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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第3部『御前プレゼン』

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黒い行列、あるいは旧弊のパレード

ゴゴゴゴゴ……。



朱雀大路(すざくおおじ)の巨大な石畳が、地底から突き上げるような震動を放ち、私の足裏を容赦なく叩く。

視界を埋め尽くすのは、漆黒の(うるし)が光を吸い込み、冷たく沈み込んだ馬車の群れ。



それは静止した影が物理的な質量を持って移動しているかのような、異様な圧迫感だった。



先頭を行く馬車の車輪が、石畳の僅かな隙間を噛むたび、金属質の悲鳴が上がる。

それは祝祭の音ではない。

この国の「進歩」という名の歯車を逆回転ですり潰し、粉々に粉砕していく巨大な石臼(いしうす)の摩擦音だ。






「……来たか」



隣に立つ李宵(リ ショウ)が、肺の底に溜まった冷気を吐き出すように声を漏らした。

私の右肩を抱く彼の指先に、刺すような力が込められる。



盤領袍(ばんりょうほう)の薄い絹越しに伝わるのは、強烈な熱。

そして、それをかき消そうとするほどの「拒絶」の震えだった。



馬車が(きし)みを上げて停止し、重厚な扉が内側から開かれる。

刹那(せつな)()せ返るほど濃厚な白檀(びゃくだん)の香りが、防壁を突き破って雪崩れ込んできた。



それは高価な芳香などではない。

窓一つない蔵の奥に数十年放置された「旧弊」が、腐敗しながら放つ権威の悪臭だ。






現れたのは、一人の老婆だった。

金糸銀糸が重力に逆らうように緻密な刺繍を成す、漆黒の重い衣。

その顔に刻まれた深い(しわ)の一つ一つは、人生の苦楽を象徴するものではない。



それは他者を「象徴」として使い潰し、支配し続けてきた歴史の年輪として、そこに座している。



皇太后。

李宵の産みの親。

そして、彼を「息子」ではなく「帝国の心臓」という名の高価な部品として管理し続けてきた、この後宮最大のボトルネック。





「……久しいな、皇帝」



老婆の喉から放たれた聲音(しょうね)は、乾燥した枯れ木同士が強引に擦れ合うような不協和音だった。

そこには、再会を喜ぶ体温も、成長を慈しむ潤いも存在しない。



あるのは、自らが磨き上げた「権力の象徴」が、今も正常に稼働しているかを査定するような、冷徹な検品者の響きだけだ。



彼女の氷点下を思わせる視線が、李宵の隣に立つ私へと、音もなく移動した。

その瞳に映っているのは、人間ではない。



完璧に調整された「皇帝」という名のシステムの横に、不当に紛れ込んだバグ――、あるいは監査の際に真っ先に切り捨てるべき「不良資産」を見るような、無機質な拒絶。






「……これがあの、噂の女ですか。見るに堪えない、貧相な装いですこと。伝統の重みも知らぬ者が、我が国の後宮を汚すとは……嘆かわしい」



彼女は私を一瞥(いちべつ)しただけで、価値の低いノイズとして視界から抹消した。

無視。

それは実の息子にさえ「息子」としての権利を認めなかった女が放つ、徹底的な「存在の否定ゼロ・エビデンス」だった。






(……なるほど。これがラスボス(最終監査役)ですか)



私は逃走を望む自律神経をロジックで制圧し、背筋を垂直に保った。

貧相な装い? 結構。

これは私が選び、無駄な装飾というコストを極限までカットした「機能美(アーキテクチャ)」の結晶。



実の息子さえも飾り立てるべき「資産」としか見られない貴女のような「不採算(ふさいさん)な怪物」とは、設計思想(エンジニアリング)からして違う。



私の内側で燃え上がる、静かな戦闘モードを察知したのか、李宵が私を庇うように半歩前へ出た。

その背中は広く、堅牢な(はり)のように頼もしい。



だが。

私の肩を掴む彼の指先が、母親という名の冷たい壁を前に、微かに、けれど絶え間なく震えていることを。



密着した体温だけが、その悲鳴を同期していた。

プロジェクト最終フェーズ、始動いたします!

お待たせいたしました。いよいよ皇太后という名の「旧弊」との全面対決です。


毎日19:00、最後まで息をつかせぬデプロイをお約束します。


皆様の「いいね」が、鈴の逆転劇のキレを鋭くします。

完結まで全力で走り抜けますので、応援ブーストよろしくお願いいたします!

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