新しい家族
フリージアがカリンと一緒に朝食の支度をしていると、戸惑った様子で、ロネスとロンが起きてきた。
二人ともちゃんと起きられるか心配していたが、昨夜、眠っているあいだにカリンが魔法をかけていたので、そのおかげかもしれない。
「おはよう。顔色が良くなってよかったわ。朝ごはんは食べられそう?」
フリージアとレオンが、ロネスとロンのもとへ駆け寄りながらたずねる。
ロネスはうなずきながら「手伝うよ」と言ってくれた。ロンも兄のまねをして、「てつだう!」と言ってくれた。
二人とも、昨日の様子が嘘のように、パンもりんごもぱくぱく食べていた。
兄のロネスはロンの世話をしようとしていたが、カリンが「ロンのことは私が見るから、ロネスは自分の分を食べなさい」とやさしく促してくれた。
朝食を終えてからお父さんとお母さんのことをたずねると、ロネスはか細い声で答えた。
「王都での戦いに巻き込まれて、死んじゃった……」
今にもロネスが消えてしまいそうで……胸がざわつく。
ロンも同じように感じたのか、ロネスにぎゅっと抱きついた。
「父ちゃんと母ちゃんが死んじゃった……。何も持ってこれなかった……。もう会えないのに、何もないよ。会いたいのに、もう会えなくなっちゃったよ」
ロネスは嗚咽をこらえきれずに泣き出し、その姿を見て、ロンもつられて泣き出した。
フリージアは、何も言えなかった。
カリンは、静かに二人に語りかけた。
「……そう。つらいことを話してくれて、ありがとう。
ロネスは、『何もないよ』って言うけれど、ロンがいるでしょう。お父さんとお母さんが、ロネスに託してくれたのよ。
そしてロンにも、ロネスがいる。
だから、『何もない』なんて、そんな悲しいことを言わないで?
それにね、昔こんなことを言ってくれた人がいたの。
亡くなった家族は、そばにいて守ってくれているんだって。
そのときは『何を言ってるんだろう』って思ったけれど、今は、もしかしたら……本当にそう、なのかもしれないって思うの。
ロネスとロンが困ったときには、助けてくれるのよ。
こんなことを言うと、変だと思うかもしれないけれど……。
でも、だからこそ、こんなに離れた王都からここまで来て、フリージアとレオンに会えたんじゃないかしら。
お父さんとお母さんへの想いを忘れなければ、ずっとそばにいてくれるんだって。
そう思うと、『何もない』なんてこと、本当はないんじゃないかしら?」
ロネスは鼻を真っ赤にしてぼろぼろと涙をこぼしながら、カリン、ロン、フリージア、それからレオンを一人ずつゆっくりと見て、こくりと頷いた。
「ありがとう」
そう笑ってくれた。
まだ、何ひとつ整理はついていない。
ロンと二人で、つらい思いもたくさんしてきた。死ぬ思いだって…何度も、何度もした。
それでも今、こうして生きている。
今は、それでいいんじゃないか──
ただ、なんだか、そう思えるようになった。
そのあと、これからのこととして、カリンさんがロネスとロンに「ここで一緒に暮らさないか」と声をかけてくれた。
二人とも、昨日の私たちのようにとても喜んでくれた。
「じゃあ、弟が二人も増えるわね。ふぅ、お姉ちゃんも大変だわ」
フリージアの大きな独り言に、ロネスとレオンは呆れたような顔を向けたが、何も言わずにカリンさんの話を聞いていた。
「ロンは昨日、魔法でキレイにはしたけれど、お風呂に入ったほうが気持ちがいいわよ。ロネス、入れてあげられるかしら?」
「わかった」
ロネスはそう答えると、ロンの手を引いてお風呂へ向かった。
カリンさんは朝食の片付けをしながら、「二人の部屋も用意しないとね。服も日用品もいるわね」と、あれこれ思い巡らせるように小さくつぶやいていた。
フリージアはそんなカリンの様子を見て、レオンと顔を見合わせる。
「レオン、今日は忙しくなりそうね」
と、ふたりで静かにうなずき合った。




