第18章:新たな旅路
山腹を吹き抜ける風は、ますます激しさを増していた。
冷たい風が岩壁を駆け抜け、細かな雪を巻き上げて視界を白く染める。時折、突風が不意に襲いかかり、三人は足を止め、身体を低くして転倒しないよう踏ん張らなければならなかった。
何枚も服を重ね着し、温陽符まで使っているというのに、冷気はなおも衣服の隙間から忍び込んでくる。まるで、クラウンフェルは決して弱者のための場所ではないと、彼らに思い知らせようとしているかのようだった。
フィニアンは手に持った魔法の箒を見つめ、それから前方の空を見上げた。
数秒間黙り込んだ後、彼は結局、箒を使わないことに決めた。
「この風の中で飛び上がるなんて、山に命を差し出すようなものだ」
カラムは箒に目をやった。
「本当に風のせいなのか? それとも、単に飛ぶのが下手なだけじゃないのか?」
フィニアンは振り返り、彼を睨みつけた。
「なら、ボウがこの天候の中で飛んでみるか?」
「いや、遠慮しておく。俺はちゃんと学院に入るまで生きていたいんでね」
「だったら黙って歩け」
「はいはい、隊長殿」
シラスは先頭を歩きながら、二人の言い争いを聞いていたが、振り返ることはなかった。彼の意識は、山頂へと続く道に向けられていた。
朝、見張り塔の廃墟を出発してから、地形は明らかに変化していた。
松林は次第に後方へ遠ざかり、代わりにむき出しの岩肌や深い亀裂、そして一人がようやく通れるほどの狭い道が現れ始めた。
三人は縦一列になって進まざるを得なかった。
先頭がシラス、中央がフィニアン、最後尾がカラムだ。この配置なら前後の状況を確認できるうえ、突風によって全員が一度に道から吹き飛ばされる危険も減らせる。
シラスの視線は、依然としてクラウンピークに向けられていた。
山頂は灰色の雲の層に隠れたり、姿を現したりしている。岩場を一つ越えるたびに、少しずつ近づいているような気がした。しかし、目の前に続く曲がりくねった道は、いつまで経っても終わる気配がなかった。
一方、カラムはそこまで集中していなかった。
歩きながら周囲をきょろきょろと見回し、時折、雪面に残された痕跡を覗き込んでいる。
突然、彼は足を止めた。
「待った」
シラスが振り返る。
「どうした?」
カラムは少し離れた場所にある岩場を指差した。
「あっちを見てみろ」
岩壁の麓には、数体の遺体が散らばっていた。いくつかはほとんど雪に埋もれ、暗い色のコートだけがわずかに覗いている。少し離れた場所にも、岩の間に横たわる人影がいくつか見えた。
フィニアンは黙ってそちらを見つめた。
「何日か前から、ここに放置されていたのかもしれないな」
「この気温なら、遺体はほとんど腐敗しない」シラスはしばらく観察してから言った。「だが、それは彼らが亡くなったのが最近だという意味ではない」
カラムは雪の中に横たわる人々を見つめた。いつものふざけた表情も、少しだけ薄れていた。
「いったい、何に遭遇したんだろうな……」
誰も答えなかった。
クラウンフェルの試験は、受験者の戦闘能力や生存能力、そして環境への適応力を確かめるために行われている。しかし、こうして旅を続けられなくなった者たちを目の当たりにすると、この試験がどれほどの代償を要求するのか、シラスにも改めて実感できた。
それでも、いつまでも立ち止まっているわけにはいかない。
彼らには、まだ進むべき道が残っている。
「生きている者がいないか、確認した方がいい」
フィニアンが言った。
シラスは頷いた。
三人は慎重に近づいていった。フィニアンが箒の柄で一番近くに倒れていた人物の身体から薄い雪を払い、シラスがしゃがみ込んで生存の兆候を確かめる。
しかし、しばらくすると彼は小さく首を横に振った。
もう、救える者はいなかった。
彼らは荷物を探すこともなければ、脱落した者たちから点数を得ようとすることもなかった。安全に確認できる範囲に生存者がいないと判断すると、三人は再び山頂を目指して歩き始めた。
背後では、倒れた人々の姿が再び雪の帳に覆われていった。
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試験終了まで、残り二日。
何事もなければ、今日の午後にはクラウンピークの頂上に到着できるはずだった。
シラスは心の中で残りの距離を計算していた。彼は時間や道気の消費量、そして起こり得る事態をあらかじめ見積もることに慣れている。
しかし、この山腹では、どれほど慎重に計算しても、一度の突風だけで意味を失ってしまうことがあった。
体力を温存する必要がある。
この先にどんな生物がいるのか、誰にも分からない。ほかの受験者たちが、まだこの一帯に残っているかどうかさえ確かではなかった。
そのため、三人は道中ほとんど会話を交わさなかった。
ただし、カラムを除いて。
「なあ、見えるか? ここから見ると、山頂が巨大な帽子みたいに見えるぞ」
誰も答えなかった。
「それとも、クリームをたっぷり塗ったケーキかな?」
フィニアンはため息をついた。
「ちゃんと前を見て歩けないのか?」
「ちゃんと集中しているさ。ただ、この張り詰めた空気を少し和らげてやろうと思っただけだ」
「だったら、黙っていることで和らげてくれ」
「フィニアン、人間には精神の健康を保つために会話が必要だって知っているか?」
「なら、岩と会話でもしていろ」
カラムはシラスの方を振り向き、味方を探すような目を向けた。
「シラス、見ただろ? 俺たちは思いやりのかけらもない人間と一緒に歩いているんだ」
シラスは雪に覆われた岩を一つ乗り越え、平然と答えた。
「岩の方が、フィニアンの提案を喜んでくれると思うぞ」
カラムは二秒ほど黙り込んだ。
「分かった。理解したよ。君たちは俺を敵に回す同盟を結んだんだな」
「ようやく気づいたか」とフィニアンが言った。
カラムは首を振りながら、再び歩き始めた。
とはいえ、その後しばらくの間、彼が口を開くことはなかった。
シラスにとっては、それだけでも奇跡と言える出来事だった。
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正午頃になると、道はさらに険しくなっていった。
いくつかの急斜面では、岩の突起に手をかけながら登らなければならなかった。足首まで雪に埋もれる場所もあれば、風に雪を吹き払われ、滑りやすい岩肌がむき出しになっている場所もあった。
シラスはゆっくりと、しかし確実に進んでいた。危険な道に差しかかるたび、彼は立ち止まって周囲を観察し、進む方向を決めていた。
フィニアンはその後ろにぴったりと続き、時折、箒を使って岩の隙間や足場の状態を確かめていた。
カラムは山登りが好きではなかったが、念動術の能力は十分に役立っていた。必要に応じて小さな岩を道からどかしたり、滑りやすい場所を通過する仲間の身体を支えたりしている。
三人の連携は、かなりうまくいっていた。
多くを言葉にする必要はない。視線やちょっとした仕草だけで、ほかの二人は何をすべきか理解できた。
道中、彼らは岩場のあちこちに負傷した生物を見つけた。
角が湾曲した雪獣が、亀裂に脚を挟まれていた。別の生物は狼に似た姿をしていたが、背骨に沿って硬い鱗が並んでおり、倒木の下で動かなくなっていた。
どの生物も重傷を負い、もはや抵抗する力は残っていなかった。フィニアンは手早く処理した。
無駄な時間も体力も使わず、効率よく作業を終えていく。
獲得した点数を計算すると、フィニアンは喜びを隠せなかった。
「さっきまで三十六点だったのが、五十六点になったぞ!」
カラムが振り返った。
「おめでとう。ようやく、俺の点数を見て憎しみに満ちた目を向ける必要がなくなったな」
「俺は一度も、君の点数を憎しみの目で見たことなんてない」
「本当か? じゃあ、昨日のあの目は何だったんだ?」
「君みたいにしゃべり続ける人間が、どうしてここまで生き残れたのか不思議に思っていただけだ」
シラスは小さく笑った。
カラムは胸に手を当て、深く傷ついたふりをした。
「フィニアン、君の言葉はこの山の風よりも冷たいな」
「なら、口数を減らして暖を取るといい」
「その理屈には何の意味もないだろ!」
「でも、もう数秒は黙っていられたな」
カラムは反論しようとしたが、結局ため息をつき、再び山を登り始めた。
さすがの彼も、無意味な議論に体力を使いすぎるべきではないと理解していた。
クラウンピークの頂上は、もうすぐそこだった。
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午後の陽が傾き始めた。
灰色の雲が薄い帯状に分かれ、山頂の上に青白い空が姿を現した。風はまだ強かったが、朝ほど激しくはない。
一歩進むごとに、彼らは確実に目的地へ近づいていた。
そして、シラスが足を止めた。
目の前には、クラウンピークの頂上へと続く最後の岩道があり、その先には広い平地が見えていた。
あと数十歩。
シラスは顔を上げ、しばらく何も言わずに頂上を見つめた。
十日間にわたる試験。数々の衝突、逃走、凍える夜。そして、ほんの少し判断を誤っただけで、大きな代償を払うことになりかねなかった幾つもの決断。
彼らはついに、ここまでたどり着いたのだ。
「やったぞ!」
フィニアンが歓声を上げた。
彼は顔に吹きつける冷たい風のことさえ忘れたように、急いで前へ進んでいった。カラムもすぐに後を追う。今度ばかりは、冗談を言う余裕さえなかった。
シラスは二人の友人を見て微笑み、その後を歩き始めた。
あと数十歩。
しかし、彼らにとってその距離は、はるかに長い旅路の終着点のように感じられた。
三人が最後の岩場を越えると、クラウンピークの頂上が目の前に広がった。
そこには、カラムが想像していたような壮麗な門も、巨大な塔もなかった。
あるのは、比較的平らにならされた広い土地と、雪に覆われた岩壁、そして安全区域を示すいくつかの標識だけだった。
仮設のテントのそばには、二人の人物が立っていた。
どちらも毛皮の裏地がついた厚手のローブを身につけ、胸元にはヴァルドレン王立大学の紋章があった。一人は杖を持った中年の男性で、もう一人の女性は大きな帳簿に何かを書き込んでいた。
三人が到着したのを見ると、男性はすぐに歩み寄ってきた。
「おめでとう」
彼は一人ずつ顔を確認し、風の音にも負けないはっきりとした声で告げた。
「受験番号八百七十六番、八百七十七番、八百七十八番」
フィニアンは背筋を伸ばし、嬉しそうな表情を浮かべた。
「僕たちは、本当に頂上までたどり着いたんですか?」
教師は笑った。
「その通りだ。君たちはクラウンピークの頂上までの行程を無事に終えた」
彼は杖を持ち上げた。
シラス、カラム、フィニアンの首にかけられていた三つのペンダントが同時に光り始め、やがて自動的に首から外れた。それらは宙に浮かび、教師の手元へと飛んでいく。
転移の光はなかった。
身体がその場から引き離されるような感覚もない。
ただ、三つのペンダントが回収され、彼らが試験の課題を正式に完了したことを示していた。
教師は一つずつペンダントを確認し、それから記録帳へ目を落とした。
「君たち三人は、いずれも百点には達していない。規定に従い、次の選抜式で六印神星台によって、それぞれに適した学院が選ばれることになる」
カラムは瞬きをした。
「ということは、僕たちは自分で学院を選べないんですか?」
教師は丁寧に説明した。
「百点を獲得した受験者には、審査会の承認を得たうえで、希望する学院を申請する権利がある。百点に届かなかった受験者については、六印神星台がそれぞれの資質、能力、適性を評価し、進むべき学院を選び出す仕組みだ」
フィニアンは少し唇を引き結んだが、すぐに気を取り直した。
いずれにせよ、彼は目的地までたどり着いたのだ。自分にどの学院がふさわしいのかは、選抜式まで待つしかないだろう。
シラスは説明を聞きながら、心の中でその情報を記憶していた。
六印神星台。
何千人もの受験者の能力を評価し、六つの学院の中からそれぞれに適した進路を決定する魔導具。
以前からその存在は聞いていたが、どのような仕組みで動いているのか、やはり興味をそそられた。
「通常、試験はあと二日で終了する予定だ」教師は続けた。「その後、君たちには一日の休養期間が与えられ、次の手続きが始まる。ただし、君たちは期限より早く頂上に到着した。したがって、今日のうちにクラウンフェルを離れても構わない」
カラムの目がぱっと輝いた。
「つまり、早めに休暇をもらえるということですか?」
「そうだ」
「もうこの山に戻ってこなくてもいいんですか?」
「少なくとも、今回の試験のために戻る必要はない」
カラムはシラスの方を向き、感動したような顔をした。
「ボウ、聞いたか? 俺たちは自由だ!」
シラスは平然と答えた。
「聞こえているよ。山全体に知らせるような大声を出さなくてもいい」
「これは俺の人生における記念すべき瞬間なんだ。もっと敬意を払ってくれ」
フィニアンは吹き出した。
教師も彼らの反応を見て微笑んだ。
「帝都での三日間を楽しんでくるといい。その後は、学院選抜式に備えるように」
彼は杖を持ち上げ、空中に弧を描いた。
すると、銀色の光が広がり、三人の目の前に大きなガラスのようなものが浮かび上がった。
その表面は湖面のように透き通っていたが、山頂の景色を映してはいない。代わりに、その向こう側には明るい部屋が見えた。白い石壁に囲まれ、中央には長い机が置かれている。
「これは転移門だ。通り抜けるだけでいい」
フィニアンはその光を見つめ、それから教師へ視線を向けた。
「これに入ればいいんですか?」
「そうだ」
フィニアンはまだ少し躊躇していた。
カラムはすぐに彼の肩へ手を置いた。
「心配するな。何かあったら、俺がみんなに話してやるよ」
「その言葉では、まったく安心できないんだが!」
「なら、先に入って安全だと証明してくれ」
「絶対に嫌だ!」
カラムはフィニアンがそれ以上反応するのを待たず、軽く背中を押した。
フィニアンはよろめきながら前へ進み、銀色の表面を身体ごと通り抜けて消えた。
カラムは大声で笑い、そのまま後に続いた。
シラスは一瞬だけその場に残り、教師を見た。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。選抜式で幸運を祈るよ」
シラスは頷き、転移門をくぐった。
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転移門を通り抜ける感覚は、ほんの一瞬だった。
目を開けると、シラスはすでに広々とした暖かな部屋に立っていた。凍えるようなクラウンピークとはまったく違う場所だ。
新しい紙とインク、そして磨き上げられた木材の香りが、ほのかに漂っていた。
フィニアンは数歩先に立ち、まだ呆然とした表情を浮かべていた。
カラムは隠そうともせず、周囲を興味深そうに見回している。
「面白いな。これを使って州と州の間を移動できれば、かなり時間を節約できそうだ」
「すべての転移門が遠距離移動に対応しているわけじゃない」シラスが言った。「魔法陣はあらかじめ設置しておく必要があるし、維持するための十分なエネルギーも必要だ」
「分かってる、分かってる。ただ少し夢を見ていただけさ」
部屋の反対側では、一人の女性教師が資料に目を通していた。
物音に気づいた彼女は顔を上げ、本を机に置いて、親しげな笑みを浮かべた。
「ヴァルドレン王立大学へようこそ! そして、三人の新入生の皆さん、おめでとうございます!」
彼女は立ち上がり、机の上から三枚の書類と万年筆を取り出した。
「こちらに氏名、生年月日、出身地を記入してください。三日後に行われる学院選抜式で、皆さんの名前が呼ばれることになります」
フィニアンはすぐに机へ向かった。
カラムもその後に続いたが、歩きながら壁際に並ぶ本棚を眺めていた。
シラスは書類を受け取り、一つずつ丁寧に必要事項を記入した。
書き終えると、彼は顔を上げて女性教師に尋ねた。
「先生、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「もちろんよ」
「百点を獲得した受験者は、どのように選抜されるのでしょうか?」
女性教師は微笑んだ。どうやら、その質問には慣れているらしい。
「その人たちは、直接学長室へ案内されるわ。山頂にいる担当教師が、今と同じような転移門を作るの。ただし、転移先はあらかじめ学長室に設定されているわ。そこで六つの学院について説明を受けたうえで、自分の希望を申し出ることになるのよ」
シラスは小さく頷いた。
「分かりました。ありがとうございます」
「どういたしまして。手続きが終わったら、外の区域を自由に見学してもいいわ。ただし、選抜式に参加するために、指定された時間には戻ってきてね」
手続きを終えた三人は、部屋を後にした。
扉の向こうには、明るい色の石材で舗装された廊下が続いていた。高い窓からは広大な敷地が見渡せる。そこには古風な建物が並び、その間から尖塔が夕空へと伸びていた。
ヴァルドレン王立大学。
ついに彼らは、何千人もの受験者が足を踏み入れることを夢見る場所にやってきたのだ。
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受付棟を出ると、三人の前には精巧な装飾が施された石造りのアーチ門があった。
遠くには、大学の敷地内へ続く石畳の道が伸びている。薄く雪をかぶった植え込みや、帝都特有のゴシック建築を備えた建物が目に入った。
フィニアンは立ち止まり、目の前の景色を感慨深げに見つめた。
「本当に、生きて戻ってこられたんだな」
カラムは彼の肩に腕を回した。
「当然だろ。俺はまだ帝都のおいしい料理を食べ尽くしていないんだ。あんな山で命を落とすわけにはいかないさ」
フィニアンは笑ったが、すぐに表情を少し引き締めた。
「そろそろ行かないと」
シラスが振り返る。
「もう行くのか?」
「ああ。ブラックウッドの仲間たちと約束していたんだ。無事に戻れたら、帝都の食堂で会おうってね。きっと、僕からの知らせを待っているはずだ」
カラムは頷いた。
「それなら行ってこい。あまり待たせるなよ」
フィニアンは、この数日間を共に過ごした二人の友人を見つめた。何か言いたげに少しだけためらったが、結局、手を差し出した。
「二人ともありがとう。君たちがいなかったら、僕はもっと大変な目に遭っていたかもしれない」
シラスはその手を握った。
「お互いに助け合っただけだよ。楽しい夜を過ごしてくれ」
カラムもフィニアンの肩を軽く叩いた。
「たくさん食べてこいよ。ブラックウッドの連中に、山で食べ物を与えられなかったと思われないようにな」
「一日中、食べ物のことばかり考えているのは君の方だろ」
「それは重要な生存技能だ」
フィニアンは笑った。
「分かった。それじゃあ、またな」
彼は手を振って別れを告げ、帝都へと続く道を下っていった。
シラスとカラムは、フィニアンの姿が前方の建物の陰に消えるまで見送った。
二人の胸には、少しばかり寂しさが残っていた。
クラウンフェルで過ごした日々、三人は危険な道を共に歩き、食料を分け合い、寝床を探し、困難な状況では互いに助け合ってきた。
フィニアンが仲間に加わったのはそれほど前のことではない。それでも、彼の存在はいつの間にか二人の旅に欠かせないものになっていた。
そして今、試験が終わったことで、それぞれが再び自分の道を歩み始める。
カラムはしばらく黙っていたが、やがて大きく伸びをした。
「おい、シラス。そんな顔をするなよ。まるで友人を戦場へ送り出したばかりみたいじゃないか」
シラスは彼を横目で見た。
「ただ、ようやく休める時間ができたんだと思っていただけだよ」
「その通り!」カラムはすぐに元気を取り戻した。「そして、まず最初にやるべきことは、うまい食堂を探すことだ!」
「先に寝る場所を探そうとは思わないのか?」
「宿は後でも探せる。でも、食堂が閉まってしまったらどうする?」
シラスはため息をついた。
「分かった。食堂を探そう」
カラムは、まるで百点を無料でもらったかのように晴れやかな顔で、すぐに前へ歩き出した。
「シラス、明日の朝、君を連れて行きたい場所があるんだ」
シラスは眉を上げた。
「どこだ?」
「秘密だ」
「俺がそういう答えを一番嫌っているのを知っているだろ?」
「だからこそ言ったんだよ」
カラムは得意げに振り返って笑い、それから帝都の中心部へ続く道を歩き続けた。
シラスは彼の背中を見つめ、呆れたように首を振ってから、その後を追った。
ゴシック様式の屋根の向こうでは、夕暮れの光が次第に淡い金色へと変わっていった。
遠くの塔から鐘の音が響き、一日が終わろうとしていることを告げていた。
彼らはクラウンフェルを乗り越えた。
しかし、シラスとカラムにとって、帝都での生活はまだ始まったばかりだった。
第18章・完




