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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第2部『玉座の改革者』

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マーキング・リピート、あるいは家賃の現物支給

冬冬(トントン)――、冬冬(トントン)――。



腹の底を震わせる街鼓の残響が、完全なる夜禁(やきん)の訪れを告げる。

この音が止めば、長安は巨大な沈黙の檻となり、物理的な移動はすべて「罪」へと変換される。



結局、彼は帰らなかった。



私が設計したはずの広大な寝台は、今や二人の体温が複雑に混ざり合い、熱の飽和状態オーバーヒートに陥っている。






李宵(リ・ショウ)は当然の権利を主張するように中央を占拠し、私は彼の強靭な腕の檻に閉じ込められたまま、酸素の薄い熱波の中にいた。



(……なぜ、この不採算案件が継続されているのか)




背後から絶え間なく伝わる、岩盤のような胸板の厚みと、低く規則正しい鼓動。

振りほどこうと身じろぎするたび、腰に回された腕の出力が一段階引き上げられ、シーツの絹が肌を擦る音が深夜の静寂に高く響く。



彼の腕は、最高級の真綿よりも密度が高く、逃げ場を許さない「温かな拘束具」そのものだ。




「……ん……行くな、鈴」



湿った呼気が首筋をなぞり、鼓膜を直接震わせた。

(かす)れたその響きには、昼間の冷徹な改革者としての威厳は欠片も残っていない。



あるのはただ、温もりを求めて他者を侵食しようとする、剥き出しで脆弱(ぜいじゃく)な執着。



私は抵抗を放棄し、龍脳(りゅうのう)の香りが色濃く漂う彼の胸元に、額を沈めた。

雨上がりの森を思わせるその香気が肺を満たすたび、張り詰めていた監査役としての防衛本能が、砂の城のように崩れ去っていく。



ここは私の城だが、李宵という巨大な軍事力(防壁)なくしては成立しない。

この添い寝という名の肉体的な「現物支給」は、聖域の安全保障を維持するための、妥当なランニングコストに過ぎないのだ。




「……明日は、もっと広い寝台を発注しろ」



夢うつつの中で、熱い指先が私の髪をひと房掬すくい上げる。

そのとろけるような、けれど拒絶を許さない不文律に対し、私は返事をする代わりに、静かに目蓋を閉じた。



意識が暗転していく。

心拍数だけが、夜のとばりの中で不規則に跳ね続けていた。

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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