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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第2部『玉座の改革者』

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83/120

幕引き、あるいは宣戦布告の急報【投稿再開予定:6月1日 19:00】

「……分かりました。お受けします」






私は、(てのひら)に沈み込む「伝国璽(でんこくじ)」のかどを、指の骨が白く浮き上がるほど強く握りしめた。



肌を刺していた羊脂白玉(ようしはくぎょく)の数千年の冷気が、私の体温という名のコストを吸収し、ゆっくりと、けれど確実に温まっていく。

この物質的な「同期」は、私の人生という全資産(アセット)を、この男の野望に投下する最終合意(クローズ)の感触だった。






「私が貴方を、最強の皇帝にします。……その代わり、私の計算(ロジック)には絶対に従っていただきますよ? 不採算(ふさいさん)な情に流される残業もさせますし、宮廷の無駄な経費削減も徹底します」



「ああ。……望むところだ」



李宵(リ ショウ)が立ち上がり、私を椅子から引き起こしてその胸板へと抱き寄せた。



ドクン、と骨格が直接ぶつかり合うような、硬質な衝撃。

それは、これまでのような「対象(弱者)」への庇護ではない。



背中に回された腕の、血流を止めるほどに強靭な力強さ。

それは、戦場へ赴く兵士が唯一信じられる「武器」を確認するかのような、対等な|戦略的パートナーシップ《アライアンス》の証明だった。









窓の外。月光に縁取られた長安の街並みが、深い闇の底でうごめいている。

星屑を撒いたように点在する無数の灯。



その一つ一つに守るべき命のログがあり、支払われるべき税の重みがある。

この膨大なデータ(帝国)を、私たちは二人で背負い、最適化していくのだ。



肺を満たす龍脳(りゅうのう)の香りが、かつてないほどに深く、甘美な酸素となって身体を巡った、その瞬間。






――ドンドンドン!! 



静寂を物理的に破壊する、(こぶし)が扉に激突する音。

李宵の背中の筋肉が、瞬時に鋼鉄の硬度へと変質し、私を抱く腕に、刺すような緊張が走った。



「……入れ」



現れたのは、膝の震えが石床に伝わるほどに動揺した宦官(かんがん)だった。

彼は顔面を床に擦り付け、酸素を求める魚のように口を動かし、震える声でその「致命的な変数」を吐き出した。



「き、急報でございます! ……皇太后(こうたいごう)様が! 皇太后様が、予定より早く、長安に到着されました! すでに朱雀門(すざくもん)を通過し、こちらへ向かっておられます!」









皇太后。

この国の旧弊(レガシーシステム)の頂点。



その名が空間に放たれた瞬間、李宵の身体から、先程までの生々しい熱が吸い出された。

彼は私を抱く腕を解き、絶対零度の無表情で、夜の帳が降りた扉の先を見据えた。



「……来たか」



地を()う低い聲音(しょうね)

そこには、これまで対峙してきた風水師や将軍といった「末端のボトルネック」とは比較にならない、底知れぬ憎悪と、氷のような警戒が(よど)んでいた。



――第2部『玉座の改革者』 完

――第3部『御前プレゼン』 へ続く

第2部完!

最終決戦となる第三部へ向け、再び充電期間メンテナンスを頂戴します。

再開は【6月1日 19:00】を予定しております。


ここまで支えてくださった皆様のブックマーク、いいねが、完結への何よりの原動力です。ぜひ最後まで見届けてください!

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