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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第3部『御前プレゼン』

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檻への招待状、あるいは現地調査の好機

「……よって、皇后・林氏を『妖婦』と認定し、司正司(しせいし)の地下牢へ収監せよ!」



老婆の喉から絞り出されたのは、乾燥した殻を指先で握りつぶすような、不快な聲音(しょうね)だった。



――ガチャリ。



静寂を物理的に引き裂いて、鉄と革の擦れる音が私を包囲する。

衛士たちの(まと)う冷たい板金(プレート)が、私の視界を銀色に塗りつぶした。



手首に回されたのは、凍てつくような鉄の重み。

環の内側に残った無数の傷跡が、皮膚に食い込み、不快なザラつきを脳に伝える。






「待て!!」



肺の底を爆発させるような咆哮(ほうこう)と共に、李宵(リ・ショウ)が立ち上がった。

玉座が激しく石床に擦れ、火花が散るような金属音が広間に反響する。



彼の右手が、腰に帯びた剣の「鮫皮(さめがわ)」を貼った柄を、血が(にじ)むほど強く握りしめた。



黄金の瞳が、怒りに焼かれて赤く濁っている。

抜けば、内乱という名の「強制終了(シャットダウン)」。



皇太后派という不良資産を一掃するには手っ取り早いが、その代償(コスト)として流れる血は、帝国の再建計画を致命的に遅延させる。



(……駄目よ、宵)



私は、鉄の重みに沈む腕を、あえて凛と保った。

そして、彼の射貫くような視線がこちらを捉えた瞬間、不敵な弧を描くように左の(まぶた)を落としてみせた。



『大丈夫。……これは、チャンスです』



声には出さない。

瞳の輝きと、口角の(わず)かな引き上げマイクロエクスプレッションだけで、彼という名の「最高経営責任者」に意図を同期させる。



彼の指先から、一瞬にして力が抜けた。

顔は、奥歯を噛み締め、爆発寸前の圧力を押し留めるように歪んでいるが、彼は剣の柄から指を離した。






「……連れてお行き」



皇太后の、氷点下の冷気を(はら)んだ命令。

衛士に腕を掴まれ、私の身体は重い石畳の上を引きずられていく。



背中を追いかけてくるのは、李宵の、喉を千切らんばかりの悲痛な絶叫。

心拍が激しく波打ち、喉の奥が熱く焼けるような痛みに襲われるが、私は唇を強く噛み、その鉄の味で意識を繋ぎ止めた。



瞳を濡らしている暇など、一秒も残っていない。

私は今、この国の「暗部(ボトルネック)」の象徴である監獄へ向かっているのだ。



そこには、これまで隠蔽(いんぺい)され、放置されてきた膨大な「未処理案件」が埋もれているはずだ。



投獄? いいえ、これは違う。

最高権力者から、最も秘匿された現場への「現地調査(フィールドワーク)」の認可が下りたに過ぎないのだから。

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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