12話 風龍討伐
今回から、最大文字数を6000程度に伸ばします。投稿頻度が低下しますが、ご了承ください。
配下ぁ?はぁ?
「いやぁ、折角自由を手に入れたってのに、それを俺みたいな何処の馬の骨かも分からんやつに捧げていいのかよ...」
俺の慌てる声に、ミナはすぐに反応する。
「川にいる時、私たち4人全員で話し合ったんです。そしたら、私たちの思いは全員同じでした。命の恩人に仕えたい、と。足は引っ張ることは致しません!どうか、お願いします、勇者様!」
「「「お願いします!」」」
声を揃えて言ってきた...非常に恥ずかしい!
その時、ソルが急に肩に手を置いてきた。俺はビクッと反応してしまう。
「こんな貴方もいるんですね。」
「う、うっさい。」
「で、どうするの?」
「どうするのって言われてもなぁ...」
彼女らは緊張した感じで俺を見てくる。
「あぁ、もう、覚悟を決めろ!」
自分の頬を強く叩いた。そして、できるだけかっこいい仕草を付けて言い放つ。
「このスミレ・フォレスト、あなたたちを配下として向かい入れましょうぞ!」
「「「「ははっ!ありがたきお言葉!」」」」
嬉しそうに、揃って返事をしていた。
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「お、おう。」
異世界来てから可愛い女ばっかだな...ラノベの世界にでも迷い込んだんかな?
「盛り上がってるとこ、悪いんだけど、......客よ。」
「ん?...なんかいる。」
やっぱなんか起こるよな...
辺りはすっかりと暗くなっていた。その木々の中に物陰が見える。意外と...いや!
「でっけぇ...」
「あの大きさはぁ!」
俺が驚いている横で、ソルが尻もちをついていた。なんだなんだぁ?
よくその影を観察してみる。大きな翼を持ち、大きな1本角、大黒柱のように太い尻尾、目や歯が鋭く、闇夜に浮かぶ月に反射して見える。
わぁい!これはファンタジィでよくみる、ドラゴンせんぱいじゃないですかぁ!はじめてじつぶつをみれたぞぉ!やったぁ!あははははは...
「ちょっ、しっかりしなさいよ!何白目むいてんのよ!」
「おわったあ...どらごんかっけぇ...あはははは」
「このっ!」
「ぐへっ...」
「「「「勇者様ぁ!」」」」
「はっ!俺は一体...」
ユタのピンタで、やっと正気に戻った。
さてどうするよ、こいつ...
「な、なんなんだよあのドラゴンは!」
「...あの魔獣は...風龍テンペスト...」
「森の...主ですかい...」
俺の質問にユタが怯えながら答えてくる。
自然と笑みが出てくる...死を感じるとおかしくなっちゃうのかな?
はぁ...もう、終わったわ。異世界来て即ゲームオーバーだわ。まぁ、そうだよな、女に囲まれるとろくな目に遭わないよな。クソ、神め、どんだけ俺を嫌っているのだ...
「フッフッフ...ドウヤラ貴様等ハ土ヘ帰リタイヨウダナ...罪人ノ血ヲ我ガ森ヘ注グ川へ流ストハナ...」
そうなんとか聞き取れるような言葉を発したあと、大きく天へ咆哮した。
「うっさいわねぇ...」
「「...はぇ?」」
急にユタがキレて喋りだしたから、風龍と同じ反応になってしまう。ちょ...
「小娘...貴様ァ..」
「あんたから見て、こぉんなちっぽけな、少ない人間の血が流れただけで、怒っちゃうのね、あなたは。短気すぎて腹が痛いわね。」
あほおおおおおおお!何やってんだよアイツは!
「また始まりました...」
やれやれという感じでソルは反応しているが、これは非常にまずい。
だってほら、ドラゴン先生がどんどん赤くなってんだもん。緑だったろあんた...
「おい、サイコパス、あのバカを止めてくれ。」
「サイコパっ...まぁ、いいでしょう、後で覚えておいてくださいねっ!」
ドラゴン級に怖い目を向けてくる。こわい。
ソルは未だに煽り散らかすユタに拳骨を加え、後ろへと引っ張って行った。
「なにすんのよ、ソルぅ...」
「調子に乗らないでください!それで煽りまくって、真っ先にシムにやられたでしょう?」
「ううう...」
...お前ら、ドラゴン先生を見てあげなよ。
「許サンゾ!人間共メガァ!」
これほどの侮辱、味わったことなかったっぽいな。...あれ?涙目?...精神よっわ...
俺は、笑いをこらえながらも剣を抜く。体の震えは止まっていた。これなら、行ける!
しかし、それより先に配下たちが武器を構え、俺の前に立っていた。
「「「「私たちにおまかせを。」」」」
「...はぇ?」
呆けた俺を置いて、彼女たちは動きはじめた。
まず動いたのはミナだ。何か魔法詠唱をはじめている。
「水よ貫け!水槍!」
すると、どこからか出てきた大量の水の槍が竜の体に向けて飛んで行った。全て体に命中し、赤い血が吹き出すように見えた。
「グアアッ...」
うわっ鱗までか...恐ろし...
なんて驚いている間に次はメドゥシアナが前に出る。
「石橋流双斬撃!」
彼女が持つ刀のようなもので2本の翼を斬り捨てた。
石橋さん...ネーミングセンスどうにかしてくれ。
風龍の叫びが響く中、エウリュアレーが動く。
「貫け、氷塊射撃」
放たれた矢は、途中で氷に包まれ、氷塊と化した。龍の脳天に突き刺さった。
「やったわね!」
ユタはガッツポーズをしやがった。
おい...
「早く寝ましょうよ、疲れました...」
ソルは欠伸をして消えかかった火へ歩いていく。待て待て待て。建築士かてめぇらは...
「ぐぬぬぬぬ...舐めおって...人間風情がァ!」
普通に喋れんじゃねぇか...このドラゴン...
「我の身を傷付けたことを...冥界で懺悔するが良いぞ...」
ユタは舐めた口を叩く。
「ふぅん...こんなボロボロのからだで、どう戦うつもりなのかしら?」
ああもう我慢ならん!ユタの頭を平手打ちする。
「いっ...何すんのよ!」
「フラグ立てまくりだわ、コノヤロー...」
「へ?ふらぐ?」
そのユタの声の後にドラゴンのほうを向くと、傷つけたはずの鱗、斬ったはずの翼は元通りになっていた。
「「ひぃぃぃぃぃっ」」
ユタたちは下がった。
俺は改めて剣を構える。その手は小さく震えている。
...勝てねぇよ...無理だ...
あんなバケモン...
その思考が頭から離れない。
ええい、諦めるな!
勝つ方法を考えろ!
「ここからは本気で戦わせてもらうぞ...」
うるさい...隙を見て剣で斬るか?いや、どうせ復活するしなぁ...あれで学ばぬ猿ではない...
「なあに、動かなければ、苦しむことなく葬ってやろう。」
ああもう、人が考えてる時に邪魔するなよ...鱗のせいで上手く斬れるかも分からないし...うーん...そうだ!この方法なら!
「我の全力に!耐えられるか!」
「うるせえええええ!」
あんたの叫びで思いつきそうだったのが全部忘れてしまったじゃねぇか!!!
「なんだ、人間、我に指図するのか?もう手段は無いだろうになぁ...」
嘲笑うようにケラケラと笑い始めた。
有難いことにちゃっかりフラグも立ててくれているが、俺はそんなことは考えていなかった。
怒り、それだけだった。
もう我慢ならん!俺はこの距離からは届かないと分かりつつも、叫びながら意味もなく縦に剣を振った。
「やかましいわぁっ!」
その瞬間、忌々しい笑い声は止まっていた。
ドラゴンは口を開けたまま固まっている。
どうしたんだ?そう思ったのもつかの間、ドラゴンの体は、左右に分かれた。丁度真ん中で半分斬られている。
「「「「「「「え?」」」」」」」
その場の全員、当事者の俺を含め呆然としていた。
メドゥシアナは声を震わせ、俺に聞いてくる。
「ま、まさか...さ、先程の大技は、勇者のみが使える大技、大太刀なのですか?」
「...はぇ?」
「それで、その大太刀の中の自己流の技名が、ヤカマ・シーワ。と、いうわけですか?」
「...はぇ?」
な、何言ってんだこいつ...エラバレシモノってなんだよ...目を輝かせて言われてもなぁ...
「すまないが、俺にも分からない...こういうのは初めてなんだ...」
「そ、そうですか...でも、この装備は勇者級の逸品ということは確かです...」
「と言われてもなぁ...俺は勇者自体がどういう存在なのかよく分かっていないんだ。」
「「「「え?」」」」
驚きの目で配下たちは見てくる。
その目を分かりやすく説明すると、高校生なのにタ○オカ飲んだことないの?と友達、いや、クラス全員が言う時の目だな。
実際、飲んだことはないし、飲むつもりもなかったがな。
そんな悲しい記憶を思い出しているとき、ユタたちが配下たちに手招きをして、俺の事を話し始めた。俺は剣を使ってドラゴンの肉を削ぎ落とし、骨付き肉にして、火の近くの地面に突き刺した。
その間に、全て聞いたのが、俺に可哀想な人を見る目を向けてきたことでちゃんと分かる。俺は逃れるように、火に薪を入れる。
「勇者だと思ったんだけどなぁ...」
ステンノが頭をかきながら近付いてくる。
「マスターの装備、勇者級だと出ているのに...」
「マスター言うな。」
マスターとか言われんの恥ずかしいわ!
...だが、出ているとはどういうことだ?俺は剣を眺める。
「では、なんとお呼びすればよいのでしょう?」
「スミレでいいよ。」
「わかりました、スミレ様。」
「...もういい...なぜこの装備が勇者級だと分かるのか?まぁ、本当にそうなのかは知らんが...」
スミレ様...まだマシになったからこれでいいか...
「あのハゲにも黙ってたんですがね、わたしの左眼は、魔眼なんですよ。」
「厨二病か!」
キャラが渋滞しているなぁ...ハゲと呼んでたのか、元主人のこと...というか、そもそもここはファンタジーだ。異世界だ。魔眼なんて普通に有り得る話じゃないか。
「ちゅうにびょう?が、何かは分かりませんが、馬鹿にされているような気がします...」
「気にすんな、続けてくれ。」
「は、はい。この魔眼は色々なものを鑑定できるんです。例えば...」
ステンノは風龍を真っ二つにした俺の剣に視線を移した。彼女の顔を見ると、左眼が青くなっていた。これが魔眼...とか思っていると、彼女は呟き始めた。
「...無名称武具...しかし勇者級は確実...こんなのは初めてです...」
「そ、そうなのか?」
「ええ。これはとても珍しい逸品ですよ。」
目を輝かせてそう言ってくる。
「武具には色々な種類があるのですよ。」
ステンノの話を俺なりに解釈してまとめてみる。
武具について位があるらしいのだ。
ノーマル、ブロンズ、シルバー、これらは、誰でも使えるような扱いが簡単な武具。
ゴールド、プラチナ、これらは、少数の人間しか生まれながらにして使えない武具。使える人数はプラチナの方が少なくなっている。
オリハルコン、ゴッデス、伝説、勇者、これらの階級は極々少数しか生まれながらにして使えない武具であり、勇者級の武具なんかは、この世界で1人しか使えないらしい。
その武具たちは殆どが名前がついているものなのだ。
しかし、例外として、名前の無い武具がある、
それを、無名称武具と言うらしい。
これはとても高値で取引されているらしく、それが勇者級とまでなると、国1つ買えるのではないかというくらいの価値があるらしい。そのひとつが俺の持っている剣だと、ステンノの魔眼が訴えているという。
「どんだけレアなんだよこの剣は...」
俺は、慎重に腰の鞘へ戻した。
「簡単に言うと、勇者級を使える人が勇者と呼ばれるものということだな?」
ステンノは首を縦に振った。
「私のとりえは魔眼だけで...剣の才能はないし、魔力適正もどの属性も持ってないんです。」
「なるほどな。」
自虐的な笑みを浮かべながら彼女はそう答えていた。
だから戦いに参加することはなかったんだな。
「だが、折角のとりえだ。使わないと勿体ない。これからは、沢山使って、俺を手助けして欲しい。」
「承知しました。」
左眼の色は赤に戻っていたが、両目とも以前とは違って明るく見えた。
ふと肉の方を見ると、丁度食べ頃であった。
「とりあえず夕飯にしよう。」
「そうね。お腹空いたし。」
「わ、わたしは周りを警戒してます。」
「ソル様、私が防護結界を貼っていますのでご安心を。」
「そ、そうなんですか!?あ、ありがとうございます、ミナさん!」
ミナさんかっけえ...できる女って感じだな。誰かさんと違って。
「なによ。」
「別に。」
ユタが怖い目で見てきたので目を逸らし、夢にまで見た骨付き肉にかぶりつく。
「美味しい...」
やべぇ...涙が出そうだぁ!死んでこっちに来てから何も食えなかったしなぁ...ジューシーな歯ごたえがたまらん...噛めば噛むほど味が脳に流れ込んでくる...
俺を見て、配下やユタたちもおそるおそる1口齧る。目を見開き、パクパクと食べ進め始めた。
俺はやっと1個食べきった。また、ドラゴンの肉を削ぎ落とし、火の周りに突き刺していく。
突き刺し終えたあと、美味しそうに肉を食べる皆を見ながら、ぼんやりとしていた。ふと、その姿が、家族の姿と重なる。
「あたたかいな。」
不思議と言葉が漏れていた。
しかし、俺が愛した家族の元にはもう戻れない。
好きだった団らんの時の些細な会話も聞くことが出来ない。
そこに俺の居場所はない。
「スミレ様?どうされたのですか?」
エウリュアレーが心配そうに聞いてくる。
「なんでもないさ、火のあたたかさに汗をかいただけだ。」
目元を手で隠してそう答えた。
この世界で、しっかりと生きていこう。見ていろよ、父さん、弟よ。涙は止まっていた。
「もうてべられなえよぉ...」
「大金貨がいっぱぁい...泳げるぞぉ...」
ユタとソルは既に寝ていた。ソル...なんちゅう夢見てんだよ...
俺と配下たちは、まだ大量にあるドラゴン肉に食らいついていた。飽きない味のため、手が止まらない。特にメドゥシアナの食べっぷりがいい。そういえば、メドゥシアナと言えば、
「なぁ、メドゥシアナ、石橋流ってどこで習ったんだ?」
「むぐ?ほれはでふねぇ..」
飲み込んでからさらに話し始めた。
「東方国ジパングの石橋健二という私の師匠が教えて下さった流派なんです。確か、こう書いたかなっと...」
「ほうほう...って、えぇ!」
流暢な漢字で石橋健二と書かれていた。
東方国ジパングはまんま日本じゃねぇか!ってか、石橋健二さんって...父さんの親友だったあの剣道の上手かった人...事故で亡くなったはず...葬式にも告別式にも俺は出たはずだ...
「ど、どうかされました?」
「いや、なんでもないよ。」
この話を聞いてしまうと僅かながら、弟がこっちに来ている可能性も...いや、そもそもメドゥシアナの言う石橋健二さんがただの同姓同名であるという可能性はあるがな。
次は魔法が気になるな...
「ミナ、魔力適正ってどうすれば分かるんだ?」
「魔法で確認できますよ。魔法適正確認と言ってください。」
「魔法適正確認!」
すると、周りに緑と紫と白の輝く物が現れた。
「なんじゃこりゃあ!」
「なるほど、スミレ様は風魔法、闇魔法、光魔法が使えるようですね。」
「え?ということは、この輝くのが魔法の効果ということなのか?」
「はい、その通りですよ。」
「そ、そうなのか。」
魔法については別にチートとかないんだな。なるほどな。ん?てか闇魔法って...なにやんだ?
「闇魔法ってどういうものがあるんだ?」
「悪魔や、獣を召喚できたりします。あ、でも、もう暗いので、明日にしましょう。」
「そうだな。」
「結界は貼ってあるのですが、念の為交代で見張りを行います。」
「了解。助かるよ。」
俺は横になって、夜空を見上げた。
「なんて綺麗な星空なんだろう...」
思わず声が零れた。その後、強い睡魔が襲ってきた。
むぅ...今日はここまでにするか...おやすみなさい。




