ストライキの効果測定、あるいは静かなる成果
石灰質の壁が、私の体温をじりじりと奪っていく。
司正司・地下牢。
熱伝導率の高い花崗岩に背を預けていると、脊髄を伝って脳中枢まで冷気が吸い上げられるような錯覚に陥る。
太陽の光が遮断されたこの立方体の中では、時間の概念はすでに減価償却し尽くされ、残っているのは水滴が床を叩く不規則なメトロノームの音だけだ。
「……林鈴様。ご報告を」
闇の粒子が揺れ、回廊の奥から湿った囁きが届いた。
協力者の看守だ。
彼は錆びた鉄格子の隙間に顔を寄せ、網膜を激しく動かして背後の気配を監査している。
「地上の混乱は拡大の一途です。……皇太后様の寝衣が三日も洗濯されず、繊維に染み付いた汗が異臭を放っているとか。食事も冷え切った残り物ばかりで、癇癪を起こして食器を投げつけたそうです」
「……そう。順調ね」
私は、空腹で胃壁が引き攣れる感覚を、冷徹な満足感で上書きした。
指先を小さく動かし、空中にある見えないスプレッドシートのセルを埋めていく。
よし。現場のサボタージュという名の「機能不全」は、確実に組織の最上層を侵食している。
あの潔癖な老婆が、皮脂の浮いた絹を纏い、油脂の固まったスープを啜る屈辱。
それを想像するだけで、肺に溜まった冷たい空気が、勝利の美酒のように喉を潤した。
けれど、鉄格子の向こう側の聲音は、鉛のような重みを帯びて沈んでいく。
「ですが……皇太后様は焦っておられます。……貴女の処刑を、明後日に早めるとの噂が」
明後日――。
その単語が鼓膜を叩いた瞬間、心臓が肋骨の裏側を強く打ち付け、指先から血の気が引いていく。
納期の急激な前倒し。
壁にこびりついた不気味な黒ずみが、燃え尽きようとする導火線のように私の網膜を焼き、残り時間を物理的な圧力として突きつけてきた。
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また明日[19:00]にお会いしましょう。




