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【完結】皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第3部『御前プレゼン』

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夜明けの承認印、あるいは世界更新の合図

格子の向こう、長安の空が薄墨色から白磁の白へと移ろう。

静寂を裂いて響き始めた一番鳥の鋭い(さえずり)が、徹夜で使い果たした脳の奥をチリチリと刺激した。



広大な黒檀の机の上には、一晩の激闘の成果――「新・帝国定款(改革案)」が、崩れそうなほど高く、整然とした塔のように積み上げられている。




「……出来たな」




李宵が、肺に溜まった濁った空気をすべて吐き出し、深く、重く呟いた。

彼は、かつて私の手に「担保」として預けられたはずの伝国璽(でんこくじ)を、慈しむように受け取った。



端渓の硯の傍らに置かれた、最高級の朱肉(しゅにく)

そこに鎮座する、燃えるような緋色の泥へ、重厚な(ぎょく)の塊を沈める。




――ドンッ!! 




床の芯まで響くような、重厚な打突音。

羊皮紙の繊維の奥深くまで、鮮やかな朱が「血」のように浸透していく。



それは、古い帝国の死と、私たちが設計した新しい基本OS(プロトコル)の起動を告げる、残酷なまでに鮮烈な日の出の色だった。




「……ここに、私のサインも」




私は、使い慣れた筆の穂先にわずかな墨を含ませ、その朱の隣へ穂先を滑らせた。



皇帝の絶対的な承認印と、監査役(オーディター)である私の署名。

二つの権威が物理的に重なり合い、法的効力を帯びた「契約書」として定着していく摩擦音。



窓から差し込み始めた赭黄(しゃこう)の陽光が、室内に滞留する(ほこり)を金粉へと変え、乱反射させていた。

眼球の裏にへばりつく気だるさと、すべての変数を解き明かした後の、震えるような達成感。



私たちは顔を見合わせ、引き()れた頬を僅かに緩ませた。




「……行くぞ、相棒(皇后)。世界を書き換えに」




彼が、インクと汗で汚れた手を差し出す。

私は迷わずその(てのひら)を取り、指を深く絡めて握り締めた。



数時間前の冷え切った指先はもうない。

そこには、新しい秩序を掌握しようとする者の、熱く、騒がしい拍動が脈打っていた。




「ええ。……完膚なきまでに、論破してやりましょう」




積み上げられた資料の山――それは私たちの「世界への挑戦状」であり、同時に「愛の祭壇」でもあった。

その山を越えて、私たちは唇を重ねた。



甘いだけの愛撫ではない。

脳内に残る龍脳の香りと、紙面に漂うメタリックなインクの匂いが激突する、共犯者たちの誓い。



舌の先に残る苦い茶の味さえ、これから始まる戦いの前の、最高に贅沢な報酬(スパイス)に感じられた。



さあ、夜明けだ。

非効率な旧弊を焼き払い、私たちが定義した「ホワイトな帝国」という名の最適解(ユートピア)へ踏み出すために、私たちは重い扉を蹴破るようにして開け放った。

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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