第16章:吹雪を越えて
さらに一日が過ぎた。
クラウンフェル試験の終了まで、残り三日。
シラス・バイは早朝から目を覚ましていた。洞窟の入り口に腰を下ろし、両膝を抱えながら、静かに外の様子を眺めている。
吹雪は依然として弱まる気配を見せなかった。
真っ白な雪片が風に巻き上げられ、帯のようになって断崖へ激しく打ちつけられた後、空中へと散っていく。さらに遠くにある険しい山肌も、今では厚い雪の幕の向こうにぼんやりとした影を残すだけだった。
時折、岩の隙間を吹き抜ける風が長く唸り声を上げる。その音は、まるで渓谷のどこかに潜む巨大な生物が、低く吠えているかのようだった。
シラスは拳を握りしめた。
彼は、この試験に向けてかなり入念に準備してきたつもりだった。スーツケースには書物や護符を描くための筆、朱砂、黄色い符紙、その他必要な道具が詰め込まれている。危険な状況で必要となる道気の量も計算し、護符を一枚たりとも無駄にしないよう心がけてきた。
しかし、どれほど準備を重ねても、どうしても制御できないものがひとつあった。
天候だ。
洞窟の入り口を横切る雪を眺めながら、シラスは自然の力を前にして、少しばかり無力さを感じていた。
この状況を三人で乗り越えるための護符は、確かに持っている。
だが、それを起動するにはあまりにも多くの道気が必要だった。今の状態で使用すれば、蓄えてきたエネルギーの大半を消費することになる。
その道中で危険な相手に遭遇すれば、シラスは二人の友人の足手まといになりかねない。
彼は、そんな事態を望んでいなかった。
しかし、この洞窟に留まり続けていても、得点を稼ぐことはできない。
学院を自由に選択するための百点という目標は、次第に遠のきつつあった。それでも、シラスはまだ諦めたくなかった。
彼はアウレリアン・コーストを離れ、銀の滝を越え、ここまで長い道のりを歩いてきた。すべては、ヴァルドレン王立大学へ入学する機会を得るためだった。
最後の三日間を、無駄に過ごすわけにはいかない。
シラスはうつむき、自分のくせ毛を軽くかき乱した。
「何か方法があるはずなんだけど……」
彼はつぶやきながら、これまで本で読んだ知識を思い返した。
寒さを防ぐ結界を張るか? 道気を消費しすぎる。
熱風を生み出す魔術はどうか? 継続的に維持する必要があるうえ、強風に吹き飛ばされれば、熱もすぐに失われてしまう。
それなら、フィニアンの火元素術で暖を取る方法はどうだろう。おそらく、結果はそれほど変わらない。普通の炎など、外へ出た瞬間に吹雪で消されてしまうだろう。
シラスはため息をついた。
どうやら今日は、本当に洞窟の中で過ごすしかないらしい。
そのとき、背後から眠たげな声が聞こえた。
「この洞窟から抜け出す方法でも考えているのか?」
シラスが振り返る。
フィニアン・クロウが目を覚ましたところだった。茶色の髪はひどく乱れ、まるで自分の上着と格闘でもしていたかのようだった。彼は大きくあくびをし、襟元を引き上げながら、ゆっくりとシラスの隣へ腰を下ろした。
「うん。法力をあまり消費せずに、吹雪を越える方法を探しているんだ」
フィニアンは洞窟の外を眺めた。
数秒間黙り込んだ後、突然手を叩いた。
「簡単じゃないか!」
シラスは期待に満ちた目で彼を見た。
「何か方法を思いついたの?」
「カラムはスーツケースを大量に持っているだろ? 中には服がたくさん入っているはずだ。全部着込めばいいんだよ!」
シラスはフィニアンを見た。
フィニアンもシラスを見た。
二人の間に、しばし沈黙が流れた。
「いい考えだね」シラスはゆっくりと言った。「でも、吹雪はそれほど単純な問題じゃない。服を何枚も着るだけで解決すると思う?」
フィニアンは少し自信を失った。
「ええと……」
「体温を維持する方法も必要だ。服だけで十分に熱を保てないなら、何枚か布を重ねて、そのまま外へ出て吹雪にさらされるのと変わらないよ」
「……」
シラスは、しょんぼりしたフィニアンの顔を見て、とうとう笑いをこらえきれなくなった。
「冗談だよ。カラムが大量の服を持っていることを、すっかり忘れていた」
フィニアンは勢いよく顔を上げた。
「今、俺をからかったのか?」
「うん」
「ひどいぞ!」
「でも、君の考えは本当に役に立つよ」
シラスは立ち上がり、服についた埃を払った。
「何枚もの服を重ね着して、そこに保温用の護符を組み合わせればいい。大量の熱を生み出す必要がなくなるから、消費する道気もかなり抑えられるはずだ」
フィニアンはすぐに元気を取り戻した。
「それなら、カラムを起こそう!」
彼は立ち上がり、カラムがスーツケースの山のそばで眠っている場所へ向かった。
「カラム! 起きろ!」
反応はない。
フィニアンは大きく息を吸い込んだ。
「ヴァルドレンに入りたくないのか!?」
カラムは即座に飛び起きた。
「入りたい! 入りたいよ! 脱落させないでくれ!」
彼は周囲を見回した。髪はぼさぼさで、目はまだ半分眠っている。
フィニアンは腕を組んだ。
「なら、さっさと働け」
「……何を?」
「君の服が必要なんだ」
カラムは瞬きをし、フィニアンを見た後、洞窟の入り口に立つシラスへ視線を移した。
次の瞬間、彼は最も近くにあったスーツケースを抱きしめた。
「駄目だ!」
シラスが眉を上げた。
「服を借りるだけだよ」
「俺の服は貴重な財産なんだぞ!」
「カラム」
「分かった、分かったよ! そんな目で見るな。取り出せばいいんだろ!」
彼は渋々スーツケースを開き、中を探り始めた。数分もしないうちに、綿入りの上着やセーター、ズボンが岩の床に小さな山を作った。
フィニアンはその服の山を眺め、口元を引きつらせた。
「ヴァルドレンへ服屋でも開きに行くつもりなのか?」
カラムは誇らしげに顔を上げた。
「これは周到な準備って言うんだよ」
「家一軒分の荷物を持ち歩いているようにしか見えないぞ」
「羨ましいなら、そう言えばいい」
シラスは二人の口論を続けさせなかった。
彼は自分のスーツケースのそばに腰を下ろし、黄色い符紙と筆、そして小さな朱砂の箱を取り出した。
これで、旅を続ける方法が見つかったかもしれない。
カラムが何着の服を持っているかなど、今はどうでもよかった。
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シラスは比較的平らな岩の上に、一枚の黄色い符紙を広げた。
筆先を朱砂につけると、濃い赤色の墨が一滴落ちる。彼は息を吸い、呼吸を整えてから、最初の符文を描き始めた。
これは、かつて父親が彼に教えてくれた、最初期の護符のひとつだった。
温陽符。
道気を用いて、使用者の体の周囲に温もりを維持する護符である。
炎を生み出したり、空気そのものを加熱したりする魔術と比べ、温陽符の仕組みはより効率的だった。体の周囲に薄い温気の層を形成し、熱の放出を抑えることで、一般的な寒さから使用者を守るのだ。
ただし、これは吹雪を防ぐ結界ではない。
護符は冷たい風を完全に遮断することはできず、長時間にわたって過酷な気象条件から使用者を守るほどの力もない。これだけに頼っていては、強風が吹きつける場所を通る際、凍える危険が依然として残る。
だからこそ、シラスには衣服が必要だった。
何枚もの布を重ねれば、体から逃げる熱を閉じ込められる。そこへ温陽符が必要な熱を補えば、どちらか一方だけを使うよりも、はるかに効率が良くなる。
シラスは筆を動かし続けた。
赤い線が黄色い紙の上を滑らかに走り、次々と符文をつないでいく。彼は筆圧を均等に保たなければならなかった。ほんの少しでも線が正しい位置からずれれば、符文の構造そのものが均衡を失ってしまう。
最後の線が閉じると、シラスは筆を置き、小さく息を吐いた。
一枚。
続いて二枚。
三枚。
彼は急ぎすぎることなく、しかし長く手を止めることもなく、作業を続けた。完成した護符は一枚ずつ脇へ置き、朱砂が完全に乾くのを待ってから道気を流し込む。
十二枚。
それが、道気の蓄えを過度に減らすことなく準備できる限界だった。
最後の符文を描き終えると、彼は最初の護符に二本の指を置き、中心へ細い道気の流れを送り込んだ。
符紙に描かれた朱砂の線が、すぐに淡い赤色の光を放つ。
紙の表面から、柔らかな温もりが広がっていった。
シラスは一枚ずつ、護符に道気を注ぎ込んだ。しかし、符文が安定した状態に達したところで、必ず手を止める。
彼が求めているのは、強烈な熱ではない。重ね着した服と組み合わせて、十分な温もりを維持できればそれでよかった。
一枚の護符に過剰な道気を注げば、効果の持続時間は長くなるかもしれない。だが、増加する効果に対して、消費するエネルギーが見合わなくなる。
今の状況で最も重要なのは、節約することだった。
最後の護符を置いたとき、ちょうどカラムも必要な量の服を取り出し終えていた。
「よし! 一人につき綿入りの上着を五枚、その下にズボンを二枚重ねればいい。これでも寒いなら、自分たちの体に問題があるんじゃないか?」
フィニアンは服の山を手に取り、信じられないという顔をした。
「上着五枚?」
「何か文句でもあるのか?」
「いや。ただ、今の俺たちを見た人がいたら、道に迷った三頭の熊だと思うだろうな」
カラムは彼の肩を叩いた。
「三頭の熊が凍え死なずに済むなら、俺は気にしない」
シラスは服を三人に均等に分け、それぞれの服の一番内側に温陽符を一枚ずつ配置した。
護符が固定されると、柔らかな温もりが広がっていく。
カラムはすぐに目を見開いた。
「おい、シラス! この護符、すごいじゃないか!」
彼は服の上から手を当て、厚い布地を通して伝わる温もりを確かめた。
「まるで服の中に小さな暖炉があるみたいだ!」
「大げさだよ」シラスは答えた。「体の周囲に温もりを維持するだけだ。吹雪の中に長時間立っていれば、いずれ効果は切れる」
「一枚でどのくらい持つんだ?」
「寒さの程度や、失われる熱の量にもよるけど、数時間くらいかな。護符の法力が尽きたら、新しいものに交換する必要がある」
シラスは残りの護符を二人に分けた。
「一人につき予備を三枚ずつ持っておいて。早めに交換しすぎる必要はないけど、寒さで震え始めてから思い出すようなことはしないでね」
フィニアンは温陽符を丁寧に上着の内ポケットへしまった。
「朝のうちに十二枚も準備したのか?」
「これは基本的な護符だからね。子供の頃から習っていたんだ」
シラスはそう答えたが、護符一枚一枚に道気を注ぎ込んだことで、消耗した量を確かに感じていた。
まだ疲れ果てるほどではない。しかし、軽視できるものでもなかった。
本当に危険な状況に備えて、残りの力を温存しておかなければならない。
「よし」シラスは立ち上がり、分厚くなった上着を整えた。「出発しよう」
フィニアンは魔法の箒を肩に担いだ。
「俺が先に偵察してくる。危険な道を見つけたら、二人に知らせるよ」
カラムは襟を引き上げ、顔の半分近くを隠した。
「行こう! これ以上ここにいたら、根でも生えてきそうだ」
三人は荷物をまとめ、必要な道具を再確認してから霧の洞窟を出た。
最初の冷たい風が顔に吹きつけた瞬間、三人とも思わず首をすくめた。
吹雪は依然として激しかった。
視界は数十歩先までしか届かず、強風が絶えず雪を空中へ巻き上げている。
それでも今回は、温陽符と何枚もの重ね着のおかげで、以前よりも寒さに耐えられるようになっていた。
カラムは自分の上着を見下ろし、誇らしげな表情を浮かべた。
「素晴らしい。少なくとも、あと一日は生き延びられそうだ」
シラスは彼を横目で見た。
「少なくとも、あと一日は歩けると思ってほしいね」
「それはあまりにも過酷な目標だ」
フィニアンはすでに箒にまたがり、先へ飛び立っていた。
「もう口論はやめろ! 俺についてこい!」
箒は雪の幕を切り裂くように飛び、空中にかすかな軌跡を残した。
シラスとカラムは顔を見合わせ、そろってため息をついた。
再び、旅が始まった。
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午前中いっぱい、三人は山腹に沿って移動し、滑りやすい斜面や地滑りの痕跡がある場所を避けて進んだ。
フィニアンは前方を飛びながら地形を確認していた。比較的安全な道を見つけると高度を下げ、後ろの二人に進むよう合図を送る。
時折、彼らは山頂を目指して単独で進む学生たちと遭遇した。
三人の姿を見た途端、慌てて逃げ出す者もいた。疲れ切ったように見える三人を簡単な標的だと判断し、運試しをしようとする者もいた。
残念ながら、誰もが賢明な判断を下せるわけではない。
サンヴェイル出身の学生のひとりが、狭い曲がり道で三人の行く手を阻んだ。地形の優位を利用すれば勝てると、自信満々だったらしい。
しかし、カラムはすぐに念動術で相手の杖を奪い取り、シラスはその隙に接近して首飾りを引きちぎった。
戦闘はあっという間に終わった。
相手が銀色の光に包まれて消えていくのを見届けると、カラムは手を払った。
「残念だな。食べ物を持っているか聞く前に終わっちゃったよ」
シラスは疲れた目で彼を見た。
「五分くらい、食べ物のことを考えるのをやめられない?」
「難しいな」
それから間もなく、彼らは別の学生と出会った。その学生は道端の岩にもたれ、足に怪我を負っていた。
もはや戦う力は残っておらず、三人を攻撃するつもりもないようだった。
相手に危険がないことを確認すると、カラムは皆の目の前でその学生に近づき、荷物を調べ始めた。
「おお、食べ物がたくさんあるぞ!」
カラムは念動術で相手の荷物を浮かせながら、ついでに首飾りも引きちぎった。
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山脈の奥へ進むほど、彼らは先に通過したチームの痕跡を多く見かけるようになった。
危険な生物がいた区域には、すでに固まってしまった血痕や乱れた足跡、そして破損した魔導具の破片だけが残されていた。
それでも、時折、岩の裂け目で生き延びている生物を見つけることがあった。どれも力尽きたように横たわっていた。
シラスは、こうした生物の大半が、すでに何らかの傷を負っていることに気づいた。
元素術によって焼かれたものもいれば、物理攻撃の痕跡が残るものもいた。さらに、彼にはまだ正体を特定できない魔術の影響を受けたものも存在した。
誰がその傷を負わせたのか、シラスには分からなかった。
しかし、生物がすでに抵抗する力を失い、生き延びる望みもない場合、シラスは必要最低限の魔術を使って苦痛を終わらせ、その後、対象が得点の対象になるかどうかを確認した。
彼は、そのことに喜びを感じてはいなかった。
雪の中で動かなくなった生物を見るたびに、シラスは父親がかつて語った、力の使い方についての言葉を思い出していた。
魔術は、ただ勝利するための道具ではない。
時には、いつ手を止めるべきかを知ることのほうが重要なのだ。
夕方になる頃には、三人の得点にも変化があった。
シラスは六十七点。
カラムは六十九点。
フィニアンは三十六点。
いくらか得点を稼ぐことはできたものの、三人とも百点という目標にはまだ遠かった。
カラムは自分の得点を計算し、まるで残酷な真実を発見してしまったかのような顔をした。
「残り三日しかないのに、俺はまだ六十九点なのか」
フィニアンは肩をすくめた。
「少なくとも、俺よりは多いだろ」
「そんなことを言われても、少しも嬉しくない」
「じゃあ、俺の点数と交換するか?」
「いや、結構だ。俺にもまだプライドがある」
シラスは得点表をしまい、遠くにぼんやりと見える山頂を眺めた。
彼らはクラウンピークに近づいていたが、前方にはまだ長い道のりが残されていた。特別な機会でも訪れない限り、試験終了までに百点を達成するのは非常に難しいだろう。
それでも、シラスはまだ諦めるつもりはなかった。
彼らはここまでたどり着いた。
そして、まだ三日残されている。
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日が傾き始めた頃、三人は山腹の斜面に建つ古い見張り塔を見つけた。そこからは、山を越えるためのいくつかの道を見渡すことができる。
その塔は、おそらくクラウンフェル試験が始まるずっと以前から存在していたのだろう。
灰色の石壁には亀裂が走り、東側の屋根はほとんど崩れ落ちていた。残された数本の梁も、腐りかけたまま高所からぶら下がっている。
朽ちた木製の扉には、かつて紋章が彫られていたらしいが、長い年月と風雪によって、その跡はほとんど削り取られていた。
誰がこの場所を建てたのか、なぜ放棄されたのか、知る者はいなかった。
それでも、夜の冷たい風を防ぐには十分だった。
フィニアンは周囲を一周して安全を確認すると、火元素術を使い、壁際にある古い石造りの炉に小さな火を灯した。
今度は、割れ目から入り込む風を慎重に遮り、炎が長く保たれるようにしていた。
シラスは近くの古びた木製の椅子に腰を下ろし、スーツケースを足元に置くと、手袋を外して残りの護符を確認した。
温陽符は、まだ正常に機能していた。
彼は道気がほとんど尽きかけた護符を交換し、残りを袋にしまった。
部屋の反対側では、カラムが今日手に入れた戦利品をスーツケースから取り出し始めていた。
「おおっ!」
彼は肉の包みをひとつ掲げた。その表情は、まるで宝物でも見つけたかのように輝いている。
「この学生、燻製羊肉まで持っていたぞ! 今夜はご馳走だ!」
フィニアンが振り返った。
「カラム、他人の荷物を漁るのはいい加減にしたらどうだ?」
「無理だね。これは人生の試練を乗り越えた者たちへの報酬なんだから」
シラスは護符の袋から顔を上げた。
「他人の食べ物を奪うことを、人生の試練って呼ぶの?」
「そうだよ。脱落した人間には、もう食べ物は必要ない。一方、俺たちはこれからも戦い続けなきゃならない。つまり、これは合理的な資源の再分配なんだ」
フィニアンはしばらく彼を見つめた。
「玄術じゃなくて、経済学を学びに行ったほうがいいんじゃないか?」
「悪くない考えだな。でも、その前にまずは王立大学へ入らないと」
カラムは楽しそうに燻製肉を清潔な布の上へ置き、フィニアンと一緒に夕食の準備を始めた。
やがて、温められた肉の香りが冷え切った部屋いっぱいに広がっていった。
外では、風雪が依然として岩の隙間を吹き抜けている。
しかし、廃墟となった塔の中では、揺らめく炎のおかげで、周囲の空気も少しばかり暖かく感じられた。
三人は低い石のテーブルを囲み、その日に手に入れた食料を分け合った。
その瞬間だけは、過酷な試験のことなど、遠い場所へ追いやられたようだった。
「今日は相手がそれほど強くなくて助かったな」フィニアンは食べながら言った。「そうじゃなかったら、休む時間すらなかったかもしれない」
「山の奥へ進むほど、相手は少なくなるよ」シラスが答えた。「実力のある学生たちは先へ進んでいるし、弱い学生の多くはすでに脱落したか、避難場所を探しているはずだ」
カラムは肉を飲み込んでから口を開いた。
「それじゃあ、俺たちの百点という目標は、遠い夢みたいなものじゃないか」
誰も反論しなかった。
三人とも、そのことをよく理解していた。
ここまで長い道のりを歩いてきたが、優秀な学生たちと比べれば、彼らの成績はまだ控えめなものだった。
ルシアンやエヴリンとの戦いを通じて、魔術師同士の実力差は、法力の量だけで決まるわけではないと知った。経験や技術、そして実戦において魔術を応用する能力も、大きく関係しているのだ。
そして、エデヴェインから来たあの少女……
彼女のことを考えるだけで、シラスは頭が少し痛くなった。
相手の能力を十分に理解できていないうちは、もう一度会いたくはなかった。
少なくとも、今はまだ。
カラムが突然、肉をテーブルに置いた。
「なあ、フィニアン。百点を取れたら、どの学院に入るつもりなんだ?」
フィニアンはすぐに背筋を伸ばした。
「いい質問だな!」
彼は胸に手を当て、まるでヴァルドレンの全学生を前に宣誓するかのように、真剣な表情を浮かべた。
「もちろん、グリフィンハーストだ!」
カラムが眉を上げた。
「グリフィンハースト? 将来の指導者や戦略家、政治家を育てる学院だろ?」
「その通り!」
フィニアンは自信満々にうなずいた。
「俺は、人を導ける人間になりたい。危険な状況でも正しい判断を下し、仲間が困難を乗り越えられるよう助けられる人間になりたいんだ。機会があるなら、ブラックウッド出身の人間でも優れた指導者になれるって証明したい」
シラスはフィニアンを見て、軽くうなずいた。
立派な目標だった。
カラムは顎に手を当て、数秒間考え込んだ。
「実は、俺は君にはヴェイルムーアのほうが合っていると思うんだけどな」
フィニアンは眉をひそめた。
「どうしてだ?」
「だって、君と自然には特別な関係があるだろ?」
フィニアンは疑わしげに彼を見た。
カラムは真面目な口調で続けた。
「一日中箒に乗って、松林の中を飛び回って、木々と話をして、鳥たちと友達になれる。ヴェイルムーアも、君みたいな学生が入ってきたら喜ぶと思うぞ」
フィニアンは三秒間、黙り込んだ。
それから、食事用のナプキンをカラムに投げつけた。
「この嫌な金髪野郎!」
カラムは大笑いしながら、横へ避けた。
「ほら見ろ! 将来の指導者が、たった一言の冗談で感情を抑えられないじゃないか!」
「塔から突き落としてやろうか?」
「いや、君は責任感のある指導者だから、そんなことはしない!」
「カラム!」
シラスは小さく首を振った。
こうしたやり取りには、もう慣れていた。カラムがいなければ、試験の日々はもっと張り詰めたものになっていただろう。
だからといって、フィニアンの将来についての議論を、これ以上聞きたいわけではなかったが。
「じゃあ、シラスはどうなんだ?」フィニアンが彼の方を向いた。「どの学院に入るか決めたのか?」
シラスは少しだけ動きを止めた。
以前の彼は、授業内容や研究の機会、そしてそこで学べる知識を基準に学院を選ぼうと考えていた。
玄術について、特にノーマンとシュアンタールの異なる魔術体系について、もっと深く知りたかったのだ。
しかし、今回の試験を通じて、自分にはまだ学ばなければならないことが山ほどあると気づいた。
相手の魔術を分析する能力。
戦闘中に状況へ対応する方法。
自分の弱点を補うために、異なる魔術を組み合わせる方法。
そして何より、自分自身の限界を見極めること。
シラスは、石造りの炉の中で揺れる炎を見つめた。
「たぶん、ブラックソーンかな」
カラムは肉を噛むのをやめた。
フィニアンも彼の方を向いた。
「ブラックソーン?」
「ああ」シラスはうなずいた。「魔術の分析や、さまざまな玄術体系の研究を学びたい。そして、それらをもっと効率よく使う方法を見つけたいんだ。ブラックソーンなら、そういう目的に合っていると思う」
フィニアンは微笑んだ。
「君らしい選択だな」
カラムは、まるで悲しい知らせを聞いたかのように、再びため息をついた。
「ああ、シラス……」
「今度は何?」
「君は本当に、恋愛に関してまったく成長していないな」
シラスはゆっくりと顔を向けた。
「今は学院の話をしているんだけど」
「そうだよ! それに俺は、君がこれから何年も、才能があって、美しくて、賢い女の子たちに囲まれた場所で過ごすというのに、考えていることが本と勉強ばかりだと言っているんだ!」
「だから大学へ行きたいんだよ」
「そういう意味じゃない!」
カラムは胸に手を当て、ひどく傷ついたような顔をした。
「もっと視野を広げるべきだ。魅力的で、謎めいていて、強い女の子のことを考えてみろ。例えば、あのエデヴェインの少女とか!」
シラスは目を閉じた。
「またその話か」
「君は一生、本好きの女の子ばかり好きでいるつもりなのか!」
「僕の好みが、どうして君の問題になるんだ?」
「君の将来が心配だからだよ!」
「なら、心配するのをやめてくれ」
フィニアンは笑いすぎて、危うく喉を詰まらせるところだった。
カラムがさらに演説を続けようとした、そのときだった。
突然、彼の動きが止まった。
塔の外から、重い音が響いた。
ドンッ!
石のテーブルがわずかに揺れた。
炉の炎が大きく傾き、小さな炭の欠片が外へ跳ねる。塔の入り口付近では、壁の隙間から細かな埃が落ち、続いて岩の破片が雪風の中へ転がっていった。
三人は一斉に黙り込んだ。
シラスは勢いよく立ち上がり、無意識に護符の入った袋へ手を伸ばした。
フィニアンはすでに魔法の箒を手に取り、扉の方へ視線を向けている。
カラムは笑みを消し、指先に静かに法力を集め始めた。
再び、物音が響いた。
今度は、さらに近い。
ドンッ!
北側の壁が揺れた。高い場所から小さな石片が落ち、床にぶつかって砕け散った。
誰も口を開かなかった。
ここ数日、あまりにも多くの予想外の出来事を経験してきた三人は、もはやこの程度の物音を聞き流せるほど呑気ではなかった。
シラスは二人に、入り口から離れるよう合図した。
外に何がいるのかは分からない。
吹雪の中を移動している巨大な生物かもしれない。あるいは、別の学生たちがこの廃墟を見つけたのかもしれない。
もしかすると、それ以上に危険な何かである可能性もあった。
だが、いずれにせよ、それはすでにすぐ近くまで来ている。
カラムが小声で尋ねた。
「なあ、逃げたほうがいいと思うか?」
シラスはすぐには答えなかった。
彼は朽ちた木製の扉を見つめた。その隙間を、ぼんやりとした影が横切ったのだ。
フィニアンは箒を強く握りしめた。
「まさか、また魔物に遭遇するなんて言わないよな……?」
外では、突然、吹雪の風が一瞬だけ止んだ。
そして、低く鈍い音が響き渡り、足元の石板が揺れた。
シラスは深く息を吸い、呼吸を整えようとした。
クラウンフェル試験の終了まで、あと三日。
彼らはようやく比較的安全な休息場所を見つけ、一日の終わりにまともな夕食にもありつけた。
それなのに今、運命はどうやら、彼らに休むことさえ許さないらしい。
シラスは袋から護符を一枚取り出した。
「準備して」
彼の声が低くなる。
「どうやら、お客さんが来たみたいだ」
第16章・完




