5話 スミレ・フォレスト
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。」
暗めの茶髪の女が声をかけてきた。確かにそうだったな...。
「私の名前は、ソルトレイク・メリー、と言います。"ソル"とお呼びください。さっき貴方が変わった呼び方をした彼女は、ユタ・メリーで、私の姉です。」
変わった呼び方ねぇ...ことりベージュが通じなかったか...
それにしても、ソルトレイクとユタか...とある国の州の名前と都市の名前であった気がするな。
「うん、よろしく。」
「えっと、あなた様は?」
「あー...」
やばい、考えてない。この世界で本名を告げるべきか...
いや、どうせ西洋系の人が多いだろうし、日本っぽい名前だと、悪い意味で目立ってしまうな...
迷っている時、地面に咲いた青い華を見て、ふととある名前を思い出して、呟いた。
「スミレ・フォレスト。」
「はい?」
「俺の名は、スミレ・フォレストだ。スミレと呼んでくれ。」
「よろしくお願いします。」
「おう。」
俺と女、いや、ソルは握手をした。
スミレ・フォレスト...この名は、俺が中学生の時に書いていた小説、漫画の主人公の名前である。懐かしいな。弟の為に、書いてたっけ...
「フォレスト家...あまり耳にしない家名ですね...。」
ソルの呟きに内心で動揺する。やっべぇ...よし、設定を今作ろう。
「まぁ、そうだろうな。森の奥でずっと暮らしていたからな。」
「なるほど、腕からして、ご両親はたいそう厳しい方のようですね。」
俺は両親の顔を思い返していた。もう見れないと思うと涙が出てくる。その涙を見て、ソルが焦り始める。
「ああっ、すみません、余計なことを!」
「いや、いいんだ。気にすんな。」
と言いながら涙をふく。
「もしかして、ご両親は、森の魔獣に...」
「ま、そんなところだ。」
いい感じに勘違いしてくれたな。本当は、俺が死んだんだけどな。ソルは少し悲しそうな顔をしていた。俺は笑ってこう返す。
「なあに、たとえ死んじまったとしても、父さんと母さん、親戚たちも、友人たちも、俺の心の中で、ずっと生き続ける。俺はそう信じている。だから、俺は寂しい顔はしてられんのさ。...だが、あまり、虐めないでくれよ?」
「はい、分かりました。」
ソルが笑顔になってこっちも嬉しくなる。
これだけでも異世界に来たかいがあると思ってしまう俺は無欲だな。
ほぼ本心だったがね。
名前の由来云々は、私の名前、氷水悠斗も同様です。




