↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子連れで帰ったら、御曹司が偏愛してきた  作者: zhaozhao


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

第14話 父は、母さんの十倍、厄介だ

 日曜の朝、篠宮玲の車が時間どおり階下に停まる。

 きらの手を引いて下り、ドアを開けた瞬間、ごく薄い白檀が鼻に入った。

 後席に、チャイルドシートが一台。

 ピンクのうさぎ耳。玄関のスリッパと同型だ。


 私:「……」


「母さんが買った」

 篠宮玲が顔色を変えずにドアを閉める。

「昨夜、夜通し届けさせた。きらの部屋も、水曜から一日一スタイルだ。今は恐竜」


「お宅は——」

 しばらく詰まる。

「効率、怖いんですか」


「ああ」

 エンジンをかける。

「だから今から、心の準備を」


「何の」


「父は、母さんの十倍、厄介だ」


 後席、きらがシートのボタンを研究しながら、顔も上げずに言う。

「怖くない。ママはぼくが守る」


 篠宮玲がルームミラーで一目やる。

 父子の目が、鏡の中でぶつかった。

 一つは冷たく、一つは真剣だ。

 似ている。あまりに。


 篠宮本邸。

 またあの二百年の銀杏、古い屋敷特有の、木と旧い時間の混ざった匂い。

 ただ今日、門前に列が一人分増えていた。

 執事、使用人、灰色の着物の老婦が茶を捧げ、下車を見て軽く頭を下げる。

「旦那様は、朝からお待ちです」


 胸が、ごんと鳴った。

 朝から待つ——下馬威に聞こえる。


 座敷、篠宮厳が上座にいる。

 濃い色の和装、杖を一本。髪は白いが梳かれて一点の乱れもなく、顔は痩せて、目は底の見えない古井戸だ。

 篠宮玲の顔立ちは、七分、この人に似ている。

 前の卓に、パズルが一盤。

 恐竜、二千片。

 散らばり、三分の一ほど組んである。


「来たか」

 顔を上げず、一片を摘まみ、光に透かす。

「座れ」


 また、茶は出ない。

 横のソファに座り、きらを膝の横へ引く。

 厳がパズルを置き、視線が私を越え、きらに落ちる。

 眉から、口角まで。

 長く見る。


「名は」


「鈴原 煌!」

 きらが明るく響かせる。

「おじいちゃん、こんにちは。きらって呼んでいいよ。仲いい人はみんなそう呼ぶ」


 馴れ馴れしさは、篠宮玲に似ない。

 誰に似るかは、言いにくい。


 厳が二秒見て、ふいに言う。

「篠宮の祖父、と呼べ」


 来た。

 指が締まる。

 きらが瞬く。

「どうして? おばあちゃんは姓を足さなかったよ」


 厳:「……」


 卓の茶器が、白い細い手に上げられ、受けに戻されて、脆い音がした。

 座敷に四人目がいると、そこで気づく。

 女が側室から出てくる。ベージュのスーツ、長い巻き毛、化粧は一点の狂いもない。


「おじさま、茶が冷めました。取り換えさせます」

 笑って言い終え、今気づいたみたいに目を輝かせる。

「こちらが鈴原さん? お噂はかねがね。綾瀬 凛と申します」


 綾瀬凛。

 茶杯を持つ指が、ごくわずかに止まる。

 五年前、腕を組んでいた人。

 五年前、電話に出て「風呂です」と言った人。


「綾瀬さん」

 笑った。

「お噂は」


無料で完全版を先行で読む:

https://www.amazon.co.jp/dp/B0HJHG2TRF

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。