表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第1部『隠れ家の監査役』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/123

緑の海、あるいは場違いな資産

ブックマークしていただきました!ありがとうございます(*^^*)投稿頑張ります!

含元殿がんげんでんの磨き抜かれた石床は、冷徹な氷塊のように、膝の皿を通して体温を容赦なく奪っていく。


平伏して額を垂れるこの不自然な姿勢は、すでに六十分を経過していた。

膝から下の感覚はとうに消失し、代わりに数千本の針で突き刺されるような(しび)れが、神経の伝達回路をノイズで埋め尽くしている。


(……ハードウェアの限界ね。これ、現代なら労働基準法違反で即刻提訴できる案件じゃない?)


数千の呼吸が密閉された大広間には、重厚な沈香と、使い込まれた絹が放つ独特の乾いた匂いが(よど)んでいる。

私はその末端――「不採算部門」の象徴とも言える、くすんだ緑の衣を(まと)った下級妃嬪たちの群れの中に、一個の「モブ」として埋没していた。


遥か前方、玉座に近いエリアには、網膜を()くほど鮮烈な紫や緋色の衣が、誇り高い大輪の牡丹のように咲き乱れている。

対してここは、踏みつけられても気づかれない道端の雑草エリア。


……はずだった。


「……ねえ、あれを見て」

「嘘でしょう?  あれは……羊脂白玉(ようしはくぎょく)?」

「なぜ、あんな末席の女が、龍の意匠を?」


さっきから、背中に突き刺さる視線の「質量」が異常だ。

ヒソヒソという音のさざ波が、私の周囲だけ湿度を増し、じっとりと肌を粟立たせる。


原因の所在は、明確だった。

私の髪に挿さっている、あの「現物支給の特別賞与」。

李宵(リ・ショウ)が『退職金代わりだ』と言って寄越した、あの(かんざし)だ。


ただの質の良い石だと思っていたが、どうやら私の資産査定アセスメントは致命的に甘かったらしい。

周囲から放射される感情は「嫉妬」というレイヤーを優に超え、もはや「戦慄」に近い色を帯びている。


(……まずい。これ、レアアイテムどころか、この組織の『重要機密フラグ』だったんじゃないの?)


冷や汗が一筋、背筋を滑り落ちる。

目立たず、騒がず、プロジェクト完了と共にログアウトする計画だったのに。

これでは、自身を広告塔として最大出力でブロードキャストしているようなものだ。


私は必死に額を床に押し付け、緑の海の一部になりきろうと、肺を薄くして呼吸を殺した。



ドォォォォン……。



臓腑を直接揺さぶるような、巨大な街鼓(トントン)の音が、殿内に重低音の雷鳴となって響き渡った。


皇帝入御。

この帝国のCEO(最高経営責任者)が、全アセットを検品するために、その絶対的な重力を伴って現れる。

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ