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【完結】皇帝陛下の不採算な溺愛~転生コンサル、契約外の執着で定時に帰れません!~  作者: 深山 凛
第3部『御前プレゼン』

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最強のバディ、あるいは新しい時代の契約

紫宸殿の広大な空間は、暴風が過ぎ去った直後の真空地帯のような静寂に沈んでいた。



並み居る高官たちの喉元は、目に見えない論理の刃を突きつけられたまま凍結し、呼吸をすることさえ(はばか)られるような緊張が石床を()っている。

筆頭ボトルネックであった老婆――皇太后の指先が、象牙の扇子の親骨を白くなるまで握りしめ、言葉にならない屈辱に小刻みに震えていた。






その断絶された沈黙を、玉座から立ち上がる重厚な衣擦れが塗り替えた。

赭黄の(ほう)が放つ、摩擦による微かな熱を孕んだ絹の鳴き。

李宵が、澱んだ空気の中を確かな重力を持って進み、私のすぐ隣へと降り立った。



「……聞いた通りだ」



彼の低い聲音が、石造りの広間に反響し、空間そのものを再定義するように朗々と響き渡る。



それは単なる発声ではない。

レガシーな旧体制(OS)強制終了(シャットダウン)させ、新しい支配構造(プロトコル)へと移行するための、絶対的な実行命令コマンドだった。



(ちん)は、皇后の案を採用する。……後宮を解体し、新たな官制を導入する。これは決定事項だ」






どよめきが(さざなみ)のように広がるが、もはやそれを言葉という形に成形し、異を唱えるリソース(気力)を持つ者は皆無だった。

李宵の大きな掌が、私の肩を力強く引き寄せる。



粗い麻布の衣越しに、火傷しそうなほどの熱い体温と、骨の芯まで響くような揺るぎない信頼が、激しいパルスとなって流れ込んできた。



「……勝ったな」



彼が私にだけ聞こえる周波数で(ささや)く。

龍脳の香りが、(すす)けた麻の匂いを塗り潰し、私の周囲を「聖域」へと変質させた。



「ええ。……私たちの、勝ちです」



私は彼を見上げ、唇の端を不敵な弧へと釣り上げた。






これで、不透明なコストを垂れ流し続けた「(おり)」という名の不採算部門は、物理的に消滅する。

定時退社という名の至高の善を達成するまでのロードマップは依然として険しいが、少なくとも、理不尽なデッドロックに思考を奪われる日々は、今この瞬間に終焉を迎えた。



これからは、この絶対的な権限を持つ「パートナー」と共に、合理的な新しい不文律(ルール)を構築していくのだ。



格子窓から射し込む真昼の鋭い光が、二人の影を石床の上に長く、濃く投影している。

それは、過去の残像を焼き払い、新しい時代という名の「光の道」を敷き詰めているかのように見えた。






だが。

退室する皇太后が、去り際に網膜を焼くように向けてきた視線。

そこには、根を断たれてもなお毒を生成し続ける、諦めの悪い執念の炎が(くすぶ)っていた。



蛇は、頭を潰されても反射的に筋肉を躍動させる。

組織の「完全解体」という名の膨大な残務処理は、今、まさに本番の火蓋(ひぶた)を切ったばかりだった。



◆◇◆

読んでいただきありがとうございます!

もしよろしければ、「リアクション」や「ご感想」をいただけると嬉しいです。


また明日[19:00]にお会いしましょう。

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