東京チョーコーサッカー部・ソク・ソンミン part10
「おお!それはありがたい!」
長沼一郎は、ソンミンの返答に喜び、テーブルに身を乗り出していた。
長沼達は、まさかこんないい返事が来るとは思っていなかったのもあって、なおさら喜んだ。
「ですが、一つだけ自分から提案があります」
ソンミンは、そう言って姿勢を正した。
「提案というと?」
長沼達は、突然のソンミンの提案に予期しなかったのもあり緊張した。
「代表でプレイする時、私は本名である、ソク・ソンミンでプレーしたいんです」
ソンミンは、目の前の2人に向かって、力強くそうお願いした。
「・・・・・・分かった!君がルーツを大事にしているという事は非常に素晴らしい。日本サッカーリーグには、日系ブラジル人選手たちも多く在籍している。だからこそ、それぞれの国に誇りを持つ事の大切さを協会は分かっているつもりだ。もちろん、我々協会としても、ソンミン君のアイデンティティを尊重したいと思っている」
少しの思案の後、長沼は、ソンミンの提案の回答をした。
「一応、協会の上の方にも、その事を合わせて報告するから、正式な回答はもう少し待ってほしい」
「分かりました」
長沼の回答に、ソンミンは内心満足していた。
断られるかもしれない。
という一抹の不安もあったのだ。
その後は、4人は終始和やかなムードで話し合いが行われた。
内容は、世間話から代表でのソンミンの起用方法などであった・・・・・・。
富士丸サッカーグラウンド
「ソンミン。大事なことを、あんな簡単に返事をしてよかったのか?」
グラウンド前で、ソンミンと八重樫監督が2人並んで立っていた。
今日は、練習もない休養日であった。
「はい。サッカー協会から連絡を貰った時から考えてました。その後に、キム・ミョンフン監督やチョーコーの元チームメイト達、そして親には、その件で相談はしましたが」
「そうか・・・・・・」
ソンミンの返答に、八重樫監督は、それ以上深くは質問しなかった。
ソンミンのアイデンティティに関わる事なので、気を使ったのだ。
夜 国鉄・南武線 登戸行 電車内
ソンミンは、実家の多摩市へ電車で帰るため、南武線の電車に乗車していた。
電車内は、サラリーマンやOL、大学生などで混雑していた。
混雑した電車内で、揺れる車内でふらつかない様に、手すりにつかまりながら、ソンミンは、キム・ミョンフン監督に、日本サッカー協会から連絡がきた件で相談した際に交わしたやり取りを思い出していた。




