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チョーコー!朝鮮高校喧嘩列伝改  作者: 姜公紀


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106/119

東京チョーコーサッカー部・ソク・ソンミン part15

1982年 4月4日(日) 午後 日本サッカーリーグ開幕戦 等々力陸上競技場


ガヤガヤ。


富士丸サッカークラブによる、今年最初の開幕戦。

対戦相手は、埼玉教員サッカークラブ。

スタンドは、当時の日本のサッカー人気を象徴するように、閑散としていてボツボツと観客がいる程度であった。

富士丸の社員が、複数名応援に来ている姿もグラウンドから見えた。


「・・・・・・」


ソク・ソンミンと敵チームの他の選手たちが、メインスタンド下の狭い通路で、試合開始を身体を軽く動かしながら待っていた。

中には、相手チームの選手と軽く談笑する選手もいた。

試合前という事で両選手ピリピリしているかと思えば、意外とのどかな雰囲気で時間を消費していた。

時には、次の試合に出場する選手や、新聞記者が、両選手の横を通り抜けたりする姿も見られた。

プロ化した現在のJリーグの、試合前のピリピリした雰囲気とは違う、アマチュアサッカー時代特有の牧歌的な空気が、そこには流れていた。


「ブツッ・・・・・・ホーーー」


スタジアムの四方に設置されているスピーカーから、マイクがオンになった音と共に、ハウリングが聞こえてきた。

これが、アマチュアサッカーリーグである日本サッカーリーグ、試合前の合図である。


「ご来場の皆様に、お知らせいたします。これより、日本サッカーリーグ2部、第1節、富士丸対埼玉教員サッカークラブの、スターティングメンバーならびに審判員を発表いたします。はじめに、バックスタンド側、埼玉教員チームのメンバーです」


スタジアムのメインスタンド上部にある「放送室」内。

そこに常備されているパイプ椅子に座りながら、30代前半の女性がアナウンスを開始した。


パチパチパチ。


スタンドから疎らな拍手が聞こえてきた。


「ミッドフィルダー、背番号 6番、野崎 忠くん。背番号 8番、松本冨久司くん」


次々と、埼玉教員チームのスタメン選手の名前が淡々と読み上げられていく。

その度に、スタンドから先ほどと同様、疎らな拍手が聞こえてきた。


「続きまして、メインスタンド側、富士丸チームのメンバーです」


ウグイス嬢が、埼玉教員チームの選手紹介を終えて、富士丸サッカーチームのアナウンスを開始した。

それと合わせるように、拍手が聞こえてきた。


「ゴールキーパー、背番号 1番、浦上幸一くん」


パチパチパチ。


選手の名前が言われるたび、激励の様に、スタンドから拍手がチラホラ聞こえてきた。


「ミッドフィルダー、背番号 6番、城東輝くん」


ウグイス嬢が、埼玉教員チームに対してと同様、淡々と次々と選手名を読み上げていく。

そして、ついにソンミンの番になった。


「フォワード、背番号 10番、せき・ぜんみんくん」


ザワザワ。


スタンドがざわついた。


「せき?そんな名前の選手、富士丸にいたか?」

「いや、俺あんま追ってねぇからわかんねぇ」


スタンドにいたファンが隣の友人と、謎の選手「せき・ぜんみん」に関して会話を交わした。

スタンドには、一部は熱心なサッカーファンはいたが、8割近くは、会社の応援で動員された人や、選手の家族・知人関係者、招待されたり、少し興味があって来たファンで構成されていたので、突然、「せき・ぜんみん」という聞きなれない名前が聞こえてきた事で、スタンドのファン・観覧者ほぼ全員が困惑していた。


「同じく線審、中村嘉男さん。以上でございます」


スタンドのざわめきを余所に、淡々と続けられたウグイス嬢による選手紹介が終了した。

その選手紹介直後、スタジアム中に大会の行進曲(JSLマーチ)が流れ始めた。


「それでは審判団の皆さん、両チームの皆さん、入場お願いします!」


それを合図の様に、20代くらいのボランティアスタッフの男性が、通路で待機していた選手たちに指示を出した。


「おぉーし!」


富士丸サッカー選手の列の中から、気合を入れる声が聞こえてきた。

中には、顔や太ももを平手で叩いたりしている選手もいた。


ザッザッザ。


両チームの選手たちが、通路からスタジアム内のグラウンドへと2列で入場してきた。

その列の最後尾に、ソク・ソンミンもいた。

いや、ソク・ソンミン改め石・善民(せき・ぜんみん)。

日本人として最初の試合。

彼にとって色んな意味での開幕戦が幕を開けた。

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