実力テスト
「マクシミリアン・フィッシャーです。素敵な出会いがあったらいいなと思っています。よろしく」
自己紹介は弟の番まで来た。弟がよろしくのところでウインクなんかするもんだから。女の子たちがキャーッと声を上げる。
チャラい。チャラ過ぎる。
俺の前世の厨二病じゃないが、子どもなのにプレイボーイ気取りなんて、大人になったら恥ずかしくて死ぬぞ。と、忠告したくなる。
沈黙の貴公子という名も恥ずかしい。
俺を馬鹿にした奴らとは付き合う気も名前を覚える気もないから、ボーっとしているうちに全員の自己紹介が終わった。
「それでは、今日は試験を行います。最初に学力テスト、次に体力テスト、最後に魔力テストを行います」
推薦だけで入っているから、まず、生徒の実力を確認ということだろう。
「それでは試験用紙を配ります」
この世界は中世っぽいのにきちんと紙がある。
「では、始め」
筆記用具は羽根ペンなところがアンバランスだ。
問題は歴史から始まった。歴史といっても、創世神話から始まる。これは面白くて、本も読んだから大丈夫。問題は近年の王家や他国との関係。興味がないせいか、覚えていない。普通の貴族は自分の家系と絡めて覚えるらしい。
数学は得意というか、異世界のお約束でレベルが低いから余裕だ。文学は普通。理科はなくて、代わりに魔法がある。俺の場合、魔法理論はそれなりにできる。無詠唱ができるようにならないかと勉強したら、無詠唱は無理だったが、理論は覚えてしまった。
次は体力テスト。制服のまま、訓練場に集合だ。
「体力テストは近衛騎士のロベルト隊長に行ってもらう」
「厳しいテストだから覚悟するように」
ロベルト隊長というのは細身だが筋肉はついているようだ。美形だったので、また、女の子たちがキャーキャー言う。
「まずは訓練場を十周だ。魔法は使用禁止だぞ」
まずは弟のマクシミリアンとシェリルが飛び出した。それにつられて早い集団ができる。俺はマイペースに進んだ。俺を抜かしながら、鼻で笑う奴もいたが気にしない。
三周ぐらいでもう脱落者が出始める。全体が遅くなってきたが、俺のペースは変わらない。
俺がさっき抜かして行った奴を追い抜く時に笑ってやった。
十周を完走したのは七人。終わった後、立っているのはマクシミリアン、シェリル、俺の三人だけだった。他はみんな地面にへたり込んでいる。
マクシミリアン、やるじゃないか。感心、感心。
「マックス。こちらへ」
ロベルト隊長に呼ばれて、前へ立つと、ギロリとにらまれた。
「魔法は使用禁止と言ったはずだが」
「はい、わかってます」
「わかっていて、どうして使った?」
「使ってません」
「息も乱さず、走っておいて何を言う」
うわー、俺が平気な顔で走ったから、魔法を使ったと疑ってる。たった十周ぐらいで息を乱すような訓練はしてきてないのに。
「ロベルト隊長。彼は詠唱しないと魔法が使えないと聞いています」
マクシミリアンが弁明してくれた。おや、いいところあるじゃん。
「本当か?」
ロベルト隊長が疑わしげに見る。
「はい。本当です」
断言すると、ロベルト隊長に謝られた。
「すまない。辛いことを告白させて」
いや、別に気にしてないんだけど。それより、クラスメイトがヒソヒソ話しているのが気になる。マクシミリアンがほくそ笑んでいるのに気づいた。なるほど、俺が無詠唱で魔法を使えないことを大っぴらにして恥をかかせるつもりだったのか。表面上は俺を庇った形にしているところが嫌らしい。
「しかし、それなら、なぜ、息が乱れない?」
不思議そうなロベルト隊長に説明する。
「辺境領でずっと訓練を受けていました」
「そ、そうなのか。では、アストン殿と手合わせしたことは?」
「もちろん、あります」
ロベルト隊長が目を輝かせた。さすが、アストン団長。騎士の憧れらしい。
ロベルト隊長が俺の話に喜んでいるのを見て、マクシミリアンが悔しそうな顔になり、俺の気分は上がった。
その後もジャンプ、剣の素振りなど、俺の得意なことばかりだった。
ただ、それでクラスメイトがおとなしくなったかというと、違った。
「田舎の山猿が」
「筋肉しか自慢するものがないのよ」
山猿というのは否定するが、筋肉しか自慢するものがないというのは不満だ。
筋肉以外、何を自慢するというんだ。筋肉が一番!
目指すのは騎士なんだから当たり前だ。
ロベルト隊長は細身の美形のくせにアストン団長のファンで、俺の話に興奮して、いつもよりテスト内容を激しくしてしまったらしい。
テストが終わった時に立っているのは俺だけだった。
「魔力テストは明日に延期する」
ストリクトス先生が生徒を治癒する魔法使いを三人も連れてやってきて、初日の授業は終わった。




