不要在庫の整理、あるいは撤収作業
カサリ、と乾いた音を立て、私は夏用の葛の布を四角に畳み込む。
指先に触れる布地は、汗を吸い、何度も洗濯を繰り返したせいで、特有のざらついた硬さを帯びていた。
手回し式の羽車も、その可動部を一つ一つ丁寧に取り外し、油を差して木箱の底へと沈める。
空間から「避暑」のための機材が消えていくにつれ、隠れ家の石床は無機質な冷たさを取り戻し、四隅の余白が、耐え難いほどに寒々しく拡張されていく。
「……林鈴」
背後から放たれた低い声音が、淀みのない空気の振動を伝って鼓膜に届いた。
振り返れば、いつの間にか入り口の影に李宵が立っている。
けれど、今日はあの汗ばんだ日々のように、私の膝という名のテリトリーへと一直線に侵入してくることはなかった。
彼は敷居の一歩手前で足を止め、機能性を失い、徹底的に清掃された室内を、検品するかのような冷徹な眼差しで眺めていた。
「……ずいぶんと、さっぱりしたな」
「ええ。もう暑くありませんから。……撤収です」
私は、自身の声が不自然なほど事務的な響きを帯びるのを止められなかった。
彼の纏う衣は、肌を透かせていた白絹の単衣から、織りの詰まった、確かな厚みを感じさせる赭黄の秋物の絹へと更新されている。
その重厚な質感は、夏の間、だらしないほどに無防備な熱を晒していた「一人の男」から、再び遠い高嶺の「皇帝陛下」へと、彼の輪郭を塗り替えていた。
「……そうか。涼しくなったな」
「はい。これで陛下も、紫宸殿で快適に政務にお励みになれるかと」
言葉が、上滑りしたまま硬い石床を転がっていく。
本当は、その喉の奥までせり上がった「理由がなくても来てほしい」という非合理な渇望を伝えたかった。
なのに、私の唇が弾き出すのは、彼という名の「顧客」に対する、需要の終了を宣告する冷やかな拒絶ばかりだ。
李宵が、静かに歩みを進める。
けれど、その距離感は、かつての湿り気を帯びた密着の日々よりも、物理的に、そして致命的に遠い。
(……業務が終了すれば、私はただの不愛想な監査役)
自己評価という名の冷徹な損益計算が、私の心の壁を一段と厚く、堅固に構築していく。
私は彼と視線を同期させることができず、胸の内に広がる空洞を埋めるように、畳んだばかりの葛布をぎゅっと、指の関節が白くなるまで抱きしめた。
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また明日[19:00]にお会いしましょう。




