは友人の肩に手を置いた。
何を言えばいいのか分からなかった。エララが経験した出来事は、二人が想像していたものをはるかに超えていた。
女性は立ち上がり、部屋の隅にある木製の戸棚へ向かった。
引き出しを開け、丁寧に折り畳まれた一通の手紙を取り出す。紙の端は少し傷んでいたが、大切に保管されていた。
彼女は手紙を長い間見つめ、それから戻ってきてカラムの前に置いた。
「亡くなる前、エララが私にこの手紙を渡したの」
カラムは震える手で受け取った。
女性は彼を見つめた。目はすでに赤くなっていた。
「いつか誰かが訪ねてきたら、この手紙を渡してほしいと言っていたわ」
カラムは顔を上げた。
「彼女は……僕が来ると分かっていたんですか?」
「分からないわ。ただ、昔の友達が自分を訪ねてくるかもしれないと言っていた。そして、その人にこの手紙を渡してほしいと頼まれたの」
女性は顔をそむけ、涙を隠そうとした。
「あなたがエララにとってどんな存在だったのか、私には分からない。でも、彼女が長い間、何かを待ち続けていたことは知っているわ」
カラムは手紙を胸に抱きしめた。
女性は扉のそばに立ち、深く息を吸ってから言った。
「エララに会いたいなら、帝都西部にある墓地へ行って。彼女はそこに埋葬されているわ」
彼女は扉を開き、声を詰まらせながら言った。
「行ってあげて」
カラムは立ち上がったが、脚に力が入らないようだった。
シラスも立ち上がり、女性に頭を下げた。
「エララのそばにいてくださって、ありがとうございました」
女性は答えなかった。
ただ二人に背を向けたまま立ち、肩を小さく震わせていた。
カラムは外へ出て、手紙を強く握り締めた。何も言わず、周囲を見ることもない。シラスが後を追ったときには、カラムはすでにかなり先を歩いていた。
「カラム」
彼は立ち止まらなかった。
シラスは仕方なく追いかけた。
「ボウ、待ってくれ」
カラムは大通りへ向かい、帝都西部へ続く道を急ぎ続けた。
立ち止まりたくなかった。
今聞いたことを考えたくなかった。
エララの最期の日々がどのようなものだったのか、想像したくもなかった。
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西墓地――ウェストグレイヴ墓地は、ヴァルドレンで最も古い墓地の一つだった。
帝都の西部、中心街へ続く道の近くに位置している。広大な敷地は低い石壁に囲まれ、古い鉄門には蔦を模した装飾が施されていた。
敷地内には、葉を落とした木々の影の下、石造りの墓が隙間なく並んでいる。小石を敷いた細い通路がその間を通り、手入れの行き届いた花壇がところどころに設けられていた。
遠くには、灰色の尖塔屋根を持つ小さな礼拝堂がある。内部では蝋燭が灯され、その弱い光が色ガラスの窓から漏れていた。
墓地の一角は、個別の墓所を持つ裕福な家族のための区画だった。大きな墓石や鉄柵で囲まれた墓が並んでいる。残りの区画は、家名も財産もなく、立派な墓を建てることのできない普通の人々が眠る場所だった。
ここには、帝都の城壁よりも古い墓石さえあった。
市民たちは追悼の日になると、花や蝋燭、そして亡くなった人が生前好んでいた小さな品を持って訪れる。
カラムが鉄門をくぐったとき、目の前に広がる墓石の列以外、ほとんど何も目に入っていなかった。
彼は小石の敷かれた道を急ぎながら、探している名前を目で追った。
エララ・ウィットモア。
エララ・ウィットモア。
彼は心の中でその名前を繰り返した。何度も考え続けていれば、どこかから彼女が現れ、どうしてそんなに遅く来たのかと笑いながら尋ねてくれるような気がした。
シラスは後ろを歩き、急かすことはしなかった。
カラム自身の手で、その墓を見つける必要があると分かっていたからだ。
二人は古い墓石の列を通り過ぎ、小さな礼拝堂を回り、一般市民のための墓地へ向かった。
そこでは墓石が小さくなり、長い年月によって文字が擦り減り、読みにくくなっているものも多かった。枯れた花が置かれた墓もあれば、石碑の前に小さな灯りが一つだけ置かれた墓もあった。
カラムは一つの墓の前で立ち止まり、名前を確かめた。
違う。
彼は先へ進んだ。
また立ち止まる。
それも違う。
時間が過ぎるにつれ、灰色の雲はさらに厚くなっていった。冷たい風が墓地を吹き抜け、葉のない枝をかすかに揺らした。
そしてついに、カラムは南西の鉄柵近くにある小さな墓石を見つけた。
そこには二つの名前が刻まれていた。
オリバー・ウィットモア。
エララ・ウィットモア。
カラムは動けなくなった。
一瞬、周囲の音がすべて消えたように感じられた。
彼はその名前を見つめ、それからゆっくりと近づいていった。
墓は大きくなかった。淡い灰色の墓石の前には、枯れかけた花が数本置かれている。その隣には小さな蝋燭立てがあり、根元には固まった蝋が残っていた。
ここを訪れる人は、それほど多くないのかもしれない。
カラムは墓石の前に跪いた。
両手は震え、手紙を落としそうになっていた。彼はレモンを花の隣に置き、石に刻まれたエララの名前を見つめた。
「エララ……」
声は小さく、風に溶けてしまいそうだった。
彼女と再会したら、たくさんのことを話すつもりだった。
帝都での暮らしはどうだったのか、今でも本を読むのが好きなのか、新しい友達はできたのか。自分の生活についても話すつもりだった。アウレリアン・コーストからヴァルドレンまでの列車の旅や、クラウンフェルの試験、そしてそこで起きた数々の不思議な出来事について。
手紙をもっと頻繁に送ってくれなかったことを責めるつもりだった。
笑い合い、そしてずっと前から君が好きだったと告白するつもりだった。
だが今、彼の目の前にあるのは、冷たい墓石だけだった。
カラムはうつむき、手紙を開いた。
中には、少し黄ばんだ一枚の紙が入っていた。何度も開かれ、折り畳まれた跡が残っている。
彼はすぐに、その筆跡を見分けた。
エララが中等学校の頃に送ってくれた手紙と、まったく同じ筆跡だった。
少し右に傾いた文字。柔らかな筆のつなぎ方。そして、いつも最初の行に自分の名前を書いていた癖。
カラムは震える息を吸い込み、読み始めた。
「こんにちは、カラム! エララ・ウィットモアだよ」
彼はそこで動きを止めた。
たったそれだけの簡単な書き出しなのに、目の奥が熱くなった。
エララが机に座り、ペンを持ってこの文章を書いている姿を想像できた。きっと何度も手を止めたのだろう。どこから書き始めればいいのか、長い間考えたのかもしれない。
カラムは続きを読む。
「手紙を送れなくてごめんね。ヴァルドレンの郵便料金って本当に高いんだ。私には払えなくて……ごめんね!」
一滴の涙が紙の上に落ちた。
カラムは慌てて手で拭ったが、涙は次々とこぼれ落ちていった。
「馬鹿だな……」
彼はかすかに呟いた。
「そんなことで謝る必要なんてないのに……」
カラムは、エララが手紙を書かなかったのは勉強や仕事で忙しかったからか、新しい生活に慣れてしまったからだと思っていた。
何度か、手紙が届くのを待ち続け、外で配達人の声が聞こえるたびに玄関へ走っていったこともあった。
彼女に腹を立てたこともある。自分のことを忘れてしまったのではないかと思ったこともあった。
だが、一通の手紙さえ彼女にとって贅沢になり得るとは、想像したこともなかった。
カラムは顔を拭い、続きを読む。
「もしあなたがこの手紙を読んでいるなら、私はもうこの世にいないんだと思う」
彼は動きを止めた。
指先が紙の端を強く握り締める。
その瞬間、カラムはまだ自分に嘘をつこうとしていた。これは悲観的な言い回しにすぎないのかもしれない。絶望していたときに書いただけで、病気を乗り越えた可能性だってあるのではないか。
しかし、目の前の墓石は、それ以上の自己欺瞞を許してくれなかった。
彼はうつむき、無理やり続きを読んだ。
「中等学校に通っていた頃から、あなたが私のことを密かに好きだったのは知っていたよ。私も同じだった!」
カラムは勢いよく顔を上げた。
目を大きく見開き、信じられないものを聞いたかのような表情を浮かべる。
「何だって……?」
彼はその一文を見直した。
もう一度読む。
そして、さらにもう一度。
エララは知っていた。
中等学校の頃から、彼の気持ちに気づいていた。
それに、彼女も……。
カラムは口元を手で覆ったが、こみ上げてくる嗚咽を抑えることはできなかった。
何年もの間、彼はその想いを隠してきた。告白すれば、二人の友情が変わってしまうのではないかと恐れていた。エララを困らせてしまうのではないかと心配していた。
いつか二人がもっと大人になったら、気持ちを伝えるのにふさわしい機会が訪れる。ずっとそう考えていた。
彼は待っていた。
自分に誇りを持てるようになるまで。
帝都へ行けるようになるまで。
彼女にどれほど深く想いを寄せているのか、伝える勇気が持てるまで。
しかし、エララもまた、待っていたのだ。
そして今、二人には、何年も胸の内にしまってきた言葉を交わす機会が永遠に失われてしまった。
カラムはうつむき、涙を紙の上に落とした。
続きを読もうとしたが、目の前の文字はすでに滲んでいた。
「ただ、あなたが告白してくれる日まで待てなかったことだけが残念だよ」
カラムは震える息を吸った。
「いや……」
彼は首を横に振った。
「そんな……エララ……」
たった三つの言葉が、これほどまでに胸を締めつけるとは思ってもいなかった。
彼は、その三文字の言葉を何度も伝える機会があると思っていた。二人はまだ若く、これから長い未来が待っている。再会する機会も、気持ちを伝える時間も、いくらでもあるはずだった。
だが、時間は誰かを待ってはくれない。
そして、いつか必ず実現すると思っていたことが、永遠に叶わなくなることもあるのだ。
カラムは一文字ずつ、続きを読む。
「ヴァルドレンに引っ越す前、あなたを連れて街中を案内するって約束したよね。約束を守れなくてごめんなさい」
彼は墓の前に置いたレモンを見つめた。
古い記憶がふいに蘇る。
中等学校に通っていた頃、エララは教室の窓辺に立ち、ヴァルドレンは世界で一番素晴らしい場所だと話していた。
石畳の通りや菓子屋、高くそびえる鐘楼、何百万冊もの本を収められる図書館について語っていた。
そのときカラムは笑い、旅行ガイドにでもなるつもりかと尋ねた。
エララは机に手をつき、首を傾けて彼を見た。
「いつかあなたがヴァルドレンに来たら、私が街中を案内してあげる。最高においしいものを食べて、一番きれいな建物を見て、一番大きな図書館にも行くの。絶対に断っちゃだめだからね!」
カラムは笑顔で答えた。
「いいよ。でも、食事代は君が払ってくれよ」
エララは笑い、チョークを一つ彼に投げつけた。
「食いしん坊!」
あの日、二人は長い間笑っていた。
カラムはその約束を一度も忘れたことがなかった。
だから、エララがヴァルドレンに住んでいると知ったとき、彼は試験後の最初の夜でさえ眠れないほど胸を躍らせていた。
二人で街を歩き、菓子を食べ、夕暮れのヴェイル川を眺める姿を想像していた。
しかし今、彼は彼女の墓の前に立っている。
そして、その約束は永遠に果たせなくなった。
カラムは目を閉じ、気持ちを落ち着けようとした。
続きを読む。
「ヴァルドレンに来たばかりの頃、いつかあなたと一緒にヴァルドレン王立大学へ入学できると思っていたよ。同じ学院で学び、一緒に卒業して、その後もいろんなことを一緒にするんだって!」
カラムの喉から、嗚咽が漏れた。
ヴァルドレン王立大学。
彼とシラスが、昨日ようやく足を踏み入れた場所。
エララがかつて学ぶことを夢見ていた場所。
彼は顔を上げ、墓地の向こうに遠く見える高い塔を眺めた。
頭の中では、エララが学生服を着て、大きな教室の中で自分の隣に座り、本を読んでいる姿が浮かんでいた。
彼がくだらない話をすれば、彼女は笑ってくれるだろう。
授業中に集中するよう、注意してくれるかもしれない。
一緒に図書館へ行き、学園の敷地で昼食を取り、夕暮れには石畳の道を歩くこともできたはずだ。
二人は同級生になれたかもしれない。
互いに支え合う仲間になれたかもしれない。
一緒に卒業できたかもしれない。
若者たちがよく夢見るような、さまざまな未来があったはずだった。
しかし、カラムがヴァルドレンへ足を踏み入れる前に、そのすべては終わってしまった。
彼はうつむき、声を詰まらせた。
「俺はもう来たんだ、エララ……」
墓石を見つめる。
「ヴァルドレンに来たんだよ……」
返事はなかった。
葉の落ちた木々の間を、風が吹き抜けていくだけだった。
カラムは手紙を読み続けた。
「でも、人生は簡単じゃないし、運命がいつも自分の望みどおりになるわけじゃない。もしかしたら、運命は私のことが嫌いなのかもしれないね」
彼は紙を強く握り締めた。
「違う……」
カラムは首を横に振った。まるでエララが目の前に座っていて、自分の言葉を聞いてくれるかのように。
「そんなことない。君は何も悪くない」
彼女に伝えたかった。
あんな目に遭う必要などなかったのだと。家族が苦境に陥ったことも、母親を失ったことも、父親が亡くなったことも、その後の出来事も、決して彼女のせいではないのだと。
しかし、最も伝えたい相手に、その言葉を届ける方法はなかった。
彼は続きを読む。
「でも大丈夫。私は今も毎日、病気と闘いながら頑張っているよ。もし、いつか病気に負けてしまっても、悲しまないでほしいな。一緒にいろんなことができなくてごめんね」
カラムはすぐには続きを読むことができなかった。
彼はうつむき、紙を膝の上に置いた。肩は震え、呼吸は途切れ途切れになっていた。
分からなかった。
どうしてエララは、こんな言葉を平然と書くことができたのだろう。
一緒に約束したことを果たせないと謝る必要が、どうしてあったのだろう。
本当に謝るべきなのは、あまりにも多くの苦しみを味わってきた彼女ではないはずなのに。
彼女は母親を失った。
父親も失った。
かつて自分の居場所だった家を離れなければならなかった。
見知らぬ街で暮らし、以前なら想像もしなかったような仕事をし、最後には命を奪う病気と向き合わなければならなかった。
それなのに、最期までエララが考えていたのは、カラムとの約束だった。
自分が彼を悲しませることへの心配だった。
カラムの胸は、痛いほど締めつけられた。
彼はもう、平静を装うことができなかった。
涙が紙に落ち、時間とともに薄れていたインクの一部を滲ませた。
シラスは後ろに立ち、黙って友人を見つめていた。
カラムがこれほどまでに苦しむ姿を、彼は今まで見たことがなかった。
カラムはいつも、仲間の中で最もよく喋る人間だった。真剣な議論を冗談に変え、最も張り詰めた状況でも誰かを笑わせることができた。何事も自分を悲しませるほどではないと、平気な顔をしてみせることもあった。
しかし今、小さな墓の前では、そのすべてが消えていた。
シラスは近づき、カラムの肩に手を置いた。
すべてうまくいくとは言わなかった。
強くなれとも言わなかった。
言葉だけで癒やせるような痛みではないものがあるからだ。
だからシラスは、ただ友人の隣に立ち、誰かに見られる心配をせずに泣けるよう、そばにいてやった。
カラムは震える息を吸い込み、最後の一行を読もうとした。
「本当に、ごめんなさい」
手紙はそこで終わっていた。
長い別れの言葉はない。
飾り立てた署名もない。
ただ、短い謝罪だけが残されていた。まるでエララは、自分がカラムを失望させてしまったと思っているかのようだった。
カラムは長い間、手紙を見つめていた。
やがて、慎重に紙を折り畳んだ。エララがかつて彼に送ってくれた手紙と同じように。
それを胸元に当て、墓石を見下ろした。
「エララ……」
声が崩れた。
「お願いだ……冗談だと言ってくれよ……」
彼は笑おうとしたが、唇は震えるばかりだった。
「昔みたいに、俺をからかっているんだろ? どこかから出てきて、こんな話を信じた俺を馬鹿だって笑ってくれよ……」
カラムは周囲を見回した。木の陰から彼女が現れるのではないか、通路の向こうに悪戯っぽい顔をして立っているのではないかと、まだ期待しているかのようだった。
しかし、墓地は静まり返っていた。
誰も現れなかった。
彼はうつむき、涙を流し続けた。
「会いに来たんだ……」
カラムは手紙を強く握り締めた。
「本当に、君に会いに来たんだよ……」
彼は枯れた花の隣に置いたレモンを見つめた。
カラムはそれを手に取り、墓石の前へ丁寧に置き直した。
「君はまだレモネードが好きだって聞いた」
彼は呼吸を整えようとしたが、喉が詰まった。
「今も好きかどうかは分からない。でも、持ってきたんだ」
彼は石に刻まれた名前を見つめた。
「そういえば、昔、君はチョコレートが大好きだって言っていたよな。でも、虫歯になるからって、両親があまり食べさせてくれなかったんだっけ?」
また一つ、記憶が蘇る。
エララは教室で、カラムの机の上に置かれた小さなチョコレートを、羨ましそうに眺めていた。カラムが食べるかと尋ねると、彼女は首を横に振り、母親が甘いものを食べすぎてはいけないと言っているのだと答えた。
そのとき、カラムは笑いながらチョコレートを半分に割り、その片方を彼女の手に置いた。
「じゃあ、半分だけ食べればいい。これなら虫歯にならないだろ」
エララは彼を見て笑った。
「本当に、くだらないことを正当化するのが上手なんだから」
「それが俺の才能だ」
「じゃあ、その才能は先生に叱られたときに使うといいよ」
二人は長い間笑っていた。
カラムは墓を見つめ、赤くなった目を伏せた。
「今度、チョコレートを買ってくるよ……」
声が次第に小さくなる。
「君のために、たくさん買ってくる。君が一番好きなやつを。目の前に置いて、好きなだけ食べてもらうんだ……」
彼は笑おうとしたが、涙は止まらなかった。
「もう両親に叱られることもない。好きなだけ食べていいんだ……」
カラムの声は崩れた。
「だから……お願いだから、戻ってきてくれよ……」
彼は身体を折り曲げ、両手で墓石の縁を掴んだ。
「エララ……お願いだ……」
彼の泣き声が、静まり返った墓地に響いた。途切れ途切れで、どうしようもなく無力な声だった。
「まだ君に伝えていないことがあるんだ……」
彼は最後まで言い切ることができなかった。
何年もの間、胸の奥にしまい込んできた言葉。これから先、いくらでも伝える時間があると思っていたこと。それらは今、喉の奥に詰まったままだった。
彼は彼女に伝えたかった。
好きだと。
ずっと好きだったと。
どれほど再会の日を待ち望んでいたかを。
二人で過ごす未来をどれほど想像していたかを。
決して諦めるつもりなどなかった未来を。
しかし、もうエララはそこにいて、聞いてくれることはなかった。
シラスはうつむき、自分の目も熱くなるのを感じた。
エララがどれほどの苦しみを味わったのか、彼には分からない。カラムが今、何を感じているのかも、すべて理解できるわけではない。
それでも、一つだけ分かることがあった。
友人は、かつて密かに想いを寄せていた相手を失っただけではない。
青春の一部を、果たせなかった約束を、そして何年も待ち続けてきた未来そのものを失ったのだ。
シラスはカラムの隣に腰を下ろした。
友人を無理に立ち上がらせようとはしなかった。
帰ろうとも言わなかった。
ただ、そこに座り、静かに寄り添っていた。
ゆっくりと時間が過ぎていく。
灰色の雲が空を覆い、最初の雨粒が石の上に落ち始めた。雨粒は墓石に刻まれた文字を伝い、黄色いレモンや枯れた花の隣に溜まっていった。
カラムはエララの墓の前に跪いたまま、両手で手紙を抱きしめていた。
どれほど泣いていたのか、自分でも分からなかった。
ただ、顔を上げたときには夕暮れがすでに終わりかけ、霧雨の中、小さな礼拝堂の灯りがともり始めていた。
カラムはまだそこに座っていた。
エララ・ウィットモアという名前を見つめ、手紙の一行一行を何度も読み返した。まるで、その言葉を一生忘れないように刻みつけようとしているかのようだった。
彼はヴァルドレンに来た。
クラウンフェルを乗り越えた。
エララを見つけた。
しかし、遅すぎた。
そして初めて、カラム・マーロウは、どれほど努力しても取り戻せないものがあるのだと理解した。
受け取る相手がもういなくなってから、ようやく伝えられる愛の言葉がある。
永遠に一枚の紙の上に残される約束がある。
何年も待ち続けた再会が、最後には冷たい墓石だけを残して終わることもある。
彼は最後にもう一度、エララ・ウィットモアの名前を見つめた。
「ごめん……」
カラムは小さく呟いた。
「遅くなってしまった」
返事はなかった。
ただ、冷たい石の上に雨が降り続いていた。
その灰色の午後、帝都の古い墓地で、一人の青年はようやく理解した。
果たせなかった約束のすべてが、守ろうとしなかったから果たせなかったわけではない。
人生が、二人に十分な時間を与えてくれなかっただけなのだ。
カラムはゆっくりと立ち上がった。
手紙を内ポケットにしまう。その動作は、残された最も大切なものを守るかのように慎重だった。
それから墓石に向かって頭を下げた。もう何も言わなかった。
シラスも立ち上がった。
二人は霧雨の降る小石の道を歩き、墓地を後にした。カラムは何も話さず、振り返ることもなかった。
しかし、墓地の門を出る直前、彼はもう一度足を止めた。
葉を落とした木々の向こうに、南西の小さな墓がまだ見えた。そこには、エララ・ウィットモアという名前が刻まれている。
彼は長い間、じっと立っていた。
そして最後には向きを変え、再び歩き出した。
前方にはヴァルドレン帝都が広がっていた。通りには、次々と灯りがともり始めている。
背後には、決して果たされることのない約束が残されていた。
そして彼の胸元には、エララの手紙が心臓のすぐそばにしまわれていた。二人があまりにも長く待ち続け、ようやく言葉にできた想いを携えて。
最後になって、カラムは何年も待ち望んでいた答えを知ることができた。
ただ残念なことに、自分もまた、どれほど長く彼女を待ち続けていたのかを、エララに伝える機会はもう残されていなかった。
第19章・完




