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【完結】皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第1部『隠れ家の監査役』

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とろける境界線、あるいは不平等な贈与

ふぅ、と。

私の唇から、熱に浮かされた魂がこぼれ落ちるような、甘い吐息が漏れた。


もはや、そこには「痛み」という負債は存在しない。

彼の指が沈み込むたびに、氷点下で凍りついていた私の筋肉は、熱を持った泥のように形を失い、融解していく。


意識の輪郭が、じわりと(にじ)む。

「皇帝陛下」という絶対的なステータスも、今の私には対岸の火事よりも遠い出来事だ。


強制シャットダウン。

私の脳内CPUは、ついに外部からの侵入に対する抵抗を放棄した。


「……よくやったな、林鈴(リン・リン)


耳元で、彼の低音が静かに共鳴する。

調律されたチェロのように重厚な響きが、直接脳髄を(しび)れさせた。


「お前のおかげで、六局の血流が蘇った。……お前は、俺の最高の『機能スペック』だ」


彼の指が、首筋から頭部へと滑らかに移動する。

髪の根元を梳くように、頭皮の強張りを優しく揉みほぐされるたび、ゾクゾクと快楽の微弱電流が背骨を駆け抜けた。


「……ん?」


不意に、髪の束の間に、ひやりとした異質な感触が滑り込んだ。

滑らかで、それでいて峻烈なほどに冷たい、硬質の感触。


「明日の宴、これを着けてこい」


彼の手が、私の髪を無造作に、けれど手慣れた仕草で結い上げ、そこへ何かを深く挿し込んだ。

ずしり、と頭部に密度の高い質量を感じる。


「……これ、は……?」


私は鉛のように重い瞼を数ミリだけ持ち上げ、夢現の境界で問いかけた。


「退職金代わりの、記念品だ」


李宵(リ・ショウ)は私の耳朶に唇を寄せ、愉悦(ゆえつ)を含んだ声音で囁いた。


「緑の衣には地味かもしれんが……お前によく似合う」


ああ、なるほど。

プロジェクト完了に伴う、現物支給の特別賞与か。


(……ありがたく、資産として……頂戴します……)


私は心の中で業務完了の受領印を押し、完全に脱力した身体を、彼の赭黄(しゃこう)の衣の熱へと預けた。


髪に挿されたそれが、最高級の「羊脂白玉(ようしはくぎょく)」を削り出し、皇后にしか許されない双龍の意匠を刻んだ禁忌の(かんざし)であることなど、一兵卒の私には知る由もない。


私の意識は、峻烈な龍脳(りゅうのう)の香りと、背後から包み込む彼の膨大な熱量に溶かされ、心地よい闇の底へと墜ちていった。

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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