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既に二人でうんざりして、私は婚活中の友人に電話をした。
『あー!その上から目線男、私も会ったわ!』
『は?!』
『全然プロフと違うのよねー。
私が会ったの、多分一年前よ?
まだそんな事してるって相当まずいわよねって私が言うのもアレだけど』
「サイトの運営側に連絡した方が良いんじゃない?」
『例えば金をだまし取られたとかセクハラされたとかじゃないから、送っても無視されると思うわよ?』
「十分迷惑な人間だと思うけどねぇ」
『で次がそんな男だったと』
「もうめんどくさくなった」
『うーん、二連続で酷いハズレに当たったのね。
全員が全員じゃないし、まずはまだやってみたら?』
「なんか砂金でも探してるみたいね、膨大の土砂の中から」
『やめてよ、私も泣きそうになるじゃない』
お互いため息をついて会話を終えた。
何だか、自分の価値が酷く落ちた事を痛感させられた。
それは私にはとても恐ろしくてどうしたら良いのかわからない現実だ。
まだ私なら待っていれば、と思っていたけれど、そうしていれば時間だけが経っていくかも知れない。
怖い。
ずっと華やかだった世界から、どんどん私は遠ざけられていく。
よく考えてみたら、男性と沢山知り合っていたくせに、私の為を思って注意してくれた人なんていなかった。
男性から見てこんな今の私はどう写っているのだろう。
今までの手段が使えないのだ、通じないのだ。
安易にネット婚活なんて始めてみたけど、この方法は合っているのだろうか。
わからない、やはり怖い。
私は1人の部屋で泣きそうになっていた。
翌日、婚活サイトは開かずに、ぼんやりとネットサーフィンをする。
ほんとにネットで運命の相手なんかに出逢えるのだろうか。
やはり男性の事で悩むのだ、意見を求めるのなら男性だ。
でも今までの彼氏に聞ける訳が無い。
気兼ねなく相談できたり、愚痴を聞いてくれる異性の友達を作っていれば良かった。
そんな事を思いながら、ネットサーフィンをしていて、ふととあるサイトが目に留まった。
『宿り木カフェ』
客は女性のみ、男性スタッフが話し相手になるという変なサイトだった。
値段も安い。
どうもコーヒー一杯くらいの価格で単に茶飲み友達感覚でお話ししましょうという事らしい。
20回がマックスで話せるらしいけど、1回ずつチケットを購入するようで、途中で止めても良い、一回お試しというか、自己紹介タイムもあるようなので、試しに登録してみた。
希望のスタッフは年齢は20代から30代、ネットで交際相手を見つけて結婚した人。
せっかくだから本当にそんなことで結婚できた人がいるなら話を聞いてみたかった。
正直そんな人がここにスタッフでいるとは思っていなかったけれど。
*********
そして初めて話す時が来た。
パソコンを使って会話するのは仕事でもしていたので、特に問題なく出来た。
しかし未だに怪しげなものではないかと思いつつも、とうとうスタートした。
『初めまして』
「初めまして」
落ち着いている相手の声に少しホッとする。
『まずはこちらの簡単な自己紹介をしても良いですか?』
「はい、お願いします」
どんな人なのかとドキドキしてしまう。
『名前はタクヤです。
年齢は30代半ばというところで、オーダーにもありましたが、いわゆるインターネットで知り合った相手と結婚しました』
「えっほんとに?!」
『あはは、マジです』
私の素の驚きに、タクヤさんが笑っている。
いや、でも本当だろうか。
こんなこと、言っちゃ悪いけど証明しようがない。
『記入欄には、ネット使って婚活中、結果は全然ダメ、で、自分は美人の部類と書かれてたけど』
「いや、最後はそんな書き方してないですって」
『あー、ごめん、堅苦しいの苦手で。
しゃべり方砕けて良い?』
「どうぞどうぞ、じゃぁ私もそうする」
『助かる。
いや、多分というか美人でしょ、君。
なんか同じ感じの臭いがする』
「なにそれ」
急な言葉に私は不審げな声を出す。
ネットで匂いなんて感じないでしょ。
『いや実は自慢とかじゃなくて、昔から俺、もてるんだよね。
読者モデルとかしてたし』
「へぇ、それなのにネットで知り合った人と結婚するわけ?」
『それこそが君の悩みなんじゃないの?』
ずばりと言われた言葉に、思わず言葉を失った。
そう、そんなにもてるんならなんでネットなんかでと思ったのだ。
まさに今私がそれで悩んでいるというのに、結局私も他の人と同じ感覚だった。
「ごめん、私も所詮他の人と同じだわ」
『いや良いよ、そんなもんだし、未だに俺も不思議』
思わず二人で笑う。
考えて見たら、付き合っている男か、下心のある男か、今回の婚活のおかしな男とかばかりで、仕事を抜けばこんなにまともに男性と話したことなんて無かった。
少しだけたわいないことも話し、終了時間が近づいた。
『そろそろ終わりだけど何か質問は?』
「うーん、すぐには思いつかないな」
『まぁそうだろうね、多分未だになんだこのカフェって思ってるだろうし』
「思ってる」
『割とみんなそう言うよ、最初はね。
とりあえず俺の日程入れてあるから、もし俺で良ければご指名どうぞ』
「あ、うん、ありがとう」
通話が終わった。
あなたに今度からお願いしますとは、この場で言い切れなかった。
なんだか変な気分であっという間に時間が過ぎた気がする。
私は妙な心持ちで少しぼんやりとしながら、横に置いておいたお茶を飲んだ。




