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チョーコー!朝鮮高校喧嘩列伝改  作者: 姜公紀


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119/119

1977年2月、多摩川にて part2

「サイヒョンニム(兄貴)から言われました。これからの時代は、喧嘩どうこうで相手を屈服させるんじゃない。大切なのは、人同士分かりあう力が何よりも大切になってくると。サイヒョンニム(兄貴)は、キムヒョンニム(兄貴)から、それを教えられたと」

「そんな事も言ったかもしれんなぁ」


ワンの言葉に、キムは少し恥ずかしがり、とぼける様に返事をした。

普段仲の悪い、横浜チョーコーと東京チョーコーだが、サイ・ガンチョルとキム・ブントクはお互いの強さを認め合い、仲が良かった。

特にサイ・ガンチョルは、キム・ブントクの喧嘩の強さだけでない、先を見通す優れた視野や不良とは思えない独特の品の良さを高く評価して、同級生にも関わらず、一目置いていた。

ちなみに、普段仲の悪い横浜と東京チョーコーだが、「第85話 ハマの地獄族vs神奈川チョーコー part15」でも少し触れたが、対外敵との戦いにおいては別であり、「1980年の神奈川チョーコー50名対横浜山手中華学校高等部200名による大抗争事件」の時には、横浜チョーコーのために、東京チョーコーの精鋭部隊50名が、抗争場所にいち早く駆け付け、横浜山手中華学校高等部200名を撃退するという共闘も見せている。

普段は仲は悪くとも、そこは同胞。

相手が4倍の勢力であろうと、命を捨て助けに行く。

これが在日魂である。

話はそれたので、本筋に戻る・・・・・・。


「今は、少々荒れてる時代だが、これから数年後には、暴力が野蛮だと敬遠される時代がきっとくる。その時、チョーコー生が今の様な姿勢をずっと貫けば、世間やメディア、誰も味方になってはくれなくなる。それが、こちらに正義があったとしてもだ。ましてや、俺たちは在日。世間やメディアの格好の餌食となるだろうぜ」

「でも、俺たちがこうやって、天下のチョーコー生として大手を振って威張ってられるのも、ソンベ(先輩)たちが身体を張ってきてくれたからだと思います。それを、今更、野蛮とか言われても、フベ(後輩)たちは、困惑するんじゃないですか?」


ワンは、キムの考えに、少し戸惑いながら、今の素直な疑問をぶつけるように質問した。


「お前らのその有り余るエネルギー。全部スポーツに生かすんだよ」

「スポーツ?」

「ああ、フベ(後輩)たちの喧嘩に向かう闘争心をスポーツに転換させるんだ。俺は、チョーコーをバンカラ高校からスポーツ強豪校にしたいと思ってる。今、そのために、東京チョーコー後援会の役員として、総連や各ウリハッキョ(朝鮮学校)や在日トンポ(同胞)たちにも、働きかけてる最中だ」


キムは、ワンの右側近くまで歩くと、そのまま、多摩川を見ながら会話の続きを始めた。


「今までは、差別に抗うためには、強くなるしかなかった。暴力には、より強い暴力で抵抗する。結果どうだ?俺たちは、東京どころか関東。いや、日本中で知らない奴はいないぐらい、東京チョーコーは、いい意味でも悪い意味でも知られるようになった。ま、尊敬というより、畏怖の方が多いのかもしれんがな。それが、ウリハッキョ(朝鮮学校)への差別の抑止力にもなった。が・・・・・・」


ワンも、キムヒョンイム(兄貴)の話を聞きながら、夕日に照らされた多摩川を見ていた。

キムは、ワンが自分の話を聞いてるのを確認し、話を続けた。


「去年、警察庁が少年課を新設したのを知ってるか?」

「あ、ソンセンニム(先生)が、その事を朝礼で言ってました」

「そうか。これからは、今までの様に、警察も高校生の喧嘩という事である程度大目に見てくれる時代は終わる。1度の喧嘩が、当事者だけで終わるのではなく、周囲の人にも捜査が行くようになる。結果、多くの在日関係者が迷惑を被るような事態になっていくはずだ。それも、年々締め付けは厳しくなるだろう」

「それで、スポーツへの転換なんですね」

「そうだ。スポーツに国境はないと、俺は思う。現に、あんだけいがみ合っていた帝京とも、サッカー交流戦を始めたおかげで、今では、お互い昔みたいにやりあう事もなくなった。もちろん、突発的ないざこざはあるが・・・・・・」

「でも、俺たちは、日本のスポーツ大会。公式試合には参加できませんよ」


ワンは、キムの構想に内心賛同しつつ、率直な疑問を金にぶつけた。

「第93話 東京チョーコーサッカー部・ソク・ソンミン part2」でも、記載したが、チョーコーは、1993年まで、日本の高校総体(インターハイ)など、高体連が主催する公式大会に参加する事は出来なかったのだ。


「できる、できないんじゃない。やるんだ。フベ(後輩)たちのために。俺たちが、何で今まで身体を張ってウリハッキョ(朝鮮学校)を守ってきたんだ?今後続くフベ(後輩)達の為じゃないか。関東中の日本人相手に切った張ったしてきた俺たちが、チョーコーが公式大会に現状出れないぐらいで何弱気になってるんだ」


キムは、そう言いながら、両手をポケットに勢いよく突っ込んだ。


「俺たちが現役の時は、サカン(チョーコー生の国士館呼び)が喧嘩相手で、それ以外は眼中になかったが。いっぱしの大人になった今、次の喧嘩相手は、文部省と全国高体連ってところか。やっぱ、喧嘩するなら、それぐらいの相手じゃねぇとな」


キムは、そう言うと、左側にいるワンに顔を向けた。


「それ以外の相手と喧嘩しちゃあ、弱い者いじめになっちまう。チョーコー生は、喧嘩を売るな、売られたら買え」

「買ったら負けるな。 負けたら朝高には来るな。ですね!」


ワンとキムは、チョーコーの長年受け継がれたスローガンを唱和しあった後、お互い笑いあった。

夕日に照らされた多摩川に、2人の笑い声は、よく響いた。

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