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フランチェスコとその友人たち  作者: はまゆう


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第二話 福音書を三度開く

朝の光がウンブリアの丘を照らしていた。


アシジの石畳はまだ夜露を残し、遠くのオリーブ畑には白い靄が漂っている。空は高い。春の訪れを告げる澄んだ青が、街の上に広がっていた。鳥たちが教会の鐘楼の周りを旋回し、甲高い声で朝を呼んでいる。


ベルナルドはフランチェスコと並んで歩いていた。


昨日まで見慣れていた街が、どこか違って見えた。同じ石畳。同じ壁。同じ空。しかしそのすべてが、まるで初めて見るもののように新鮮だった。光の加減か。時間の違いか。いや——違う。変わったのは自分の方だった。


ベルナルドは自らの置かれた状況を、どこか他人事のように考えていた。館も土地も財産も——まだ自分のものだった。彼は昨夜、何も手放してはいなかった。財布の中には金貨が入っている。指輪はまだ外していない。質素な服に着替えたわけでもない。


だが心はすでに別の場所へ向かっていた。


それは不思議な感覚だった。体はまだここにある。石畳を踏む足の裏の感覚。朝の冷たい空気が頬を撫でる。鼻をくすぐるパン焼きの香り。すべての感覚は確かにこの世界に繋がっている。しかし魂の重心は——どこか別の場所へ、ゆっくりと、しかし確実に動いていた。


市場の女が彼に声をかけた。


「おはようございます、ベルナルド様」


彼は軽く会釈を返した。普段通りの対応だった。女は何事もなく通り過ぎていった。彼女には、この男の心がもうこの街にはないことなど、知る由もなかった。


フランチェスコは黙って歩いていた。何も尋ねない。何も語らない。ただ、自分の歩幅に合わせて隣を歩いている。その沈黙が、ベルナルドにはなぜか心地よかった。多くの者が彼の前では饒舌になる。取り入ろうと。気に入られようと。しかしこの男は違った。彼は語る時と語らない時の区別がはっきりしていた。そして語らない時は、ただ——そこにいるだけだった。それで十分だった。


道すがら、ベルナルドは考えた。


何を捨てるのか。


どのように捨てるのか。


それは決して単純な問題ではなかった。


財産は多い。土地も家もぶどう酒も小麦も——それらすべてをどう処理するのか。一度に売るのか。分けて与えるのか。どれだけを貧者に渡すのか。どれだけを教会に寄付するのか。


彼の頭の中は、まるで帳簿のように数字で埋まっていた。


しかしその時、隣から穏やかな声がした。


「あなたは良い方ですね」


フランチェスコだった。


ベルナルドは顔を上げた。


「どういう意味です」


「よく考えていらっしゃる」


「それは当然でしょう」


「ええ。しかし——」


フランチェスコは少し首を傾げた。


「神は計算よりも心をご覧になります」


その言葉は、ベルナルドの頭の中にあったすべての数字を、一瞬で曇らせた。彼は口を開きかけて、閉じた。何も言えなかった。フランチェスコが間違っているとは思えなかったからだ。


彼らは再び沈黙の中を歩いた。


---


やがて二人は司教館へ着いた。


サン・ルッフィーノ大聖堂の隣にある、質素な建物だった。石造りの正面にはアーチ型の入口があり、その上に司教の紋章が彫られている。重厚な木製の扉は朝の光を受けて落ち着いた輝きを放っていた。


ベルナルドはその扉をくぐる前に、ふと立ち止まった。


中に入れば、もう後戻りはできないかもしれない。そう思った。いや——後戻りは最初からできなかったのだ。昨夜、あの「わが神よ」という声を聞いた瞬間に。いや——もしかしたらそれよりも前から。自分が何かを求めてフランチェスコに声をかけた瞬間に。


彼は小さく息を吐き、そして扉を押した。


二人を迎えたのは、アシジの司教——グイド司教だった。


彼は六十を過ぎた、白髪混じりの柔和な顔をした人物であった。学者のような風貌で、話し方も穏やかだったが、その目は鋭く澄んでいた。長年の牧会経験が、人を見抜く力を彼に与えていた。


「フランチェスコ」


司教は穏やかに言った。


「また来たのか」


「はい、父よ」


フランチェスコは深く頭を下げた。


グイド司教はその様子をしばらく見つめていた。この若者は何度もここを訪れている。最初の頃は、人々から石を投げられた傷を癒やしてほしいと来た。その後は、貧しい人々のために助けを求めて来た。時にはただ祈りたいと言って、礼拝堂にこもることもあった。


そして今度は——あのベルナルド・ディ・クインタヴァッレを連れて。


司教の目に、一瞬驚きが走った。しかしそれはすぐに消えた。彼は二人を礼拝堂へと導いた。


小さな礼拝堂の中は静まり返っていた。


ロマネスク様式の小さな空間だった。天井は低く、石壁には聖人たちのフレスコ画が描かれている。それらは時代を経て色あせていたが、かすかに残る色彩が、かろうじてその姿を留めていた。


朝の光が細長い窓から差し込み、祭壇の前に白い帯を作っている。その光の中を、塵の粒がゆっくりと舞っていた。ろうそくの灯りはまだともされていない。祭壇の上には布がかけられ、その奥に十字架が立っていた。シンプルで、飾り気のない十字架。しかしそのシンプルさが、かえって厳かさを増していた。


フランチェスコは跪いた。


ベルナルドもその隣に膝をついた。


二人は長いあいだ言葉を交わさなかった。ただ祈った。声に出してではなく、心の中で。神が望まれることだけを知りたい。それ以外は何も求めない。自分の望みではなく、神の御心だけを——その祈りだけが礼拝堂を満たしていた。


ベルナルドは初めて経験する感覚に戸惑っていた。これまでの彼の祈りは、いつも「何かを求める」ものだった。商売の成功を。家族の健康を。時には敵対する者への報復を——その程度の祈りだった。


しかし今、彼は何も求めていなかった。


ただ知りたかった。神が何を望んでおられるのかを。それが分かれば、それでよかった。結果がどうであろうと。それが自分の望みと一致していなくても。


それは彼にとって、まったく新しい種類の祈りだった。


---


やがて第三時課の鐘が鳴った。


朝の九時を告げる、低く澄んだ音だった。鐘の音が石壁に反響し、礼拝堂の中を何度も何度も往復する。その音が完全に消えるのを待って、司祭が祭壇へ進んだ。


白い祭服をまとった老司祭だった。ゆっくりと、しかし確かな足取りで。彼は祭壇の前に立ち、両手を広げた。静かにミサが始まった。


フランチェスコは深く頭を垂れた。ベルナルドもそれに倣った。


聖句が朗読される。詩篇が歌われる。香の煙がゆっくりと立ち上り、天井へと昇っていく。その煙はまるで祈りそのもののように、目には見えない何かを運びながら、空間を満たしていった。


ベルナルドは目を閉じた。


昨夜の光景が胸によみがえる。


ランプの灯。壁に映る影。涙に濡れた頬。そして——


「わが神よ」


という声。


あの声に嘘はなかった。だから自分はここにいる。高い地位も富も名声も——それらすべてを投げ出して、この小さな礼拝堂の床に膝をついている。


ミサが進むにつれ、ベルナルドの心は次第に静まっていった。騒がしかった思いが、波が引いていくように遠ざかる。そしてその後に残ったのは、澄んだ静けさだった。


---


ミサが終わると、フランチェスコは司祭のもとへ歩み寄った。


「父よ」


静かな声だった。しかしその声には、確かな意志が込められていた。


「私たちは神の御心を知りたいのです」


司祭は少し驚いたように二人を見た。フランチェスコは知っている——この小さな兄弟と呼ばれる男。しかしその隣にいるのは——ベルナルド・ディ・クインタヴァッレではないか。アシジで最も富裕な市民の一人。彼がなぜこんな場所に?


しかし司祭は何も尋ねなかった。長年の経験が、今は尋ねる時ではないことを教えていた。


彼は頷いた。


祭壇の上に置かれた福音書を手に取る。重厚な革装丁の書物だった。銀の留め金が付いており、ページの縁は金で縁取られている。代々の司祭たちが大切に扱ってきた、この教会の宝であった。


司祭は福音書を胸の高さに掲げ、そして十字を切った。


「主の御言葉に耳を傾けましょう」


礼拝堂の空気が張り詰める。誰も息をしていないかのようだった。ベルナルドは知らず知らずのうちに、息を止めていた。


司祭は最初のページを開いた。


革がきしむ音がした。ページをめくる乾いた音が、礼拝堂に奇妙に大きく響く。司祭の指が聖句の上を滑り、やがて一つの箇所で止まった。彼はその場所を読み上げた。声は低く、しかしはっきりとしていた。


「もし完全になりたいなら、行って持ち物を売り、貧しい人々に与えなさい。そうすれば天に宝を積むことになる。そして来て、わたしに従いなさい」


その言葉は、まるで鉄の杭のように、ベルナルドの胸に打ち込まれた。マタイによる福音書、第十九章——金持ちの青年に対する主イエスの言葉。ベルナルドは何度も読んだことのある箇所だった。しかし今、初めて——自分に向かって語られているように聞こえた。


持ち物を売れ。


貧しい人々に与えよ。


そして来て、わたしに従え。


礼拝堂は静まり返った。誰も動かなかった。


ベルナルドは言葉を失った。それはまるで、自分のために用意されていた返答だった。自分の問いに対する、神からの直接の答えだった。偶然——そんな言葉では片付けられなかった。偶然にしてはあまりにあまりに正確に、彼の心の奥底にあるものを突いていた。


フランチェスコはその横で、微動だにしなかった。ただ目を閉じて、その言葉を胸に受け止めているようだった。


司祭は再び十字を切り、二度目のページを開いた。


頁が風にそよぐようにめくれる。彼の指が別の箇所で止まり、再び読み上げた。


「旅には何も持って行ってはならない。杖も、袋も、パンも、金も」


マタイによる福音書、第十章——主イエスが弟子たちを宣教に遣わす際の言葉だった。


ベルナルドはその短さに、かえって強烈な衝撃を受けた。何も持って行くな。杖さえも。袋さえも。パンさえも。金も銀も銅も。かつて自分が「必要」だと思っていたもののすべてを、主は「不必要」だとおっしゃる。


いや——それだけではない。


「持って行ってはならない」と命じられたということは、それらがむしろ妨げになるということではないか。旅の邪魔になる。重荷になる。持てば持つほど、歩きにくくなる。主の道を歩く者にとって、すべての所有は——足かせなのだ。


フランチェスコは目を伏せた。まるで懐かしい友の声を聞くように。彼の唇が微かに動いた。おそらく、何かを祈っていたのだろう。あるいはただ、その言葉を噛みしめていたのかもしれない。


三度目。


司祭は再び福音書を開いた。今度は少し間を置いて——まるでその言葉の重みを感じ取っているかのように。


「わたしについて来たい者は、自分を捨て、自らの十字架を背負い、わたしに従いなさい」


マタイによる福音書、第十六章——ペトロがイエスをキリストと告白した後の、最も厳しい言葉。ただ従え。ただ背負え。ただ捨てよ。それ以外の道はない。


その言葉が読み終えられると、礼拝堂には深い沈黙が降りた。


誰も話さなかった。必要がなかった。その三つの言葉が、すべてを語っていた。もしかしたら、これ以上何も語る必要はなかったのかもしれない。聖書全体が、この三つの聖句に凝縮されたかのように——私たちに求められているのは、財産を捨てること。旅の備えを持たないこと。そして十字架を背負って従うこと。それだけ。


ベルナルドは自分の心の奥で何かが定まるのを感じていた。


恐れはあった。


惜しみもあった。


これまで築き上げてきたものすべてを手放す——その決断は、決して容易ではなかった。彼の中にはまだ、ためらいがあった。まだ、迷いがあった。理性が言う——これは正気の沙汰ではない。計算が言う——あまりに損失が大きすぎる。習慣が言う——やめておけ、後悔するぞ。


だが——


それ以上に喜びがあった。


それは理解を超えた喜びだった。なぜ嬉しいのか、自分にもよく分からなかった。これからすべてを失うというのに。嘲笑されるというのに。道端に座り込んで、手を差し伸べられて生きていかなければならないかもしれない。


それなのに——嬉しい。


まるで長い旅の末に、ようやく帰るべき家を見つけた旅人のように。まるで嵐の夜を一晩中さまよった後、ようやく灯りのついた窓を見つけた子供のように。その喜びは、すべての恐れや迷いや計算を——ただ一瞬で押し流してしまった。


---


しばらくして、フランチェスコが微笑んだ。


「ベルナルド殿 (註: 直訳はアシジ有数の富豪であったメッセール(有力市民)ベルナルド)」


その顔は少年のように明るかった。この瞬間のために、彼はどれほど祈ってきたことだろう。どれほど待ってきたことだろう。しかしその顔には、待ちわびた者の苛立ちは微塵もなかった。ただ——自然な、当たり前の喜びがあった。


「これが私たちの道です」


ベルナルドも笑った。


不思議なほど自然に。まるでそれが、何か特別なことではなく、ごく普通のことであるかのように。


「はい」


そう答えると、胸の中の重荷が消えていた。いや——正確には、消えたのではない。何か別のものに変わったのだ。重荷は確かにそこにあった。しかしそれが、もはや重荷ではなかった。肩に担っていた石が、突然翼になったような——そんな感覚だった。


フランチェスコは祭壇を見上げた。その瞳には涙が光っていた。彼は泣き虫だった。喜んでも泣き、悲しんでも泣き、祈っても泣いた。しかしその涙は、決して弱さから来るものではなかった。それはむしろ、強さの現れだった。自分の小ささを知っている者の謙遜であり、神の偉大さに圧倒された者の感動であった。


「主よ」


彼は小さく呟いた。その声はほとんど聞こえないほどだったが、天には確かに届いていた。


「あなたに祝福がありますように。あなたは私たちに、どの道を歩めばよいかを示してくださいました」


その祈りの後、長い沈黙があった。


誰もが動かなかった。司祭も、フランチェスコも、ベルナルドも。


礼拝堂の窓から、春の風が吹き込んだ。冷たい風だったが、その中に土の香りと、何か新しい始まりを予感させる甘い匂いが混ざっていた。祭壇のろうそくの火が、風に揺れて一瞬弱まり——そしてすぐにまた力強く燃え上がった。


それはまるで、これから始まるすべてのことの象徴のようだった。


---


その日——一二〇八年、春のことである。


小さき兄弟たちの物語は、新しい一歩を踏み出した。


まだ名前もなかった。規則もなかった。組織もなかった。ただ——福音書の言葉に従うと決めた二人の男がいただけだった。


しかしその二人の心には、確かに同じ火が灯っていた。


フランチェスコの中で燃え続けてきた炎が、ようやく別の心にも移ったのである。それはかすかな火だった。風が吹けば消えてしまいそうな、頼りない火だった。しかし確かに——そこには温もりがあった。光があった。


薪はまだなかった。燃料もなかった。しかし火は火を呼ぶ。一つの炎から別の炎が生まれ、やがてそれが燃え広がって、世界を照らす大きな光となる——彼らはまだそのことを知らなかった。


それでよかった。


知らないからこそ、一歩を踏み出せる。


見えないからこそ、信じられる。


彼らはこれから——何も持たずに歩き出す。パンもなく。金もなく。杖さえもなく。ただ福音書の言葉だけを携えて。


それで十分だった。


いや——それこそが、最も豊かな道だったのだ。


---


*このようにして、聖フランチェスコとベルナルド兄弟は、神の御心を確かめた。それは三つの福音書の言葉によって示された——持ち物を売り、何も持たず、十字架を背負って従うこと。これが小さき兄弟会の最初の規則であった。後に多くの言葉が付け加えられ、多くの細則が定められたとしても、この三つの言葉こそが、常にすべての基であり続けた。清貧とは単に貧しいことではない。それは自由である。すべてを手放すことによってのみ得られる、真の自由——それが聖フランチェスコとその仲間たちが生きた道であった。*


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