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皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第1部『隠れ家の監査役』

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皇帝の施術、あるいは高密度な特別賞与

「……全工程、完了したようだな」


李宵(リ・ショウ)は、机上に完璧に整列した報告書の束を一瞥し、重厚な満足感を湛えて頷いた。

漆黒の瞳が、ふいに私の肩先へと移動する。


「だが、お前の体はボロボロだ。……まるで石を削り出したかのように凝り固まっている」


「ええ、まあ。職業病ですので。この程度の工数(ストレス)は、予算内(想定内)ですよ」


私が無造作に肩を回すと、関節が「パキリ」と乾いた悲鳴を上げた。

彼は無言のまま、部屋の隅に置かれた、重厚な木枠の寝台(デイベッド)を指差した。


「そこに座れ」


「は?  いえ、もう本日の業務はクローズしましたし、帰ります……」


「座れ」


有無を言わせぬ皇帝命令トップダウン

私は観念して、沈香(じんこう)の香りが染み付いた硬いクッションの上に腰を預けた。


盤領袍(ばんりょうほう)の絹が擦れ合う、衣擦れの音が耳元をかすめる。

彼の大きな影が、背後から私を包み込むように覆いかぶさった。

龍脳(りゅうのう)の香りが、背筋を伝う熱と共に密度を増す。


「へ、陛下?」


振り返ろうとした、その刹那(せつな)



ガシッ。



灼熱の掌が、私の両肩を容赦なく鷲掴みにした。


「――っ!?」


彼の太い親指が、僧帽筋の最深部――限界まで圧縮された「疲労の核」へと、精密機械のような正確さで食い込んだ。


「ぐ、ぅあ……ッ!」


痛い。けれど、それ以上に恐ろしいまでの快楽が中枢神経を直撃した。

彼の指は、鋼鉄のプレス機のような質量を持ちながら、筋肉の繊維を一本ずつ検品し、解きほぐしていく繊細さを併せ持っている。


「力が入りすぎだ。息を吐け」


耳朶を揺らす、重低音の(ささや)き。

抗う術を失い、促されるままに呼気を吐き出すと、さらに深く指が肉へと沈み込んでいく。

ゴリ、ゴリ、と音を立てて、私の頑固な疲労物質が粉砕されていくのが分かった。


「ちょ、ちょっと待ってください……!  こ、皇族の方にこんな……これは明白なガバナンス違反です!」


私は、崩れ落ちそうな意識を繋ぎ止め、必死に抗議のロジックを紡いだ。


「黙っていろ。……これは、俺の独断による『特別賞与(ボーナス)』だ」


李宵(リ・ショウ)は聞く耳を持たない。

手つきはさらに大胆さを増し、首筋から脊髄のラインへと滑らかに移動していく。


「ここは『風池(ふうち)』。眼精疲労に効くツボだ。……酷使しすぎだぞ、その目は」


ググッ、と首の付け根を、熱を帯びた指先で(えぐ)られる。

瞬間、目の奥に溜まっていた(おり)がジンと熱を持ち、視界が白く洗い流されるような衝撃が走った。


だめだ。

思考のメイン回路がショートする。


(……あ、だめ……気持ち、いい……)


悔しいほどに、身体は正直だった。

一月近く張り詰めていた緊張の糸が、彼の手によってプツリ、プツリと断ち切られていく。


私はいつしか不毛な抗議を飲み込み、されるがままに、全重力を背後の「熱」へと委ねていた。

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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