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宿り木カフェ  作者: 桜居かのん
Case5 美人故に結婚が難しくなった29歳
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*********



ネットで会うことにした三人目の男性と会う日。

私はもう既に面倒で面倒で仕方なかった。

最初は洋服もかなり気合いを入れていたが、仕事着の延長みたいななのでいいかとスーツにしておいた。

どちらにしろ平日夜の待ち合わせなのでちょうど良い。


三人目は実は適当に選んだ人だった。

もうなんだか面倒になって、あまり細々プロフィールを書いていない人にしたのだ。

研究所務めなんて書いてあったし、理系の学歴だったはず。

覚えていないので慌てて待ち合わせ先に向かう途中で相手のプロフィールを確認した。


だが待ち合わせ時間になったけれど来ない。

十五分経っても来ない。

いや、おかしくない?

せめて遅れますの一言くらい送るでしょう、社会人なら。


そして約三十分過ぎた時、もう帰ろうとしていたら息を切らせて走ってきて、周囲を見渡している人が居た。

眼鏡で全体の服装から見ても、なんだか冴えない男性だ。

もしかして、とメールを送ると、その男性はスマートフォンを握りしめていたらしく慌てて中を見ている。


『あーあの人かー』


私はテンションが下がりながら、こちらに気がつき走ってきた男性と向かい合った。


「あの、木内さん、ですか?」


はぁはぁと息を切らして現れた男性に、苦笑いで、はい、と答えた。


「すみません、考え事をしていたら降りる駅を乗り過ごしてしまって、それが快速で降りられなくて」


「あぁ、よくありますよね、そういうこと」


私は無いけど、と内心で毒を吐きつつ、困ったように頭を掻いている男性を、私はぼんやりと見た。


身長、今の段階でヒール履いている私より低く見える。

ということは170センチ無さそうだ。

そして洋服はいわゆるチェックのネルシャツにジーンズだった。


『これ、オタクの人が着る服じゃ』


私はさっき帰らないことを既に後悔していた。


「腹も減ったしどこか入りますか」


え?事前にお店予約してないの?!


私はさすがにあの上目線の男ですら店を予約していたのに、突然行き当たりばったりで店を決めようとしている男に驚いた。

なんかファミレスとかになるんじゃないでしょうね、今日。


「今和食の気分なんですけど、そこで良いですか?」


いや、そう先に言われてフレンチが良いですとか言えないでしょ?

私は頬が引きつりながら、はい、と答えた。


そして、ちょっとした小料理屋みたいなところに入った。

ちょうど間仕切りのある小あがりの席が空いていてそこに座った。

中を見渡せばちゃんとカップルもいれば、おじさん達のグループもいる。

繁盛しているようで、そこまで変な店には思えなかった。


「ここ、やきとりと煮物、美味いですよ」


「はぁ」


何度か来たことがあるのだろう、嬉しそうにメニューを見ている彼に完全に流されていた。

というか、なんか勝手に決めていく感じでこちらも自分の意見を言うのを面倒になっていた。


「何飲みます?」


「ビールで」


私が投げやりに気味に答えても特に気にする事もなく、彼はビール二つと適当にやきとりやら煮物やらサラダやらを頼みだした。


『冴えないし、オタクっぽいし、自分勝手な人だわ』


それが印象だった。

ビールで乾杯してスタートしたが彼は本当にお腹が減っていたようで、まずは必至に食べている。



「凄くお腹減ってたんですね」


なんだか呆れ気味に言うと彼はぽかんとこちらを見て、急に申し訳なさそうな顔をした。


「今日初めての食事だったもので」


「はい?」


「ずっと研究室に籠もってて食べるのを忘れてまして」


そう言いながらも彼はビールを飲んだ。

寝食忘れて仕事するタイプなのか、それは大変だ、結婚したら。


「あの」


私の声に彼は箸を止め、私を見た。


「こういうのは何度もやってらしゃるんですか?」


「いえ、今回が初めてです」


私は彼の答えに驚いた。


「ずっと仕事ばかりで、職場にも女性はほとんどいないので、実は心配した先輩がここに勝手に登録してしまいまして」


「え、もしかしてあのメールは松本さんが書いたんじゃないんですか」


「実はそうでして、すみません」


困ったように頭を掻いた彼に、唖然とする。


「先輩もまさかあんなプロフィールで返信が来るとは思ってなかったらしく、今日も先輩に言われるまで約束を忘れてました」


あはは、と彼は笑っているが、それ、いちいち正直に私に言う事だろうか。

もう少しごまかし方ってものがあるでしょうに。

私は相手があまりやる気が無いのだと理解した。

まぁそうだと分かれば、今日は気にせず食べて終わればいい。

一気に肩の力を抜いた。


「そうですか・・・・・・。

やきとり好物なんで頼んで良いですか?」


「どうぞどうぞ」


彼はにこにこと笑う。

そうして食べ方とか気にもせず、相手に取り分けることもなく、そのまま串でかぶりついた。

それを彼がじっと見ていた。


「なんですか?」


「あ、すみません、美味しそうに食べてるな、と」


「はぁ」


いつもは食べ過ぎると男性に引かれるので、少し小食ぶっていたりもしていた訳で。

もうこれは気にしないで良いと思ったので地が出てしまった。





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