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スミレ  作者: 氷水悠斗
2章 動く王国
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21/22

21話 契約焼去

本当にお久しぶりです。

それと共に、遅れてごめんなさい。


遅れた理由はこのストーリーに推敲を繰り返していたから…とか、何度も何度も読み返して、納得がいくものが作れなかったから…とかは微塵も関係なく、ただ単にモチベーションが無かったからです。


本当にごめんなさい…

───と魔眼に映っていた。


情報局々長、ジョン・スミス(自称)は見えたものを機械のような目をして、別の世界の出来事のように話した。


彼が言ったことを俺なりにまとめるとこうだ。


戦争反対派───慎重派とか言ってたな───のいっちゃん偉いユリウス公の領地に、

ミーシャ(自称)が放ち、

サクラが蹴っ飛ばした魔弾が、運が良いのか悪いのか着弾してしまい、

弔いだなんだと手のひらをくるりとひっくり返してしまったと…



なるほどぉ、納得ー。



じゃねぇよ!やべーだろ!!


慎重派の中心人物で、しかも公爵が鞍替えすんだから王国さん戦争まっしぐらじゃねぇか…



勝手に亡き者にされている調査隊員達は、呆然としたり、頭を抱えたり、壊れた玩具のように笑ったりと、様々であった。


配下たちを見ると、震える彼らに思うところがあるのか、同情のような視線を向けていた。



突然、隊員の1人が自力で縄を引きちぎり、剣に手をかけた。彼の手は震え、表情は終始驚愕に包まれており、コラ画像のように整合性が無く見える。


俺は直ちに剣を構える。


「スミレ様、様子が…」「分かってる。」

同じく隣で剣を構えるメデュシアナに視線を合わせず答えた。


「ステンノ。」

「いいえ、支配の能力を持った装備はありません。」

「…そうか。」


言わずにも分かるかい。流石だ。


そう言いつつ何度も何度も───文字通り───目の色を変えて困惑しているステンノにも引っかかりがあるようだ。


何より、かの1人の隊員は必死に何かに抵抗しているように見える。抵抗虚しく徐々に剣は抜かれていく。



他の隊員らを見ると、先程とは違い、何かに怯えている表情で統一されていた。

隊長───ジョン(自称)までも青くなっている。


立ち上がった隊員の剣は全身を見せており、その刃先は持ち主の胸を指していた。


「助け…てくれぇ…」


震える声で、集中しなければ聞こえないような弱々しい声で隊員は言う。


これは一体どういうことなんだ…状況が掴めん…


訳が分からず呆然とする俺にジョン(自称)は、

左手首を見ろ、と何かに抵抗するように声を絞り出した。



震える隊員の左手首──丁度腕時計をするような位置──に巻かれていた包帯が突然ほつれ、地面へと舞い落ちる。


すると、包帯に隠れていた場所に右肩の装備に刻まれているのと同じ紋章が現れた。

それは紫に禍々しく光っていて、明らかに支配されていると読み取れた。



畜生…なんだよ…異世界に来てから支配だの戦争だの…ろくな目にあってねぇじゃねぇか…これも人を殺めた天罰とでも言うのかねぇ…



その思いに呼応したのか、他の隊員も縄を解き、ヨロヨロと立ち上がり始めていた。


…こりゃ参った、同様の紋章だ。


しかし、体に刻まれた紋章が光っても、ジョン(自称)とミーシャ(自称)は座り込み、何とか耐えていた。


その表情は、デザートがゴキブリでドリンクがタバスコですと言い渡されたかのような、怒りと絶望をミキサーで混ぜたそうな苦痛に満ちた顔であった。



「ミナ、ありゃなんだ。」

「おそらく…おそらくですが…」

「言ってくれ。」

「…はい、あれは支配の呪いです…幼い頃本で見た覚えがあります…」

「対処法は?」


その問いにはミナは黙って下を向いた。悔しそうに唇を噛んでいる。


「…分かった、ありがとう。」

そう言って肩を叩いてやる。


隊員たちの刃先がゆっくりと胸へと近付いて行く。その異様な光景を俺は見ているだけしか出来なかった。



手を切り落としてでも助けるべきだと頭では分かっている。分かっているが、体が動かない。

呪いが移るのを無意識に恐れているのだろうか…それを表すかのように俺の手がカタカタ震える。


「やだっ…いやだぁっ…」「しにたくないしにたくないしにたくないよぉぉお…」


心を痛めるような悲痛な叫びが辺りに響く。

…聞いてるだけじゃだめだ。悔やむのは後回しだ。


「ええいままよ!やってやろうじゃねぇか!!」

「「「「スミレ様!」」」」


配下たちの制止を無視し、俺は剣を強く握り前へ駆け出した。







───しかし



「待って!!」



「うおっ…」



変なところから声をかけられ危うく転ぶとこだった…こんにゃろぉ



「おいサクラ!なんで待…た……な……きゃ……はぇ?」

「「「「…はぇ?」」」」


サクラは山吹の瞳をいっそう輝かせ、何かをぶつぶつ呟いていた。それはいい。まだいい。


何より目を引くのは、足元に見える魔法陣だ。サクラを召喚した魔法陣よりは少し小さいが、精密さや紫の輝きは桁違い。こいつ一体何をするつもりだ…


「お前…何を」

「できたっ!!ちょい痛いと思うけど!失敗したらごめんよ!!」


俺の質問を無視し、サクラは叫んだ。

それと同時に調査隊全員の足元に、先程と同じ魔法陣が展開された。


その紫は、手首の禍々しさとは対称的に美しく見える。




サクラは、山吹の瞳をかっと開き、

手のひらを上に向け、腕を横に一文字にピンと伸ばし、今一度叫んだ。



「焼き切れ───高位魔法(グレータースペル):《契約(バーニング)焼去(アグリーメント)》」



その瞬間、足元の魔法陣が電力が正常に伝わった歯車のようにぐるぐると回り始めた。


調査隊員の体に蔦のようにがんじがらめにまとわりついていた禍々しいオーラが空中の1点へと収束していくと共に魔法陣が身体を透過し上昇していく。



そして、魔法陣が彼らの頭上に達した時、調査隊は糸の切れた操り人形のように、剣を落としふらりと倒れてしまった。


左手首にあった紋章は紫の光が消えて、火傷のように赤い腫れに変わっている。


腹を刃先に向けていた彼らが倒れた時に刺さってないか心配になったが、どうやら倒れる時に少し動かせたらしく、彼らの左側に剣も横たわっていた。




さてと。俺は頭上の位置で停止したままの魔法陣に目を向ける。


スクリューのようにぐるぐると回っていたそれは、時間が停止したかのように、ぴたりと音もなく止まった。



すると、(あか)き炎が上空へと放出され、空中に集まっていたオーラを"焼去(しょうきょ)"した。


炎は止まらず、高く舞い上がり、文字通りの高い火柱を形成した。



一連の流れを完璧に操る弟を見て、格好良いと思うと同時に、自分の無力さを強く感じた。


サクラは悪魔だから、と簡単に割り切れるもんじゃない。


これは…そうだな…言うなれば単なる嫉妬でしかないな。


目指すべき遥かな頂きを見せつけられ、俺は1人拳を握り締める。


──見下されぬよう、強くならなければ。








しばらくして、火柱が消え、辺りに静寂が戻った。


あの火柱でユリウス公とやらの気が変わってくれりゃいいんだけどな…逆に宣戦布告的なあれかと思われたらどうしよう…


ま、いっか☆

んなこと考えるより先にやるべきことがある。


大きくため息をついて、ぐっと背伸びをしている偉大な術者様に、お疲れ、とでも言ってやらんと。




そう思った矢先、何者かが接近する気配を感じた。調査隊の追っ手か?


しかし、信頼なる配下たちは警戒する様子もなく、かの魔法の感想を題に談笑していた。



どういうことだ?…緊張感や警戒心が薄いだけ?



混乱しかけた俺だが、見えてきた人影で完全に理解した。


「ちょっとちょっと!!何なのよさっきの火は!」

「風龍を屠ったからって火遊びはいけませんよ!」


開口一番、こいつらは不満をストレートでぶん投げてくる。



…はて



「誰だっけ(すっとぼけ)」



「「とぼるなぁ!!」」



…すまん、さっきまで本当に忘れていたわ。

※ジョン・スミスが見たのはユリウスが愚か者に天誅宣言したところまでです。


時系列がごっちゃごちゃで分かり辛くてごめんなさい。


次会う時が2022年にならぬよう頑張ります。

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