東京チョーコー拳道会部、5ヵ条鉄の掟
1980年代の東京チョーコー拳道会部には、5か条の鉄の掟がある。
・素人には手を出さない
・障碍者には手を出さない
・女子供老人には優しく
・自ら手を出すことなかれ
そして。
・戦う相手は5人以上のみ
1983年 5月 池袋駅周辺 平日 夕方
平日夕方の池袋駅周辺は、ビルやデパートが乱立し、多くの人出でごった返していた。
いつもの池袋の風景である。
もちろん、人の種類も豊富。
サラリーマンにOL,、大学生にブサブサ髪をなびかせたプータロー。
何かを思い、そして急ぐように足早に人ごみをそれぞれかき分けながら横断歩道を横切っていた。
もちろん・・・・・・。
ザァッザッザ。
「・・・・・・」
「あのお兄ちゃん凄い髪型ぁ!」
「しっ!」
豊南高等学校。
池袋周辺を根城にした、不良高校生。
池袋で恐れられたその高校。
その5人組が、池袋駅前の横断歩道を駅とは逆方面に向かって我が物顔で闊歩していた。
(ポマードくさっ)
すれ違う禿げ頭のサラリーマンが、過ぎ去った後鼻をつまむ。
豊南高校・稲葉秀介のリーゼントにベッタリつけたポマードの匂いが凄かったからだ。
「今日はどこ行きます?」
豊南2年・山本俊史郎が、真ん中を歩いていた3年の先輩である片持五郎に話しかけた。
「そりゃあ、インベーダーだろ」
「はぁ?もうブームも去ってるってのによぉ」
同じく3年の霧島太一は、呆れた顔で返した。
ザザッ。
「ん?」
「あ?」
豊南高校5人組が横断歩道の真ん中あたりで立ち止まる。
「お前ら5人組か?」
「ん?何言ってんだこのガキ」
「ハナ、ドゥル、セッ、ネッ・・・・・・」
豊南高校5人組の前に立ちはだかった、学生服を着た男が、豊南高校生を右手で指さしながら、おもむろに朝鮮語で数を数え始めた。
「なんだなんだこいつ」
「さぁ?キチガイか?」
「あっ!?首!首元見ろ!」
「げっ!」
学生服を胸元まで開けていたその男の、左襟元には、サンペンのバッジが輝いていた。
「お前ら5人ちゃんといるな。俺は、チョーコー1年拳道会部・チェ・スンウ。喧嘩買ってもらおうか」
1980年代の拳道会部をはじめ。
チョーコー生には一つの伝統があった。
1年生による、日本人不良高校生5人組への根性試しである。
チョーコー生たるもの、1年生の時から、東京中の不良を相手にしなくてはいけない身。
だからこそ、4月から、徹底的なソンベ(先輩)たちからのヤキと試練が与えられる。
それの1つが、拳道会空手部1年による、日本人5人組への喧嘩詣で。
根性試しである。
喧嘩を売るのは、5人組以上の日本人不良のみ。
近くで見守る、拳道会のソンベ(先輩)たちからの視線を背中に受けて。
チェ・スンウの喧嘩詣でが今始まろうとしていた。




