9話 ヴェッツェル家
名前のネタを下さった、simさん、オトツカイさん、世紀末さん、がーらんどさんにこの場をお借りして、感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
俺が助けた盗賊--いや、元奴隷たちと言った方がいいか--は、体を清めて、着替えるために、川へ向かっていった。
俺は、気になったことをユタたちに問う。
「あの奴隷たちは誰だか分かるか?」
「ええ。左から、ミナ、メドゥシアナ、エウリュアレー、ステンノ。全員ヴェッツェル家の人間ね。」
「ヴェッツェルねぇ...。」
知らねえよ!てか苗字...いや、家名、言いづらいじゃねえか!
「まさか生きているとは思いませんでした...」
「...ん?どういうことだ?」
ソルが言うには、ヴェッツェル家は代々、王に仕える貴族であった。
現当主、ダイアン・ヴェッツェルは、王が幼い頃からずっと側にいたため、王への忠誠心は、今までの代以上で、国教よりも王を信仰している程であった。彼は王からの信頼も厚く、日に日に彼につく勢力は増えていったらしい。
しかし、貴族らが、王がダイアンを暗殺しようとしていると、彼に言った。彼は信じられなかったが、多数に言われ、信じてしまう。そして、最後には、泣きながら王を殺めてしまった。その後、家族を連れて、王宮から遠く離れた小さな都市へと自ら流れて行った。
そこからの彼は、以前の彼と同じではなくなった。ギャンブルに金を惜しみなく使用したり、娘や妻に日頃から暴力を与えたりなどするような男へと変貌してしまったのだ。そして、時々、泣きながら叫ぶ。
「王よ!我が王よ!私は何を信じればいいのです!もう誰も信じられませぬ!大切な家族も壊してしまうこの愚か者へ、お導きをぉぉ!何卒...何卒...」
聞いてて胸が痛くなってくる。
「結局、気持ちを晴らすためのギャンブルで多額の借金背負ってしまい、男...ダイアンは娘を奴隷商に売っぱらったんだな?」
「その通りよ。」
「そいつは今どうしてんだ?」
「いいえ。今はおりません。3年前、彼は妻と一緒に入水されました。遺書...というか、ノート1冊に『我が王よ、お許しくだされ』のみ書かれていたようです。」
「そうか...」
明らかに分かるのは、貴族が言っていたことは嘘であることだ。上流階級は自分のことしか考えられんからな...
「本当に最低な貴族だったわね...あの陰謀ジジイ...」
「ええ、本当です。お姉様がいなければ、彼はまだ権力を握っていたでしょうにね。」
「ん?どういうことだ?」
気になる発言をしていたので聴いてみると、焦った顔をして口を抑えていた。
「てかお前ら、なんでそんなに細かいことが分か...」
「な、長く冒険者やってると情報なんてたっくさん集まるのよ!ねぇ、ソル?」
「そっ、そうですよ!数々の場所を訪れたのですからね!」
「ふーん。」
怪しい...だが深読みはやめてあげよう。そちらにはそちらの事情がある。逆にこっちに話振られたら結構やばいからな...
俺は日が沈みかかった空を見上げた。母国よりも綺麗に見えた気がした。




