新国王
家に戻るなり、カリンさんはロネスとロンの部屋を作った。
お風呂場を挟んだフリージアたちの部屋の隣を、なんてこともなさそうに「ここがいいかしらね?」と指さす。
「それ」とひと声。
次の瞬間、そこにはもう新しい部屋が出来上がっていた。
あまりのことに、ロネスとロンはもちろん、フリージアとレオンまでもが、口をあんぐり開けたまま呆然と立ち尽くした。
「ええっ!? すごい、すごい! そんなこともできるの!? 私たちのときも、こんなふうにお部屋を作ってくれたの?」
フリージアは鼻息も荒く、興奮しながらレオンと一緒に、カリンに駆け寄った。
「ふふ、ありがとう。でも、フリージアたちのお部屋は、もともと空き部屋だったの。
さあ、ロネス、ロン。中を確認して、広さは問題ないかしら?」
誰かが以前住んでいたのかしら、とフリージアは一瞬首をかしげたが、すぐに新しい部屋の方へ意識をさらわれ、大興奮のロネスたちに混ざって中を確かめに走っていった。
家の塀にはいつものように烏が様子を見ていた。
新しい家族と過ごす、新しい生活の始まりだ。
「陛下、もう終わりです。いい加減、降伏なさってください。これ以上、民が傷つくのは嫌なんです。私に王位をお譲りください」
カイは、苦しそうに、どこか憎しみをにじませながら、息も絶え絶えで地面に座り込む父ミゲル・サムス・ロゴノワを見下ろして言った。
「お前、その炎はどうした。お前のものではないだろ…。授かっていなかっただろう。
それはエレナの炎ではないのか?
お前…、私からエレナまで…奪ったのか」
力なく、どこか諦めきった声で、ミゲルは問いかけた。
カイは一瞬、怯んだように目を見開いたが、すぐにキッと睨みつけ、歯を噛み締めるように怒鳴りつけた。
「ふざけるなっ! 何が奪っただ。私は、あなたから何も奪ってなんかいない! 姉様のことも……母様のことだって、そうだ! そんなふうに言うな! 私は……何も……与えられなかっただけだ……」
その顔は今にも泣き出しそうだった。いや、もう子どものように泣いているのかもしれない。
「カイ……」
ミゲルはただ、父親として、悲痛な息子の表情から目を離せないまま、カイへと手を差し伸べていた。
「殿下、危険です。お下がりください。他の者どもと同様に拘束いたしましょう。後ほど、継承の儀を早々に執り行いましょう。……連れて行け」
ベルナールは、応えようとしたカイの肩を掴み、押しとどめた。
「ハッ!ベルナール、お前も偉くなったな。親子水入らずを邪魔するとは……不敬だぞ?」
ミゲルは、ゾッとするような冷酷な声でベルナールを制した。
「っ……! 早く連れて行け!」
ベルナールは怯えながら命じ、ミゲルは二人の兵士に拘束され、そのまま連れて行かれた。
カイは、今にも消え入りそうなかすれ声で、それでもはっきりと命じた。
「丁重に扱え。これ以上、危害を加えることは許さん」
その後、カイはロゴノワ王国の国王となった。
「おい、聞いたか? カイ様が国王になったそうだぞ!」
「これで内戦も終わるのか……良かった」
「あれ? でも、カイ様って雷じゃなかったか? 火は使えないよな。継承できるのか?」
「なんでも火、使えるんだとよ。内戦のときも、何度も使ってたそうだ」
「えぇ?! じゃあエレナ様は? 俺、好きだったのになあ」
「未だ行方不明。カイ様は、血眼になって探してるらしいぜ」
王国中が、新国王の話題でもちきりだった。
「使えなかった火が使えるようになるなんて、そんなことあるのかねぇ」
ナオヒは、町をぶらぶら歩きながらぽつりとこぼした。




