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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第2部『玉座の改革者』

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次の季節へ、あるいは幸福な二度寝

肺の奥まで鋭く突き刺さる、研ぎ澄まされた秋の気流。

わずかに開いた窓の隙間から、外界の冷気が指先をかすめていくが、白絹の掛け布の下に形成された最小単位の「聖域(サンクチュアリ)」が、私の生存を全肯定していた。






李宵(リ ショウ)の腕の中。

彼の胸板から伝わる規則的な拍動(パルス)が、背骨を介して私の心音と同調(シンクロ)していく。



酷暑の間に流した不快な汗の層は、もうない。

今の彼から立ち上るのは、体温で温められ、寝具の繊維に深く沈殿した龍脳(りゅうのう)の、安息へと誘う重厚な芳香だ。






視線を僅かに上げれば、そこには「絶対君主」の仮面を剥ぎ取った、無防備な残骸が転がっていた。



(けわ)しさは完全に弛緩(しかん)し、薄い唇は微かに開いている。

かつての探花郎(たんかろう)としての美貌が、朝の光の中で幼いほどの静謐(せいひつ)さを(まと)っていた。



(……この熱源(アセット)さえ確保できていれば、冬の減価償却も恐るるに足りないわね)



私は、彼の胸元に頬を深く沈めた。

氷のロジスティクスも、物理的な冷却装置(ファン)も必要ない。



この堅牢(けんろう)(はり)のような腕と、絶え間なく供給される体温という名の内部留保。

それさえあれば、この先に待ち受ける凍てつくような政争の季節も、最短ルートで踏破できる確信があった。






指先で、彼の襟足に跳ねた一房 of 髪をなぞる。

その微かな刺激に、李宵が夢の(ふち)で身じろぎした。



無意識に回された腕が、私の腰をさらに深く、逃走経路を遮断するように引き寄せる。

肋骨が僅かに(きし)むほどの強固な抱擁。



それが、どんな饒舌(じょうぜつ)な詩歌よりも正確に、彼の中での私の「評価価値」を物語っていた。






(……もう少しだけ、稼働を停止(シャットダウン)しましょう)



私は再び、意識をまどろみの底へと沈めていった。

定時退社(サボり)を至上の善とする私が、朝の「二度寝」という最大級の贅沢(非生産的活動)に身を投じる。



これもまた、彼という不規則な変数がもたらした、私だけの聖域における「新しい日常(ホワイト化)」の風景だった。






だが、その静謐な(まゆ)の外側。

紫宸殿(ししんでん)の冷え切った執務机の上には、張将軍から届けられた、不穏な影を(はら)んだ報告書が、主の目覚めを待って音もなく鎮座していた。






◆◇◆

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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