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厨二病か脳筋か。それが問題だ  作者: 椰子ふみの


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9/10

魔力テスト

「まずは攻撃魔法からチェックします。この人型の的に対し、少なくとも一回の攻撃を当ててください」


 ストリクトス先生が示した的は土でできた的だった。だから、かなり厚みがある。


「まずはマックス。体力テストはいい成績だったそうですね。魔力でもいいところを見せてください」


 うわー。ニヤニヤして嫌な感じ。先生がこんなのでいいのか。

 俺は前に出た。


「じゃあ、やります。ミズ、ミズ、ミズ」


 小さい水の玉が一瞬にして的に当たる。俺の姿勢が低く構えたものだったのに、的に当たった水の勢いがショボかったせいか、笑い声が起きた。


「マックス。呪文を唱えてそれかね。こんな魔法では何の役にも立たないだろう。無詠唱はできないのかね」


ストリクトス先生の言い方が小馬鹿にした言い方だが、気にしない。


「はい。できません」


 俺が言い切ると、また、笑いが広がった。シェリルが苦虫を噛み潰したような顔になっている。ただ、笑いだけだと、注意もしづらいようだ。


「そうか、じゃあ、次」


 俺が平気なのが意外だったらしい。先生は次の生徒を呼んだ。

俺の魔法が笑われても平気なのは、辺境領で役に立った実績があるからだ。水のコントロールは問題なく、的の目と鼻の位置に当たっていた。本来なら、それで相手が怯んだところを剣で切り捨てる、

 今回のテストは魔法のみなので、武器は持っていない。だが、体は的に向かって飛び上がりそうになったので、必死に抑えたところ、低く構えた姿勢になってしまった。


「次っ」

 

 どんどん、生徒が魔法を放つがみんな無詠唱だ。もしかして、呪文を唱えるのは俺だけ?

 

「やーっ」


 声が聞こえたかと思ったら、呪文ではなく、気合いの声だった。

 ただ、無詠唱はできるが、特に強い魔法が使える生徒はいないようだ。的に小さな傷や凹みができるくらいだ。それより何より狙いが甘い。せっかく、人型の的なんだから、急所を狙えばいいのに。


「次」

「はい」


 シェリルの番だ。初めて会った時、変な奴らに捕まっていたぐらいだから、魔法は苦手なのかもしれない。

 と、思っていたら、いきなり、的の一つが燃え上がった。土でできているから、効果はないだろうと思っていたら、的の首の部分がよじれ始める。ものすごい高熱になっているようだ。

 しばらくすると、よじれた首がポロリと落ちた。


「いやー、お見事でした」


 すり寄るストリクトス先生を無視してシェリルは俺の方を見た。


「すごい」


 思わず言うと、シェリルはにっこり笑った。


「あの時、別にマックスの手助けがなくても、大丈夫だったのわかったか。魔法を使わなかったのは、狭いところだったので引火したらまずいと思っただけだ」


 確かに普通に使うには火力が強すぎる。


「うっ、うん」


 注意を引くようにストリクトス先生は咳払いをした。

 シェリルが先生を見ると、にこやかに注意する。


「授業中は私語を慎むように」

「「はい」」


 俺とシェリルは素直に応えた。


「それでは、最後にマクシミリアン。手本を見せてください」

「はい」


 マクシミリアンは気取った様子で前に出ると、さっと、手を広げた。

 俺には手品師のように見える。

 マクシミリアンの足元から白く氷ができていく。的に向かって伸びたと思うと、あっという間に的が氷に包まれた。

 確かにすごい。


「素敵!」


 なんて言う女の子もいるが、ストリクトス先生は私語を慎めとは注意しなかった。


「素晴らしい。さすが、沈黙の貴公子です。これぞ攻撃魔法のお手本と言えるでしょう」


 ストリクトス先生が大げさに褒める。俺とシェリルには注意したのに、今は拍手まで促している。公平って言葉、先生の辞書には載っていないのかもしれない。


ただ、攻撃魔法のお手本と言われると、ちょっと違うと思う。

あれだけ派手に凍らせたのに、的の頭も胴もそのままだ。足元から絡め取るような魔法だから、相手を止めるには向いているのだろう。だが、魔獣相手なら氷ごと砕かれる可能性もある。

 辺境領ではまず団長に怒鳴られる。「とどめは必ず刺せ。凍らせて満足するな」と。うん、絶対に言う。ついでに、その場で百本素振りを追加される。


 マクシミリアンは当然のように微笑み、周囲に向かって軽く頭を下げた。その仕草一つで、また女の子たちがざわめく。俺が同じことをしたら、きっと「何を気取っているの」と笑われるに違いない。顔と評判って大事だ。

 いや、別に羨ましくはない。負け惜しみじゃない。はず。


「ありがとうございます。ですが、まだまだ未熟です」


 口では謙遜しているが、目は俺の方を向いていた。勝ち誇ったような視線だ。はいはい、すごいですね。無詠唱で氷を出せて偉いですね。

俺は音を立てずに拍手をする格好だけしてみせた。


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