19話 悪魔の推理
始まって以来、どんどん黒い話題に突っ込んでいる気がします。
不定期連載なので許してください。
「俺や、このサクラを意図的に狙い撃ちした訳じゃないんだな?」
「ええ。もし居ると知ってたら撃たずに逃げてましたよ。」
俺の質問にエイルフッツ連合王国、調査隊副隊長ミーシャ・レフトマーズ(自称)は大きく頷いた。即答であった。
「よし、んじゃ、帰っていいぞ」
「「「「「「…はぇ?」」」」」」
サクラ以外の人間が驚いた。
「宜しいのですか、スミレ様?たとえ流れ弾だとしても、貴方様を攻撃してきたのですよ?」
「国に戻って大規模で報復しに来るかもしれませんよ?」
「解放するにしても、隊長さんとは1度手合わせしたいのですが…」
「質も腕もありますし、国も精鋭の軍を持ってると思います…」
配下たちは口々に反論する。1人おかしいのがいたが。
確かにその通りだ。やはり俺は上に立つには向いてないらしい。頭を掻きつつ俺は言う。
「ぶっちゃけこんなとき、どうすりゃいいか分からん。ミナの言うように、俺は攻撃されかけた。殺されかけた。だが、被害無しだ。メデュシアナの言う仕返し云々は、こいつら殺しても殺さなくとも、情報局の大役が行方不明だとなれば、間違いなく動くだろうし、ステンノの通り、相当な腕があるだろうし、何より、こんなの初めてだ。正直、何がいいのか判断がつかないんだよ。」
疑いあれば即粛清。そのような度胸は俺にはない。嗚呼、俺は本当に無能だ。
そう自己嫌悪していた俺の隣の悪魔が呟く。
「僕は別にそれでいいと思うよ。」
「「「「「「…はぇ?」」」」」」
皆々を代表するかのようにメデュシアナが問う。
「何故です?」
サクラは当たり前のことを言うように軽く話す。
「だって帰っても調査隊の居場所ねぇから」
意味が分からん。答えになってない。
呆然としたままの俺らだが、隊長、ジョン・スミス(自称)だけは何故か薄く笑っていた。
そして、面白そうに悪魔へ問う。
「どうしてそう思う?」
「はは、さっきから目ぇチカチカさせてんだしわかってるでしょ?」
その言葉に目を見開き、フッと笑う。
「紅悪魔の目は誤魔化せないか。」
「"クレナイ"はやめてよ。僕は"サクラ"だ。」
ムスッとする弟に俺は申し訳なさそうに口を挟む。
「あー、すまん。結局なんでそう思えるんだ?」
「説明しよう!(唐突)」
「唐突に入るナレーションの真似やめろ。」
発作的に出た俺のツッコミを無視し、赤髪の悪魔は語り出す。
「エイルフッツ連合王国。…だっけか、それにしても、いかにもって感じな名前だねぇ。…話が逸れた。でぇ、その国が風龍テンペストの死の真偽を確かめるために調査隊を派遣した。信頼されているであろう、情報局々長様をわざわざ隊長にさせてねぇ。魔眼も持ってるエリート官僚様を何故邪龍と恐れられてるのがまだいるかもしれない森へと向かわせたのだろう…」
主に午後に流される2時間程のサスペンスドラマのクライマックスが如く、つらつらと言葉を紡いでいく。ノリノリじゃねぇかコノヤロー。
「やはり、実際に見た情報が欲しかったから、でしょうか…」
「残念、ミネくん!」
「ミナです。」
「見に行かせるのは一般兵や奴隷にでもできるし、それは冒険者とかそういう類いから既に報告されてる、そうだろう?」
「…っ!」
ミーシャ(自称)は目を見開く。ジョン(自称)までも右眉をピクリと上げた。その通りらしい。
悪魔は続ける。
「魔眼って、希少で十二分に信頼されているものだと思うけど本当?」
「はい、その通りです。中でも、私のように生まれ持って得ているものの効果は抜群に良いと言われています。」
「ほぅ、自分で抜群言っちゃうのね、スカルノちゃん。」
「ステンノです。」
「で、そこのジャンはどうなのさ。」
「俺を馬面呼びするな!!クレナイ呼びしたの謝るから人の名前覚えろ。…まぁ、その通りだ。こいつぁ、この世界に生まれた時から持ってるもんだ。」
この世界?…これはこの世という意味だろうか…だったらなんであの名を知っているんだ?
あからさまに疑問に思う俺とは対称的に、アホ毛をぴくりと動かしただけのサクラは、気にする素振りを感じさせず、推理劇を続ける。
「そっかぁ、だとすると余計におかしいねぇ。当たり前だけど、派遣される前に王様に魔眼から見たことを報告済みでしょ?」
「あぁ。」
「あっれれぇ?おっかしぃぞぉ?なんでわざわざ意味無くまた見に行かせるのかなぁ?」
ウッキウキしたように1度は言いたい探偵特有のセリフを吐いたサクラに俺はじれったくて腹が立ってくる。
配下たちは感情に流されず、長考しているように見えた。
しかし、調査隊々長以外の6人の顔はみるみる青くなっていった。
いつの間に股の痛みから解放されていた部下の1人はまたも顔を青くさせこう呟く。
「僕は…僕たちは何故送られたんだ…」
代弁するかのような平隊員の呟きに悪魔は、溜息をつき、先程から固定していた愛想笑いを解いて、心から悲しい顔をして、こう告げる。
「君たちは囮だよ。」
「はっ…はっはっは…」
感情を込めず自称ジョンは嗤う。
「囮とは、言ってくれるじゃあないか。」
反論に入る素振りを見せる彼を見て部下6人はほんの少しだけ、先程の宣告の絶望が和らいだ。
しかし。
「俺らは生きちゃいけない。囮じゃあない。言うならば生贄だ。」
死んだ魚の目をして呆然と零す言の葉に、一同絶句した。
先程まで演説していた紅き悪魔でさえも黙り込む。
沈黙にただ響く嗚咽。まさに爆発寸前である。
「どうして…」
乾いた眼に対し涙で潤う眼でミーシャ(自称)は言う。
「どうしてそんなこと言うんですかぁあっっ」
真っ直ぐジョン(自称)を見るが、彼は何も言わない。魔眼を光らせ何も言わない。
その問いに答えるは悪魔だった。サクラは重い口を開く。
「エイルフッツが風龍に邪魔されてたのは経済活動だけなのかな。」
「えっ…」
「森の向こうには何がある?」
俺は目を見開いた。思い出した。
昨日見た地図に"エイルフッツ"の文字はあった。
森を挟んだその先は…っ
「聖帝国メリックなどの国々っ…まさか、侵攻!?」
「「「っ…!!!」」」
サクラは険しい顔をして肯定する。
「おそらくね。…君たちは故人だ。敵国に殺されたことになってるはずだ。帰ったとしても暗殺されるのがオチだ。今頃、弔いだなんだ言って準備してるはずだ、そうだろう?」
一同の視線が1人の男に集まる。
男はコクリと頷く。
しかし、疑問というか違和感がある。
それを代弁するかのように、メデュシアナは問う。
「そ、それだけでは民は納得せず、反乱が起きるのでは…」
痒いところに手が届いた。それだ。
「あぁ、確かに。ちょっと帰って来ないだけで攻めようってなるのはないわな。」
俺の呟きに、隣の悪魔は右頬をポリポリとかく。
「理由ならある。しかもとびっきりそれっぽいのがな。」
突如、沈黙を貫いていた隊長が口を開いた。
「クレナ…サクラ、アンタらが跳ね返した先にゃ、何があると思う?」
跳ね返した?
間違いなく、サクラが蹴り飛ばした魔弾のことだよな。
…魔弾?
…なっ
「「「「「「まさかっ!!!!」」」」」」
一同の声が揃う。
「エイルフッツ連合王国、我が国だ。」
Q.ユタソルがしばらく出てない!
A.気のせいだ。
Q.スミレ最近喋ってなくね?
A.…
ス「なんか言えよ!!」




