劇的ビフォーアフター、あるいは採光という名の浄化
バサリ、ドサッ。
湿気を吸って不採算な重量を増した魔除けの布や、埃にまみれた不気味な装飾品が、尚功局の男たちの手によって次々と中庭へ放り出されていく。石床に叩きつけられるたび、数十年分の沈黙が土煙となって宙を舞う。
三日間にわたる徹底した「スクラップ&ビルド」。立政殿を覆っていた病理の膜が、一枚ずつ剥ぎ取られていった。
「……眩しい」
私が最後に、南向きの重厚な飾り窓を両手で押し開けた瞬間。
網膜を突き刺すような苛烈な陽光が、磨き抜かれた黒檀の床に雪崩れ込み、室内を暴力的なまでに白く染め上げた。
目蓋を射抜く光の熱。
澱んでいた腐敗臭を押し流し、長安の乾いた秋風が室内を縦断していく。風に乗って運ばれてくるのは、新調されたい草の青々とした、どこか懐かしい鋭い香り。
床一面には、冬場の吸熱と梅雨時の調湿を計算し尽くした、最高級の畳が隙間なく敷き詰められている。動線を阻害していた不採算な衝立はすべて撤去し、家具は壁際へと再配置。視界を遮る障害物を取り除いたことで、広間は物理的な面積以上の広がりを誇示していた。
「すごい……。同じ建物とは、思えません」
女官たちが、震える指先で新調された柱の感触を確かめながら、呆然と呟く。かつての陰気な澱みは霧散し、そこには効率と快適性が「機能美」として結晶化した、最新鋭の執務空間が鎮座していた。
「これなら、幽霊も住みたくなくて逃げ出すでしょうね。……眩しすぎて」
私は、肺の奥まで清浄な空気を送り込み、満足げに頷いた。
新設された執務机に歩み寄り、その滑らかな天板を掌でなぞる。指先から伝わる、硬く、冷徹な木の感触。
ここに帳簿を積み上げ、算盤を弾く。指先が空中でスプレッドシートをなぞる予感に、心拍が微かに速度を上げる。それは、実務家としての全能感が、血管を駆け巡る合図。
方角だの、家相だのといった非科学的な不文律はすべて無視した。唯一の採用基準は、「私の生産性が最大化されるか」、ただ一点。
ここは、過去の誰かのための宮殿ではない。私という「監査役」が、この国のボトルネックを次々と破壊していくための、最前線基地なのだから。
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また明日[19:00]にお会いしましょう。




