表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フランチェスコとその友人たち  作者: はまゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

第一話 わが神よ(前編)

アッシジの人々は、その男を狂人だと言った。


市場の商人たちは肩をすくめた。野菜を並べる手を止めて、顔を見合わせる。目の端で通り過ぎる影を追いながら、声をひそめて言葉を交わす。


「ベルナルドーネの息子も終わりだな」


「戦争と病で頭がおかしくなったんだ」


「親父が気の毒だ」


肉屋の親父は包丁を研ぎながら軽く笑った。魚売りの女は鼻先で嘲るように息を吐いた。誰もが同じ言葉を持っていた。誰もが同じ表情をしていた——哀れみと嘲りと、ほんの少しの不安が混ざったような、曖昧な顔。


子供たちは石を投げた。


路肩に転がっていた小石を拾って、その男めがけて投げる。遊び半分だった。悪意というよりも、ただの習慣だった。他の者たちがそうするから、自分たちもそうした。小石は男の背中や腕に当たり、乾いた音を立てて跳ね返った。


若者たちは後ろから囃し立てた。口笛を吹き、野次を飛ばし、時にはわざと肩をぶつかって通り過ぎた。自分たちが彼と同じにならないことを確認するかのように。自分たちの方が正しい道を歩いていると確かめるかのように。


女たちは道の反対側へ避けて通った。裾を引き寄せ、目をそらし、唇を固く結んで。あの男に触れてはいけない——そんな風に。


だが男は怒らなかった。


反論もしなかった。


石が肩に当たっても、泥が衣に跳ねても、罵声が耳に届いても——彼の歩調は変わらなかった。まるで何事もなかったかのように歩き続けた。いや、それ以上だった。まるでそれが祝福であるかのようにさえ。


フランチェスコ・ベルナルドーネ。


かつてアシジで最も華やかな若者の一人と呼ばれた男。


絹の服をまとい、歌と酒と宴を愛した男。


それが今では——ボロボロの粗布をまとい、素足で石畳を歩き、ただ「わが神よ」とだけ呟きながら道を行く。


誰も理解しなかった。理解できる者がいなかった。


なぜ彼がすべてを捨てたのか。


なぜ彼が嘲りを喜びのように受け止めるのか。


誰の目にも、それは単なる狂気か、あるいは偽善に見えた。


---


その姿を、ベルナルド・ディ・クインタヴァッレは遠くから見ていた。


アシジでも有数の富豪。広大な土地と幾つもの家屋を持ち、多くの使用人を抱え、町中の誰からも「あの賢明なベルナルド様」と呼ばれる男。教養があり、思慮深く、軽率な言葉を決して口にしない——それが彼の評判だった。


彼は流行や噂話を好まなかった。


だから皆のように笑うこともできなかった。


ある者はフランチェスコを嘲笑い、ある者は哀れみ、ある者は無視した。しかしベルナルドは、それらのどれも選べなかった。彼の胸の中で、何かが——許さなかったのだ。


理解できなかったのである。


なぜあの男は壊れないのだろう。


石を投げられても。泥をかけられても。かつての友人の嘲笑を聞いても。


一日ではない。一週間でもない。


一か月でもない。一年でもない。


二年だ。


二年もの間、人々から嘲笑され続けながら、その目だけは少しも曇らない。その背筋だけは少しも曲がらない。どころか——以前より静かに輝いているようにさえ見える。


最初は単なる好奇心だった。


ベルナルドは、フランチェスコの父親と商取引をしたこともある。あの頑固で実直なベルナルドーネ老人の息子が、どうしてこんなことになったのか。かつて裕福な商人の息子として名を知られ、宴や歌を愛していた若者が、なぜすべてを捨ててこんな姿になったのか。


何か思い違いをしているのではないか。


あるいは狂気が彼を支えているのではないか。


もしくは——見せかけの信心で、何か裏の目的があるのではないか。


ベルナルドはそう考え、折に触れてフランチェスコを観察した。


彼は観察を得意としていた。商売においても人間関係においても、人を見極めることが彼の強みだった。誰かが何かを偽っている時、その目は揺れる。声のトーンが変わる。仕草がぎこちなくなる。


だがフランチェスコにはそれがなかった。


だが見れば見るほど、その考えは揺らいでいった。


狂人ならば、どこかで怒りを爆発させるはずだ。自分がいかに不当な扱いを受けているか、訴えたくなるはずだ。長く続けば続くほど、その歪みはどこかに現れる。


虚勢ならば、いつか疲れて仮面が剥がれるはずだ。どんな偽りも時間とともに脆くなる。表面だけの平安は、継続的な努力を必要とする。


しかしフランチェスコにはそれがなかった。


侮辱されても変わらず。


称賛されても変わらず。


誰も見ていない場所でも、同じように穏やかだった。


人に石を投げられても、ただ立ち止まってその人を見つめ、何も言わずにまた歩き出す。その眼差しには、怒りも悲しみもなく、ただ——深い、言葉にできないようなあるものがあった。


ベルナルドは次第に気づき始める。


あの静けさは演技ではない。


彼の内側には、自分の知らない何か確かなものがあるのではないかと。


---


ある夕暮れ。


秋の終わりの、空が高い夕方だった。日が沈むのが早くなり、冷たい風がアシジの路地を吹き抜けていた。


ベルナルドは用事を済ませて家路についていた。外套を引き寄せ、吐く息が白く煙る中を、石畳を踏みしめて歩く。市場はもう閉まり、人影はまばらだった。


サン・ルッフィーノ広場の近くで、彼はまたフランチェスコを見かけた。


噴水のそばで、彼はたたずんでいた。両手を組み、何か祈っているのか、あるいはただ黙想しているのか——その横顔には、この冷たい空気の中でさえも不思議な温もりがあった。


その時だった。


路地の影から数人の少年たちが飛び出してきた。十歳になるかならないかの少年たちだ。彼らはフランチェスコを見つけると、顔を見合わせてニヤリとした。よくある光景だった。大人たちがやっていることを、彼らは真似していた。大人たちが石を投げるから、自分たちも投げる。大人たちが笑うから、自分たちも笑う。


少年の一人が、地面に落ちていた小石を拾った。そして——


石は弧を描き、フランチェスコの腕に当たった。


乾いた音が響いた。


「あははっ!」


少年が笑った。他の者たちも続いて笑った。


「狂人フランチェスコ!」


「アッシジの笑い者!」


声が広場に響く。笑い声が石壁に反響する。通りかかった女が眉をひそめて足早に通り過ぎた。老人が一人、首を振って去っていった。誰も止めなかった。誰も少年たちを叱らなかった。それがこの街の「普通」だったからだ。


ベルナルドは思わず足を止めた。


そして見た。


フランチェスコは立ち止まり——ゆっくりと振り返った。


怒りはなかった。悲しみもなかった。


ただ静かな眼差しだった。


その目は、石を投げた少年をまっすぐに見つめた。長い一瞬だった。誰も動かなかった。風だけが広場を渡った。


少年の方が先に目を逸らした。


笑い声が止んだ。


何かが——空気が変わった。


少年たちは気まずそうに顔を見合わせ、足早に去っていった。走り去る足音が石畳に響き、だんだんと遠ざかっていく。


残されたのは、沈黙と、夕陽と、一人の男だけだった。


フランチェスコは何も言わなかった。ただその場に立ち、去っていく少年たちの背中を、少しの間見送っていた。そしてまた、何ごともなかったかのように、歩き出した。


ベルナルドは奇妙な感覚を覚えた。


勝ったのは石を投げた少年ではない。笑っていた群衆でもない。


何も言わなかったあの男の方だった。


少年たちは逃げるように去っていった。彼らは勝ったのではなかった。負けたのだ。何か——自分たちの理解を超えたものに、彼らは負けたのだ。


その瞬間、ベルナルドの胸の奥で何かが動いた。それは言葉にできるようなものではなかった。ただ——長い間閉じていた扉が、かすかに軋んだような。あるいは、凍っていた地面の下で、小さな種が動き始めたような。


羨望にも似た感情だった。


自分は富も名誉も持っている。人々から敬意も払われている。立派な家に住み、暖かい食事をとり、質の良い服をまとい——誰も自分に石を投げたりしない。


それでも、あの男が持つ平安を持ってはいない。


なぜだろう。


なぜ彼だけが、失うことを恐れずにいられるのだろう。


観察していたはずの自分が、いつしか答えを求めていることにベルナルドは気づいた。最初はただの好奇心だった。なぜあの男は変わったのか、それが知りたかった。だが今や問いは変わっていた。なぜあの男は——変わらないのか。なぜ彼は、変わらないままでいられるのか。


そして彼は薄々確信し始めていた。


フランチェスコは何かを失ったのではない。


むしろ——自分たちがまだ見つけていない何かを得たのだと。


---


その夜。


ベルナルドは床に就くことができなかった。


何度も寝返りを打ち、毛布を引き寄せ、また払いのけた。暖かい寝床はある。壁は風を防ぎ、天井は雨を遮る。これ以上何が必要だろう。


しかし何かが足りなかった。


その「何か」が分からなかったからこそ、余計に眠れなかった。


彼は窓辺に立った。


冷たい夜気が頬を撫でる。月明かりがアッシジの街を青白く照らしていた。遠くにポルツィウンクラの方角が見える——あの小さな教会。誰も訪れない荒廃した聖堂。フランチェスコが今、修復しているという噂の。


彼は決心した。


答えを知りたかった。この男の強さはどこから来るのか。なぜ彼はすべてを失ってなお幸福そうなのか。それを自分の目で確かめずにはいられなかった。


翌朝。


ベルナルドは市場へ向かった。わざわざ遠回りをして、フランチェスコがいつも通り過ぎる道を行く。


そして見つけた。


彼は相変わらずだった。同じ粗布の衣。同じ素足。同じ静かな歩み。


周囲は相変わらずだった。遠くで女たちが囁き合い。肉屋の前で男たちが肩をすくめる。


しかしベルナルドには、それらが違って見えていた。嘲笑する者たちの方が——滑稽に見えた。何かを必死で守ろうとしているように。誰かを貶めることで、自分の不安を隠そうとしているように。


彼は声をかけた。


「フランチェスコ」


男は振り返った。


秋の朝日がその横顔を照らしていた。かつて宴の中心にいた若者の面影は、確かに残っている。頬の線。目の形。しかしその顔には、以前にはなかった何かがあった——人を惹きつける、穏やかで深い何か。


ベルナルドは少し緊張した。なぜ緊張するのか、自分でも分からなかった。貧しい托鉢僧に声をかけるだけなのに。普段なら馬から降りることすらしない相手に。


「今夜、私の家へ来ませんか」


フランチェスコは少し驚いたように見えた。


「私がですか」


「そうです」


ベルナルドは微笑もうとしたが、うまくいったかどうか自信がなかった。


「一緒に夕食を」


しばらく沈黙があった。ベルナルドの心臓が少しだけ速くなった。もしかしたら断られるかもしれない。そう思うと、なぜだかそれが怖かった。


やがてフランチェスコは頷いた。ゆっくりと、しかし確かに。


「ありがとうございます」


その声には、へつらいも偽りもなかった。ただ素直な——子供が約束をもらった時のような、純粋な喜びがあった。


ベルナルドはその声を聞いて、なぜだか胸が詰まった。


二人は並んで歩き出した。アッシジの石畳は朝日を受けて黄金色に輝いていた。誰かが遠くで何かを叫んでいたが、もう気にならなかった。


ベルナルドはまだ知らなかった。


この夜が、自分の人生を永遠に変えることになるとは。


そしてフランチェスコもまた知らなかった。


神が最初の兄弟を彼のもとへ送り届けようとしていることを。いや——もしかしたら彼は知っていたのかもしれない。祈りの最中に、ふと心に浮かんだその顔を。あの真面目で、思慮深くて、どこか孤独そうな貴族の顔を。


「今夜、あなたの家へ伺います」


フランチェスコはもう一度そう言って、少し照れくさそうに笑った。


その笑顔を見て、ベルナルドは思った。


——この人について行きたい。


まだ彼はその言葉を口にしていない。まだこれから起こるすべてのことを知らない。ミサの後の聖書。三つの聖句。すべての財産を売り払う決断。


しかしその時すでに、彼の心の旅は始まっていた。


もしかしたら、それはもっとずっと前から——最初にフランチェスコを見たあの日から、あるいはもしかしたらそれよりもずっと前から。


神は静かに、一人の人間の心を準備していたのだ。


---


*深く心に留めるべきは、栄光ある主聖フランチェスコが、その生涯におけるあらゆる行いにおいて、祝福されしキリストの姿に倣っていたということである。キリストがその宣教の初めにあたり、地上のあらゆる富を捨てるよう人々に呼びかけたように、聖フランチェスコもまた、その生き方そのものによって、それとなく人々を招いていた。彼は説教しなかった。ただ生きた。その生きた姿が、やがて一人の富裕な者の心を動かした——それはちょうど、主イエスの眼差しがかつて一人の若者を動かしたように。*


---


この夜の宴のことは、次の章で語られるであろう。


神の御手がどのようにして二人を導き、どのようにして聖書の言葉が開かれ、どのようにして最初の兄弟が生まれたのか——そのすべては、まだこれからの物語である。


だが一つだけ確かなことがある。


この世界で最も大きな変化は、たいてい最も静かに始まるということだ。


笑い声もなく。拍手もなく。ただ一人の男が、もう一人の男に「来ませんか」と声をかけただけの、何でもない夕暮れに。


アッシジの石畳は、その一歩をしっかりと受け止めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ