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12.ダンジョン攻略(5夜目①)

パーティを結成した翌日。


俺たちはダンジョンへと向かうため南の森へと続く街道を歩いていた。


「いやー、ついにだね!」


ユナが両手を上に伸ばして、大きく背伸びをする。


「パーティ組んで初ダンジョン!なんかワクワクしない?」


「そうだなー!」


エルザもそれに乗っかるように笑う。


「私もソフィア以外と組むの初めてだしさ!ちゃんと実力見せてやるよ!」


「わ、わたしも……が、頑張ります……」


ソフィアは少し緊張した様子で、小さく拳を握った。


三人とも前を歩きながら、これからの冒険に胸を躍らせている。


――その後ろで、俺は一人、別のことを考えていた。


「なぁ、ルナ」


小声で呼びかける。


「どーしたの?ご主人?」


頭の中に、いつもの軽い声が響く。


肩の上では、小さなスライムがぷるんと揺れていた。


「昨日さ」


少し間を置いて、言葉を選ぶ。


「どうやってギルドまで来たんだ?」


ルナは昨日、宿にいたはずだった。


それなのに――


あの時、俺が“助けたい”と思った瞬間、まるで最初からそこにいたみたいに現れた。


「あー、あれね!」


ルナはあっさりと答える。


「急にご主人の声が聞こえてさ、呼ばれてるなーって思ったから」


「……それで?」


「行きたいなーって思ったら、もうあそこにいた!」


「……は?」


わけがわからず思わず足が止まりそうになる。


「やってみたらできた!って感じ!」


「マジかよ……」


理解が追いつかない。


だが、実際にルナは昨日突然現れた。


「それ、今もできるのか?」


「たぶんできると思うよー?」


少し考えるような間。


「やってみる?」


「いや、今はいい、そのうち頼むかもしれないけどな」


「任せて!」


ルナは自信満々に肩の上で器用に跳ねた。


(……ほんと、なんでもありだな)


回復に、念話に、瞬間移動。


その内ほんとに進化とかするかもしれないな。


そう思いながら、俺は前へ視線を戻す。


「おーい!ミナトー!」


エルザが俺たちの方へと大きく手を振る。


「そろそろ森入るぞー!」


街道はここで終わり


気づけば、目の前には南の森が広がっていた。


「……もうそんなとこまで来てたのか」


「ぼーっとしてると置いてくよ?」


ユナがくすっと笑う。


「悪い悪い」


軽く返しながら、腰の剣に手をかける。


頭を切り替えなければならない。


一昨日はここでユナは怪我をした。


油断は絶対にしてはいけない。


危険は少ないと言ってもいつ魔物が出てもおかしくない。


「行くか」


そうして、俺たちは、そのまま森の中へと足を踏み入れた。



木々に囲まれた道を進むにつれて、自然と隊列が整っていく。


先頭はエルザとユナ。


「前は任せて!」


エルザが斧を肩に担ぎながら言う。


「敵来たら全部ぶっ飛ばすから!」


「わたしも今度はちゃんと戦うからね!」


ユナも負けじと剣を握る。


頼もしい――と言いたいところだが。


「無理はするなよ」


「もー心配いらないってば!一昨日は油断しただけ!」


軽く言い合いながらも、森の中を進んでいく。


エルザとユナの後ろには俺とソフィアいる。


「え、えっと……私も頑張ります……!」


ソフィアは杖をぎゅっと握りしめていた。


ローブの裾を気にしながら歩く姿は、やっぱり少し危なっかしい。


(……そういえば)


ふと疑問が浮かぶ。


「ソフィアってさ」


何気なく声をかける。


「いつも杖で戦ってるのか?」


その瞬間。


空気が、止まった。


「……え?」


「……は?」


「……えっと?」


三人とも、完全に“何言ってんだこいつ”みたいな顔をしている。


「ミナト、それ本気で言ってる?」


ユナが呆れたように言う。


「ボケだよね?」


「いや、普通に聞いただけなんだけど」


「いいじゃんそれ!」


エルザが急に吹き出す。


「ソフィが杖でゴブリン殴るの!想像したらヤバいって!」


「あはははは!!」


「ちょ、エルちゃん……!」


ソフィアが慌てて止める。


顔がほんのり赤くなっている。


「え、えっと……私は……」


小さく咳払いしてから、


「魔法で戦います……」


「……あー」


一瞬、納得する。


「魔法ね。なるほどな――って、え?」


そして、数秒遅れて理解が追いつく。


「……魔法?」


「はい……」


ソフィアがこくりと頷く。


(魔法……あるのか、この世界)


言われてみれば当然かもしれない。


魔物がいて、ダンジョンがあって、スライムが瞬間移動する世界だ。


今さらだろ、って話だが――


(でも、実際に“使える人”を見ると違うな)


妙に現実味が出る。


「どんなの使えるんだ?」


少し身を乗り出して聞く。


「ファイアーボールとかか?」


「い、いえ……その……」


ソフィアは困ったように目を逸らす。


「攻撃系はあまり……その……」


「あれ、じゃあ昇格試験の時はどうしてたんだ?」


Eランクに上がるためには昇格試験で試験官と戦わなければならないはずだ。


その時は杖で戦ったのだろうか。


「ソフィは補助魔法が使えるんだぜ!すっごいの!」


俺の質問を遮るようにエルザが胸を張っていう。


「力がぐわーって湧いてくる感じ!あれなかったら私、もっと苦戦してるって!」


「そ、そんなことないよ……!」


「いやある!」


「すごいね!それ!」


ユナが乗っかる。


「じゃあさ!あとで私にもかけてよ!」


「は、はい……!」


ソフィアは慌てながらも、嬉しそうに頷いた。


(補助魔法か……)



これから先、ソフィアには助けられる場面があるかもしれないな。


そんなことを考えていると――


「見えてきたよ!」


エルザが前方を指さす。


木々の隙間の奥。


岩に囲まれた、ぽっかりと開いた洞窟。


その周囲には簡素な柵があり、ところどころ壊れている。


南の森に出る魔物はここから来ているのだろう。


「……あれが」


「ダンジョンの入り口!」


ユナが少し嬉しそうに言う。


「なんかそれっぽいね!」


確かに。


空気が少しだけ重い?


「みんな、準備はいいな」


俺は気合を入れて皆に声をかける。


「うん、万端だよー」


「いつでもこいだ!」


「わ、わたしも大丈夫です……!」


「ピィー」


それぞれが武器を構えて、ルナは飛び跳ねている。


「……よし」


一歩、前へ出る。


「入るぞ」


そう言って――


俺たちは、Eランクダンジョン。


通称“初心者ダンジョン”へと足を踏み入れた。

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