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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第3部『御前プレゼン』

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ストライキの効果測定、あるいは静かなる成果


石灰質の壁が、私の体温をじりじりと奪っていく。

司正司(しせいし)・地下牢。



熱伝導率の高い花崗岩(かこうがん)に背を預けていると、脊髄を伝って脳中枢まで冷気が吸い上げられるような錯覚に陥る。

太陽の光が遮断されたこの立方体の中では、時間の概念はすでに減価償却(しょうきゃく)し尽くされ、残っているのは水滴が床を叩く不規則なメトロノームの音だけだ。






「……林鈴(リン リン)様。ご報告を」



闇の粒子が揺れ、回廊の奥から湿った囁きが届いた。

協力者の看守だ。

彼は錆びた鉄格子の隙間に顔を寄せ、網膜を激しく動かして背後の気配を監査している。



「地上の混乱は拡大の一途です。……皇太后様の寝衣が三日も洗濯されず、繊維に染み付いた汗が異臭を放っているとか。食事も冷え切った残り物ばかりで、癇癪(かんしゃく)を起こして食器を投げつけたそうです」



「……そう。順調ね」



私は、空腹で胃壁が引き()れる感覚を、冷徹な満足感で上書きした。

指先を小さく動かし、空中にある見えないスプレッドシートのセルを埋めていく。



よし。現場のサボタージュという名の「機能不全」は、確実に組織の最上層(トップ)を侵食している。



あの潔癖な老婆が、皮脂の浮いた絹を(まと)い、油脂の固まったスープを(すす)る屈辱。

それを想像するだけで、肺に溜まった冷たい空気が、勝利の美酒のように喉を潤した。






けれど、鉄格子の向こう側の聲音(しょうね)は、鉛のような重みを帯びて沈んでいく。



「ですが……皇太后様は焦っておられます。……貴女の処刑を、明後日に早めるとの噂が」



明後日――。



その単語が鼓膜を叩いた瞬間、心臓が肋骨の裏側を強く打ち付け、指先から血の気が引いていく。



納期(タイムリミット)の急激な前倒し。

壁にこびりついた不気味な黒ずみが、燃え尽きようとする導火線のように私の網膜を焼き、残り時間を物理的な圧力として突きつけてきた。



◆◇◆

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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